標準原価計算

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では標準原価計算について解説します。

標準原価計算

標準原価計算ではあらかじめ原価の標準を設定しておきます。原価の標準とは、製品1単位あたりの標準原価で、いくらで製品が製造されるべきかを表すものです。

原価の標準に実際の生産量をかけることで実績標準原価を計算し、この実績標準原価と実際原価を比較することで差異を分析します。これが標準原価計算です。

標準原価計算は、原価管理に役立つ情報を提供するために使われます。

標準原価と実際原価の違い

個別原価計算総合原価計算は実際原価を使います。実際原価とは「製品がいったいいくらで製造されたのか」を表す価格です。

それに対して標準原価計算では標準原価が使われます。標準原価とは「あらかじめ製造する前に、このくらいで製品が製造できるという目標を設定し、その目標に実際の生産量をかけた」価格です。

標準原価計算と実際原価計算の違い

原価計算で材料消費高、消費賃金を計算する場合には、実際の数字を使うか予定の数字を使うかでいくつかの組み合わせが考えられます。その組み合わせと原価計算の種類を整理すると下の表のようになります。

  • 材料消費高=消費数量×消費単価
消費数量/消費単価 実際価格 予定価格
実際数量 実際原価計算(原価法) 実際原価計算(予定価格法)
予定数量 なし 標準原価計算
  • 消費賃金=消費賃率×就業時間
就業時間/消費賃率 実際消費賃率 予定消費賃率
実際時間 実際原価計算(原価法) 実際原価計算(予定価格法)
予定時間 なし 標準原価計算

つまり、材料消費高を計算するのに予定数量を使う場合、消費賃金を計算するのに予定就業時間を使う場合は標準原価計算ということになります。

標準原価計算の必要性

標準原価計算が必要だということは実際原価計算に欠点があるということです。実際原価計算(原価法)には次のような欠点があります。

  • 材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因が原価に含まれてしまう
  • 操業度の変動という管理不能な要因が原価に含まれてしまう
  • 材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう
  • 計算が遅い

材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因が原価に含まれてしまう

材料の価格は変動します。季節や状況によって同じものが高くなったり安くなったりします。

また、工員の賃率も変動します。同じ作業でも賃率の高い工員が作業するのか安い工員が作業するのかで消費賃金が高くなったり安くなったりします。残業時に作業した場合、残業は時給が上がるため、消費賃金が高くなります。

このような原因で原価は変動します。しかし、これらは偶然的なもので、管理できるものではありません。また、管理する必要もありません。このような原価の変動は原価管理には役に立たないのです。

しかし実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。このような原価の変動が原価に含まれてしまうと、原価管理ができなくなってしまいます。

操業度の変動という管理不能な要因が原価に含まれてしまう

操業度とは工場がどれだけ稼動しているかを表すものです。操業度の変動の原因は季節による変動や景気による変動が考えられます。ビール工場であれば夏は操業度が高く、冬は操業度が低いでしょう。

このような操業度の変動で原価も変動します。しかし、このような操業度の変動は全く管理できませんし、する必要もありません。

操業度が高い方がいいのは間違いないので操業度を高く保ちたいのはヤマヤマですが、それは営業部の仕事です。工場で管理できることではありません(営業と製作が協力して売り上げを伸ばすことは経営上重要なのですが、これは間接的なことなのでここでは触れません)。

しかし実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。このような原価の変動が原価に含まれてしまうと、原価管理ができなくなってしまいます。

材料の無駄遣いや工員の能率低下が原価に含まれてしまう

材料を無駄に使えば、その分原価は大きくなります。工員の能率が低下してしまえば、その分原価は大きくなります。このような原価は管理すべきものです。材料の無駄を減らし、工員の能率低下を抑えればその分原価を小さくすることができるからです。

しかし、実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。原価に混ざってしまうと、どれくらい材料の無駄が発生しているのか、どのくらい工員の能率低下が起こっているのかが分かりません。これでは管理できません。

