- 企業会計原則や会計基準を読もうと思うんだけど……
- 企業会計原則や会計基準をどのように勉強したらいいのか分からない
- 企業会計原則や会計基準の覚え方について教えて!
簿記1級の勉強に入ると企業会計原則や会計基準を勉強する機会がありますが、どうやって勉強したらいいのか分からずに悩んでいる人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん企業会計原則や会計基準の勉強法についても熟知しています。
この記事では企業会計原則や会計基準の勉強法をわかりやすく解説します。
この記事を読めば企業会計原則や会計基準の勉強法について理解できるので、簿記の理解を深めることができますし、簿記1級の会計学や税理士試験の財務諸表論などで出題されても自信を持って解答することができるようになります。
結論を一言で言うと、企業会計原則や会計基準は関連する内容を勉強した直後に行うと効果的です。音読や音声教材を自作するのもおすすめです。
企業会計原則や企業会計基準を読む3つの目的
企業会計原則や企業会計基準を読む目的は主に次の3つです。
- 会計処理の理由・目的を理解するため
- 「会計学」で点数を取るため
- 問題文の意味をしっかりと読み取るため
会計処理の理由・目的を理解するため
会計処理の理由や目的についてはテキストでも学習しますが、テキストの内容のもとになっているのが企業会計原則や企業会計基準です。
企業会計原則や企業会計基準を学習初期の段階で読んでも意味が分からないので、その意味を分かりやすくしたものがテキストだと言えます。
このように考えると、本当の意味で会計処理の理由や目的を理解するためには企業会計原則や企業会計基準を読まないわけにはいかないと言えます。
「会計学」で点数を取るため
会計学は暗記して点数を取ると考えている人も多いですが、暗記ではそれほど多くの点数は期待できません。覚えているところがそのまま出題されたときにしか得点できないからです。
会計学でしっかりと点数を取るためには会計的な考え方をしっかりと理解する必要があります。
きちんと理解できていれば知らない論点が出てきても考えて正解を求めることもできますし、理解する過程で自然と覚えているものについてはもちろん解答できます。
「会計的な考え方」を身につけるためには企業会計原則や企業会計基準を読みこなす必要があります。
問題文の意味をしっかりと読み取るため
- 簿記1級の問題文の意味が分からない
- 読み取ったつもりでも指示通りに答えずに不正解となってしまうことが多い
このような人は企業会計原則や企業会計基準の読み込みが足りない場合が多いです。理論問題の問題文は企業会計原則や会計基準などの文章をもとに作られていることが多いからです。
会計基準を読んで意味が分かるくらいまで会計基準に慣れておかないと問題文の意味が読み取れない可能性があります。
問題の意味をきちんと読み取るためには、商業簿記・会計学では企業会計原則を中心に重要な会計基準を読むべきですし、工業簿記・原価計算では原価計算基準を中心に読むべきです。
企業会計原則や企業会計基準を読むタイミング
企業会計原則と企業会計基準では書いてある内容や範囲が大きく違います。
企業会計原則を簿記1級の学習を始めるタイミングで読むのがおすすめ
企業会計原則は簿記1級のテキストで引用されていることも多いので、特段に企業会計原則を読まなくても一度は目にします。しかしテキストで出てきたときだけ読むのでは足りません。
一度出てきた企業会計原則は繰り返し読むことが大切です。
企業会計基準は関連する内容を勉強し終えたときに読むのがおすすめ
企業会計基準は企業会計原則と違って、テキストで引用されていることはほとんどありません。テキストだけで勉強していた場合、一度も読まないことになってしまいます。
企業会計基準は2024年7月現在第33号まであり、他にも会計基準と言われるものはあるのですが、全て読まなければならないというわけではありません。重要なものに絞って読みます。
企業会計基準は「その論点の勉強が終わったとき」に読み始めるのがタイミングとしてはベストです。具体的には次のようなタイミングで読み始めることになります。
- 自己株式の勉強が終わったとき:第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」
- 役員賞与に関する勉強が終わったとき:第4号「役員賞与に関する会計基準」
- 純資産の部の勉強が終わったとき:第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」
- 株主資本等変動計算書の勉強が終わったとき:第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」
- 棚卸資産の勉強が終わったとき:第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
