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機会原価と埋没原価とは【具体例でわかりやすく】

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  • 原価計算を勉強していると機会原価と埋没原価っていう言葉が出てきたんだけど……
  • 機会原価と埋没原価の考え方がよく分からない
  • 機会原価と埋没原価についてわかりやすく教えて!

機会原価と埋没原価は簿記2級まででは全く出てこなかった考え方なので、とまどってしまう方が非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん機会原価と埋没原価についても熟知しています。

この記事では機会原価と埋没原価について具体例を使ってわかりやすく解説します。

この記事を読めば機会原価と埋没原価についてより深く理解できるので、簿記1級の原価計算の勉強をスムーズに進めることができるようになります。

結論を一言で言うと、機会原価はもう一方の選択肢をを選んだときに得られたであろう利益、埋没原価はどの案を選んでも同じようにかかる原価です。

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簿記1級の原価計算で考えるべき3つの「原価」を独学を例に考える

独学という学習方法は最も安くすむと考えられています。実際に支払う金額だけを見れば確かに独学が一番安くすむかもしれません。

しかし、試験に合格する費用を原価と考え、原価計算の考え方を使うと、一概に独学が一番原価が少ないとは言えなくなってきます。

原価計算の考え方を使って独学のコストについて考えてみましょう。日商簿記検定を受験する場合で考えてみます。

支出原価:実際にお金を支払う原価

実際にお金を支払う原価を支出原価といいます。簿記2級までで学習する原価は全て支出原価です。

支出原価は最もお金がかかっている感じがする原価なので、支出原価を原価として考えない人はほとんどいません。

日商簿記検定に合格するための支出原価としては次のようなものがあります。

  • 学習教材にかかる費用
  • 受験料
  • 過去問購入費用
  • 電卓代
  • その他文房具代や交通費などの雑費

支出原価として支払うお金は当然簿記検定に合格するための原価として考えます。

埋没原価:どの案を選んでも同じようにかかる原価

埋没原価はいくつかの案があってどれが最も原価が低く抑えられるのかを分析するとき、どの案を選んでも同じようにかかる原価のことです。

簿記検定に合格するための埋没原価としては次のようなものが考えられます。

  • 受験料
  • 過去問購入費用(過去問がついている通信講座や通学講座の場合は埋没原価にはなりません)
  • 電卓代

埋没原価は独学であっても通信であっても通学であっても同じようにかかる原価です。独学・通信・通学のどの方法を選ぶのかを選択するときに考える必要はない原価といえます。

簿記の問題での埋没原価の例で多いのは「すでに投資してしまって他の事業に転用できない固定費(固定資産の減価償却費など)」です。

すでに投資してしまって他の事業に転用できないなら、どの案を選んでも同じようにかかります。

機会原価:もう一方の選択肢を選んだときに得られたであろう利益

機会原価は実際にお金を支払いません。機会原価は一般的には見落とされがちな原価ですが、非常に重要な原価です。

機会原価とは、もう一方の選択肢を選んだときに得られたであろう利益です。

機会原価と同じ文脈で機会費用という言葉が使われることがあります。機会原価と機会費用はほとんど同じ意味の言葉です。

日商簿記検定に合格するための機会原価としては次のようなものが考えられます。

  • 勉強時間の差から発生する時給

この記事では例として「自分は独学よりも通学の方が向いているから、本当は通学の方が効率がいいけど、費用(支出原価)がかかるから独学で勉強する」と決めた人を想定してみましょう。

このケースの人が簿記3級に合格するためにかかる時間として次のように想定してみます。

  • 通学で簿記3級に合格するためにかかる勉強時間…80時間
  • 独学で簿記3級に合格するためにかかる勉強時間…150時間

独学が向いていて、独学でも勉強時間が変わらない、もしくは独学の方が勉強時間が短くてすむという人にはあてはまりません。

この例の場合、勉強時間が独学の方が70時間多くかかっています。ということは通学で勉強すれば70時間の時間が作れるということです。

70時間という時間は日本の最低賃金の加重平均である750円で計算すると、52,500円になります。70時間という時間には最低でも52,500円の価値があるのです。

52,500円という金額は実際には支払いませんが、独学を選択するということは52,500円の価値を失うことになるということは間違いありません。

実際に働くかどうかは重要ではありません。

働けば52,500円のお金がもらえるのに働かないということは、その時間に働かずにやる何かの価値がその人にとって52,500円以上あるということだからです。

そして70時間という時間を失うということは、52,500円以上の何かをする時間を失うということです。

会計学、経済学的には機会原価の考え方は正しいのですが、人間が関わっていることなので、絶対に正しいというわけではありません。人間はお金のために生きているわけではないからです。

