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連結決算に含む子会社の範囲

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  • 簿記を勉強していると連結会計が出てくるんだけど……
  • どういった会社を連結財務諸表に含めたらいいのか分からない
  • 連結決算に含む子会社の範囲について教えて!

連結会計は簿記2級の中でも非常に難しくて複雑なので連結会計を苦手にしてしまう方が非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん連結決算に含む子会社の範囲についても熟知しています。

この記事では連結決算に含む子会社の範囲についてわかりやすく解説します。

この記事を読めば連結決算に含む子会社の範囲についてより深く理解できるので、簿記2級の連結財務諸表の勉強をスムーズに進めることができるようになります。

結論を一言で言うと、連結決算に含むのは原則として「議決権の過半数を保有している子会社」です。

例外的に「議決権の40%以上50%以下を保有している子会社」「同じ意見で議決権を行使する者と合わせると過半数の議決権を保有することになる子会社」でも子会社に含む場合があります。

この記事の内容を理解するためには連結財務諸表について理解していることが必要です。

連結財務諸表については「【簿記】連結財務諸表とは何かわかりやすく」で詳しく解説しています。

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  1. 連結決算に含む子会社の範囲
    1. 議決権の過半数を保有している場合:原則として子会社に含める
      1. 株主総会で思い通りに意思決定できない場合は子会社に含まない
      2. 支配が一時的であると認められる場合は子会社に含まない
      3. 子会社とすると利害関係者の判断を誤らせるおそれがある場合は子会社に含まない
      4. 小規模な企業である場合は子会社に含まなくてもよい
    2. 議決権の40%以上50%以下を保有している場合:例外的に子会社に含む場合がある
      1. 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合は例外的に子会社に含む
      2. 「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合は例外的に子会社に含む
      3. 意思決定を支配する契約がある場合は例外的に子会社に含む
      4. 巨額の融資を行っている場合は例外的に子会社に含む
      5. これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合も例外的に子会社に含む
    3. 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合
  2. 「支配の形式」ではなく「支配の実質」を重視する理由は粉飾決算を防ぐため
  3. 連結会計に含める子会社の範囲の具体例
    1. 通常の議決権保有による支配の場合
    2. 「同じ意見で議決権を行使する者」がいる場合
    3. 孫会社の場合
    4. 議決権割合以外に考慮すべきことがある場合
  4. 【まとめ】連結決算に含む子会社の範囲

連結決算に含む子会社の範囲

親会社は、原則として全ての子会社を連結の範囲に含めて連結財務諸表を作成しなければなりません。

利益が出ている子会社だけを連結の範囲に含めて、損失が出ている子会社は連結から外すといった会計処理は認められないということです。

親会社とは他の企業の意思決定機関を支配している企業なのですが、「他の企業の意思決定機関を支配している企業」の判断は次の3つのどれなのかによって変わってきます。

  • 議決権の過半数を保有している場合
  • 議決権の40%以上50%以下を保有している場合
  • 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有することになる場合

それぞれの場合について詳しく見ていきましょう。

議決権の過半数を保有している場合:原則として子会社に含める

他の議決権の過半数を保有している場合は、原則として「意思決定機関を支配している」と判断します。

株主総会の普通決議は過半数で議決を行うので、過半数の議決権を持っていれば自分の思い通りに決定できるからです。

ただし、議決権の過半数を保有していても子会社としない場合も例外ですがあります。

議決権の過半数を保有していても子会社としない会社を非連結子会社と言います。

次の4つのうちいずれかに当てはまる場合は非連結子会社となります。

  • 株主総会で思い通りに意思決定できない場合
  • 支配が一時的であると認められる場合
  • 子会社とすると利害関係者の判断を誤らせるおそれがある場合
  • 小規模な企業である場合