計算が遅い

実際原価計算(原価法)では全ての実際原価を計算するまで時間がかかるので計算が遅くなります。計算が遅いということはそれだけ原価管理の具体的な対応を取り始めるのも遅くなるということになります。

計算は速ければ速いほど迅速な対応ができるので、計算は速いに越したことはありません。

これらの実際原価計算の欠点を補うために使われるのが予定価格法による実際原価計算です。予定価格を使った原価計算では上の3つの欠点のうちいくつかは解決されます。

  • 材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因は予定価格を使うことで影響を受けなくなる
  • 操業度の変動という管理不能な要因は原価と分けて考えることができる
  • 計算が速くなる

材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因は予定価格を使うことで影響を受けなくなる

材料の予定価格を設定しておくことで材料の価格が変動してもその変動は材料消費価格差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

また、工員の予定消費賃率を設定しておくことで実際消費賃率が変動してもその変動は賃率差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

操業度の変動という管理不能な要因は原価と分けて考えることができる

操業度の変動という管理不能な要因は操業度差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

計算が速くなる

予定価格は前もって設定しておきます。この前もって設定した予定価格を使うことで、迅速に計算をすることができます(実際価格は原価計算期間が終わらなければ求まりません)。

しかし、一つの欠点が残ります。それは「材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう」です。

「材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう」とは…

材料消費高を予定価格法で計算する方法では、次の式で材料消費高を計算します。

材料消費高=実際消費量×予定価格

価格が予定価格となっていることで、実際の価格が偶然的に変動してもその変動は材料消費高には影響を与えません(実際価格の偶発的な変動による影響は材料消費価格差異勘定に集計されます)。

しかし、消費量は実際の数値です。ということは材料を非効率に使ってしまって材料消費高が大きくなってしまった場合、その非効率な分は材料消費高に含まれてしまいます。

予定消費賃率を使って消費賃金を計算する場合も同様です。消費賃金を予定消費賃率で計算する方法では、下の式で消費賃金を計算します。

消費賃金=予定消費賃率×就業時間

消費賃率が予定価格となっていることで、実際の消費賃率が偶然的に変動してもその変動は消費賃金には影響を与えません(実際消費賃率の偶発的な変動による影響は賃率差異勘定に集計されます)。

しかし、就業時間は実際の数値です。ということは工員の能率が低下して消費賃金が大きくなってしまった場合、その非効率な分は消費賃金に含まれてしまいます。

製造間接費の予定配賦の場合はより明確です。製造間接費の予定配賦における操業度差異は下の式で求まります。

操業度差異=(実際操業度-基準操業度)×固定費率

この式を使って操業度差異を考えてみましょう。例えば、基準操業度が1,000時間、固定比率が500円/時だとしましょう。そして、製品の需要が300個あるとします。

この製品を効率的に1個作るのに3時間かかるとします。すると、効率的に製品を作れば900時間の実際操業度となります。この場合、操業度差異は下のようになります。

操業度差異=(900時間-1,000時間)×500円/時=50,000円(不利差異)

では、ここで別の状況を考えてみましょう。非効率的な生産設備の使い方をしてしまって、同じ300個の製品を作るのに1,000時間の実際操業度となってしまったとしましょう。この場合、操業度差異は下のようになります。

操業度差異=(1,000時間-1,000時間)×500円/時=0円(差異なし)

この結果はまずいです。本来、工場では管理できない差異と考えていた操業度差異が生産設備の使用効率によって影響を受けています。生産設備の使用効率は真っ先に管理されなければいけないものです。

その上、非効率な生産設備の使い方をすることで不利差異がなくなってしまっています。これではまともな原価管理ができません。

このようになってしまう原因は「製品の需要の変化による操業度の変化(管理不能)と生産設備の使用効率による操業度の変化(管理可能)とが同じ操業度差異としてまとめられている」という点にあります。

