企業実体の公準

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。会計公準とはの予告通り、今回は会計公準の1つ目、企業実体の公準からお伝えしていきます。

企業実体の公準

私たちが学習している会計(財務会計)では、資金を預かったものの立場で会計を行います。資金を預かる側が借り入れている場合は「借入金」、資金を預かる側が給料を支払う場合は「給料」というような形です。

この「資金を預かったものの立場」には、一般的には経営者があたります。

ここで簿記3級で学習する「個人事業主」を考えてみましょう。個人事業主の場合、「個人(家計)」と「事業」が一致していることが多く、実態としてはほとんど分かれていないこともあります。

ですが、このような場合であってもあくまでも「経営者の立場」で会計を行います。これが企業実体の公準です。

企業実体の公準は「出資者」と「企業」を明確に区分する公準であるということもできます。

例えば、個人事業主が自宅を事務所として開業した場合を考えてみましょう。その自宅の家賃は自宅の所有者「個人」が支払います。ですが、その自宅のうち例えば30%を事務所として使っているのであれば、その30%分は「経営者」の立場で企業が支払ったと考えて記録します。

家賃が¥100,000だった場合、次のような仕訳になります。

家賃を「個人の財布」から支払った場合

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 30,000 資本金 30,000

事業の費用を「個人」に立替払いしてもらったことになるので、その分を「個人」からの出資と考えます。

家賃を「事務所の金庫」から支払った場合

借方 金額 貸方 金額
支払家賃
資本金(引出金)
30,000
70,000
現金 100,000

個人の家賃¥70,000分を事務所が立替払いしていることになるので、その分を「個人への出資の払い戻し」と考えます。

また、個人事業主が所得税を支払った場合は、たとえ事務所の金庫から支払ったとしても「個人」が支払ったものとして会計処理を行います(所得税は個人が支払うものだからです)。

資本金(引出金)の取引と仕訳

所得税が¥100,000だった場合、次のような仕訳になります。

個人事業主の所得税を「事務所の金庫」から支払った場合

借方 金額 貸方 金額
資本金(引出金) 100,000 現金 100,000

個人事業主の所得税を「個人の財布」から支払った場合

借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

事業とは無関係だから「仕訳なし」です。

租税公課の取引と仕訳

このように「個人」としての取引と「事業」としての取引を明確に区別して記帳します。なので例えば「個人」として借りたお金を「事業」に出資すれば出資(資本金)として記録しますし、「事業」として借りれば借入金として記録します。

実体とは…

実体とは「本体」のことで、企業実体とは企業の本体のことです。企業実体の公準とは、この企業実体を「経営者個人」から切り離した「企業そのもの」として行うという前提だと言えます。

この企業実体については次の2つの考え方があります。

  • 法的実体
  • 経済的実体

法的実体

法律上、独立して存在している実体を「法的実体」と言います。この考え方に立てば、「親会社」と「子会社」は別の企業実体として区別されます。法的実体を重視して作られた財務諸表が「個別財務諸表」だと言えます。

経済的実体

法的には独立していても、経済的な実質で見ると1つのグループである場合、そのグループをまとめて1つの企業実体だと考えることができます。このような実体を「経済的実体」と言います。この考え方に立てば、「親会社」と「子会社」はまとめて一つの企業実体です。

経済的実体を重視して作られた財務諸表が「連結財務諸表」だと言えます。近年、簿記2級の出題範囲に連結会計が含まれるようになってきたことから分かるように、経済的実体を重視した連結会計が社会的にも重視されています

企業実体の公準が意味する会計の限界

企業実体の公準とは、企業は出資者から独立した実体として考えるという公準です。なので出資者と企業が実質的には分離していない個人事業主には無理やり適用しているのが現状です。

先ほどの例で「自宅の30%を事務所として使っている」と仮定しましたが、これはあくまでも仮定で実態を表しているとは言えないのです。

自宅を事務所として使っている場合、同じことが「水道光熱費」「通信費」「消耗品」「備品」など多くのことにあてはまります。出資者と企業が実態として分離していない場合、企業実体の公準により無理やり区別すると会計情報は非常に不正確になってしまうのです。

これが現在の会計における限界の1つです。

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