製造間接費の実際配賦

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では製造間接費の実際配賦について解説します。

製造間接費の実際配賦の配賦基準

製造間接費で配賦基準というものが出てきました。この例では機械の電気代を配賦するときに機械の使用時間を配賦基準としました。このようなものが配賦基準です。

製造間接費の実際額を配賦する場合の配賦基準にはいくつかの種類があります。図でまとめると次のようになります。

実際配賦の配賦基準

金額法(価額法)

金額法(価額法)は製造直接費を配賦基準として使います。直接材料費を配賦基準とする直接材料費法、直接労務費を配賦基準とする直接労務費法、直接費の合計額を配賦基準とする直接原価法(直接費法・素価法)の3つがあります。

直接材料費法

直接材料費の金額を配賦基準とする方法です。次の計算式で配賦率を計算します。

配賦率=製造間接費総額÷直接材料費合計

この計算式では直接材料費1円あたりの製造間接費がいくらなのかが配賦率になります。直接材料費法を使うのは製造原価に占める直接材料費の割合が高い場合です。高価な貴金属などを使ったアクセサリーなどがあてはまります。

配賦額=製品の直接材料費の金額×配賦率

上記で求めた配賦率にその製品の直接材料費をかけることで製造間接費の配賦額を計算します。

直接労務費法

直接労務費の金額を配賦基準とする方法です。次の計算式で配賦率を計算します。

配賦率=製造間接費総額÷直接労務費合計

この計算式では直接労務費1円あたりの製造間接費がいくらなのかが配賦率になります。直接労務費法を使うのは製造原価に占める直接労務費の割合が高い場合です。材料はそれほど効果ではないけど手が込んだアクセサリーなどがあてはまります。

配賦額=製品の直接労務費の金額×配賦率

上記で求めた配賦率にその製品の直接労務費をかけることで製造間接費の配賦額を計算します。

直接原価法(直接費法、素価法)

直接費の合計の金額を配賦基準とする方法です。次の計算式で配賦率を計算します。

配賦率=製造間接費総額÷直接費合計

この計算式では直接費1円あたりの製造間接費がいくらなのかが配賦率になります

配賦額=製品の直接費の金額×配賦率

上記で求めた配賦率にその製品の直接費をかけることで製造間接費の配賦額を計算します。

時間法

時間法は製品の製造にかかった時間を配賦基準として使います。工員の直接作業時間を配賦基準とする直接作業時間法と機械の運転時間を配賦基準とする機械運転時間法の2つがあります。

直接作業時間法

工員の直接作業時間を配賦基準とする方法です。次の計算式で配賦率を計算します。

配賦率=製造間接費総額÷直接作業時間合計

この計算式では直接作業時間1時間あたりの製造間接費がいくらなのかが配賦率になります。直接作業時間法を使うのは工員の直接作業時間と製造原価の間に強い関連がある場合です。

配賦額=製品の直接作業時間×配賦率

上記で求めた配賦率にその製品の直接作業時間をかけることで製造間接費の配賦額を計算します。

機械運転時間法

機械の運転時間を配賦基準とする方法です。次の計算式で配賦率を計算します。

配賦率=製造間接費総額÷機械運転時間合計

この計算式では機械運転時間1時間あたりの製造間接費がいくらなのかが配賦率になります。機械運転時間法を使うのは機械の運転時間と製造原価の間に強い関連がある場合です。

配賦額=製品の機械運転時間×配賦率

上記で求めた配賦率にその製品の機械運転時間をかけることで製造間接費の配賦額を計算します。

さまざまな配賦基準をお伝えしましたが、土台にある考え方は全て同じです。計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのか考えながら学習することが大切です。

製造間接費の実際配賦の具体例

例題

下のようにして机といすを作った場合、それぞれの配賦基準における机といすの製造間接費配賦額を計算してみましょう。

製品 直接材料費 直接労務費 直接経費 直接作業時間 機械運転時間
200,000 100,000 300,000 300時間 150時間
いす 150,000 50,000 200,000 100時間 150時間
  • 製造間接費総額:420,000円
  • 配賦基準
    1. 配賦基準が直接材料費法の場合
    2. 配賦基準が直接労務費法の場合
    3. 配賦基準が直接原価法の場合
    4. 配賦基準が直接作業時間法の場合
    5. 配賦基準が機械運転時間法の場合

では、一つずつ見ていきましょう。

1.配賦基準が直接材料費法の場合

  • 製造間接費=420,000円
  • 直接材料費総額=200,000円+150,000円=350,000円
  • 配賦率=420,000円÷350,000円=1.2円

配賦率が1.2円ということは直接材料費1円あたりの製造間接費が1.2円ということです。

  • 机への配賦額=200,000円×1.2円=240,000円
  • いすへの配賦額=150,000円×1.2円=180,000円

机への配賦額240,000円といすへの配賦額180,000円の合計が製造間接費総額420,000円になることを確認しておいてください。

2.配賦基準が直接労務費法の場合

  • 製造間接費=420,000円
  • 直接労務費総額=100,000円+50,000円=150,000円
  • 配賦率=420,000円÷150,000円=2.8円

配賦率が2.8円ということは直接労務費1円あたりの製造間接費が2.8円ということです。

  • 机への配賦額=100,000円×2.8円=280,000円
  • いすへの配賦額=50,000円×2.8円=140,000円

机への配賦額280,000円といすへの配賦額140,000円の合計が製造間接費総額420,000円になることを確認しておいてください。

3.配賦基準が直接原価法の場合

  • 製造間接費=420,000円
  • 直接原価総額=200.000円+100,000円+300,000円+150,000円+50,000円+200,000円=1,000,000円
  • 配賦率=420,000円÷1,000,000円=0.42円

