月末仕掛品の評価(月初仕掛品がある場合)

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では月末仕掛品の評価(月初仕掛品がある場合)について解説します。

月末仕掛品の評価(月初仕掛品がある場合)

月初仕掛品がない場合は、完成品原価と月末仕掛品の配分だけなので単純でした。しかし月初仕掛品がある場合は少々複雑です。月初仕掛品をどのように扱うかで月末仕掛品原価が変わってくるからです。

月初仕掛品が存在する場合は、月初仕掛品をどのように扱うかによって次の2つの評価方法があります。

  • 先入先出法…月初仕掛品から先に完成していくと考える評価方法
  • 平均法…月初仕掛品も当期に製造を開始した仕掛品も平均的に完成していくと考える評価方法

ちなみに後入先出法という、当期に製造を開始した仕掛品から先に完成していくと考える評価方法もないことはないですが、検定試験では出題されないので省略します。

先入先出法

先入先出法は月初仕掛品を先に加工して完成させ、そのあとで当月投入分の加工を始めるとみなして月末仕掛品原価を計算する方法です。よって、先入先出法の計算の流れは次のようになります。

  1. 月初仕掛品原価は全て完成品原価に算入する
  2. 当期製造費用を当期に製造を開始した分の完成品(完成品数量-月初仕掛品数量)と期末仕掛品に配分する
  3. 完成品原価と月末仕掛品原価を計算する

計算式は次のようになります(材料は始点投入の場合です)。

  • 月末仕掛品材料費=当月材料費÷(完成品数量+月末仕掛品数量-月初仕掛品数量)×月末仕掛品数量
  • 月末仕掛品加工費=当月加工費÷(完成品数量+月末仕掛品数量×加工進捗度-月初仕掛品数量×加工進捗度)×月末仕掛品数量×加工進捗度
  • 月末仕掛品原価=月末仕掛品材料費+月末仕掛品加工費

(材料が製造の進行に応じて投入される場合は月末仕掛品材料費の計算式は月末仕掛品加工費の計算式と同じになります)

この計算式は覚えるものではありません(一応書いただけです)。考え方をしっかりと理解すれば覚えなくても解答できます。覚えずに解答できるようにしてください。

ボックス図での考え方

仕掛品(先入先出法)

ボックス図で先入先出法を考えると次のようになります。

ここで理解しておいてほしいところは月末仕掛品は当月製造費用だけで計算されるということです。

月初仕掛品は全て当月完成品原価になっているので、月末仕掛品に月初仕掛品が入ることはありません

この考え方が、「当期製造費用を当期に製造を開始した分の完成品(完成品数量-月初仕掛品数量)と期末仕掛品に配分する」という考え方につながります。

先入先出法の具体例

資料

1.生産データ

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,400個

カッコ内の数字は加工進捗度を示している。材料は始点投入である。

2.原価データ
材料費 加工費
月初仕掛品 500,000円 200,000円
当月製造費用 1,250,000円 1,000,000円
1,750,000円 1,200,000円

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずボックス図を作っていきましょう。この資料から分かる数字を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(先入先出法)

次に、月初仕掛品に含まれる加工費(数量)と月末仕掛品に含まれる加工費(数量)を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500個)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600個)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

そして、加工費の当月投入量を求めましょう。ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます

  • 加工費の当月投入量(2,500個)=完成品(2,400個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

これらの数値を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(先入先出法)

これで個数に関しては全て求まりました。あとは金額だけです。月末仕掛品の金額を求めます。

  • 月末仕掛品材料費(300,000円)=当月投入材料費(1,250,000円)÷当月投入材料数量(2,500個)×月末仕掛品材料数量(600個)
  • 月末仕掛品加工費(120,000円)=当月投入加工費(1,000,000円)÷当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

当月投入した材料費(加工費)を当月投入した数量で割ることで1個あたりの材料費(加工費)を計算します。そして、その1個あたりの材料費(加工費)に月末仕掛品数量をかけることで月末仕掛品材料費(加工費)を計算します。

計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(先入先出法)

あとは完成品原価のみです。ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます

  • 完成品材料費(1,450,000円)=月初仕掛品材料費(500,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)-月末仕掛品材料費(300,000円)
  • 完成品加工費(1,080,000円)=月初仕掛品加工費(200,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)-月末仕掛品加工費(120,000円)

これらの数値を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(先入先出法)

あとは解答だけです。

解答

  • 完成品原価(2,530,000円)=完成品材料費(1,450,000円)+完成品加工費(1,080,000円)
  • 月末仕掛品原価(420,000円)=月末仕掛品材料費(300,000円)+月末仕掛品加工費(120,000円)

ちなみに総合原価計算表を作った場合は次のようになります(単価は割り切れないものは四捨五入しています)。

総合原価計算表(先入先出法)

総合原価計算表は、総合原価計算の計算結果を表で表したものです。加工費の数量は完成品換算数量を記入します。ボックス図がきちんと作れれば総合原価計算表も作れるので特に心配はいりません。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと次のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える
借方 金額 貸方 金額
仕掛品 2,250,000 材料費
加工費
1,250,000
1,000,000
完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える
借方 金額 貸方 金額
製品 2,530,000 仕掛品 2,530,000

