借入有価証券とは【仕訳と会計処理をわかりやすく】

  • 簿記を勉強していると借入有価証券っていう勘定科目が出てくるんだけど……
  • 借入有価証券と普通の有価証券との使い分けが分からない
  • 借入有価証券について教えて!

借入有価証券は少し細かい論点なので、突然出題されると戸惑ってしまう方が非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん借入有価証券についても熟知しています。

この記事では借入有価証券について解説します。

この記事を読めば借入有価証券についてより深くできるので、簿記1級で借入有価証券が出題されても自信を持って解答することができます。

結論を言うと、借入有価証券とは借り入れた有価証券のことです。借り入れた有価証券を「市場で売却する」「借り入れた有価証券を担保にお金を借りる」ことで資金を調達します。

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借入有価証券の仕訳

有価証券を借り入れた

例題

当社は取引先が所有している株式(帳簿価額600,000円、時価700,000円)を借り入れた。

この例題の仕訳について考えてみます。

有価証券を借り入れたことで、手許の有価証券が増加します。しかし、売買目的有価証券などといった勘定科目を使うと、自社で所有している有価証券と帳簿上混ざってしまいます。

そこで『保管有価証券』という勘定科目を使います。有価証券という財産なので資産の勘定になります。

保管有価証券の金額は時価で仕訳します。よって『(借)保管有価証券700,000』となります。

次は貸方です。有価証券を借り入れたことで、有価証券を返す義務が発生します。有価証券を返す義務を『借入有価証券』という勘定科目で表します。

借入有価証券の金額は時価で仕訳します。よって『(貸)借入有価証券700,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
保管有価証券700,000借入有価証券700,000

借入有価証券の金額が時価である2つの理由

貸付有価証券は帳簿価額なのになぜ借入有価証券の金額は時価なのでしょうか。理由は次の2つです。

  • そもそも他社の帳簿価額は分からないから
  • 有価証券を紛失した場合の損害賠償金額に近いのは時価だから

上の例題では時価を使うか帳簿価額を使うかの理解を問うためにあえて帳簿価額を書いていますが、実際には他社の帳簿価額は分かりません。そのため帳簿価額を使って記帳することはできません。

また、借入有価証券は先方に返す義務があります。もし借入有価証券を紛失した場合には、当社が買いなおして返さなければなりません。

そう考えると、買いなおすときに必要な金額を負債として計上しておくほうが合理的です。

買いなおすときに必要な金額は買い直すときにならなければ分かりません。しかし。取引した時点で「買いなおすときに必要な金額」に近いのは帳簿価額よりも時価です。そのため時価で記帳する方が合理的だといえます。

このような理由により、借入有価証券の金額は時価ということになります。

借入有価証券の金額が時価になるという考え方は預り有価証券と似ています。

【応用】有価証券の貸付(借入)の2種類の契約

有価証券を貸し付ける(借り入れる)ときには「消費貸借契約」と「使用貸借契約」の2種類の契約があります。

正確には有価証券に限った話ではなく、すべての貸し借りについて言えます。本題から逸れるのでこの記事では有価証券に限定して解説します。

消費貸借契約:消費することを前提で貸し借りする契約

消費貸借とは、消費することを前提で貸し借りする契約です。身近な例では「乾電池を借りる」などが消費貸借にあたります。

乾電池を借りた場合、通常はその電池を消費して、返すときには新しい乾電池を買って貸してくれた人に返します。消費した電池をそのまま返すわけにはいきません。

このように「借りたものと別のものを買って返す」という形の貸し借りが消費貸借です。

有価証券の消費貸借契約では、借主はその有価証券を自由に売却することができます。返すときには買いなおして返せばいいのです。

有価証券には番号が書かれていますが、「同一番号の有価証券を返す必要がない」という契約だからです。

有価証券を消費貸借契約で借りた場合、通常はその有価証券を売却して現金化し、資金繰りに役立てます。そして返却日には市場から買いなおして貸主に返します。

消費貸借契約の場合、有価証券の貸し手はその有価証券の所有権(自分のものとする権利)を失うので配当金を受け取ることはできません。

配当金を受け取ることができない分、使用貸借契約より金利(貸借料)が高くなります。

使用貸借契約:使用することを前提で貸し借りする契約

使用貸借とは、使用することを前提で貸し借りする契約です。身近な例では、「本を借りる」などが使用貸借にあたります。

本を借りた場合、通常はその本を読んで、全く同じその本を返します。同じタイトルの本をわざわざ買いなおして返すことは破損してしまったりしない限りはしません。

このように「借りたものをそのまま返す」という形の貸し借りが使用貸借です。

有価証券の使用貸借契約では、借主はその有価証券を売却するわけにはいきません。有価証券には番号が書かれていますが、「同一番号の有価証券を返す必要がある」という契約だからです。

有価証券を使用貸借契約で借りた場合、通常はその有価証券を担保に現金を借りて資金繰りに役立てます。そして返却日には担保にしている有価証券を返してもらって貸主に返します。

使用貸借契約の場合、有価証券の貸し手は有価証券の所有権を失わず、占有権だけを失います。

占有権とは「自由に取り扱う権利」のことです。

所有権は失わないため、貸し手は配当金を受け取ることができます。配当金を受け取ることができる分消費貸借契約より金利(貸借料)が低くなります。

【まとめ】借入有価証券:借り入れた有価証券

借入有価証券とは借り入れた有価証券のことです。借入有価証券は時価で仕訳を切ります。

例題

当社は取引先が所有している株式(帳簿価額600,000円、時価700,000円)を借り入れた。

借方金額貸方金額
保管有価証券700,000借入有価証券700,000

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