- 簿記を勉強していたら任意積立金っていう内容が出てきたんだけど……
- 任意積立金を計上する意味がよく分からない
- 任意積立金とは何かわかりやすく教えて!
任意積立金を計上する取引はイメージがつきにくく、苦手にしてしまう人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん任意積立金についても熟知しています。
この記事では任意積立金についてわかりやすく解説します。
この記事を読めば任意積立金についてより深く理解できるので、簿記2級で任意積立金に関する問題が出題されても自信を持って解答することができます。
結論を一言で言うと、任意積立金はのちに必要になる資金を確保しておく目的で設定します。任意積立金には目的を特定する積立金と目的を特定しない積立金(別途積立金)があります。
任意積立金とは:のちに必要になる資金を確保しておくための積立金

会社が獲得した利益は、特に何もしなければ繰越利益剰余金になります。繰越利益剰余金は原則として配当に回すことになります。
しかし、今後大きな資金が必要になる場合は、配当に回されると困る場合があります。そこで、配当に回されることを防ぐために、繰越利益剰余金から任意積立金を積み立てます。
任意積立金を積み立てておくことで配当に回されないようにしておくことができるのです。
任意積立金には大きく分けて次の2つがあります。
- 目的を特定する積立金(名称は様々です)
- 目的を特定しない積立金(別途積立金)
次の4つが代表的な任意積立金(目的を特定する積立金)です。
| 勘定科目 | 目的 |
|---|---|
| 新築積立金 | 建物の建設に備えるため |
| 配当平均積立金 | 利益が出なかったときにも配当をきちんと出すため |
| 修繕積立金 | 建物などの修繕に備えるため |
| 圧縮積立金 | 補助金への課税を先送りにするため(法人税法からの要請) |
今後大きな出費が予想されるときには任意積立金を積んでおくことで資金を確保します。
任意積立金は別途積立金以外にも「新築積立金」や「配当平均積立金」のように強制されない積立金の多くを含みます。
意味が広いので、一般的には任意積立金という勘定科目は使わず、より具体的な勘定科目を使います。
任意積立金のうちの「目的を特定しない積立金」が別途積立金です。別途積立金は任意積立金の一部と言い換えることもできます。
任意積立金の仕訳

任意積立金を積立てた
株主総会の決議により、別途積立金を500,000円積立てた。
この例題の仕訳について考えてみましょう。
別途積立金を積立てているので、別途積立金が増加します。別途積立金は資本の勘定科目なので、貸方に記入します。金額は500,000円なので『(貸)別途積立金500,000』となります。
また、この例題では明確には書いていませんが、別途積立金の原資になるのは繰越利益剰余金だけです。
よって任意積立金を積立てるために繰越利益剰余金が減少します。資本の減少は借方に記入します。金額は500,000円なので『(借)繰越利益剰余金500,000』となります。
まとめると次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 500,000 | 別途積立金 | 500,000 |
任意積立金の取り崩し
株主総会の決議により、別途積立金を500,000円取り崩した。
この例題の仕訳について考えてみましょう。
別途積立金を取り崩しているので、別途積立金が減少します。別途積立金は資本の勘定科目なので、減少は借方に記入します。金額は500,000円なので『(借)別途積立金500,000』となります。
また、この例題では明確には書いていませんが、別途積立金を取り崩したら繰越利益剰余金に戻るので、任意積立金を取り崩したら繰越利益剰余金が増加します。
資本の増加は貸方に記入します。金額は500,000円なので『(貸)繰越利益剰余金500,000』となります。
まとめると次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 別途積立金 | 500,000 | 繰越利益剰余金 | 500,000 |
【まとめ】任意積立金とは:のちに必要になる資金を確保しておくための積立金

任意積立金はのちに必要になる資金を確保しておく目的で設定します。任意積立金には目的を特定する積立金と目的を特定しない積立金(別途積立金)があります。
任意積立金は資本の部の一部です。資本の部を理解することで任意積立金の理解も深まります。資本の部については「資本の部とは【勘定科目や構成・内訳をわかりやすく】」で詳しく解説しています。
任意積立金は剰余金の処分によって積み立てます。剰余金の処分については「【簿記】剰余金の処分をわかりやすく」で詳しく解説しています。

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