月末仕掛品原価である420,000円に関しては特に仕訳は切りません。そのまま次月に繰り越されます。

工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます

平均法

平均法は月初仕掛品と当月投入分を区別なく加工するとみなして月末仕掛品原価を計算する方法です。月初仕掛品原価を前月に作ったものとして考えず、これを当月に製造を開始し、当月発生した原価であるとみなして計算する方法だとも言えます。

平均法の計算の流れは次のようになります。

  1. 月初仕掛品原価と当月製造費用を合計して総製造費用を計算する
  2. 総製造費用を完成品数量と月末仕掛品の完成品換算数量に配分する

計算式は次のようになります(材料は始点投入の場合です)。

  • 月末仕掛品材料費=(月初仕掛品材料費+当月材料費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量)×月末仕掛品数量
  • 月末仕掛品加工費=(月初仕掛品加工費+当月加工費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量×加工進捗度)×月末仕掛品数量×加工進捗度
  • 月末仕掛品原価=月末仕掛品材料費+月末仕掛品加工費

(材料が製造の進行に応じて投入される場合は月末仕掛品材料費は月末仕掛品加工費の計算式と同じになります)

この計算式は覚えるものではありません(一応書いただけです)。考え方をしっかりと理解すれば覚えなくても解答できます。覚えずに解答できるようにしてください。

ボックス図での考え方

仕掛品(平均法)

ボックス図で平均法を考えると次のようになります。

ここで理解しておいてほしいところは月末仕掛品は月初仕掛品と当月製造費用の両方で計算されるということです。

平均法では月初仕掛品と当月製造費用を区別しません

この考え方が、月初仕掛品原価と当月製造費用を合計して総製造費用を計算するという考え方につながります。

平均法の具体例

資料

1.生産データ

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,400個

カッコ内の数字は加工進捗度を示している。材料は始点投入である。

2.原価データ
材料費 加工費
月初仕掛品 550,000円 350,000円
当月製造費用 1,250,000円 1,000,000円
1,800,000円 1,350,000円

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずボックス図を作っていきましょう。この資料から分かる数字を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(平均法)

次に、月初仕掛品に含まれる加工費(数量)と月末仕掛品に含まれる加工費(数量)を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500個)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600個)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

これらの数値を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(平均法)

次に、加工費の当月投入量を求めましょう。ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 加工費の当月投入量(2,500個)=完成品(2,400個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

これらの数値を記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(平均法)

これで個数に関しては全て求まりました。あとは金額だけです。月末仕掛品の金額を求めます。次のようになります。

  • 月末仕掛品材料費(360,000円)={月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)}÷{月初仕掛品材料数量(500個)+当月投入材料数量(2,500個)}×月末仕掛品材料数量(600個)
  • 月末仕掛品加工費(150,000円)={月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)}÷{月初仕掛品加工費完成品換算数量(200個)+当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)}×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

ボックス図全体の金額をボックス図全体の数量で割ることで1個あたりの材料費(または加工費)を計算します。そして、その1個あたりの材料費(または加工費)に月末仕掛品数量をかけることで月末仕掛品材料費(加工費)を計算します。

平均法では月初仕掛品と当月製造費用を区別しないところに特徴があります。計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は次のようになります。

仕掛品(平均法)

あとは完成品原価のみです。ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 完成品材料費(1,440,000円)=月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)-月末仕掛品材料費(360,000円)
  • 完成品加工費(1,200,000円)=月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)-月末仕掛品加工費(150,000円)

これらの数値を記入したボックス図は次のようになります。

あとは解答だけです。

解答

  • 完成品原価(2,640,000円)=完成品材料費(1,440,000円)+完成品加工費(1,200,000円)
  • 月末仕掛品原価(510,000円)=月末仕掛品材料費(360,000円)+月末仕掛品加工費(150,000円)

ちなみに総合原価計算表を作った場合は次のようになります。

総合原価計算表(平均法)

総合原価計算表は、総合原価計算の計算結果を表で表したものです。加工費の数量は完成品換算数量を記入します。ボックス図がきちんと作れれば総合原価計算表も作れるので特に心配はいりません。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと次のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える
借方 金額 貸方 金額
仕掛品 2,250,000 材料費
加工費
1,250,000
1,000,000
完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える
借方 金額 貸方 金額
製品 2,640,000 仕掛品 2,640,000

月末仕掛品原価である510,000円に関しては特に仕訳は切りません。そのまま次月に繰り越されます。

工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます。

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“月末仕掛品の評価(月初仕掛品がある場合)” への2件のフィードバック

  1. ローズ より:

    こんばんは。
    この仕入帳の問題の記事の質問なんですが、仕入帳を記入する際に戻しの赤で書くところの上と下の線なんですが、ここは赤でなくて黒線でいいのですか?
    明日テストがあるので教えて頂けると嬉しいです。

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。線については赤で書く必要はありません。赤で書いたらダメかというとそうでもないでしょうが、赤で書かないのが一般的です。

      ちなみに、赤で書くのはマイナスの意味があるからです。仕入帳は仕訳帳のように貸方に書くことで金額をマイナスにすることができません。なので赤で書くことで「引く」と伝えることになります。

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