- 個別原価計算を勉強していると仕損費っていう内容が出てくるんだけど……
- 仕損費と仕損品の違いが分からない
- 仕損費について教えて!
仕損品は工業簿記で初めて登場するものです。工業簿記では仕訳が重視されないこともあり、仕損費の仕訳について知らない人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。仕損費についてももちろん精通しています。
この記事では仕損費の仕訳や仕損費と仕損品の違いについて解説します。
この記事を読めば仕損の考え方や仕損費の仕訳が分かるので、簿記2級で仕損に関する問題が出題されても自信を持って解答することができます。
結論を言うと、仕損とは「加工に失敗すること」で、仕損によって発生した費用が仕損費、仕損によってできてしまった不良品が仕損品です。
仕損・仕損費・仕損品・仕損率の意味の違いとは
仕損(しそんじ)は、加工に失敗することです。「急いてはことを仕損じる」ということわざに出てくる「仕損」と同じです。
仕損費(しそんじひ)は、仕損によって発生した費用(損失)のことです。また、仕損品は、仕損によってできた不良品のことです。
仕損品は失敗品です。製品の製造に失敗した場合、通常の製品と同じ価値にはなりませんが、価値が全くないわけでもありません。仕損に関しては、仕損という事実を適切に表せるように仕訳を切ります。
仕損率とは正常に完成した製品に対する仕損品の割合です。100個の製品を作るときに30個の仕損品ができる場合、仕損率は30%となります。
仕損と減損の違いとは
仕損とよく似た意味の言葉に「減損」があります。減損は製品の製造中に発生した材料などの減少のことです。
仕損も減損も「失敗による価値の減少」という意味がありますが違いもあります。
仕損は、通常の製品と同じには売ることができないとはいえ、形がきちんとあります。そのため、材料として再利用したり、手直しをして規格外品として通常より安く売ったりすることもできます。
対して減損は形がありません。そのため、材料として再利用することも手直しをして規格外品として通常より安く売ることもできません。仕損品というものはあるけれど減損品というものはありません。
仕損と減損にはこういった違いがあります。
仕損費の仕訳と会計処理
仕損費の発生:仕損によって発生した費用をいったん仕掛品勘定へ
この例題の仕訳について考えてみましょう。
材料80,000円と労務費50,000円が消費されているので『(貸)材料80,000』『(貸)労務費50,000』となります。
次は借方です。仕損じているとはいえ、この時点では製造中の製品なので仕掛品として処理しておきます。
金額は(材料80,000円+労務費50,000円=)130,000円となります。よって『(借)仕掛品130,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 130,000 | 材料 労務費 | 80,000 50,000 |
仕損費勘定への振替:仕掛品勘定から仕損費勘定へ振り替える
この例題の仕訳について考えてみましょう。
補修費用は失敗を補修するために仕方なく行った作業なので、仕掛品勘定としておくわけにはいきません。仕損費として計上する必要があります。
よって、仕掛品勘定を仕損費勘定に振り替えます。金額はもちろん130,000円です。仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕損費 | 130,000 | 仕掛品 | 130,000 |
仕損費を直接経費として処理:仕損費勘定を仕掛品勘定へ振り替える
この例題の仕訳について考えてみましょう。
A製品に賦課するということはA製品のみに関する補修作業ということなので、この仕損費はA製品の製造原価に上乗せされます。よって、仕損費を仕掛品に振り替えることになります。
仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 130,000 | 仕損費 | 130,000 |
仕損費を間接経費として処理:仕損費勘定を製造間接費勘定へ振り替える
この例題の仕訳について考えてみましょう。
間接経費として配賦するということは、この仕損費は製造間接費として各製造指図書に配賦されるということです。よって、仕損費を製造間接費に振り替えることになります。
仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
製造間接費 | 130,000 | 仕損費 | 130,000 |
【まとめ】仕損費の仕訳をわかりやすく【仕損品との意味の違いとは】
仕損(しそんじ)は、加工に失敗することです。仕損費(しそんじひ)は、仕損によって発生した費用(損失)のことです。仕損品は、仕損によってできた不良品のことです。
仕損が発生した場合、とりあえず仕掛品勘定で処理しておき、そのあとで仕損費勘定に振り替えます。
その後、仕損費を直接経費として処理する場合は仕掛品勘定に、間接経費として処理する場合は製造間接費勘定に振り替えます。
コメント
■はじめまして
こんにちは
仕損なんていう仕訳があるのですね。
勉強になりました!!
おはずかしながらTKCで複式簿記を
記帳して8年にもなる零細企業の
経営者です。
また、勉強させて頂きます。
コメントありがとうございます。
仕損は製造業を営んでいる工業簿記でしか出てこない仕訳ですね。私もほとんど見かけません。
経営者の方なら簿記の知識は必須ですね。ぜひ参考になさってください。