配賦率が0.42円ということは直接原価1円あたりの製造間接費が0.42円ということです。

  • 机への配賦額=(200,000円+100,000円+300,000円)×0.42円=252,000円
  • いすへの配賦額=(150,000円+50,000円+200,000円)×0.42円=168,000円

机への配賦額252,000円といすへの配賦額168,000円の合計が製造間接費総額420,000円になることを確認しておいてください。

4.配賦基準が直接作業時間法の場合

  • 製造間接費=420,000円
  • 直接作業時間合計=300時間+100時間=400時間
  • 配賦率=420,000円÷400時間=1,050円

配賦率が1,050円ということは直接作業時間1時間あたりの製造間接費が1,050円ということです。

  • 机への配賦額=300時間×1,050円=315,000円
  • いすへの配賦額=100時間×1,050円=105,000円

机への配賦額315,000円といすへの配賦額105,000円の合計が製造間接費総額420,000円になることを確認しておいてください。

5.配賦基準が機械運転時間法の場合

  • 製造間接費=420,000円
  • 機械運転時間合計=150時間+150時間=300時間
  • 配賦率=420,000円÷300時間=1,400円

配賦率が1,400円ということは機械運転時間1時間あたりの製造間接費が1,400円ということです。

  • 机への配賦額=150時間×1,400円=210,000円
  • いすへの配賦額=150時間×1,400円=210,000円

机への配賦額210,000円といすへの配賦額210,000円の合計が製造間接費総額420,000円になることを確認しておいてください。

5つの配賦基準を示しましたが、土台にある考え方は全て同じです。計算式を覚えてはいけません。どんな意味の数字を計算して求めているのかをきちんと理解しながら計算練習をすることが大切です

製造間接費の実際配賦の問題点

これまで製造間接費の配賦について解説してきました。これらは全て実際配賦についてのものです。実際配賦は予定価格法でお伝えした原価法や予定消費賃率でお伝えした実際消費賃率と同じ欠点があります。

つまり、製造間接費の実際配賦には2つの問題点があるということです。

  • 計算が遅い
  • 配賦率が管理できない状況に影響される

計算が遅い

計算が遅いという問題点については予定価格法や予定消費賃率でお伝えした欠点とほとんど同じです。実際にどれだけ配賦したのかを意味する実際配賦額は、製造間接費の実際額を全て集計してからでなければ計算できません。

全て集計できるのは原価計算期間が終了した後になるので、翌月にならなければ計算できないということになります。

これでは原価管理という面からはほとんど役に立ちません。原価管理を効果的に行うためには、いち早く原価をつかみ、そこから無駄を見つけ出して改善するという作業が必要です。このような効果的な原価管理を行うためには原価をできるだけ早くつかむ必要があります。

配賦率が管理できない状況に影響される

配賦率が管理できない状況に影響されるという問題点については具体例を使って解説します。

1月 8月
製品 A製品 B製品 A製品 B製品
生産量 100個 100個 100個 200個
直接作業時間 10時間 10時間 10時間 20時間
製造間接費 800,000円 900,000円

配賦基準は直接作業時間法を採用しているものとします。また、この例は8月はB製品の販売が好調で売り上げが伸びたという設定です。

ビールやアイスクリームなど、季節によって影響を受ける製品の場合(アイスやビールは夏が売れます)には、月単位での倍以上の変動は普通に起こるので、上の例は特殊な例ではありません。

製品の生産量の割に製造間接費の増加額は少なめだと感じるかもしれませんが、家賃や保険料などのように生産量に関わらず同額の費用がかかるもの(固定費といいます)も多いため、この金額も特殊な例ではありません。

では、それぞれの月の実際配賦額を計算してみましょう。

1月の実際配賦額の計算

  • 実際配賦率:800,000円÷(10時間+10時間)=40,000円/時
  • A製品の実際配賦額:40,000円/時×10時間=400,000円
  • B製品の実際配賦額:40,000円/時×10時間=400,000円

8月の実際配賦額の計算

  • 実際配賦率:900,000円÷(10時間+20時間)=30,000円/時
  • A製品の実際配賦額:30,000円/時×10時間=300,000円
  • B製品の実際配賦額:30,000円/時×20時間=600,000円

ここで、A製品の実際配賦額を見てみると実際配賦の欠点が見えてきます。

A製品は1月と8月で生産量も直接作業時間も変わりません。つまり、作業の効率は変わらないということです。にも関わらず、実際配賦額が大きく変わっています。

これでは原価管理という面からはほとんど役に立ちません。作業に無駄が多くなったから製造間接費が上がってしまったのであればその無駄をなくすことで原価を減らすことができます。これが本来の原価管理です。

他製品の生産量が少なくなったから製造間接費が上がってしまったというのではどう対策したらいいのか分かりません。これでは原価管理ができないのです。

このような理由により、現在では製造間接費の実際配賦は使われません。予定配賦が原則となっています。

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“製造間接費の実際配賦” への4件のフィードバック

  1. みんと より:

    リョウさん
    明けましておめでとうございます。
    昨年は1級の難しさとプレッシャーの重さで挫折してしまい勉強を中断していましたが、正月明けから再開します。
    ブログには簿記日記は書きませんが試験とか資格取得とかは今は考えずに簿記を楽しみながら勉強することにしました。

    工業簿記の記事、進んでいますね。
    また参考にさせていただきます♪

    今年もよろしくお願い致します。

    • dokuboki より:

      あけましておめでとうございます。

      簿記の学習再開されるのですね。簿記は楽しみながら勉強していくのが一番です。

      今年もよろしくお願いします。

  2. Yama より:

    ■あけましておめでとうございます。

    暗記不要の簿記独学講座:リョウ さん、

    あけましておめでとうございます。 宜しくお願いします。

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