- 簿記の問題集を解こうと思ってるんだけど……
- どういう風に解いたら効果的なのか分からない
- 簿記の問題集の書き込みはどうすべきなのか教えて!
簿記の勉強をしていくうえで、良問を繰り返し解くことは欠かせません。問題練習を繰り返す重要性はいろいろなところで言われています。
しかし具体的にどう繰り返したらいいのかはあまり言われていません。そのため、効果が出ない方法で繰り返してしまっているケースが非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん効果的な問題練習方法についても熟知しています。
この記事では簿記の問題を繰り返すときに心がけるべきことを中心に、問題集の効果的な使い方について解説します。
この記事を読めば効果的な問題練習ができるようになるので、問題を繰り返し解けば解くほど簿記の実力がつくようになります。
結論を一言で言うと、問題集は回転させるのではなく、「解いた日の翌日」「その一週間後」に解くといったように適切な間隔で繰り返すことが大切です。また、2回目以降のヒントにならないように、問題部分の書き込みは消すことも大切です。
効果的に簿記の問題集の使うための10個のポイント
問題集を効果的に使っていくときに気をつけるべきポイントは次の10個です。
- 問題集は1冊(1シリーズ)だけにする
- 問題集は回さない
- 翌日の復習は絶対に行う
- 問題を解くときは必ず時間を計る
- 問題は自分の頭で解く
- 問題を解くときにはきちんと課題を持つ
- 問題を解いていて手が5分止まったら、解答を見る
- 問題を解いていて間違えてしまったら必ず原因をつかみ、その場で解きなおす
- 書き込みは解答・解説部分にする
- やった日付と出来具合を記入しておく
問題集は1冊(1シリーズ)だけにする
簿記を学習するときには問題集は1冊(1シリーズ)だけにすることが大切です。
きちんとしたものであれば1冊(1シリーズ)で合格できるようになっています。1冊(1シリーズ)を完璧に身につけることが大切です。
1冊(1シリーズ)をボロボロになるまで使い込めば、合格するだけの実力は確実につきます。
問題集を回さない
簿記の問題集を繰り返すときは回さないことが大切です。
簿記は問題を繰り返し解かなければ実力がつかないので、問題を繰り返すことそのものは重要です。
問題集を回してはいけない理由は繰り返すことそのものがいけないわけではなく、繰り返し方に問題があるということです。
問題集を回してはいけない理由は次の3つです。
- 1回目と2回目の間隔が長すぎるから
- 人間の記憶のメカニズムに反しているから
- 問題を解く間隔が問題集の厚さに関係しているから
1回目と2回目の間隔が長すぎるから
普通の厚さの問題集を回した場合、1回目に問題を解いてから2回目に問題を解くまでの期間は早くても1ヶ月程度はかかります。正直、1回目と2回目の間隔が1ヶ月は長すぎます。
ある問題を1回解いて、次に解くのが1ヶ月後だった場合、2回目に解く頃には1回目の記憶が完全になくなっています。完全に忘れた後に2回目を解いても繰り返しの効果は薄いです。
2回目の解きなおしは、翌日がベストです。
人間の記憶のメカニズムに反しているから
人間の記憶というものは「覚えていないものはすぐに忘れる」「一度完全に覚えたものはなかなか忘れない」という性質があります。
まだ完全に身に付いていない問題はすぐに忘れてしまう反面、一度身についてしまえば、間隔を空けてもなかなか忘れません。
この性質から考えると、復習する間隔は回数を重ねるごとに徐々に長くしていくのが人間の記憶のメカニズムに合った方法といえます。
しかし、問題集を回した場合、問題を解くスピードは速くなるのが普通なので、回数を重ねるごとに間隔が短くなっていきます。人間の記憶のメカニズムに反しているのです。
問題を解く間隔が問題集の厚さに関係してしまうから
問題集を回した場合、たとえ同じ問題であっても、問題集が厚くなればなるほど復習間隔が空き、問題集が薄くなればなるほど復習間隔が短くなります。
問題集の厚さで復習の間隔が変わるのは全く論理的ではありません。問題集の厚さと復習の間隔は無関係だからです。
繰り返して問題を解くときのベストな間隔
同じ回数問題を解いたとしても、問題集を回した場合の効率は悪いです。繰り返して問題を解くこと自体は非常に重要です。繰り返すのであれば、もっと効果的に繰り返すことが大切です。
次の復習の間隔を徹底してください。特に「その翌日」は絶対に守ってください。もし翌日の復習ができなかった場合は1回目からやり直すくらいの意識が大切です。
