簿記1級は難易度の高い試験です。簿記単体の試験では日本一だとも言えます。そういう理由からだとは思いますが、簿記1級の勉強をしている人は難しい内容の勉強ばかりをしている人がいます。
残念ながら基本が完璧に身についていない状況でこういう勉強ばかりを繰り返してしまうと、なかなか合格することができません。
簿記は基本をしっかりと身につけることが何より大切なのです。
ちなみに、この記事を書いている私は日商簿記に合格するための通信講座を2012年から運営し、これまでに数百人の合格者を送り出させていただいています。もちろん私自身も簿記1級に合格しています。
こういった私が、基本を大切にするとはどういうことかについて解説していきます。
基本を完璧に身につけることの大切さ
基本は本当に大切です。これは簿記に限ったことではありません。基本は本当に大切です。いくら強調しても強調しすぎることはないので、何度でもいいます。基本は本当に大切です。
検定試験では、基本を完璧に身につけている人が合格します。基本が身についていないまま難問・奇問に手を出す方がいますが、それはよくありません。難問・奇問は基本が完璧に身についたあとに基本が身についているか確認するために取り組むべき問題です。
不思議と、基本を完璧に身につけている方は、初めてみた難問・奇問が解けるものです。逆に基本が身についていないまま難問・奇問に手を出している人は、全く同じ問題は解けても、少し変えられただけで手が出なくなります。
基本は「暗記不要の簿記独学講座」の内容全て
基本が大事なことを強調してきましたが、何が基本なのでしょうか。それは、当社運営サイトである暗記不要の簿記独学講座の記事全てです(コラムの記事は除きます)。ここを完璧に身に付けることを第一の目標にしてください。
また、誤解してほしくないところなのですが、完璧に身につけるまで先に進んではいけないというわけではありません。あくまでも「検定試験当日に基本は完璧に身に付いている状態にしておく」ということです。
多少分からないところがあっても先の単元に進むことはOKです(上の級に進むのはいけません) 。
応用力は自然と身につくもの
これまで基本基本と言い続けて来ました。では、応用力はどうやったら身につくのでしょうか。
逆説的になるのですが、応用力は身につけるものではありません。もちろん生まれつきの才能でもありません。基本が完璧に身につけば、勝手にできるようになるものなのです。
仮にできなかったとしても、解説を読めばすぐに理解できます。そして同じレベルの応用力が要求される問題は次からはきちんと解けます。
「基本問題はできるけれど応用問題ができない」「自分には応用力がない」と感じたら基礎力不足を疑ってください。基礎力がなければ応用問題は解けません。基礎力があれば応用問題も解けます。
応用とは、基本を使いこなすことです。完璧ではないものを使いこなすことはできません。逆に完璧であれば自然と使いこなせます。
応用力は基本が身につけば自然とつくものだと考えてください。応用力がないと感じたときには、足りていない基本の部分をしっかりと身につけることが大切です。
下の級を完璧にしてから上の級に進む
日商簿記検定は3級、2級、1級となっています(4級は一般的ではないので省略します)。
ここで意識しておいてほしいことは、2級は3級を土台に勉強するものであり、1級は2級を土台に勉強するものだということです。
完全に積み上げる形になっています。簿記3級が小学算数、簿記2級が中学数学、簿記1級が高校数学のようなものです。このように考えると、下位の級を完璧にしておくことがどれだけ重要かご理解いただけると思います。
例えば、小学算数で学習する分数の計算をあまり理解していない状態で中学生になった人が、中学数学で学習する方程式を解けるでしょうか。もちろん分数の方程式が出題されます。
絶対にできません。しかし、出来ない理由は方程式が難しいからではありません。小学校で身につけておくべき分数ができていないからなのです。
ここでどんなに方程式の勉強をしても分数の方程式は解けません。まずは小学校の範囲にさかのぼって分数を身につけてから戻ってこなければならないのです。小学校の範囲にまで戻る勇気が必要なのです。
このような例はいくつでも挙げることはできるのですが、一つで十分納得いただけると思います。
簿記でも同じです。簿記3級の内容が理解できていないのに、簿記2級の内容が理解できるわけがないのです。下の級の理解が甘ければ上の級に進んだときに必ず行きづまります。
もし行きづまってしまったら、必ず下の級に戻らなければなりません。下の級に戻る勇気を持たなければなりません。下の級が身についてなければ理解できないからです。そして、そのように戻ることをできるだけなくすために、下の級を完璧にしてから上の級に進むべきなのです。
上の級に進む前に、必ず下の級を完璧にしてください。そして、それでも上の級でもし行き詰まったら、必ず下の級に戻ってください。
また、以上のことからお気付きだとかと思いますが、簿記3級と簿記2級を同時に学習することもお勧めしません。簿記3級→簿記2級という順序で学習するべきです。
何よりも基本を大切にしてください。そうすれば全ての歯車がいい方向にかみ合います。
まとめ
- 基本を大切にし、完璧に身につける
- 基本とは暗記不要の簿記独学講座の記事の全て(コラムの記事は除く)
- 簿記2級に進む前に簿記3級の内容を完璧にする
コメント
自信がつきました
いつもありがとうございます。
今の1級の勉強ではトレーニング問題を中心(工簿2回目)をやっていますがある方から1級の範囲は広いからあまり試験で重要視されない論点(材料費会計~製造間接費会計の個別論点など)は軽くやり、頻出度の高い論点(標準原価計算など)を中心にやった方がいい。
理由は全て覚えようとしても忘れますから・・
というようなアドバイスを頂きました。
確かに過去問題でどのような問題が出るのかは未知の世界でしたので昨日は本屋さんに行き、確認してきました。
確かに材料会計等の個別問題は出されていませんでしたが、これらをきっちり基本を覚えておかないと・・・って考えながらの帰路でした。
トレーニング問題で「解けるだけど時間がかかってしまう=苦手」
「解答解説を見た問題(書けないと先の計算ができない解答中の箇所)=理解できていない」をチェックしながら先に進めています。
今は部門別のトレーニング問題をやている最中ですが部門別も出題率が低いとはいえ、やはり基礎は大事であると認識しています。
過去問は問題を見ただけで購入はしませんでした。
この論点が出るから、ここを中心にやっておこう・・となってしまうのは私的にNoの勉強法だから・・・
でも、今やっているトレーニング問題集と過去問で出される問題形式は見比べてきました。
結果、今のトレーニング問題はしっかりとマスターすること!と答えが出ました。
基礎トレーニングは無駄なことは何もないと思います。
基礎が完璧であれば応用も解ける
まさにそうですもの。
自分の勉強法で少し迷いましたが自信がつきました。
トレーニング問題解きながら苦手箇所をチェックしながら先へ進められます。
工簿をこの勢いで先に進め終わらせたら工業簿記論点別パターン別の過去問題集を購入しようと思います。
次に商簿・・・です。(もちろん一日1回はまとめたノートを見るようにしています)
ありがとうございました!
