保証債務の取引と仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では保証債務の取引と仕訳について解説します。現在は簿記1級の範囲となっていますので参考程度にご覧ください。

保証債務

手形を裏書したり割引したりした場合、万が一支払人が支払えなくなったときには当社が支払人に代わって手形代金を支払わなければなりません(手形法により決まっています)。

これは、手形代金と同じ金額の借入金の保証人になったのと同じことになります。このように保証人になることを保証債務を負うといいます。

ここで、当社の保証債務を誰かに肩代わりしてもらうとするならば、対価をいくら支払わなければならないかと考えます。保証人になってもらうには、通常対価が必要です。無料では保証人にはなってもらえません。

ここで支払わなければならないと考えられる金額は、手形を裏書または割引したことによる債務の発生と言えます。簿記2級ではこの金額を保証債務として計上します(現在では簿記2級の試験範囲から外れています)。

保証債務の時価

仮に、300,000円の手形を裏書または割引した場合、当社は300,000円の保証債務を負ったことになります。この保証債務を誰かに肩代わりしてもらう場合、この対価はいくらになるでしょうか。

もしこの手形が100%の確率で貸し倒れるならば、この対価は300,000×100%=300,000円となります。もしこの手形が1%の確率で貸し倒れるならば、この対価は300,000×1%=3,000円となります。

このように、対価の決定要因は貸倒率になります。本当は他にも対価の決定要因はあるため、より合理的な方法で保証債務の時価を見積もる方がいいのですが、そこまで考えると計算が煩雑になります。

そこで、保証債務の時価は貸倒率をもとに時価評価することが認められています

保証債務の性質

保証債務の性質は貸倒引当金に限りなく似ています。仕訳を切るときは貸倒引当金をイメージして行えば問題なくできると思います。

しかし、貸倒引当金の設定と異なる部分もあります。貸倒引当金の設定は決算のときに行いますが、保証債務の設定は手形の裏書または割引したときに行います。保証債務の設定は手形の裏書または割引したときに行うという点だけ気をつけておけば問題ないと思います。

ちなみに、保証債務は必ず設定しなければならないものではありません。ほとんど貸し倒れる可能性がないと思えるものに関しては保証債務を設定しないことも多いです。

保証債務の取引と仕訳

手形の裏書譲渡(対照勘定法)にともなう保証債務

「A商店に対する買掛金100,000円分の支払として、かねてB商店より売掛金の代金として受け取っていた当社宛の約束手形を裏書譲渡した。なお、保証債務の時価は手形額面の1%であると見積もられた」場合の仕訳を考えてみます。

手形の裏書譲渡にともなう偶発債務の仕訳(対照勘定法) は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
買掛金
手形裏書義務見返
100,000
100,000
受取手形
手形裏書義務
100,000
100,000

次は保証債務の仕訳です。まずは保証債務の時価を求めます。保証債務の時価は100,000×1%=1,000円となります。

貸倒引当金を計上するときの仕訳は次のようなものでした。

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 ××× 貸倒引当金 ×××

これと同様に考えます。借方の貸倒引当金繰入は費用です。これと同じ役割の勘定科目は保証債務では『保証債務費用』となります。よって、『(借)保証債務費用1,000』となります。

また、貸方の貸倒引当金は負債です。これと同じ役割の勘定科目は保証債務では『保証債務』となります。よって、『(貸)保証債務1,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保証債務費用 1,000 保証債務 1,000

最初の仕訳とまとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
買掛金
手形裏書義務見返
保証債務費用
100,000
100,000
1,000
受取手形
手形裏書義務
保証債務
100,000
100,000
1,000

これが保証債務の仕訳も含んだ手形の裏書の仕訳になります。

裏書手形の決済

「上記の手形が無事決済された」ときの仕訳について考えてみます。

手形の裏書譲渡にともなう偶発債務の仕訳(対照勘定法)は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
手形裏書義務 100,000 手形裏書義務見返 100,000

あとは保証債務の仕訳です。手形が無事決済されたことで保証債務も消滅します。そこで、保証債務の仕訳もなくさなければなりません。しかし、次のような仕訳を切るわけにはいきません。

借方 金額 貸方 金額
保証債務 1,000 保証債務費用 1,000

借方は『(借)保証債務1,000』で構いません。しかし、『(貸)保証債務費用1,000』はまずいのです。

この保証債務費用が当期に発生しているならばまだいいのですが、もし前期以前に発生していた場合、保証債務費用という費用の勘定は当期に繰り越されません。この状況で貸方に費用を持ってくると費用が貸方に残ってしまうのでおかしなことになってしまいます。

そこで、『保証債務取崩益』という収益の勘定を使います。保証債務取崩益という勘定は保証債務がなくなったことによる収益です。この勘定科目を使って『(貸)保証債務取崩益1,000』とします。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保証債務 1,000 保証債務取崩益 1,000

最初の仕訳とまとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
手形裏書義務
保証債務
100,000
1,000
手形裏書義務見返
保証債務取崩益
100,000
1,000

