税効果会計が必要な理由

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。税効果会計は理解するきっかけが非常につかみにくい論点です(「なぜ税効果会計を行うのか」、「どのような考え方があるのか」がつかみにくいのです。)。そこで最初にごく簡単な状況から税効果会計を考えてみます。

金融業での設定(税効果会計を行わない場合)

簿記ではほとんど出てこないのですが「金融業」をイメージしてみてください。お金を貸して利息を稼ぐ商売です。この金融業に次のような会計事実が起こったことを想定します。

  • 平成×1年度の売上は1,200,000円、平成×2年度の売上は1,000,000円、平成×3年度は売上は1,000,000円であった。
  • 平成×1年度に貸倒損失が200,000円発生した。
  • 平成×1年度に発生した貸倒損失は当初損金として認められなかったが平成×3年度にようやく損金として認められた。
  • 法人税等の税率は40%で一定である。
  • これら以外の収益や費用は一切発生していない。

このような状況をもとに各期の損益計算書を税効果を無視して考えてみます。

平成×1年度

平成×1年度は「売上1,200,000円」「貸倒損失200,000円」なので税引前当期純利益は(売上1,200,000円-貸倒損失200,000円=)1,000,000円となります。

また、貸倒損失は損金として認められていないので課税所得は売上1,200,000円全額になります。法人税率は40%なので法人税等は(課税所得1,200,000円×法人税率40%=)480,000円となります。

これより税引後当期純利益は(税引前当期純利益1,000,000円-法人税等480,000円=)520,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:480,000円
  • 税引後当期純利益:520,000円

平成×2年度

平成×2年度は「売上1,000,000円」なので税引前当期純利益は1,000,000円となります。また、課税所得も売上1,000,000円で法人税率は40%なので法人税等は(課税所得1,000,000円×法人税率40%=)400,000円となります。

これより税引後当期純利益は(税引前当期純利益1,000,000円-法人税等400,000円=)600,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:400,000円
  • 税引後当期純利益:600,000円

平成×3年度

平成×3年度は「売上1,000,000円」なので税引前当期純利益は1,000,000円となります。また、やっと平成×1年度に発生した貸倒損失が損金として認められることになったので課税所得は(売上1,000,000円-貸倒損失200,000円=)800,000円になります。

法人税率は40%なので法人税等は(課税所得800,000円×法人税率40%=)320,000円となります。

これより税引後当期純利益は(税引前当期純利益1,000,000円-法人税等320,000円=)680,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:320,000円
  • 税引後当期純利益:680,000円

税効果会計を行わない場合の問題点

この例では税効果会計を行っていません。この場合、平成×1年度から平成×3年度までずっと「税引前当期純利益は1,000,000円」であるにも関わらず、税引後当期純利益はバラバラの金額になっています。

この損益計算書を見た利害関係者は「税引後当期純利益がどんどん増えていっているから業績は好調だろう」と考えてしまうかもしれません。

ですが、実際は「平成×1年度に会計的には認められている費用(貸倒損失)が税務的には損金として認められなかったことで法人税等の金額が変化した」というだけです。

平成×1年度に会計的に貸倒損失が認められているということは、会計的にはその貸倒損失は課税額も含めて平成×1年度の収益に対応させるべきです。

にも関わらず、税務上損金として認められるのが平成×3年度になったことで、貸倒損失が発生したことによる課税額(貸倒損失200,000円×法人税率40%=)80,000円が平成×3年の収益と対応させられてしまっています。

これでは適正な会計処理とは言えません。そこで税効果会計が必要になるのです。

金融業での設定(税効果会計を行う場合)

金融業に先ほどと同じ会計事実が起こったことを想定します。

  • 平成×1年度の売上は1,200,000円、平成×2年度の売上は1,000,000円、平成×3年度の売上は1,000,000円であった。
  • 平成×1年度に貸倒損失が200,000円発生した。
  • 平成×1年度に発生した貸倒損失は当初損金として認められなかったが平成×3年度にようやく損金として認められた。
  • 法人税等の税率は40%で一定である。
  • これら以外の収益や費用は一切発生していない。

このような状況をもとに各期の損益計算書を税効果を考慮して考えてみます。

平成×1年度

平成×1年度は「売上1,200,000円」「貸倒損失200,000円」なので税引前当期純利益は(売上1,200,000円-貸倒損失200,000円=)1,000,000円となります。

また、貸倒損失は損金として認められていないので課税所得は売上1,200,000円全額になります。法人税率は40%なので法人税等は(課税所得1,200,000円×法人税率40%=)480,000円となります。

ここからが税効果会計です。この法人税等480,000円のうちの(貸倒損失200,000円×法人税率40%=)80,000円は会計上認められている貸倒損失200,000円が税務上認められなかったことによって増加した税金です。

会計上は貸倒損失は当期の負担なので、この80,000円も当期に負担させます。よって法人税等から80,000円を控除します(直接控除するのではなく、「法人税等調整額」という法人税等の評価勘定を使って控除します。)。

これより税引後当期純利益は{税引前当期純利益1,000,000円-(法人税等480,000円-法人税等調整額80,000円=)}600,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:480,000円
  • 法人税等調整額:△80,000円
  • 税引後当期純利益:600,000円

平成×2年度

平成×2年度は「売上1,000,000円」なので税引前当期純利益は1,000,000円となります。

また、課税所得も売上1,000,000円で法人税率は40%なので法人税等は(課税所得1,000,000円×法人税率40%=)400,000円となります。

これより税引後当期純利益は(税引前当期純利益1,000,000円-法人税等400,000円=)600,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:400,000円
  • 税引後当期純利益:600,000円

平成×2年度は会計と税務に違いがないので税効果会計を考慮しない場合と同じになります。

平成×3年度

平成×3年度は「売上1,000,000円」なので税引前当期純利益は1,000,000円となります。

また、やっと平成×1年度に発生した貸倒損失が損金として認められることになります。なので課税所得は(売上1,000,000円-貸倒損失200,000円=)800,000円になります。

法人税率は40%なので法人税等は(課税所得800,000円×法人税率40%=)320,000円となります。

ここからが税効果会計です。この法人税等の金額320,000円は、貸倒損失200,000円が損金として認められたことによって(貸倒損失200,000円×法人税率40%=)80,000円減額されています。

貸倒損失は平成×1年度に負担させるべき費用で、この80,000円も平成×1年度にすでに負担させています。なので法人税等からの80,000円の減額を取り消します(減額の取り消しなので加算することになります。

また、直接加算するのではなく、「法人税等調整額」という法人税等の評価勘定を使って加算します。)。

これより税引後当期純利益は{税引前当期純利益1,000,000円-(法人税等320,000円+法人税等調整額80,000円=)}600,000円となります。

  • 税引前当期純利益:1,000,000円
  • 法人税等:320,000円
  • 法人税等調整額:80,000円
  • 税引後当期純利益:600,000円

これで、平成×1年度から平成×3年度まで全ての会計期間で「税引前当期純利益1,000,000円」「税引後当期純利益600,000円」となりました。こちらの方が明らかに適正な会計処理となっています。

このような会計処理が税効果会計です。次回以降細かい内容を学習していきますが、この税効果会計のイメージをしっかりと意識して学習を進めていくことが大切です。

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