連結会計での貸倒引当金の修正(アップストリーム)

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。前回は連結会計での貸倒引当金の修正のうちのダウン・ストリームについて学習しました。

連結会計での貸倒引当金の修正(ダウンストリーム)

この記事ではアップ・ストリームについて学習します

貸倒引当金の修正

内部取引による債権債務を相殺消去した場合、その相殺消去した債権に対して貸倒引当金が設定されているのであれば、その貸倒引当金も同時に修正します。貸倒引当金の修正の仕訳は貸倒引当金の設定の仕訳の逆仕訳になります

※債権(資産)と債務(負債)が相殺消去されても損益に変更はありませんが、貸倒引当金繰入額が減少すれば利益が増加します。

この増加額は連結会計を行うことによって発生した一時差異なので、本来であれば税効果会計を適用しなければなりません。しかし、簿記2級では連結会計に関する税効果会計は考慮しないので、ここでも税効果会計は考慮しない形で学習します。

ダウン・ストリームとアップ・ストリーム

親会社と子会社の取引のうち、「親会社から子会社へモノやお金が移動する取引」をダウン・ストリームといいます(ストリームとは「流れ」のことです。親会社(上)から子会社(下)へモノやお金が流れるからダウン・ストリームと言います)。

逆に「子会社から親会社へモノやお金が移動する取引」をアップ・ストリームといいます(子会社(下)から親会社(上)へモノやお金が流れるからアップ・ストリームと言います)。

この記事ではアップ・ストリームのみを学習します。

アップ・ストリーム

内部取引がアップ・ストリームの場合、次の3つの処理が必要です。

  • 子会社の債権の減少
  • 「相殺消去された子会社の債権」に設定していた貸倒引当金の修正
  • 貸倒引当金の修正によって増加した利益額のうち、非支配株主持分にあたる部分の非支配株主持分への振替

最後の処理だけがアップ・ストリームにのみ必要な処理になります。

アップ・ストリームの具体例

当社は、平成×1年4月1日にS社の議決権の80%を取得し、支配を獲得した。S社は当期(平成×1年4月1日から平成×2年3月31日)中に当社に対し1,200,000円の商品を掛で販売し、当期末に当社に対する売掛金が800,000円ある。

また、S社は売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を設定している。これらの資料をもとに必要な連結修正仕訳を考えてみましょう。

この取引は子会社(S社)から親会社(当社)に商品を販売しているので、アップ・ストリームだと分かります。

売上高と売上原価の相殺消去

まずは売上高と売上原価を相殺消去します。よって『(借)売上高1,200,000』『(貸)売上原価1,200,000』となります。

売掛金と買掛金の相殺消去

次に期末時点で残っている売掛金と買掛金を相殺消去します。よって『(貸)売掛金800,000』『(借)買掛金800,000』となります。

「相殺消去された債権」に設定していた貸倒引当金の修正

次に相殺消去された債権について設定していた貸倒引当金も消去します。800,000円の売掛金について2%の貸倒引当金を設定しているので(相殺消去された売掛金800,000円×貸倒実績率2%=)16,000円が消去される貸倒引当金になります。

よって『(借)貸倒引当金16,000』となります。

次は貸方です。貸方は「貸倒引当金戻入益」といった収益の勘定を使うことも考えられそうですが、設定時に借方で使った「貸倒引当金繰入額」を使います。

※貸倒引当金の減額修正の仕訳は貸倒引当金の取り崩しというよりも貸倒引当金の設定そのものの取り消しだと考えられるからです。

よって『(貸)貸倒引当金繰入額16,000』となります。

非支配株主持分にあたる部分の非支配株主持分への振替

最後に非支配株主持分の修正を行います。この貸倒引当金の修正によって子会社の利益が16,000円増加しています。このうちの20%である3,200円は非支配株主の持分に対応した利益なので非支配株主持分に振り替えます。

よって『(借)非支配株主に帰属する当期純利益3,200』『(貸)非支配株主持分当期変動額3,200』となります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
買掛金
貸倒引当金
非支配株主に帰属する当期純利益
1,200,000
800,000
16,000
3,200
売上原価
売掛金
貸倒引当金繰入額
非支配株主持分当期変動額
1,200,000
800,000
16,000
3,200

前期末に貸倒引当金がある場合の具体例

当社は、平成×1年4月1日にS社の議決権の80%を取得し、支配を獲得した。S社は前期(平成×1年4月1日から平成×2年3月31日)中に当社に対し1,200,000円の商品を掛で販売し、前期末に当社に対する売掛金が800,000円あった。

また、S社は売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を設定していた。また、S社は当期(平成×2年4月1日から平成×3年3月31日)中に当社に対し1,800,000円の商品を掛で販売し、当期末に当社に対する売掛金が1,200,000円あった。

また、S社は売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を設定していた。これらの資料をもとに当期(平成×2年4月1日から平成×3年3月31日)に必要な連結修正仕訳を考えてみましょう。平成×2年3月31日時点での仕訳は先程と同じです。当然アップ・ストリームとなります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
買掛金
貸倒引当金
非支配株主に帰属する当期純利益
1,200,000
800,000
16,000
3,200
売上原価
売掛金
貸倒引当金繰入額
非支配株主持分当期変動額
1,200,000
800,000
16,000
3,200

これらの仕訳を意識しながら当期の仕訳を考えていきましょう。

売上高と売上原価の相殺消去

内部取引高の相殺消去に開始仕訳は必要ありません(開始仕訳を行っても借方と貸方が同じ勘定科目(この場合利益剰余金前期末残高)に置き換えられるからです。)。

当期の分だけ仕訳を行います。よって『(借)売上高1,800,000』『(貸)売上原価1,800,000』となります。

売掛金と買掛金の相殺消去

次に売掛金と買掛金の相殺消去について考えます。

売掛金と買掛金は当期末の時点で残っている分だけを相殺消去すれば問題ないので前期末の残高を意識する必要はありません(債権債務の相殺消去についても開始仕訳は必要ないということです。)。