勉強そのものが好きな人にとっては「長くかかった勉強時間70時間=給料52,500円」という式そのものが成り立たないでしょう。

意識すべきなのは機会原価も原価と考え、適切に意思決定をすることです。

機会原価そのものの考え方が抜け落ちてしまっている場合、意思決定を間違えてしてしまうことも考えられます。

機会原価は重要かつ考え方が難しいので、もう一つ簿記1級でよくある具体例を使って説明します。

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機会原価の計算問題【簿記1級】

計算問題

A氏は個人事業主である。「A氏の事業に関する資料」と「市場の利子率」「A氏の推定年
収」は次のとおりである。

  • 事業の年間売上高:140,000,000円
  • 諸費用:100,000,000円
  • 当期純利益:40,000,000円
  • 無利息での市場利子率:2%
  • A氏が事業と同等の労働条件で働きに出た場合の推定年収:12,000,000円

なお、今後も安定して同様の状況が期待されると仮定できる。また、税金は無視するもの
とする。

この状況の中、投資家から1,000,000,000円で事業を買収したいという申し入れがあった。

この申し入れを受けるべきか答えなさい。

この問題の計算方法について考えてみましょう。

この申し入れを断った場合、A氏の損益状況に変化はありません。次のとおりです。

  • 事業の年間売上高:140,000,000円
  • 諸費用:100,000,000円
  • 当期純利益:40,000,000円

対して申し入れを受けた場合、次のようになります。

  • 売上高・諸費用・当期純利益の全てが失われる。
  • A氏が働きに出ることで12,000,000円の収益が得られる。
  • 1,000,000,000円を無リスクの利子率である2%で運用できるので(出資額1,000,000,000円×無リスクでの市場利子率2%=)20,000,000円の利子を受け取ることができる。

これらの情報を踏まえて、この申し入れを受け入れた場合の利益を計算すると次のように
なります。

  • A氏の年収:12,000,000円
  • 出資額に対する受取利息:20,000,000円
  • 当期純利益:32,000,000円

この申し入れを受け入れることで当期純利益は(申し入れを断った場合の当期純
利益40,000,000円-申し入れを受け入れた場合の当期純利益32,000,000円=)8,000,000円
減少しています。

この申し入れは断るべきだといえます。

解答

事業を売却すると、継続した場合に比べて8,000,000円の収入減になる。よってこの事業は
継続すべきである。

機会原価とよく似た言葉に「機会損失」という言葉があります。機会損失とは有利な方を選ばなかったことによる損失です。

この計算問題の解答を機会損失という言葉を使って表現すると「事業を売却することによる機会損失は8,000,000円である」となります。

機会原価を前面に出した計算方法

先ほどの考え方を機会原価という考え方を前面に出して計算すると次のようになります。

  • 事業の売上高:140,000,000円
  • 事業の諸費用:△100,000,000円
  • 事業の当期純利益:40,000,000円
  • 機会原価(A氏の年収):△12,000,000円
  • 機会原価(出資額に対する受取利息):△20,000,000円
  • 営業継続により得られる利益:8,000,000円

「A氏の年収」と「出資額に対する受取利息」が機会原価となっています。

「A氏の年収」と「出資額に対する受取利息」のどちらも「実際に支払ってはいないけど費用のように計算している」という点を理解しておくことが大切です。

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【まとめ】機会原価と埋没原価とは【具体例でわかりやすく】

原価計算では次の3つの原価が大切です。

  • 支出原価:実際にお金を支払う原価
  • 埋没原価:どの案を選んでも同じようにかかる原価
  • 機会原価:もう一方の選択肢をを選んだときに得られたであろう利益

意思決定をする場合は埋没原価や機会原価もきちんと考えることが大切です。

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コメント

  1. のの より:

    お世話になります。一点、教えていただきたいのですが、事業売却を選択した場合の収入は、A氏の年収+出資額に対する受取利息3200万とのことですが、事業売却した10億はどこにいったのでしょうか?出資のため、A氏の手元資金ではない、でしょうか?よろしくお願いします。

    • 平野 より:

      コメントありがとうございます。早速ご質問にお答えします。

      この問題例では明言はしていませんが、この事業は将来にも売却することができると推測することができます(この「投資家」が奇特な人で、他の投資家は全くこの事業に価値を見出していないという状況であれば話は別ですが、純利益が4,000万円出る事業なので仮に今回断ったとしても同様のオファーが今後出てくると考えられます)。

      仮に1年後にも10億円の事業買収の申し入れがあるのであれば、ここで断ったとしても1年後に売却すれば10億円を受け取ることができます。つまり、この10億円は今年申し入れを受けても断っても受け取ることができる10億円なので埋没原価と同じように考えることになります。

      回答は以上です。参考にされてください。

      • のの より:

        埋没原価はこのようなときにも使用するのですね
        ありがとうございました。

        • 平野 より:

          コメントありがとうございます。この例では「原価」ではないのですが、「どちらを選んでも違いがないもの」という意味でたとえで使っています。

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