- その翌日
- その1週間後
- その2週間後
- その1ヵ月後
問題集を回すのではなく、ぜひこの復習間隔を勉強に取り入れてください。
翌日の復習は絶対に行う
先ほどお伝えした内容と完全に重複しますが、あまりにも重要なのでもう一度繰り返します。翌日の復習では前日に解いた問題をもう一度解いて下さい。
まず、非常に誤解されやすいところなのですが、復習の目的は「忘れたことを覚えなおすこと」ではありません。
もちろん、忘れてしまったことは覚えなおさなければいけませんが、「忘れたこと」を覚えなおすことが目的ではないのです。
復習の目的は「きちんと覚えているものを忘れにくくすること」です。忘れにくくするためには思い出す必要があります。
きちんと覚えていることを思い出すことで忘れにくくするのが復習の目的なのです。
「忘れたことを覚えなおすこと」と「覚えているものを忘れにくくすること」は似ているようで非常に大きな違いです。
「忘れてしまったことを思い出すためにやる」という意識だとどうしても「すぐに理解できたところ」「一回で完全に正解できたところ」の復習は必要ないと考えてしまいがちになるからです。
また、復習は重要な論点、基本的な論点ほど重視しなければなりません。
ほとんど忘れていない翌日に復習することが重要です。忘れてしまってからの復習では効果が低くなってしまいます。
翌日に復習することによる2つの効果:忘れにくくするため・きちんと理解するため
翌日に復習することで次の2つの効果があります。
- きちんと理解して覚えていることを忘れにくくする
- 理解していないことを自覚し、再度きちんと理解する
逆に言えば、翌日の復習をしなければ次のようになってしまうということです。
- きちんと理解したことも忘れてしまう
- 理解していないことを自覚できない
翌日に復習しないのであれば勉強していないのと同じだと考えるくらい翌日の復習を重視してください。
問題を解くときは必ず時間を計る
問題を解くときは必ず解答時間を計って解いてください。問題を解く際には「キッチン・タイマー」などを利用して、時間が来たら音が鳴るようにしておくことが大切です。
時間を計ることには2つの意味があります。
- 集中力を高めるため
- 時間感覚を身につけるため
集中力を高めるため
時間を計ることで、時間内に解こうとするので集中力が高まります。集中力が高まることで効果的に勉強ができます。
時間感覚を身につけるため
試験本番では制限時間があるので、最終的には時間に対する意識が必ず必要になります。時間に対する意識は普段から意識しておくことで身につきます。
制限時間が来たからといって解くのをやめる必要はありません。最後まで解き終えて構いません。
時間に対する意識を持つことで、時間感覚を身につけていくことができます。
時間を意識することで計算が雑になってはいけませんが、どの程度の時間で解答しなければならないかを意識するのは大切です。
かかった時間は問題集にメモしておきましょう。次回解く時にはその時間よりも早く解くことを目標にすることで成長を感じることができます。
問題は自分の頭で解く
問題の解説を読んで、解説の流れの通りに解法をなぞるような勉強をされている方がいます。解説の流れのままに電卓に入力して、そのまま解答まで求めるといった勉強です。
解説をなぞるような勉強には全く意味がありません。解説の解法はあくまでも一例で、解き方は人それぞれです。解説の解法は参考程度に見るべきです。
問題についている解説は「自分が分かっていないところを見つける」ために使うのが正しい使い方です。正解できた場合には解説を読む必要は特にありません。
問題が解けなかったり答えを間違えたりした場合には解説を見ますが、どこで間違えたのか、どこが解けなかったのかを探し、見つかったらその部分のテキストに戻りましょう。
そして理解しなおしてもう一度挑戦しましょう。
解説の途中式を電卓に入れて答えを確認するといった、解説の解法をなぞるような作業は意味がありません。
問題を解くときにはきちんと目的を持つ
問題はきちんと解けることが大事ですが、問題が解ければそれでいいというわけではありません。
問題を解くときには、それぞれ「問題を解く目的」というものが存在します。そして、「問題を解く目的」は「その問題を解くのは何回目なのか」によって変わってきます。
問題を解く目的は具体的には、次のとおりです。
- 最初:どこが重要なのかを確認するため
- 1回目の復習:丸暗記になっていないか確認するため
- 2回目の復習:忘れていないか確認するため・ミスを減らすため