小規模な企業は「子会社に含めてはいけない」というわけではありません。あくまでも「子会社に含めなくてもよい(含めてもよい)」ということです。

一つずつ詳しく学習していきます。

株主総会で思い通りに意思決定できない場合は子会社に含まない

過半数の議決権を保有していれば、通常は株主総会で思い通りに意思決定できます。

株主総会は株式会社の最高の意思決定機関だからです。株式会社の仕組みについては「【簿記】株式会社の仕組み【簡単な図でわかりやすく】」で詳しく解説しています。

ということは「議決権の過半数を保有していながら、株主総会で思い通りに意思決定できない場合」というのは通常であればありません。

「議決権の過半数を保有していながら、株主総会で思い通りに意思決定できない」ということが起こりえるのは、子会社が更正会社や破産会社になっている場合です。

更正会社とは、法律によって会社の事業維持や再建の手続きに入っている企業です。法律に従った手続きが優先され、事実上株主総会は機能しない状態になっています。

破産会社とは、倒産した会社です。会社の財産を債権者に分配する段階になっています。破産会社の株主総会は機能しません。

更正会社や破産会社のような状況になっていて、支配している状態とは言えない場合には「子会社」とはしません。

支配が一時的であると認められる場合は子会社に含まない

決算時に一時的に議決権の過半数を持っていただけで、通常は過半数の議決権を持っていない場合には「子会社」にはなりません。

もし決算のときにだけ議決権の過半数を持っていても子会社となるのであれば、決算時に株式を買い足すことによって利益が出ている企業のみを連結財務諸表に含めることができてしまうからです。

「利益が出ている企業のみを連結財務諸表に含める」という不正を防ぐため、一時的な支配は子会社とは認めないことになっています。

子会社とすると利害関係者の判断を誤らせるおそれがある場合は子会社に含まない

「子会社とすると利害関係者の判断を誤らせるおそれがある場合」には、「形式的な支配」と「実質的な経済的利益の受取」がかけ離れている場合があてはまります。

例として「子会社が匿名組合である場合」があります。

子会社には会社だけでなく組合もなることができます。

匿名組合とは匿名組合員(出資者)が営業者の営業のための出資をし、その営業から得られる利益は匿名組合員(出資者)に分配する契約の組合です。

図で表すと次のようになります。

匿名組合のイメージ

匿名組合は「投資信託」などを思い浮かべるとイメージしやすいです。

投資信託は出資者から預かった資金を運用して利益を上げ、出資者に分配します。投資信託自体の利益は「運用手数料」などです。

運用による利益は投資信託のものではありません。

また、出資者は出資してはいるのですが株主ではありません。

ここまでの内容の「投資信託」を「営業者」と読み替えれば匿名組合になります。

匿名組合を親会社が設立した場合、次のようになります。

子会社が匿名組合である場合のイメージ

親会社が営業者を設立しているので、営業者は子会社です。また、匿名組合員は出資者ですが株主ではないので、一般的な匿名組合では、営業者(子会社)は完全子会社になります。

全ての株式を親会社が保有している会社を完全子会社といいます。

匿名組合の場合、匿名組合員(出資者)が出資した財産は法律的には営業者の財産となります。

実は「出資した財産は法律的には営業者の財産」という部分は「投資信託」とは異なります。投資信託は出資した財産の所有権は出資者にあります。

しかし、匿名組合で得られる利益は親会社のものではなく、匿名組合員(出資者)のものです。

親会社も利益の分配を受けますが、分配を受ける利益は「運用による利益」ではなく「運用手数料」などです。

このような場合に、匿名組合を連結財務諸表に含めてしまうと、匿名組合の純資産や利益が親会社のものであるような誤解をさせてしまいます。

こういった事情があるので匿名組合は連結財務諸表には含めません。

これが「形式的な支配」と「実質的な経済的利益の受け取り」がかけ離れている場合の例です。

利益が匿名組合員(出資者)に分配された後であれば、利益が親会社のものだと誤解されることはありません。

利益が親会社のものだと誤解されるのは「決算時にはまだ利益を匿名組合員(出資者)に分配していない場合」です。

小規模な企業である場合は子会社に含まなくてもよい

子会社となる会社が親会社と比べて極めて小規模である場合、子会社としなくてもよいことになっています。

連結の手続きは煩雑なので、小規模なら省略してもよいということです。

議決権の40%以上50%以下を保有している場合:例外的に子会社に含む場合がある

議決権が50%以下であれば、原則的には支配しているとは言えません。株主総会を思い通りに決定できないからです。

しかし、次の5つのうちのどれかにあてはまる場合には支配していると認められます。

  • 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合
  • 「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合
  • 意思決定を支配する契約がある場合
  • 巨額の融資を行っている場合
  • これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合

