- 企業会計原則を勉強していると正規の簿記の原則っていう原則が出てきたんだけど……
- 正規の簿記の原則の内容がよく分からない
- 正規の簿記の原則について教えて!
正規の簿記の原則を含め、企業会計原則は法律みたいな文章なので難しくて意味が分からないと感じている人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん正規の簿記の原則についても熟知しています。
この記事では正規の簿記の原則について誘導法・検証可能性・秩序性を中心に解説します。
この記事を読めば正規の簿記の原則についてより深く理解できるので、簿記1級の会計学や税理士試験で正規の簿記の原則に関する問題が出題されても自信を持って解答できるようになります。
結論を言うと、正規の簿記の原則とは「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とする原則です。
「正規の簿記」とは網羅性、記録の検証可能性、秩序性、誘導可能性を満たす簿記のことです。
正規の簿記の原則とは:会計帳簿と財務諸表を正規の簿記にしたがって作成する原則
次の原則が正規の簿記の原則です。
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
正規の簿記の原則には次の2つの解釈があります。
- 狭義の「正規の簿記の原則」:会計帳簿を作成するときに「正規の簿記」を使わなければならない。
- 広義の「正規の簿記の原則」:会計帳簿だけでなく、財務諸表も「正規の簿記」にしたがって作成しなければならない。
広義の「正規の簿記の原則」が通説(一般的な説)となっています。
狭義の正規の簿記の原則では「会計帳簿までは正規の簿記の原則に従うが、財務諸表は従わなくてよい」と考えることになりますが、この考え方には無理があるからです。
正規の簿記とは:網羅性、記録の検証可能性、秩序性、誘導可能性を満たす簿記
これまで何度も「正規の簿記」という言葉を使ってきましたが、「正規の簿記」は一体どのような簿記なのかが問題です。「正規の簿記」とは次の要件を満たす簿記だと考えられています。
- 網羅性:全ての取引を記録できる簿記
- 記録の検証可能性:記録を検証することができる簿記
- 秩序性:継続的で組織的な記録ができる簿記
- 誘導可能性:その記録から財務諸表を誘導的に作成することができる簿記(広義の「正規の簿記の原則」のみ)
「正規の簿記」に最も適しているの簿記が「複式簿記」です。
小規模な事業では単式簿記でも正規の簿記の要件を満たすことはできるので、そういった場合には単式簿記も正規の簿記と考えることはできます。
しかし、ある程度の規模であれば複式簿記でしが正規の簿記の原則を満たせません。現在の会計では複式簿記が原則となっています。
「正規の簿記の原則」を満たさなければ「真実性の原則」も満たさない
「真実性の原則」は「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」という原則です。
「正規の簿記の原則」を満たして帳簿を作成することは「真実性の原則」を満たすための要件となっています。
言い換えると、正規の簿記の原則を満たしていない会計帳簿から作成した財務諸表は真実性の原則を満たさないと言えます。
「重要性の原則」を適用しても「正規の簿記の原則」に従ったものと認められる
重要性の原則を一言で説明すると「重要でないものは簡便に処理して構わない(場合によっては省略しても構わない)」という原則です。
しかし、正規の簿記の原則には「すべての取引につき」とあります。正規の簿記の原則と重要性の原則には矛盾があるように見えます。
この点について考えてみましょう。
「正規の簿記の原則」を守らず、「任意に選んだ取引だけの仕訳を切る」ということを許してしまっては、真実の報告を提供することはできません。
「すべての取引」を記録することを原則とするのは当然です。
しかし、「すべての取引」という言葉を額面通りに受け取ると、会計の実務が煩雑になりすぎてしまい、事実上、会計帳簿の作成が不可能になります。
そこで、重要性の原則が必要とされることになります。
こういった事情を踏まえると「重要性の原則を適用しても正規の簿記の原則に従ったものと認められる」という結論になります。
重要性の原則にしたがった結果、簿外資産や簿外負債が発生しても許されると言い換えることもできます。
【まとめ】正規の簿記の原則とは:会計帳簿と財務諸表を正規の簿記にしたがって作成する原則
正規の簿記の原則とは「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とする原則です。
「正規の簿記」とは網羅性、記録の検証可能性、秩序性、誘導可能性を満たす簿記のことです。
正規の簿記の原則を満たしていれば、真実性の原則にしたがったものとして認められます。また、重要性の原則を適用したとしても正規の簿記の原則に反したことにはなりません。
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