- 3回目以降の復習:無意識レベルにまで理解を深めるため
そのときそのときで「問題を解く目的」を意識し、課題を持って問題を解くことが大切です。
問題を解いていて手が5分止まったら解答を見る
問題を解いていて、難しい問題だった場合、手が止まることがあると思います。そういった場合は5分考えて分からなかったら解答を見るようにしてください。
よく考えることはとても大切です。しかし「解けなくても答えは見ず、長時間じっくり考える」というのでは効率が悪すぎます。
手が止まるということは知っていなければならない何か、理解していなければならない何かが身についていないことを意味しています。
「理解していなければならない何か」が身についていない状態で考え続けても答えは出ません。
もし解けなければ「理解していなければならない何か」を解説で確認し、それでもよく分からなければテキストに戻ることが重要です。
5分間はひたすら考えますが、5分考えても手が動かないときは解答を見て自分が身につけるべきことを確認して、身につけてからもう一度解きましょう。
問題を解いていて間違えてしまったら必ず原因をつかみ、その場で解きなおす
問題を解いたときに間違えてしまうことは誰にでもあります。間違えること自体には全く問題はありません。間違えてしまったときにはその後の対処が大切です。
「初めて解いた問題を間違ってしまった場合」「2回目以降に解いた問題を間違ってしまった場合」「よく理解できていないけれど正解できた場合」に分けて、次の流れで対処することが大切です。
初めて解いた問題を間違ってしまった場合にすべきこと
初めて解いた問題を間違ってしまった場合は次のことを行います。
- 解説を読んで原因をつかむ
- 原因別に対処を行う
- どんなに些細なミスでも最初から最後まで解きなおす
1.解説を読んで原因をつかむ
間違えた理由をつかまず、ただ間違えた問題に×をつけるだけでは、同じ問題を同じようにまた間違えてしまいます。
全く同じ問題を全く同じように間違えてしまうのであれば、違う問題が解けるはずがありません。
初めて解いた問題を間違ってしまった場合にまずやるべきことは「間違ってしまった原因をつかむこと」が大切です。
間違ってしまった原因をつかむために解説を読みます。解説を読んでいくと間違ってしまった原因が分かります。逆に言えば、問題を間違えなかった場合は解説を読む必要はありません。
問題の解説というのは、きちんと解く力がある人にとっては当たり前のことしか書いていないからです。解説を読まずに次の問題に入ってもいいくらいです。
2.原因別に対処を行う
原因をつかんだらその対処を行います。
- 理解が足りないのであれはテキストに戻ってもう一度理解する
- ミスであればミスの対策をする
他にも原因は考えられます。体調が悪いというのであれば休むといった対処も考えられるでしょう。原因にあわせた対処を行い、正しく対処できた場合、次は正解できます。
3.どんなに些細なミスでも最初から最後まで解きなおす
間違えてしまった原因をつかむところまでは多くの方がやっているのですが、「最初から最後まで解きなおす」という作業はやっていない方が多いのはもったいないことです。
問題は最初から最後までしっかりと解くことが大切です。
一部分だけ確認したり、間違えた部分だけ解きなおしたり、頭の中だけで確認したりといった答え合わせを行なっていると、試験直前の時期にミスの多さに悩むことになります。
どんなに些細なミスでも、間違えたのであれば最初から最後まで自分の力だけで解ききることが大切です。
もちろん、解き直しで間違えてしまったのであれば、同じことをまた繰り返します。完全にできるまで何度でも繰り返します。
「完全にできるまで繰り返す」という練習をやるかやらないかで最終的には大きな差になります。
2回目以降に解いた問題を間違ってしまった場合にすべきこと
2回目以降に解いた問題を間違ってしまった場合は少々深刻です。1回目に行った対策がうまくいっていない可能性が高いからです。
2回目以降に解いて間違ってしまった場合は次のことを行います。
- 前回解いたときに行った対策が適切だったかどうかを確認する
- 適切だった場合、1回目に間違ったときと同じ手順を踏む
- 適切ではなかった場合、抜本的に勉強の仕方を考える
1.前回に解いたときに行った対策が適切だったかどうかを確認する
まずは前回解いたときに行った対策が適切だったかどうかを確認します。1回目と同じ間違いをした場合は、対策が不適切だった可能性が高いです。
2.適切だった場合、1回目に間違ったときと同じ手順を踏む