- 有価証券やデリバティブなどの勉強が終わったとき:第10号「金融商品に関する会計基準」
- リース取引の勉強が終わったとき:第13号「リース取引に関する会計基準」
- 長期請負工事の勉強が終わったとき:第15号「工事契約に関する会計基準」
- 会計上の変更や誤謬の訂正の勉強が終わったとき:第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」
- 包括利益の勉強が終わったとき:第25号「包括利益の表示に関する会計基準」
- 退職給付会計の勉強が終わったとき:第26号「退職給付に関する会計基準」
- 収益認識に関する勉強が終わったとき:第29号収益認識に関する会計基準
- 税効果会計の勉強が終わったとき:「税効果会計に係る会計基準」
- 研究開発費の勉強が終わったとき:「研究開発費等に係る会計基準」(第23号「『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」によって一部改正されています。)
- 外貨建取引の勉強が終わったとき:「外貨建取引等会計処理基準」
- 固定資産の減損の勉強が終わったとき:「固定資産の減損に係る会計基準」
- キャッシュ・フロー計算書と連結会計の勉強が終わったとき:「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」
企業会計原則や企業会計基準を読むときは音読が効果的
企業会計原則や企業会計基準を読むときは音読が効果的です。黙読や書き写しと比べると次の点で優れているからです。
- 経験記憶にしやすい覚え方なので長期的な記憶になりやすい
- 自分の声が耳から入ってくるので記憶に残りやすい
- 理解していないとスラスラと読めないため、理解しているか確認できる
- 書くことに比べると時間と労力がかからない
音読でしっかりと意味が理解できるようになったあとは黙読でも構いませんが、それまでは音読することをお勧めします。
企業会計原則や企業会計基準を読むペース
企業会計原則や企業会計基準は次のペースで読みこなしていくと理解しやすく記憶の定着もしやすいです。
- まず内容を完璧に理解しておく
- ざっと音読する
- すらすらと読めるようになるまで繰り返す
- 翌日にもう一度音読する
- 1週間後にもう一度読む
- 次の内容に進むときに、これまで音読した内容を「ざっと」目を通す
1.まず内容を完璧に理解しておく
音読の前にまず内容を完璧に理解しておきます。テキストなどで一通り勉強していればかなりの部分は意味が分かります。
また、意味が分からないところについては自分で調べたり講師に質問したりして理解しておきます。
こうやって、最初に分からないところや疑問点が全くない状態にしておくことが大切です。
2.ざっと音読する
次に、意味を確認しながらざっと音読します。途中で止まったり戻ったりしなくて構いません。ざっと意味を確認しながら読み進めていくことが大切です。
また、企業会計原則や企業会計基準を読み、具体的な仕訳をイメージすることも効果的です。
3.すらすらと読めるようになるまで繰り返す
2の段階でざっと音読しただけではなかなかすらすらとは読めないのが自然です。次は、すらすらと読めるようになるまで繰り返します。
すらすらと読めるということは「文体に慣れている」「意味をより深く理解している」ということなので、すらすらと読める状態になるまで繰り返すことが大切です。
4.翌日にもう一度音読する
1日目は3で終わりですが、そのまま永遠に読まなくていいわけではありません。まずは翌日にもう一度音読します。
もしすらすら読めない場合はもう一度すらすら読めるようになるまで繰り返します。
5.1週間後にもう一度読む
次は1週間後にもう一度読みます。もしすらすら読めない場合はもう一度すらすら読めるようになるまで繰り返します。
6.次の内容に進むときに、これまで音読した内容を「ざっと」目を通す
次の内容に進むときに、ざっと目を通すようにします。
ここでは黙読で構いませんし、ざっとで構いません。パラパラとめくってみるだけでも構いません。
ざっとで構わない代わりに、これまで学習した企業会計原則や会計基準の内容の「全て」に目を通します。全てに目を通すことで忘れてしまう内容を最小限に抑えることができます。
このような感じで読んでいきます。1回あたりの量は少しずつで構いません。「1ページずつ」「内容的な区切りごと」など、自由に分けて少しずつ読み進めていくことが大切です。
どうしても内容が頭に入ってこない場合の4つの対策
一文が非常に長かったり、内容が難しすぎたりする場合、どうしても内容が頭に入ってこないことがあります。
内容が頭に入ってこない場合には次のような読み方を試してみることをお勧めします。
- 主語と述語だけの文から出発し、徐々に肉付けしていく
- 何度読んでも頭に入らない用語にアンダーラインを引いて意識する
- 重要そうなキーワードを使って内容を説明する
- 記憶力を鍛える意識で思い出す
主語と述語だけの文から出発し、徐々に肉付けしていく