この欠点を補うためには…

  • 材料を非効率に使ってしまった分が材料消費高に含まれてしまう
  • 工員の能率が低下した分が消費賃金に含まれてしまう
  • 生産設備の使用効率による操業度の変化が操業度差異に含まれてしまう

これらの欠点を補うためには「材料消費量・工員の能率・生産設備の使用効率」に1個あたりの製品を作るにに必要な消費量を予定して、その適切な消費量から外れた分は差異として認識する必要があります。これが標準原価計算です。

標準原価計算の目的

標準原価計算には3つの目的があります。

  • 原価管理目的
  • 財務諸表作成目的
  • 計算や記帳の簡略化と迅速化

原価管理目的

標準原価計算では、製品をいくらで製造するべきかという原価の達成目標である標準原価を設定します。そして、その標準原価と実際原価を比較することで材料の無駄や工員・生産設備の非効率を発見・改善することで原価を管理します。

財務諸表作成目的

財務諸表を作成するためには製品原価を正確に計算することが必要です。財務諸表は実際原価計算だけでも作成できますが、その場合、製造過程にどれだけ無駄や非効率があったのかが財務諸表から読み取れません。

しかし、標準原価計算を採用することで、財務諸表からも製造過程における無駄や非効率も分かるようになります。無駄や非効率が分かることで、より有益な財務諸表を作成することができます。

計算や記帳の簡略化と迅速化

標準原価を使うと、実際原価の計算結果を待たずに完成品原価を計算できます。よって、計算や記帳をより簡単に、より早く行うことができます。

計算や記帳の簡略化と迅速化は予定価格を使った実際原価計算でもある程度達成できます。

しかし、標準原価計算では完成品の数量だけで完成品原価を計算できるため、より計算や記帳の簡略化と迅速化が達成できることになります(予定価格による実際原価計算では実際消費数量が分からなければ計算できません)。

これらが標準原価計算を採用する目的です。

標準原価計算の流れ

標準原価計算は次の流れで行います。

  1. 原価標準の設定
  2. 標準原価の計算
  3. 実際原価の計算
  4. 標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算
  5. 原価差異の原因分析

1.原価標準の設定

  • 製品を1個作るのに必要な直接材料費
  • 製品を1個作るのに必要な直接労務費
  • 製品を1個作るのに必要な製造間接費

上のようなものを原価標準といいますが、これらを設定します。「製品を1個作るのに必要な直接経費」については通常は設定しません。

2.標準原価の計算

原価計算期間の生産実績(当月投入分)に1の原価標準を適用して標準原価を計算します。

3.実際原価の計算

実際原価を集計します。これは実際原価計算(原価法)と同じです。

4.標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算

原価差異が勘定連絡図のどのような形で発生するのかについては2つのパターンがあります。詳しくは後日お伝えします。

ここでは「標準原価と実際原価の差額を原価差異として計算する」と理解しておいてください。

5.原価差異の原因分析

原価差異を原因別に分類して分析します。ここについてもいくつかの方法があるので、詳しくは後日お伝えします。ここでは「原価差異を分析する」とだけ理解しておいてください。

標準原価計算の問題のほとんどは「4.標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算」と「5.原価差異の原因分析」です。これから先はこの2つを中心に学習していきます。

標準原価差異の分析

標準原価計算では標準原価と実際原価を比較して原価差異を計算します。原価差異は、直接材料費、直接労務費、製造間接費ごとに計算・分析します

直接材料費差異は価格差異と数量差異に分類し、計算・分析します。直接労務費差異は賃率差異と作業時間差異に分類し、計算・分析します。製造間接費差異は予算差異・変動費能率差異・固定費能率差異・不働能率差異の4つに分類し、計算・分析します。

製造間接費差異は他にも分類の方法がありますが、この4つに分類する方法(4分法といいます)ができるようになれば他の方法でも問題なくできるようになります。

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