- 簿記を勉強していると割引っていう言葉が出てきたんだけど……
- 割引と値引きの違いが分からない
- 割引の仕訳について教えて!
割引という言葉は簿記と日常会話で意味が全く違うので、混乱してしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん割引の仕訳についても熟知しています。
この記事で割引の仕訳について解説します。
この記事を読めば割引の仕訳が理解できるので、割引の仕訳が簿記1級の試験で出題されても自信を持って解答することができます。
結論を言うと、割引は債権や債務が支払期日前に支払われる場合、債権・債務の金額に含まれる利息分を免除することです。
割引:債権や債務に含まれる利息分を免除すること
売掛金などの債権や買掛金などの債務が支払期日前に支払われる場合、債権・債務のいくらかを免除することを割引といいます。
売掛金や買掛金などの金額は、商品代金と、代金が現金などで支払われるまでの金利を合わせた金額になっています。
代金を支払期日前に支払う場合、金利にあたる部分の金額を一部免除するのです。
このように割引は金利の減額という性質を持っているため、値引きや返品とは本質的に異なります。仕訳そのものが値引きや返品とは異なるため注意が必要です。
仕入割引・売上割引の仕訳
【売上割引】代金の早期決済を受け、割引をした
この例題の仕訳を考えてみましょう。
商品代金100,000円分を掛としたので、『(借)売掛金100,000』となります。また、代金の5%分を除いた額を収益として計上するので計上する売上は(商品代金100,000円×95%=)95,000円です。よって『(貸)売上95,000』となります。
このままでは貸方が5,000円不足しています。この5,000円は代金の早期支払いによって減額すると見積もられている売掛金の金額です。
この5,000円は変動対価(変動する可能性のある対価)なので返金負債という勘定科目を使います。よって『(貸)返金負債5,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 95,000 | 売上 | 100,000 |
返金負債 | 5,000 |
【仕入割引】代金の早期決済を行い、割引を受けた
この例題の仕訳を考えてみましょう。
買掛金200,000円分を支払っているので『(借)買掛金200,000』となります。
問題は貸方です。現金で支払っているのですが、支払う現金は(買掛金200,000円×割引率3%=)6,000円を割引かれた(買掛金200,000円-利息分6,000円=)194,000円です。
よって『(貸)現金194,000』となります。
このままでは貸方が6,000円不足しています。この6,000円は代金の早期決済による割引です。『仕入割引』という勘定科目を使って処理します。よって『(貸)仕入割引6,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 200,000 | 現金 | 194,000 |
仕入割引 | 6,000 |
仕入割引を仕入としないように気をつけてください。仕入割引は資金を早期に返済したことによる利息分の受け取りであるため、受取利息と似た性質があります。そのため仕入と相殺しないのです。
【まとめ】割引とは【仕訳と勘定科目をわかりやすく】
割引とは債権や債務が支払期日前に支払われる場合、債権・債務に含まれる利息分を免除することです。割引は金利の減額という性質を持っているため値引きや返品とは区別します。
コメント
■教えてください
分記法での割引の仕分けを教えてほしいです。
割引は買掛金や売掛金を予定より早く決済することによる利息分の減額です。この「予定より早く決済」という取引は仕入や売上とは直接関係ありません。なので商品の記帳方法と割引の仕訳は直接関係がないということになります。
なので分記法であっても、売掛金や買掛金の決済の仕訳は三分法などと同じ、次の仕訳になります。
○売上割引
(借)現金 ×××/(貸)売掛金 ×××
(借)売上割引 ×××
○仕入割引
(借)買掛金 ×××/(貸)現金 ×××
/(貸)仕入割引 ×××
「商品勘定や仕入・売上勘定が全く出てこないということは商品の記帳方法と関係がない」と考えてもらえれば理解しやすいかと思います。