「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合は例外的に子会社に含む

例えば、45%しか議決権を持っていなくても、自分と同じ意見で議決権を行使する者が10%の議決権を持っていれば、支配しているとみなすということです。

合計すれば55%の議決権を持っていることになり、意思決定を支配できるからです。

「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合は例外的に子会社に含む

取締役などの重要な地位の過半数を親会社が送り込んだ人が占めている場合は、支配しているとみなすということです。

株主総会では過半数にわずかに届かない状態で、株式会社を実際に動かしている取締役会などを事実上支配していれば、支配していると考えるのが自然です。

意思決定を支配する契約がある場合は例外的に子会社に含む

意思決定を親会社が行うという内容の契約がある場合、支配しているとみなします。

巨額の融資を行っている場合は例外的に子会社に含む

巨額の融資を行っている場合、融資者の発言力はかなり強いです。

巨額の融資とは、負債の部に計上されている資金調達額のほとんどを占めていることを意味します。また、融資には、債務の保証や担保の提供も含みます。

議決権が過半数にわずかに届かない状態で巨額の融資を行っていれば、支配していると考えるのが自然です。

これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合も例外的に子会社に含む

上の4つに限定しているわけではないという意味の一文です。

「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合

「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有することになる場合は「議決権の40%以上50%以下を保有している場合」と同じように考えます。

具体的には次の4つのどれかを満たせば、子会社だとみなします。

  • 「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合
  • 意思決定を支配する契約がある場合
  • 巨額の融資を行っている場合
  • これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合

内容は「議決権の40%以上50%以下を保有している場合」と同じです。

子会社の範囲について細かい規定を覚える必要はありません。

「議決権の保有割合という形式的な問題ではなく、実質的に意思決定を支配しているかを重視している」という考え方を押さえておくことが大切です。

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「支配の形式」ではなく「支配の実質」を重視する理由は粉飾決算を防ぐため

これまでの内容からわかる通り、連結財務諸表に子会社を含むかどうかは「株式保有割合」といった支配の形式ではなく「実際に支配しているか」という支配の実態をもとに判断します

粉飾決算で非常に使われやすいのが子会社で、粉飾決算で子会社を使うのに最も便利な状況が「実質的には支配していて子会社なのに、形式的には子会社ではない」という状況だからです。

このような子会社に「商品評価損が出ている商品を売る」「商品を定価よりも高い価格で売る」「時価よりも高く固定資産を売る」などを行うことで親会社の利益をどんどん大きくすることができてしまい、無法地帯になってしまいます。

こういった事情から「連結財務諸表に関する会計基準」では実質的な子会社は全て連結財務諸表に含めることになっています。

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連結会計に含める子会社の範囲の具体例

通常の議決権保有による支配の場合

例題

当社はA社の議決権の60%を、B社の議決権の50%を保有している。なお、議決権の保有割合以外に考慮すべきことはない。

この例題においてA社とB社が「連結会計に含める子会社」にあたるかどうか考えてみましょう。

通常の議決権保有による支配の問題です。議決権のみで判断できる場合は過半数の議決権を保有しているかどうかがポイントです。

支配関係を図で表すと次のようになります。

通常の議決権保有

A社の議決権を60%保有しているので、A社は子会社です。対して、B社の議決権は50%しか保有していないので、B社は子会社ではありません。

過半数とは文字通り「半数」を「過」ぎた数です。半数ちょうどである50%は過半数とは言いません。

「同じ意見で議決権を行使する者」がいる場合

例題

当社はA社の議決権の60%を、B社の議決権の20%を保有している。また、A社はB社の議決権の40%を保有している。なお、議決権の保有割合以外に考慮すべきことはない。

