連結財務諸表の作成における支配獲得日の会計処理

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では連結財務諸表の作成における支配獲得日の会計処理について解説します。

連結貸借対照表の作成

連結会計は、「株式を取得することによって親会社と子会社の関係になった日」から始まります。この「株式を取得することによって親会社と子会社の関係になった日」のことを「支配獲得日」といいます

支配獲得日には、連結貸借対照表のみを作成します(支配を獲得した日には「連結会計期間」が存在しないので、連結損益計算書や連結株主資本等変動計算書は作れないからです)。

支配獲得日における連結貸借対照表は、次の手順で作成します。

  1. 親会社と子会社の個別貸借対照表を合算する(支配獲得日が子会社の決算日と異なる場合には、支配獲得日の前後どちらかの決算日に取得したとみなして会計処理を行うことができます)
  2. 連結修正消去仕訳を行う

このときに必要な連結修正消去仕訳は次の2つです。

  1. 子会社の資産と負債の評価
  2. 投資と資本の相殺消去

会計処理の順序は1が先なのですが、この会計処理は難易度が高いので簿記1級の範囲となっています。そこで、簿記2級では1の会計処理は不要なものとして考えていきます。

※1では子会社の資産と負債を時価で評価します。なので子会社の資産と負債の帳簿価額と時価が同じ場合は1の処理は不要となります。簿記2級では子会社の資産と負債の帳簿価額が時価と同じだと仮定して連結会計を学習していきます。

投資と資本の相殺消去

支配獲得日の連結貸借対照表は、まずは「親会社の個別貸借対照表」と「子会社の個別貸借対照表」を単純に合算して作成します

この「単純に合算された連結貸借対照表」には、借方に子会社への出資を表す子会社株式が、貸方に親会社からの出資を表す資本金などの株主持分が計上されています。図で表すと次のようになります。

投資と資本の相殺消去

子会社株式」と「資本金などの株主持分」は連結貸借対照表では、企業集団内の取引にあたるので消去しなければなりません(自分で自分に投資していることになるからです。消去しないと借方と貸方が実際以上に大きな金額になってしまいます)。

この「親会社の投資」と「子会社の資本」を相殺消去することを「投資と資本の相殺消去」と言います(相殺消去せずに投資と資本が計上されている状態を「投資と資本の二重計上」と言います)。

「投資と資本の相殺消去」をするためには、借方に親会社から出資された子会社の資本を、貸方に子会社への出資を表す子会社株式を記入する仕訳を行います。

投資と資本の相殺消去のパターン

投資と資本の相殺消去の最も単純なパターンは次の場合です。

  • 投資と資本が同額となる対価で支配を獲得する(「のれん」なし)
  •  議決権の100%を取得して支配を獲得する(完全子会社)
  • 「子会社の資産と負債の帳簿価額」が「時価」と同じ

逆に言えば、投資と資本の相殺消去の仕訳は次のようなことが起こることで複雑になっていきます。

  • 投資と資本の金額が異なる対価で支配を獲得する(「のれん」または「負ののれん」があるということです)
  • 議決権の100%を取得せずに支配を獲得する(この場合、子会社に親会社以外の株主(非支配株主)が存在します)
  • 「子会社の資産と負債の帳簿価額」が「時価」と異なる(このパターンについては簿記1級で学習します)

さまざまなパターンについて考えていきましょう。

投資と資本が同額で議決権の100%を取得した場合

親会社が他の企業の議決権の100%を取得して子会社とした場合は、子会社の資本の全てを親会社の投資と相殺消去します。投資と資本が同額であれば貸借に差額は発生しません。

投資と資本の金額が異なる対価で支配を獲得する場合

親会社が他の企業の議決権の100%を取得して子会社とした場合は、子会社の資本の全てを親会社の投資と相殺消去します。

このとき、投資と資本の金額が一致しないことがあります(実際は、「100%出資して新たに子会社を設立する場合」くらいしか投資と資本が一致することはありません)。

投資と資本の金額が一致しないということは、投資と資本の相殺消去したときに貸借差額が発生するということです。

この差額が借方に発生した場合、それは子会社の純資産以上の対価を支払って支配を獲得したということなので「のれん」になります(これまで学習したのれんと同じように、無形固定資産として計上し、20年以内に償却します)。

逆に、この差額が貸方に発生した場合、それは子会社の純資産以下の対価で支配を獲得したということなので「負ののれん」になります。

※これまで学習した「負ののれん」と同じように、発生時の特別利益として処理します。ただし、支配獲得日には連結損益計算書は作成しないので、特別利益を計上することができません。そこで、この場合の特別利益は連結貸借対照表の「利益剰余金」の増加として処理します。

議決権の100%を取得せずに支配を獲得する場合

いつも議決権の100%を取得して支配を獲得するとは限りません。子会社の議決権の一部を取得して支配を獲得することもありえます。この場合、子会社の株式は親会社以外にも保有されることになります。

子会社の「親会社以外の株主」のことを非支配株主と言い、非支配株主が保有する持分のことを非支配株主持分と言います

非支配株主がいる場合、非支配株主が保有している持分を連結会計でどのように扱うのかについて「親会社説」と「経済的単一体説」の2つの考え方があります。

親会社説

連結財務諸表を親会社の個別財務諸表の延長線上にあるものと位置づける考え方が親会社説です(「親会社の個別財務諸表に子会社の会計情報を付け足したものが連結財務諸表だと考える」と言うこともできます)。

親会社説では、子会社のうち親会社の持分のみが資本とされ、非支配株主の持分は資本ではないとみなされます。

経済的単一体説

連結財務諸表を企業集団全体の財務諸表だと位置づける考え方が経済的単一体説です。経済的単一体説では、企業集団の全ての資本が連結財務諸表の資本とされます。よって非支配株主持分も資本とされるということになります。

現在の連結財務諸表は親会社説を採用しています(連結財務諸表は「親会社の株主」や「親会社への投資を考えている投資者」に会計情報を提供するのが主な目的だからです)。

なので子会社に非支配株主持分がある場合は、子会社の資本の中の非支配株主持分を資本の勘定から控除して非支配株主持分としなければなりません

具体的には、非支配株主持分は株主持分とは区別して、連結貸借対照表の純資産の部の一番下に表示します。

次回以降、投資と資本の相殺消去の仕訳の具体例を学習していきます。

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