よって『(貸)売掛金1,200,000』『(借)買掛金1,200,000』となります。

相殺消去された債権の貸倒引当金の修正

次に相殺消去された債権について設定していた貸倒引当金について考えます。貸倒引当金の減額修正は他の連結修正消去仕訳と同じように前期末に行った仕訳を開始仕訳としてもう一度行います。

このとき、貸倒引当金繰入額は利益剰余金前期末残高に置き換えます(貸倒引当金はマイナスの資産の勘定なので別の勘定科目に置き換えることはありません。)。

金額は16,000円なので開始仕訳は『(借)貸倒引当金16,000』『(貸)利益剰余金前期末残高16,000』となります。

そして、「当期に」相殺消去された債権について設定していた貸倒引当金も消去します。

1,200,000円の売掛金について2%の貸倒引当金を設定しているので(相殺消去された売掛金1,200,000円×貸倒実績率2%=)24,000円が消去される貸倒引当金になります。

このうち、前期末(開始仕訳)に16,000円設定が取り消されているので、当期末に取り消さなければならない貸倒引当金は(当期末に消去されるべき貸倒引当金24,000円-前期末にすでに消去された貸倒引当金16,000円=)8,000円です。

よって『(借)貸倒引当金8,000』となります。また、貸方は「貸倒引当金繰入額」を使うので『(貸)貸倒引当金繰入額8,000』となります。

非支配株主持分にあたる部分の非支配株主持分への振替

最後に非支配株主持分について考えます。非支配株主持分への振替の開始仕訳は『(借)利益剰余金前期末残高3,200』『(貸)非支配株主持分前期末残高3,200』となります。

※借方の利益剰余金前期末残高はもともとは「非支配株主に帰属する当期純利益」です。

前期に「非支配株主に帰属する当期純利益」という費用で計上されていたものは当期には利益剰余金として振り替えられてきているので、「利益剰余金前期末残高」になります。

また、貸方の非支配株主持分前期末残高はもともとは非支配株主持分当期変動額です。前期には当期変動額であったものは当期では前期末残高になるのでこのようになります。

次に当期の非支配株主持分の修正を行います。これまでの貸倒引当金の修正によって子会社の利益が24,000円増加しています。このうちの20%である4,800円は非支配株主の持分に対応した利益なので非支配株主持分に振り替えます。

ただ、このうちの3,200円は前期末(開始仕訳)ですでに振り替えられているので、当期末に振り替えるべき金額は(増加した子会社の利益のうちの非支配株主持分に対応した利益4,800円-前期末にすでに振り替えられている非支配株主持分3,200円=)1,600円です。

よって『(借)非支配株主に帰属する当期純利益1,600』『(貸)非支配株主持分当期変動額1,600』となります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
買掛金
貸倒引当金
貸倒引当金
利益剰余金前期末残高
非支配株主に帰属する当期純利益
1,800,000
1,200,000
16,000
8,000
3,200
1,600
売上原価
売掛金
利益剰余金前期末残高
貸倒引当金繰入額
非支配株主持分前期末残高
非支配株主持分当期変動額
1,800,000
1,200,000
16,000
8,000
3,200
1,600

今回は勘定の流れを追いかけやすくするためにあえてこのような順番で仕訳を切りましたが、本来は次のような順番になります。

開始仕訳

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金
利益剰余金前期末残高
16,000
3,200
利益剰余金前期末残高
非支配株主持分前期末残高
16,000
3,200

当期の連結修正消去仕訳

借方 金額 貸方 金額
売上高
買掛金
貸倒引当金
非支配株主に帰属する当期純利益
1,800,000
1,200,000
8,000
1,600
売上原価
売掛金
貸倒引当金繰入額
非支配株主持分当期変動額
1,800,000
1,200,000
8,000
1,600

差額補充法のイメージで仕訳が切られている点がポイントです。

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“連結会計での貸倒引当金の修正(アップストリーム)” への4件のフィードバック

  1. みぃ より:

    はじめまして。
    アップストリーム、ダウンストリームが何度テキストを読んでもさっぱりわからず、
    いろんなサイトを巡ってこちらにたどり着きました。
    びっくりするほどわかりやすく、暗記するしかないのかと思っていたところだったので
    大変助かりました。
    この順を追って仕訳することで理解できたのですが、
    最後の方の「本来は次のような順番になります」以降の仕訳をみて、
    こういった問題がでた場合、仕訳の順番にも気をつけた方がいいのでしょうか?

    • dokuboki より:

      ご質問ありがとうございます。お役に立てて嬉しいです。

      ご質問にある仕訳の順番についてですが、特に仕訳の順番が模範解答と異なるというだけで不正解になることはありません。もし「開始仕訳を示せ」「当期の連結修正消去仕訳を示せ」といったように分けて出題された場合は分けて書かなければならないので、その点だけ気をつければいいと思います。

      簿記の勉強応援しています。

  2. みぃ より:

    ご回答ありがとうございます。
    まだテキスト段階なので気付きませんでしたが、
    確かに分けて出題される可能性もありますよね。
    試験で悩まないよう、もう少し理解を深めて対応できるようにしたいと思います。
    また何か不明点あった際、ご助言いただけると幸いです。

    • dokuboki より:

      ご返信ありがとうございます。連結会計は高難度の論点ですので、じっくりと復習されてください。簿記の勉強、応援しています。

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