のれんの取引と仕訳
- 投稿日:2016年1月11日 |
- 最終更新日:2016年9月19日 |
- カテゴリ:商業簿記2級
こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事ではのれんの取引と仕訳について解説します。
のれん
のれんとは何でしょうか。のれんを理解するために、定食屋を買収する場合を考えてみましょう。ちなみに、買収とは買うことです。
駅前の定食屋はとても繁盛していましたが、店主が年齢的に営業するのがきつくなったため、この定食屋を売ろうと考えています。そこへ今から定食屋を開店したい当社がその店を売って欲しいと店主に申し出ました。
ちなみに、この定食屋は次のような状況で経営しています。
- 現金…1,000,000円
- 建物…2,000,000円
- 土地…5,000,000円
- 備品…1,000,000円
また、借入金での資金調達はせずに、全額資本金で経営しています。この場合、貸借対照表は右のようになります。
この定食屋を買収する場合、資産だけを考えれば次の資産を購入するのと同じことになります。
- 現金…1,000,000円
- 建物…2,000,000円
- 土地…5,000,000円
- 備品…1,000,000円
これらの資産を購入するのに必要な資金は(1,000,000円+2,000,000円+5,000,000円+1,000,000円)=9,000,000円です。資産だけなら、9,000,000円で買うことができるということです。
しかし、この定食屋の店主が9,000,000円でこの定食屋を売るでしょうか。この定食屋は繁盛しています。お客さんがきちんとついています(リピーターがいるということです)。そのお店を資産価値だけで売却するとは考えられません。9,000,000円+αの価格で売却しようとするでしょう。
また、この定食屋を買収しようとしている当社としても、9,000,000円という資産の価値しかない定食屋をわざわざ買う必要もありません。資産の価値しかない定食屋を買うくらいなら、それぞれ別々に建物や備品を購入した方が自分好みの定食屋にすることができます。
そうせずにこの定食屋を買収しようとするということは、資産以上の何か価値があると考えているということになります。
ちなみに、この資産以上の価値があると考えるということは、別々に建物や備品などの資産を購入して店を出す収益よりも買収した店の方が収益が大きいと考えているということと同じ意味です。
この「より大きい収益を出す力」のことを超過収益力と言います。この超過収益力が期待できるから実際の資産以上のお金を出してでも買収しようと考えるのです。
そこで、この定食屋を10,000,000円で買収するということで店主と合意することができました。この場合の資産以上の価値は「10,000,000円-9,000,000円=」1,000,000円ということになります。
この1,000,000円がのれんということになります。のれんは借方(手に入れた資産)と貸方(支払った対価)の差額で求まります。
のれんの会計処理
買収したときに資産価値以上に支払った金額をのれんで表しますが、のれんの法定耐用年数は20年です(この年数は覚えましょう)。20年以内の月割計算で償却しなければなりません。
のれんという無形固定資産は法律上の権利を表す特許権や実用新案権、意匠権、商標権、著作権、借地権などと違って売却することはできません。
売却することができないということは資産として価値があることすら疑わしいです。資産として価値が疑わしいのであれば、買収時に全額費用として計上するということも考えられます。
しかし、買収したことで超過収益力が発生します。この超過収益力による収益の増加は買収以降の会計年度にもずっと続いていきます。それを全て当期の費用とすると費用収益対応の原則から考えると筋が通りません。
そこで、あいだをとって20年で償却するということになっています。超過収益力も無限に続くことはなく、徐々に衰えていくと考えることもできます。売却できない資産価値がないものをずっと資産として計上しておくこともありません。落ち着くところに落ち着いたという感じです。
また、無形固定資産全てについて言えることですが、直接控除法(有形固定資産の減価償却でいう直接法)・定額法・残存価額0で償却します。
のれんの取引と仕訳
のれんの取得
「当社はA社を買収し、小切手10,000,000円を振り出して支払った。A社の資産は現金1,000,000 円、売掛金2,000,0000、建物3,000,000円、土地7,000,000、備品2,000,000円、負債は買掛金3,000,000円、借 入金5,000,000円である。」場合の仕訳について考えてみましょう。
この場合のA社の貸借対照表は右のようになります(資産と負債の差額は全額資本金としておきます)。
純資産7,000,000円(総資産15,000,000円-総負債8,000,000円)のA社を10,000,000円で買収しています。
よってのれんは3,000,000円(10,000,000円-7,000,000円)となります。
資産は現金1,000,000円、売掛金2,000,0000、建物3,000,000円、土地7,000,000、備品2,000,000円、負債は買掛 金3,000,000円、借入金5,000,000円を手に入れています。
なので『(借)現金1,000,000』『(借)売掛金2,000,000』 『(借)建物3,000,000』『(借)土地7,000,000』『(借)備品2,000,000』『(貸)買掛金3,000,000』『(貸)借入金 5,000,000』となります。
また、当座預金10,000,000円を振り出しているので『(貸)当座預金10,000,000』となります。ここまでの借方合計は15,000,000円、貸方合計は18,000,000円となっています。この貸借差額の3,000,000円がのれんとなります。よって『(借)のれん3,000,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 売掛金 建物 土地 備品 のれん |
1,000,000 2,000,000 3,000,000 7,000,000 2,000,000 3,000,000 |
買掛金 借入金 当座預金 |
3,000,000 5,000,000 10,000,000 |
のれんの償却
「上記ののれんを法定耐用年数20年間で償却する」場合の仕訳について考えてみましょう。
のれん3,000,000円が20年間で償却されます。また、無形固定資産は定額法しか使いません。無形固定資産は残存価額は0なので、金額は「3,000,000÷20=」150,000円となります。
無形固定資産の償却方法は直接控除法(有形固定資産の減価償却でいう直接法)なので、のれんを直接減額します。よって、『(貸)のれん150,000』となります。
次は借方です。のれんを償却しているので、この償却費は『のれん償却』という勘定科目を使います。よって、『(借)のれん償却150,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
のれん償却 | 150,000 | のれん | 150,000 |
このページを読まれた方にお勧めの記事はこちら
- 「簿記2級」の次の記事を読みたい方は自社利用目的のソフトウェアの取引と仕訳へ
- 簿記革命2級に興味がある方は簿記2級通信講座 | 簿記革命2級へ
- 特許権に興味がある方は特許権の取引と仕訳へ
- 実用新案権に興味がある方は実用新案権の取引と仕訳へ
- 意匠権に興味がある方は意匠権の取引と仕訳へ
- 商標権に興味がある方は商標権の取引と仕訳へ
- 著作権に興味がある方は著作権の取引と仕訳へ
- 借地権に興味がある方は借地権の取引と仕訳へ
初めてコメントさせて頂きます。
のれんと覚えれば難しくはないんでしょうが、のれんとは
何なのかよくわからないと思っていたんで
よく理解できました。ありがとうございます。
コメントありがとうございます。お役に立てて嬉しいです。簿記の勉強応援しています。