棚卸資産に含まれる未実現利益の消去(アップストリーム)

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では連結会計における棚卸資産に含まれる未実現利益の消去(アップストリーム)について解説します。

棚卸資産に含まれる未実現利益の消去

親会社と子会社の間で商品を売買し、仕入れた側の企業がその商品を期末まで保有している場合には、連結会計では期末商品に含まれる未実現利益を消去する必要があります

仕入れた側の企業の貸借対照表に計上されている期末商品は「(企業集団外部からの仕入原価)+(企業集団内部への販売による販売益)」となっているので、このうちの「企業集団内部への販売による販売益」を消去します(利益の金額は、通常は商品の売価に売上総利益率をかけて計算します。)。

具体的には、連結貸借対照表に計上されている「商品」から「企業集団内部への販売による販売益」を控除し、それと同時に連結損益計算書の売上原価に「企業集団内部への販売による販売益」を加算します

※正確には連結損益計算書の「期末商品棚卸高」を減額することで間接的に売上原価を増加させます(「売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」という計算式から、このことが言えます。)。

基本にある仕訳はこれだけなのですが、アップ・ストリームの場合は非支配株主持分を修正したりすることで複雑になっていきます。

※期末商品に含まれる未実現利益の消去によって売上原価が増加します。このことから、連結会計の利益が減少することが分かります。この利益の減少により当期純利益の税負担額が減少します。

なので、本来であれば税効果会計を適用しなければなりません。しかし簿記2級では連結会計に関する税効果会計は考慮しないので、ここでも税効果会計は考慮しない形で学習します。

アップ・ストリーム

アップ・ストリームは子会社が親会社に商品を販売する取引なので、未実現利益を子会社が計上しています(販売した側に未実現利益は計上されます。)。なので未実現利益を消去するということは子会社の利益が減少することになります。

子会社の利益は連結財務諸表では親会社の持分の割合だけが利益として計上されます(非支配株主持分を考えなければならないということです)。

なので未実現利益のうち非支配株主の持分に対応する分については非支配株主持分の減少として処理することになります。これを「全額消去・持分按分負担方式」と言います。

未実現利益の消去(アップ・ストリーム)の具体例

通常のアップ・ストリーム

当社は、平成×1年4月1日にS社の議決権の80%を取得し、支配を獲得した。S社は当期(平成×1年4月1日から平成×2年3月31日)中に当社に対し、商品4,000,000円(原価2,800,000円)を掛で販売したが、当社はこのうちの1,600,000円を当期に保有している。

これらの資料をもとに必要な連結修正仕訳を考えてみましょう。

この取引は子会社(S社)から親会社(当社)に商品を販売しているので、アップ・ストリームだと分かります(アップ・ストリームなので、非支配株主持分の修正が必要です。)。

売上高と売上原価の相殺消去

まずは売上高と売上原価を相殺消去します。よって『(借)売上高4,000,000』『(貸)売上原価4,000,000』となります。

未実現利益の消去

次に未実現利益を消去します。S社が当社に販売した商品は原価2,800,000円、売価4,000,000円なので、原価率は(原価2,800,000円÷売価4,000,000円×100%=)70%、利益率は30%です。

なので未販売の商品1,600,000円に含まれる利益は(未販売の商品1,600,000円×利益率30%=)480,000円となります。

この未実現利益480,000円を商品から消去するので『(貸)商品480,000』となります。また、期末商品棚卸高を減少することで売上原価を増加させるので『(借)売上原価480,000』となります。

非支配株主持分の修正

最後に非支配株主持分の修正です。未実現利益480,000円が子会社の利益の減少分です。このうち非支配株主持分である20%に対応する(子会社の利益の減少分480,000円×非支配株主持分割合20%=)96,000円は非支配株主の持分に負担させる必要があります。

よって『(貸)非支配株主に帰属する当期純利益96,000』となります。また、負担した利益の減少分だけ非支配株主持分が減少するので『(借)非支配株主持分当期変動額96,000』となります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
売上原価
非支配株主持分当期変動額
4,000,000
480,000
96,000
売上原価
商品
非支配株主に帰属する当期純利益
4,000,000
480,000
96,000

前期末の商品に未実現利益が含まれる場合

当社は、平成×1年4月1日にS社の議決権の80%を取得し、支配を獲得した。S社は前期(平成×1年4月1日から平成×2年3月31日)中に当社に対し、商品4,000,000円(原価2,800,000円)を掛で販売したが、当社はこのうちの1,600,000円を当期に保有していた。

また、S社は当期(平成×2年4月1日から平成×3年3月31日)中に当社に対し、商品6,000,000円(原価4,200,000円)を掛で販売したが、当社はこのうちの2,400,000円を当期に保有していた。

これらの資料をもとに当期(平成×2年4月1日から平成×3年3月31日)の連結修正仕訳を考えてみましょう。

平成×2年3月31日時点での仕訳は先程の例と同じです。当然アップ・ストリームとなります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
売上原価
非支配株主持分当期変動額
4,000,000
480,000
96,000
売上原価
商品
非支配株主に帰属する当期純利益
4,000,000
480,000
96,000