この例題においてA社とB社が「連結会計に含める子会社」にあたるかどうか考えてみましょう。支配関係を図で表すと次のようになります。

同じ意見で議決権を行使

A社の議決権の60%を保有しているので、A社は子会社になります。

B社の議決権は20%しか保有していないので、これだけの情報だった場合はB社は子会社にはなりません。しかし、この例題では子会社であるA社が40%の議決権を保有しています。

よって、当社はB社の議決権の(当社の議決権保有割合20%+A社の議決権保有割合40%=)60%を支配しているのと同じになります。

(当社のB社議決権保有割合20%+当社のA社議決権保有割合60%×A社のB社議決権保有割合40%=)44%という計算にはならない点に注意が必要です。

A社を支配しているので、A社の議決権は100%親会社と同じ判断を行います。60%をかける必要はないのです。

よってB社も子会社になります。

孫会社の場合

子会社の子会社を孫会社と言います。孫会社という名前は正式な名前ではありませんが、一般的によく使われます。

例題

当社はA社の議決権の70%を、A社はB社の議決権の60%を保有している。なお、議決権の保有割合以外に考慮すべきことはない。

この例題においてA社とB社が「連結会計に含める子会社」にあたるかどうか考えてみましょう。

支配関係を図で表すと次のようになります。

孫会社

A社の議決権の70%を保有しているので、A社は子会社になります。

また、当社はB社の株式を保有していませんが、子会社であるA社が議決権の過半数を保有しています。この場合、間接的に当社がB社を支配していると言えるので、B社も子会社と言えます。

議決権割合以外に考慮すべきことがある場合

例題

当社はA社の議決権の60%を、B社の議決権の50%を保有している。なお、A社に対する支配は一時的なものであり、また、当社の役員がB社の取締役の過半数を継続して占めている。

この例題においてA社とB社が「連結会計に含める子会社」にあたるかどうか考えてみましょう。

議決権の保有割合以外にも考慮すべきことがある場合の問題です。支配関係を図で表すと次のようになります。

取締役の過半数を占める

当社はA社の議決権の過半数を保有していますが、その保有は一時的なものとなっています。保有が一時的な場合、子会社とは認められません。

また、当社はB社の議決権について、過半数には届かないけれど40%以上の議決権を持っている状態です。

40%以上の議決権を持っている状態で取締役会を支配しているのであれば、実質的には支配していると言えます。よってB社は子会社だと認められます。

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【まとめ】連結決算に含む子会社の範囲

子会社に含むかどうかの判断は次の3つのどれなのかによって変わってきます。

  • 議決権の過半数を保有している場合
  • 議決権の40%以上50%以下を保有している場合
  • 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有することになる場合

議決権の過半数を保有している場合は原則として子会社に含めます。子会社に含めない場合は次の4つです。

  • 株主総会で思い通りに意思決定できない場合
  • 支配が一時的であると認められる場合
  • 子会社とすると利害関係者の判断を誤らせるおそれがある場合
  • 小規模な企業である場合(含めてもよい)

「議決権の40%以上50%以下を保有している場合」は原則として子会社には含めません。子会社に含める場合は次の5つです。

  • 「同じ意見で議決権を行使する者」と合わせると過半数の議決権を保有する場合
  • 「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合
  • 意思決定を支配する契約がある場合
  • 巨額の融資を行っている場合
  • これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合

「同じ意見で議決権を行使する者と合わせると過半数の議決権を保有することになる場合」は「議決権の40%以上50%以下を保有している場合」と同様です。次の場合は子会社に含めます。

  • 「意思決定に影響を与える者」が取締役会などの人数の過半数を占めている場合
  • 意思決定を支配する契約がある場合
  • 巨額の融資を行っている場合
  • これら以外に意思決定機関を支配している証拠がある場合
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