- 簿記を勉強していると自己受為替手形っていう言葉が出てきたんだけど……
- 自己受為替手形がなぜ使われるのか分からない
- 自己受為替手形の仕訳について教えて!
自己受為替手形は為替手形の中でも特殊な手形なので、イメージしづらいという方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん自己受為替手形についても熟知しています。
この記事では自己受為替手形の仕訳と自己受為替手形が使われる理由についてわかりやすく解説します。
この記事を読めば自己受為替手形についてより深く理解できるようになるので、簿記1級で自己受為替手形に関する問題が出題されても解答できるようになります。
結論を一言で言うと、自己受為替手形は自分が受取人でもある為替手形です。自己受為替手形は、振出人と指図人が同一人物になります。
自己受為替手形:自分が受取人でもある為替手形
自己受為替手形は、文字通り、自分が受取人でもある為替手形です。
受取人は指図人と同じ意味なので、「受」が「指図」に変わって『自己指図為替手形』とも言われます。
通常の為替手形は図で書くと次のような形になります。
自己受為替手形は、この図の振出人と指図人が同一人物になります。図で描くと次の図のようになります。
自己受為替手形を振り出す2つのメリット
自己受為替手形はなぜ使われるのでしょうか。登場人物が二者なので、普通に約束手形を振り出せばいいとも言えそうです。
しかし、自己受為替手形を振り出すのは自己受為替手形にしかないメリットがあるからです。自己受為替手形のメリットは次の2つです。
- 売掛金をより確実に回収することができる
- 取引相手が手形帳を発行されていない場合に手形を受け取ることができる
売掛金をより確実に回収することができる
理由の1つは「売掛金を取引先からより確実に回収するため」です。
約束手形は代金を支払う側からしか振り出せません。相手が約束手形を振り出す意思がなければ手形を受け取ることはできないのです。手形を振り出してくれるよう頼むのが精一杯です。
約束手形と違い、自己受為替手形は「振出人=受取人」なので、受け取る側から手形を振り出すことができます。相手は自己受為替手形を引き受けるだけです。
自己受為替手形を引き受けないとはなかなか言えません。
約束手形を振り出すように頼むのと為替手形の引受けを頼むのとでは迫力が違います。
取引相手が手形帳を発行されていない場合に手形を受け取ることができる
もう1つの理由が「取引相手が銀行から手形帳を発行されていない場合に手形を受け取るため」です。
先ほどお伝えした通り、約束手形は代金を支払う側からしか振り出せません。代金を支払う側が手形帳を銀行から発行されていない場合、約束手形は使えません。
手形帳の発行の審査は当座預金の口座開設の審査より厳しいです。
手形は小切手より支払期日を先に延ばせるため、企業の信用力が必要になります。取引相手の信用力が弱いと、審査に通らず手形帳を発行されないことがあります。
取引相手が手形帳を発行されていない場合でも手形を受け取るためには自己受為替手形を利用する必要があります。
自己受為替手形を振り出すのは当社なので、当社が手形帳を発行されていれば問題ありません。
自己受為替手形の仕訳
自己受為替手形を振り出した
この例題の当社の仕訳を考えてみます。
「売掛金500,000円分の回収として」為替手形を振り出したと例文にあります。為替手形を振り出したということは、売掛金の回収という目的が達成できたということです。
売掛金を回収するということは売掛金が減少するということなので『(貸)売掛金500,000』となります。
次は借方です。「為替手形」と問題文にあるのに指図人に対して何も書いてありません。引受けを得た為替手形を誰にも渡していないのです。この場合、文脈から自己受為替手形と判断します。
自己受為替手形の引受けを得たということは手形債権を得たということです。自己受為替手形では「振出人=受取人」だからです。よって『(借)受取手形』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
受取手形 | 500,000 | 売掛金 | 500,000 |
【まとめ】自己受為替手形:自分が受取人でもある為替手形
自己受為替手形は自分が受取人でもある為替手形です。自己受為替手形は、振出人と指図人が同一人物になります。
約束手形ではなく自己受為替手形を使う理由は次の2つです。
- 売掛金をより確実に回収するため
- 取引相手が手形帳を発行されていない場合に手形を受け取るため
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