- 簿記を勉強していると株式を発行する取引が出てきたんだけど……
- 株式を発行するという取引がどういう取引なのかよく分からない
- 株式を発行する仕訳について教えて!
簿記を勉強していると、株式を発行するという取引が出てきます。株式の発行という取引は全く身近にないのでイメージできずに苦手にしてしまう人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん株式発行の仕訳についても熟知しています。
この記事では株式発行の仕訳について簿記3級の内容から簿記2級の内容まで解説します。
この記事を読めば株式を発行するという取引がどういう取引なのか、どのような仕訳を切ればいいのかが分かるようになります。
簿記検定で株式発行の仕訳が出題されても自信を持って解答できるようになります。
結論を一言で言うと、株式を発行することで現金(当座預金)を受け取ると同時に資本が増加します。増加する資本は資本金として処理するのが原則ですが、2分の1までは資本金としないことも認められています。
株式の払込金額の処理【会社設立・増資共通】
株式の発行という取引では、株式の発行によって払い込まれた金額の処理が問題になります。株式の払込金額の会計処理については原則と例外があります。
株式の払込金額の処理(原則):全額を資本金とする(簿記3級)
株式会社は払込金額の全額を資本金とするのが原則的な処理になります。そもそも株式を発行する目的は事業に必要な資金を調達するためです。
事業に必要な資金を借入ではなく自力で準備した場合には資本金として処理するのが合理的です。よって、資本金として処理するのが原則となっています。
株式の払込金額の処理(例外):2分の1までは資本準備金としてもよい(簿記2級)
株式会社は発行した株式の発行価額の全額を資本金として処理することが原則ですが、会社法では発行価額の2分の1までは資本金にしないことも認められています。
資本金として処理しない場合は資本準備金として処理します。
日商簿記検定では「会社法で認められる最低額を資本金に組み入れる」という指示があった場合は例外処理を行います。
株式の発行の仕訳
会社設立時の株式の発行(原則):簿記3級出題範囲
この例題の仕訳について考えてみましょう。
まず、発行株式数を計算します。40,000株の4分の1を発行しているので、(発行可能株式総数40,000株÷4=)10,000株となります。
次に払込金額を求めます。10,000株を1株800円で発行しているので、(発行株式数10,000株×1株800円=)8,000,000円となります。
8,000,000円を当座預金としているので『(借)当座預金8,000,000』となります。
また、払込金額の全額を資本金とするとあるので『(貸)資本金8,000,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 8,000,000 | 資本金 | 8,000,000 |
会社設立時の株式の発行(例外):簿記2級出題範囲
この例題の仕訳について考えてみましょう。
まず、発行株式数を計算します。40,000株の4分の1を発行しているので、(発行可能株式総数40,000株÷4=)10,000株となります。
次に払込金額を求めます。10,000株を1株800円で発行しているので、(発行株式数10,000株×1株800円=)8,000,000円となります。
8,000,000円を当座預金としているので『(借)当座預金8,000,000』となります。ここまでは原則処理と同じです。
ここからが違います。例題に会社法で認められる最低額を資本金に組み入れるものとするとあります。会社法では払込金額の2分の1までを資本金としないことが認められています。
ということは会社法で認められる資本金の最低額は(8,000,000円÷2=)4,000,000円ということになります。よって、『(貸)資本金4,000,000』となります。
また、払込金額のうち資本金としなかったものについては資本準備金という勘定科目で処理します。よって『(貸)資本準備金4,000,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 8,000,000 | 資本金 | 4,000,000 |
資本準備金 | 4,000,000 |
【まとめ】株式発行の仕訳【全額資本金が原則】
株式を発行した場合、現金(当座預金)を受け取ると同時に資本が増加します。増加した資本は全額を資本金とするのが原則です。
しかし、例外的な処理として2分の1までであれば資本金とせず、資本準備金とすることも認められています。
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