これらの仕訳を意識しながら当期の仕訳を考えていきましょう。

売上高と売上原価の相殺消去

内部取引高の相殺消去に開始仕訳は必要ありません(開始仕訳を行っても借方と貸方が同じ勘定科目(この場合利益剰余金前期末残高)に置き換えられるからです。)。

当期の分だけ仕訳を行います。よって『(借)売上高6,000,000』『(貸)売上原価6,000,000』となります。

未実現利益の消去

次に未実現利益の消去について考えます(「未実現利益の消去」も他の連結修正消去仕訳と同じように前期末に行った仕訳を開始仕訳としてもう一度行います。)。

前年度の時点では仕訳は「(借)売上原価480,000/(貸)商品480,000」でしたが、当期では費用の勘定科目は利益剰余金に振り替えられて当期に繰り延べられているので売上原価は「利益剰余金前期末残高」に置き換えます。

よって『(貸)商品480,000』『(借)利益剰余金前期末残高480,000』となります。

今度は当期分の未実現利益の消去です。S社が当社に販売した商品は原価4,200,000円、売価6,000,000円なので、原価率は(原価4,200,000円÷売価6,000,000円×100%=)70%、利益率は30%です。

なので未販売の商品2,400,000円に含まれる利益は(未販売の商品2,400,000円×利益率30%=)720,000円となります。

この未実現利益720,000円を商品から消去するのですが、このうち480,000円は前期末(開始仕訳)に消去されています。

なので当期末には残りの(商品から消去する未実現利益720,000円-前期末にすでに消去されている未実現利益480,000円=)240,000円を消去することになります。よって『(貸)商品240,000』『(借)売上原価240,000』となります。

非支配株主持分の修正

最後に非支配株主持分について考えます。非支配株主持分への振替の開始仕訳は『(貸)利益剰余金前期末残高96,000』『(借)非支配株主持分前期末残高96,000』となります。

※貸方の利益剰余金前期末残高はもともとは「非支配株主に帰属する当期純利益」です。前期に「非支配株主に帰属する当期純利益」という費用で計上されていたものは当期には利益剰余金として振り替えられてきているので、このような勘定科目になります。

また、借方の非支配株主持分前期末残高はもともとは非支配株主持分当期変動額です。前期には当期変動額であったものは当期では前期末の残高になるのでこのような勘定科目になります。

次に当期の非支配株主持分の修正を行います。これまでの未実現利益の消去によって子会社の利益が720,000円増加しています。このうちの20%である144,000円は非支配株主の持分に対応した利益なので非支配株主持分に振り替えます。

ただ、このうちの96,000円は前期末(開始仕訳)ですでに振り替えられているので当期末に振り替えるべき金額は(子会社の減少した利益のうちの非支配株主持分144,000円-前期末にすでに振り替えていた非支配株主持分96,000円=)48,000円です。

よって『(貸)非支配株主に帰属する当期純利益48,000』『(借)非支配株主持分当期変動額48,000』となります。

借方 金額 貸方 金額
売上高
利益剰余金前期末残高
売上原価
非支配株主持分前期末残高
非支配株主持分当期変動額
6,000,000
480,000
240,000
96,000
48,000
売上原価
商品
商品
利益剰余金前期末残高
非支配株主に帰属する当期純利益
6,000,000
480,000
240,000
96,000
48,000

今回は勘定の流れを追いかけやすくするためにあえてこのような順番で仕訳を切りましたが、本来は次のような順番になります。

開始仕訳

借方 金額 貸方 金額
利益剰余金前期末残高
非支配株主持分前期末残高
480,000
96,000
商品
利益剰余金前期末残高
480,000
96,000

当期の連結修正消去仕訳

借方 金額 貸方 金額
売上高
売上原価
非支配株主持分当期変動額
6,000,000
240,000
48,000
売上原価
商品
非支配株主に帰属する当期純利益
6,000,000
240,000
48,000

差額補充法のイメージで仕訳が切られている点がポイントです。

未実現利益のもう一つの考え方

先ほどの例では差額補充法のように考えましたが、洗替法のように考えることもできます。先ほどの未実現利益の消去の仕訳における「当期の連結修正消去仕訳」を洗替法で考えてみましょう。

洗替法で考えるときは、まず前期末に未販売だった商品が当期に外部に販売される仕訳を考えます。外部に販売されたことで前期末に消去していた未実現利益が実現したと考えて次の仕訳を切ります。

借方 金額 貸方 金額
商品 480,000 売上原価 480,000

この仕訳は、前期末に消去した未実現利益を当期の利益に加算する仕訳(前期末に行った未実現利益の消去のための仕訳の逆仕訳)になります。

次に当期末に未実現利益を消去する仕訳を切ります。

借方 金額 貸方 金額
売上原価 720,000 商品 720,000

この2つの仕訳をまとめると「差額補充法における『当期の連結修正消去仕訳』である「(借)売上原価240,000/(貸)商品240,000」と同じ仕訳になります。

非支配株主持分の修正についても同じです。洗替法で考えるときは、まず前期末に未販売だった商品が当期に外部に販売される仕訳を考えます。外部に販売されたことで前期末に消去していた未実現利益が実現したと考えて次の仕訳を切ります。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 96,000 非支配株主持分当期変動額 96,000

この仕訳は、前期末に未販売だった商品が販売されたことで非支配株主に負担させていた未実現利益が実現したことによる仕訳(前期末に行った未実現利益の消去による非支配株主持分の修正の仕訳の逆仕訳)になります。

次に当期末に未実現利益を消去する仕訳を切ります。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主持分当期変動額 144,000 非支配株主に帰属する当期純利益 144,000

この2つの仕訳をまとめると「差額補充法における『当期の連結修正消去仕訳』である「(借)非支配株主持分当期変動額48,000/(貸)非支配株主に帰属する当期純利益48,000」と同じ仕訳になります。

「暗記不要の簿記独学講座」では差額補充法を中心に学習していますが、洗替法でも会計処理を行うことができます。

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