適切だと判断した場合、前回間違ったときと同じ手順を踏むことになります。具体的な方法は先ほどお伝えしたとおりです。
3.適切ではなかった場合、抜本的に勉強の仕方を考える
適切ではなかったと判断した場合、抜本的に勉強の仕方を考えなければなりません。次のようなことがないかチェックしてみてください。
- ミスの原因をつかんだあと、テキストを読んだあとにきちんと解き直しているか
- 暗記に頼って1回目に問題を解いていないか
ミスの原因をつかんだあと、テキストを読んだあとにきちんと解き直しているか確認する
「解きなおしていない」のは結構やってしまいがちです。間違ってしまったところを確認してテキストを読むところまではいいのですが、読むだけで復習を終了してしまっているパターンです。
間違ってしまった場合は、テキストを読んだ後に全く同じ問題をもう一度解かなければいけません。もう一度解かなければ本当に分かったのか分からないからです。
もしまた間違ってしまった場合、分かったつもりになっていたことを意味します。
間違った問題は答えが合うまでその日のうちに何度も解くことが大切です。答えが合って初めて問題練習が終了します。
暗記に頼って前回の問題を解いていないか確認する
暗記に頼ってしまうのもありがちなパターンです。前回の問題練習はテキストを見た直後に行っているので、丸暗記した記憶が残ったまま問題演習をすることになります。だから解けます。
しかし次回に解くのは早くても翌日です。翌日にもなると丸暗記したところの大部分を忘れている可能性があります。だから解けません。
復習の間隔は回が進むにつれて広げていきますが、暗記に頼っていると復習の間隔が広がったときに忘れてしまいます。復習の間隔が広がることで間違ってしまう場合は暗記に頼っていると考えられます。
暗記に頼った勉強をしている場合には抜本的に考え方を変える必要があります。正しく理解して正しく練習していけば1回は間違えても次は正解できます。
よく理解できていなくても正解できたのであれば、とりあえずよしとする
簿記ではほとんど起こらないのですが、それでも「よく理解できていないけれど正解できた」ということがあります。
このような正解は次も正解できるとは限らないため、不安に思う方も多いです。
しかし、選択問題ならともかく、計算問題で答えが合っていたということはそれなりに実力があると言えます。完璧だとは言えませんが、それほど不安に思うこともありません。
今後の復習で間違えてしまったときに具体的な対策を考えましょう。
書き込みは解答・解説部分にする(問題部分の書き込みは消す)
問題部分にした書き込みは消さなければなりません。「気をつけなければならない点」や「引っ掛けポイント」は当然として「アンダーライン」なども解き終わったら消すようにしてください。
何らかの書き込みがあると、前に解いたことの記憶を持ち出して、その記憶で解いてしまうからです。これでは練習の意味が薄くなってしまいます。
逆に、解説部分には自由に書き込みをして構いません。解説部分は問題を解くときには見ないからです。
「解き終わったときに意識すべきこと」「その問題のポイントがテキストのどこにあるのか」などを書いておくといいです。
解いた日付と出来具合を記入しておく
解いた日付と出来具合だけは問題部分のすみに書いておいてもかまいません。出来具合は例えば次のような形で残しておきます。
- 自信を持って完璧に正解…◎
- 不安だったけれど結果的に正解…○
- やり方は分かっていたけれどミスにより不正解…△
- やり方も分からず完全に不正解…×
記号と日付を書き残しておくことで復習するときの参考にします。記号や日付は別紙で管理しても構いません。
【まとめ】簿記の問題集の効果的な繰り返しのやり方
簿記の問題集を解くときには次のことを意識することが大切です。
- 問題集は1冊(1シリーズ)だけにし、その1冊(1シリーズ)をボロボロになるまで使い込む。
- 復習の間隔を徹底する。
- 問題を解くときは時間を計り、その時間を問題集にメモしておく(時間が来ても途中でやめる必要はない)。
- 解説の解法をなぞるのではなく、自分の頭で考える。
- 目的を持って問題を解く。
- 5分考えても手が動かないときは解答を見て自分が身につけるべきことを確認し、身につけてからもう一度解く(個別問題の場合)。
- 間違えてしまった問題は答えが合うまで最初から最後までもう一度解く。
- 問題部分には「解いた日付」「出来具合」以外は消す(解答・解説部分には書き込んでもよい)。
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