
簿記を勉強していると本支店会計っていう論点が出てきたんだけど、何か本店とか支店とか出てきて複雑だなぁ。本支店会計について知りたいな。
こういった疑問に答えます。
ちなみに、この記事を書いている私は日商簿記に合格するための通信講座を2012年から運営し、これまでに数百人の合格者を送り出させていただいています。もちろん私自身も簿記1級に合格しています。こういった私が解説していきます。
本支店会計

企業が1ヶ所(本店)しかなく、本店で全ての取引が行われている場合、全ての仕訳と転記を本店で行うことになります。次のようになります。

しかし、企業が大きくなってきて支店を出した場合どうなるでしょうか。次のようになってきます。

本店だけで全ての取引が行われているというわけではなくなってきます。
このような場合、本店は本店で帳簿を作り、支店は支店で帳簿を作ることになります(支店が独自に帳簿を作成することを支店会計の独立といいます)。
このような会計手法を本支店会計といいます。
本支店会計で重要なのは本支店間の取引


「支店ありの場合」の図で示されている取引は全て外部との取引になります。
取引がこのような外部との取引の場合は、本店の取引は本店が本店の帳簿に、支店の取引は支店が支店の帳簿に記帳すればそれで大丈夫です。
今まで学習してきた仕訳と何も変わりません。帳簿が2冊になるだけと言えます。
本支店会計で重要なのは本支店間の取引です。右の図に書かれている「内部取引」が本支店間の取引です。
このような仕訳の例は今まで出てきたことはありません。内部取引を学習することが本支店会計の中心になります。
本支店会計は絶対必要?

そもそも内部取引の仕訳は必要なのでしょうか。内部取引は本当に取引なのでしょうか。この点について考えてみます。
例えば「本店が支店に商品を送った」場合を考えてみましょう。もし支店にではなく外部の企業に対して同じことを行ったのであれば、商品の売却と考えることもできます。
しかし、本店も支店も同じ企業です。本店が支店に商品を送っても、ただ商品を移動しただけです。右の本棚にある物を左の本棚に動かしたのと同じになります。これは取引とはいえません。
内部取引は本当の意味での取引にはならないのです。そういう意味では本支店会計は絶対に必要な会計処理ではないといえます。
ちなみに、本格的な本支店会計を取り入れない場合、支店は帳簿を持たずに支店で発生した取引は伝票で本店に報告するという方法もあります。これを本店集中会計制度といいます(検定試験ではまず出題されません)。
本支店会計を行う理由

ではなぜ本支店会計を行うのでしょうか。それは「各支店がどれだけ営業活動で役に立っているのかを把握するため」です。
本店は通常は1つですが、支店は企業によっては数百数千と作る場合があります。本支店会計を行っていなければ、どの支店が利益が上がりどの支店が利益が上がっていないのかを把握することができません。
支店ごとの利益を把握しなければ、出店や撤退などの重要な判断ができなくなってしまいます。これではまずいので本支店会計を行います。
本支店会計の決算

本支店会計であっても決算手続の流れは通常とほとんど同じですが、異なるポイントもあります。本支店会計特有のポイントは次の3つです。
- 本支店間の未達取引の整理(日商簿記検定の範囲外です)
- 本支店間の取引の相殺消去
- 本支店間の商品の移動で発生した内部利益の消去(簿記1級の範囲です)
本支店会計の決算手続きにはいくつかの方法がありますが、その一例を簡単に挙げると次のような形です。
- 本店・支店ともに決算整理前残高試算表を作成
- 本店・支店ともに未達取引の整理
- 本店・支店ともに決算整理
- 本店・支店ともに個別の損益計算書と貸借対照表の作成
- 個別の損益計算書と貸借対照表の作成を合算
- 内部取引の相殺消去
- 内部利益の控除
- 本支店合併の損益計算書と貸借対照表の作成
図で示すと次のようになります。

本支店会計の決算整理特有の項目は2.5.6.7.です。これらの4つのポイントのうち2は日商簿記検定の試験範囲から外れ、7は簿記1級の範囲となっています。5は単純に全ての金額を合算するだけなので勉強することはありません。
なので簿記2級で学習すべきなのは6の「内部取引の相殺消去」のみです。
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