「主語と述語だけの文から出発し、徐々に肉付けしていく」という読み方は「より理解するための読み方」です。具体例があった方が分かりやすいので、企業会計原則のなかの最上位の原則である「真実性の原則」を例に解説します。
「真実性の原則」は次の通りです。
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
この文を次の手順で読んでいきます。
- 主語(「○○は」の部分)と述語(「○○である」の部分)を抜き出す。
- 主語と述語しかない文章に「何を」「なぜ」といった形で疑問を浮かべながら文に加えていく
- もとの文に戻るまで続ける
1.主語(「○○は」の部分)と述語(「○○である」の部分)を抜き出す。
真実性の原則の主語と述語の部分は次のようになります。
企業会計は、提供するものでなければならない。
これで1段階目は終了です。
2.主語と述語しかない文章に「何を」「なぜ」といった形で疑問を浮かべながら文に加えていく
「企業会計は、提供するものでなければならない。」だけでは意味が分かりません。この一文を読んで真っ先に考えるのは「何を」提供するのかです。この答えを加えると、次のようになります。
企業会計は、真実な報告を提供するものでなければならない。
まだ具体性に欠けます。何に関して真実な報告を提供するのか分からなければ意味が分からないからです。意味が分からない部分を補うと次のようになります。
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
3.もとの文に戻るまで続ける
これで完成です。どれくらい細かく分けるかは自由で構いません。徐々に文を復元していくことで理解しやすくなります。
何度読んでも頭に入らない用語にアンダーラインを引いて意識する
何度読んでも頭に入らない用語が出てきた場合は、その用語にアンダーラインや印をつけて、読むたびに印をつけたところを意識すると読みやすくなります。
また、赤いシートを重ねることでその用語が消えるようにしておいて、赤シートを重ねている状態でもすらすら読めるようになるまで読んでみるのもおすすめです。
重要そうなキーワードを使って内容を説明する
「重要そうな言葉」と「これを覚えておけばそれ以外の部分を思い出すのに役立ちそうな言葉」を抜き出して書き出しておきます。
そして、書き出したキーワードを元にどんなことが書いてあったのか、大まかに自分の言葉で話してみます。不正確でも構いません。
「読んだ内容を思い出す」という意識よりも「自分の言葉で誰かに説明する」という意識で話すことが大切です。
もしうまく話せないときは理解不足だということなので、その部分を中心にもう一度読み直します。
もしこの勉強をやっても理解できない場合、何か致命的な理解がぬけ落ちている可能性があるので、テキストに戻って自分の理解を確認します。
最後に、特に重要だと思う内容を誰かに教えるつもりでまとめて話してみます。そして、1回だけではなく何度も繰り返します。こうすることで理解が深まっていきます。
記憶力を鍛える意識で思い出す
記憶力は思い出そうとすることで鍛えられます。この性質を利用して次のような読み方をします。
1.企業会計原則や企業会計基準を1分間で読めるだけ読む
2.その後の1分で思い出せるだけ用語を書き出す
同じ文を何度もやって構いません。記憶力を鍛えながら重要な用語を覚えられて一石二鳥です。
会計基準で音声教材を自作するのもおすすめ
満員電車や徒歩で通勤していたり、ジョギングを毎日行っていたりする方のように「手は空いていないけれど耳と頭が空いている時間が長い」という方にお勧めなのが「IPodや音声レコーダーに会計基準などを録音して繰り返し聞く」という勉強です。
音声教材などを買うと考える人もいるかもしれませんが、自分の声で録音して自作することをおすすめします。次のような利点があるからです。
- 適度な緊張感を持って音声教材を作ることになるので作ることそのものが勉強になる
- 自分がうまく読めていないところが記憶に残りやすい(うまく読めていないところは理解があまりできていないことが多いので効果的です)
- 自分の声の方が記憶に残りやすい(聞くのが恥ずかしいからです)
- お金がほとんどかからない
時間を有効活用するために、このような勉強もおすすめです。
【まとめ】簿記1級合格のための企業会計原則や会計基準の勉強法
企業会計原則は簿記1級の勉強を始めたときに、企業会計基準はその内容の勉強が終わったときに読み始めるのがベストです。
企業会計原則や企業会計基準を読むときは音読が効果的です。また、空き時間の勉強のために音声教材を自作するのもおすすめです。
企業会計原則の具体的な内容については「【企業会計原則】7つの一般原則をわかりやすく【覚え方も解説】」で詳しく解説しています。企業会計原則を読むときの理解の補助に使ってください。
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