- 連結会計を勉強していたら、債権と債務の金額が一致していない問題が出てきたんだけど……
- 未達取引がある場合の会計処理の方法が分からない
- 連結会計の債権債務の不一致の問題の解き方を教えて!
連結会計を勉強していると親会社と子会社で債権と債務が一致していない場合があります。このままだと相殺消去できないのでどうしたらいいのか分からなくて混乱してしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん連結会計で債権債務が一致していない場合の会計処理についても熟知しています。
この記事では連結会計で債権債務が一致していない場合の会計処理について未達取引を中心に解説します。
この記事を読めば債権債務が一致していない場合の会計処理についてより深く理解できるので、簿記2級の連結会計で債権債務が一致していない場合の会計処理に関する問題が出題されても自信を持って解答することができます。
結論を一言で言うと、債権債務が一致していない場合は、まず不一致の状態を解消してから債権と債務の相殺消去を行うことになります。
連結会計における不一致項目の処理
内部取引高や債権債務の金額が一致しない場合があります。金額が一致しない原因として「会計処理の不統一」と「未達取引」の2つが考えられます。
会計処理の不統一:会計処理を統一してから相殺消去を行う
親会社と子会社の間の会計処理の原則や手続に不統一がある場合、親会社の金額と子会社の金額が一致しないことがあります。
親会社と子会社の間の会計処理の原則や手続に不統一がある場合は、最初に会計処理を統一してから相殺消去を行う必要があります。
未達取引:未達取引の整理を行ってから相殺消去を行う
親会社と子会社の間で未達取引がある場合は、親会社の金額と子会社の金額が一致しません。
親会社と子会社の間で未達取引がある場合、連結修正消去仕訳として未達取引の整理を行い、そのあとに相殺消去を行います。
不一致項目の処理の仕訳
会計処理の統一
この例題において必要な会計処理の統一の仕訳を考えてみましょう。
会計処理の統一
まずは会計処理を一致させる必要があります。
当社は当期末の決算整理で平成×1年7月1日から平成×2年3月31日までの9ヶ月分の利息(貸付金2,000,000円×年利率5%÷12ヶ月×9ヶ月=)75,000円を未収収益として計上しています。
対してS社は現金基準なので仕訳を行っていません。会計処理に不一致があるので、子会社を発生基準にすることで一致させます。
子会社の会計処理を現金基準から発生基準に変更するので、子会社は支払利息を認識することになります。
よって『(借)支払利息75,000』、未払費用を認識するので『(貸)未払費用75,000』となります。
非支配株主持分の修正
子会社が支払利息を認識することによって支払利息という費用が75,000円増加し、利益が75,000円減少しています。
75,000円の利益の減少のうち非支配株主持分20%にあたる15,000円だけ非支配株主持分に負担させなければなりません。
非支配株主持分が15,000円減るので『(借)非支配株主持分15,000』となります。
また、その分費用を「非支配株主に帰属する当期純利益」とするので『(貸)非支配株主に帰属する当期純利益15,000』となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
支払利息 非支配株主持分 | 75,000 15,000 | 未払費用 非支配株主に帰属する当期純利益 | 75,000 15,000 |
未達取引の整理
この例題において未達取引の整理を行います。まずは前期末の未達取引についてです。
前期末の未達取引
前期末の未達取引が100,000円あるということは、当社は前期の売上として計上しているけれど、S社は当期の仕入として計上している金額が100,000円あるということです。
そこで、S社の当期の仕入(当期商品仕入高)を繰越商品(期首商品棚卸高)に修正することになります。
ただ、個別財務諸表が完成している段階ではどちらも「売上原価」に計算されてしまっています。
当期商品仕入高を期首商品棚卸高に振り替える仕訳を切っても『(貸)売上原価(当期商品仕入高)100,000』『(借)売上原価(期首商品棚卸高)100,000』という仕訳になるので『仕訳なし』となります。
当期末の未達商品
次は当期末の未達商品についてです。
当期末の未達取引が300,000円あるということは、当社は当期の売上として計上しているけれど、S社は当期の仕入として計上していない金額が300,000円あるということです。
S社が当期の仕入(当期商品仕入高)を認識しなければならないので『(借)売上原価(当期商品仕入高)300,000』となります。
また、商品の仕入が未達なのに具体的な代金の支払が行われているとは考えにくいので掛で仕入れたと考えます。よって『(貸)買掛金300,000』となります。
未達取引の商品300,000円は外部に売却されているはずがありません。期末商品になっているはずです。そこで、当期商品仕入高として計上した売上原価勘定を商品勘定に振り替えます。
『(貸)売上原価(期末商品棚卸高)300,000』『(借)商品300,000』となります。
売掛金と買掛金の不一致の修正
最後に売掛金と買掛金の不一致を修正します。当社のS社に対する当期末の売掛金は1,000,000円であるのに対し、S社の当社に対する買掛金は650,000円なので差額は350,000円です。
350,000円のうち300,000円は商品の未達取引の整理によって買掛金を認識したので、買掛金の決済の未達分は(当初の売掛金と買掛金の差額350,000円-認識した未達取引300,000円=)50,000円です。
買掛金50,000円の決済の未達は当社にとっては売掛金の回収の未達なので、売掛金を現金で回収した仕訳を切ることになります。よって『(貸)売掛金50,000』『(借)現金50,000』となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 商品 現金 | 300,000 300,000 50,000 | 買掛金 売上原価 売掛金 | 300,000 300,000 50,000 |
【まとめ】不一致項目の処理【未達取引など】
債権債務が一致していない場合は、まず不一致の状態を解消してから債権と債務の相殺消去を行うことになります。
債権債務の金額が一致しない原因として「会計処理の不統一」と「未達取引」の2つが考えられます。
親会社と子会社の間の会計処理の原則や手続に不統一がある場合は、最初に会計処理を統一してから相殺消去を行う必要があります。
親会社と子会社の間で未達取引がある場合、連結修正消去仕訳として未達取引の整理を行い、そのあとに相殺消去を行います。
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