コメントありがとうございます。
基本は本当に大切ですね。試験に合格できるかどうかは基本をいかに身につけるかにかかっています。
簿記1級は確かに試験範囲は膨大です。そのため試験に出るところと出ないところで強弱をつけるという考え方も一理あるとは言えます。
しかし、「出題されているか、いないか」という点に注目するのではなく、「何を身につければこの問題で合格点が取れるのか」という視点で過去問を見ると、違った強弱のつけ方が見えてきます。
「基本を強く、難問・奇問を弱く」となります。
みんとさんの基本を完璧にする意識は後者の強弱のつけ方です(私もこちらです)。
こちらの方が合格に近いのはほぼ間違いないと思います。
みんとさんの考え方、学習に対する姿勢は合格できる人のものになっています。合格証書はあとからついてくる感じですね。自信を持って勉強してください。
リョウさんのようなプロの意見は非常に参考になります。
最近の簿記検定では受験者が簿記の基礎を理解しているかを促す出題傾向にあるように感じます。128回の工業簿記は難問・奇問ですが原価計算は基本は身に付いていますか???というようなレベルでしたね。
「意思決定」のようにいきなり1級から出題される論点もありますが基礎(テキストレベル)を確実に身に付けることで合格レベルになっていくように感じます。
自分自身2度の1級受験を通して感じたことは単純に難しいというのと基礎レベルでもあれだけ範囲が広ければ基礎を全て確認するのも難しいということです。
焦って過去問題に手を出したい気持ちもありますが基礎が出来ての過去問題なのだなと感じさせられました。
自分自身はまだまだ改善&進化の余地は十分にあると感じているので這い上がれるように努力していくのみです!!
コメントありがとうございます。
確かに簿記1級の範囲は膨大ですよね。それは私もつくづく感じます。しかし、共通の考え方が色々なところで出てくるので、おさえるべきところをおさえていれば何とかなるとも思います。
例えば、「貨幣の時間価値(将来の価値を現在の価値に割り引くこと)」は簿記1級で初めて出てくる考え方ですが、これは、
・償却原価法(利息法)
・資産除去債務
・リース会計(借手側・貸手側ともに)
・キャッシュフロー見積法
・退職給付引当金
などで使います(まだあるかもしれません)。これらを別々のものと考えれば論点は5個ですが、同じものだと考えれば1個です。貨幣の時間価値に関していえば作業は5分の1になります。このように考えていけば、簿記1級の範囲の基本をおさえることは何とかなります(それでも膨大ですが…)。
実は私が簿記1級を取得したときには資産除去債務はありませんでした。当然知らなかったわけです。このブログを運営するにあたってそれではまずいと思い資産除去債務の問題を解いてみました。何の予備知識もない状態でしたが、一発で完答することができました。もし試験本番で出されていたとしても、完答はできなくても合格点レベルは取れたと思います。
自分を例に恐縮ですが、土台となる考え方(基本)がきちんとできていれば知らない論点も何とかなるのです。こういうスタンスが重要かなと思います。
工業簿記で出てくる「意思決定」も考え方は同じだと思います。原価計算は適切に意思決定するために行うからです。原価計算の集大成が意思決定なのです。
最近「意思決定が壊滅してダメだった」といった声を非常によく聞きます。ここからも、試験委員の方の「意思決定は原価計算の集大成なんだから意思決定ができなければ原価計算が身についているとはいえない」というメッセージが透けてみえます。
「原価計算は意思決定のために行う」という視点が意思決定を理解するコツかなと思います。
少々重い内容になってしまいました。わずかでも参考になれば幸いです。ma-kun☆さんのおっしゃるように、ma-kun☆さんには改善&進化の余地はまだまだあると思います。そのために必要なのは適切な努力だけです。合格証書はもう目の前です。がんばってください。応援しています。
コメントありがとうございました。