有価証券報告書から見抜くブラック企業

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。ここ数年「ブラック企業」という言葉が生まれ、問題になっています。この記事では有価証券報告書からブラック企業を見抜く方法について考えてみましょう。

ブラック企業の定義

一言にブラック企業といっても、いろいろな意味で使われています。この記事ではブラック企業を「労働者の労働に対して、相応の給料を支払わない(支払えない)企業」と定義します。

ブラック企業を見抜く3つの指標

その企業がブラック企業か見抜くためには次の3つの指標が有効です。

  • 従業員一人あたり売上高=売上高÷従業員数
  • 従業員一人あたり人件費=人件費÷従業員数
  • 売上高に対する人件費の割合=人件費÷売上高

では、一つずつ見ていきましょう。

従業員一人あたり売上高

まず最初に見て欲しいのは「従業員一人あたりの売上高」です。これは売上高を従業員数で割ることで求めることができます。

売上高は連結財務諸表の売上高から、従業員数は「企業の概要」の連結経営指標にある従業員数(アルバイト含む)から求めます。

この「従業員一人あたり売上高」は「その企業が従業員に対して支払える対価の上限」を表します。あくまでもアルバイトを含めた従業員の平均なので、個別に見たときにそれ以上の対価を支払えないというわけではありません。

ですが、平均で「従業員一人あたり売上高」の対価を従業員に支払ってしまえば、その企業は人件費だけで赤字になるため、絶対にそのような対価を支払うことはありません

「従業員一人あたり売上高」は大きければ大きいほど、その企業がブラック企業である確率は下がります

従業員一人あたりの人件費

次に見て欲しいのは「従業員一人あたりの人件費」です。これは人件費を従業員数で割ることで求めることができます。

人件費は連結財務諸表の「製造原価(製造業の場合)」「販売費及び一般管理費(給料や賞与)」に含まれている金額を読みとります。従業員数は企業の概要の連結経営指標にある従業員数(アルバイト含む)から求めます。

この「従業員一人あたりの人件費」は文字通り、「現在従業員に支払っている人件費」を表します。あくまでもアルバイトを含めた従業員の平均なので、それ以上の対価を受けとっている場合もありえます。あくまでも平均です。

「従業員一人あたりの人件費」は大きければ大きいほど、その企業がブラック企業である確率格段に下がります

売上高に対する人件費の割合

最後に確認して欲しいのが「売上高に対する人件費の割合」です。「売上高に対する人件費の割合」は人件費を売上高で割ることで求めることができます。人件費と売上高はすでに読みとっています。

この「売上高に対する人件費の割合」は「売上高のうちいくらを人件費に回しているのか」を表します。企業は人件費以外にも材料や家賃、広告宣伝費など、多くの費用がかかるので売上高の全てを人件費に回すことはできません。

この割合は業種によっても変わってくるので、一概に「○%以下はブラック企業」だとは言えません。おおむね30%程度が目安になってくるかと思います。

総合的な判断

これらの3つの指標から企業を分類すると、次のようになります。

企業 従業員一人あたり売上高 売上高に対する人件費の割合 従業員一人あたり人件費
企業1
企業2
企業3
企業4

企業1

  • 従業員一人あたり売上高:高い(その企業の生産性が高い)
  • 売上高に対する人件費の割合:高い(正当な対価を従業員に対して支払っている)
  • 従業員一人あたり人件費:高い(結果)

理想的な企業です。生産性が高く、多くの売上を上げ、その売上の中から正当な割合を従業員に支払っています。結果として従業員は多くの対価を得ることになります。就職するならこのタイプの企業がベストです。

企業2

  • 従業員一人あたり売上高:高い(その企業の生産性が高い)
  • 売上高に対する人件費の割合:低い(正当な対価を従業員に対して支払っていない)
  • 従業員一人あたり人件費:普通(結果)

生産性が高く、多くの売上を上げているのですが、その売上の中から少ない割合しか従業員に支払っていません。結果として従業員は平均的な対価を得ることになります。

このような企業には次の2つのパターンがあります。

  • 業種的に人件費以外の費用がかかりすぎている
  • 人件費を削減して利益を増やしている

業種的に人件費以外の費用がかかりすぎている

このような企業は当期純利益率(当期純利益÷売上高)が低い傾向があります。もし当期純利益率が5%を切っている、もしくは赤字であるようなら、この企業にあてはまると思ってください。

つまりは、「利益がわずかしか出ていないから人件費に回せない」のです。これは「ブラック企業」というよりは「利益を出せない企業」だと言えます。

もしこのような企業に、たとえ法律上は認められているとしても、多くの対価を求めてしまうと企業の倒産が早まり自分の首を絞めてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。就職先としては好ましくないと言えます。

人件費を削減して利益を増やしている

このような企業は当期純利益率(当期純利益÷売上高)が高い傾向があります。もし当期純利益率が15%を上回っているのであれば、この企業にあてはまると思ってください。

このような企業がまさに「ブラック企業」で、利益を従業員に回さずに、「企業の内部留保」や「株主への配当」に回していると言えます。

もちろん、内部留保や配当に回すことが悪いというわけではありません。しかし、従業員に法律上は認められている対価を支払わないというのは論外です。積極的に働きかければ相応の対価を受け取れるようになる可能性はあります。

とはいえ、この「積極的な働きかけ」は現実的には難しい場合も多く、就職先としては好ましくないと言えます。

企業3

  • 従業員一人あたり売上高:低い(その企業の生産性が低い)
  • 売上高に対する人件費の割合:高い((正当な対価を従業員に対して支払っている)
  • 従業員一人あたり人件費:普通(結果)

生産性が低く、売上をあまり上げられていないのですが、その売上の中からできるだけ従業員に支払っている企業です。結果として従業員は平均的な対価を得ることになります。

このような企業は精一杯従業員に報いようとしているのですが、いかんせん、売上を上げる実力がないために多くを支払えない企業です。このような企業をブラック企業というのは少々酷だと感じます。

もしこのような企業に、たとえ法律上は認められているとしても、多くの対価を求めてしまうと企業の倒産が早まり自分の首を絞めてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。就職先としては好ましくないと言えます。

ただ、自分で企業の売上をしっかり上げることができるのであれば、その分の対価はしっかりと払ってくれる企業だとも言えます。「自分がこの企業の業績を上げてやる」という気概がある方にとっては面白い就職先かもしれません。

企業4

  • 従業員一人あたり売上高:低い(その企業の生産性が低い)
  • 売上高に対する人件費の割合:低い(正当な対価を従業員に対して支払っていない)
  • 従業員一人あたり人件費:低い(結果)

生産性が低く、売上をあまり上げられていない上に、従業員に対して十分な対価を支払っていない企業です。結果、従業員への対価は劣悪で、まさにブラック企業です。

売上を上げることもできないので、そもそも従業員に支払えるだけの利益がありませんし、また、払う意思もありません。このような企業に就職するのは絶対に避けなければなりません。

このような感じで就職先の企業を分析することができます。

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