これが保証債務の仕訳も含んだ裏書手形の決済の仕訳になります。

ちなみに、手形の割引の場合も評価勘定法の場合も、保証債務の部分の仕訳の考え方は全く同じになります。

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“保証債務の取引と仕訳” への9件のフィードバック

  1. みかん より:

    いつもお世話になっております。
    保証債務についても長い間なやんでおりました。教えてください。

    ①(借)保証債務費用 1,000/(貸)保証債務 1,000
    ②(借)保証債務 1,000/(貸)保証債務取崩益 1,000

    の仕訳に関して疑問があります。

    ①の仕訳に関しては「保証債務の時価は貸倒率をもとに時価評価する」という記事をみるとなんとなくわかるのですが、結局裏書きしたものなので当社も手形を発行した会社に対して手形代金を請求できるのに費用だけの仕訳がおこなわれることに疑問がでます(A社が発行してB社にわたしB社が当社に裏書きして当社がC社にわたして不渡り手形になったとしたら、当社はC社に支払わなければならないが当社もB社に支払ってもらえる)。

    ②の仕訳に関しては裏書きした後、無事決済されようが、不渡りになろうが、②の仕訳がおこなわれて、結局①と②で借方:保証債務費用と貸方:保証債務取崩益で(勘定科目は違うものの)相殺されるイメージになるのなら、今一つ保証債務の設定自体の意味がないような気がするので疑問です。単なる備忘記録なのでしょうか?

    ③債権に対する貸倒の設定においては、当期に発生した債権の貸倒の仕訳けが

    貸倒損失100 売掛金100
    それを当期中に回収すると
    現金100 貸倒損失100

    といったように貸方に貸倒損失がくるのに対して、保証債務のときは当期中であっても借方に
    保証債務費用でなくて保証債務取崩益がくるのは何故でしょうか?

    すみませんが教えてください。

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。保証債務は踏み込むとかなり難しい論点です。
      あまり深入りしない方がいいかもしれません。

      まず、保証債務の仕訳は必ず切らなければならないものではありません。
      切らないならば切らないでいいものです。
      問題文によっては保証債務の仕訳を切らなくていいものがあるのはそのためです。

      まず、保証債務の仕訳を切るときには、設定している貸倒引当金を取り崩します。

      (借)貸倒引当金 1,000/(貸)貸倒引当金戻入益 1,000

      と同時に

      (借)保証債務費用 1,000/(貸)保証債務 1,000

      という仕訳を切ります。そのため、費用と収益がそれぞれ1,000ずつ増加するため損益に影響はありません。では、なぜこの仕訳を切るのかですが、それには理由があります。

      対照勘定法では裏書・割引した時点で受取手形勘定は消滅します。その消滅した受取手形に対して貸倒引当金を設定したままだと少々まずいことが起きます。
      消滅した受取手形に対して貸倒引当金を設定するというのは評価勘定という勘定の性質から考えておかしいということになります(貸倒引当金は売掛債権の評価勘定です)。

      持っている受取手形を全て裏書・割引した場合を考えてみると分かりやすいと思います。受取手形の全てを裏書・割引した場合、受取手形勘定は0になりますが、受取手形の評価勘定である貸倒引当金が設定されてしまうということになるからです。

      これを避けるためには、手形を裏書・割引した時点で、

      (借)貸倒引当金 1,000/(貸)貸倒引当金戻入益 1,000

      という仕訳を切らなければなりません。しかし、受取手形を保有している場合の貸倒れの確率は裏書・割引しても全く変わらないのに貸倒引当金が取り崩されてしまうというのはまずいです。そこで、

      (借)保証債務費用 1,000/(貸)保証債務 1,000

      という仕訳を切らなければならなくなるのです。このように保証債務を考えてみるといいと思います。

      ①の疑問ですが、これは裏書・割引していない受取手形についても言えることです。てもとにある受取手形が貸し倒れた場合でもその手形が裏書・割引されたものであれば遡って請求することができます。となると貸倒引当金も設定しなくてもいいということになってしまいます。
      貸倒引当金はこういったことを全てひっくるめて貸倒率を計算しているので問題ありません。

      ②の疑問ですが、単なる備忘記録ではありません。ここについては上記の説明からアプローチしてみてください。

      ③の疑問ですが、これについては少々微妙ですが、

      (借)保証債務費用 1,000/(貸)保証債務 1,000

      という仕訳は負債を計上することを目的として行っています。つまり、保証債務費用という費用を計上することはどちらかというとおまけで、保証債務という負債を計上することが真の目的だということです。となると、負債がなくなるから収益だというように考えることができます。

      少々難しい内容になりましたが、参考になれば幸いです。

      • みかん より:

        お答えありがとうございました。

        これほどまでに奥が深い内容だとは思いませんでした。しかしながらそれをわかりやすく教えていただきとても感謝いたしております。
        通りで、どのテキストをみてもオブラートに包んだ説明になっているわけですね。

        最初に疑問に思ってから既に1年が経過していたので、おそらくリョウさんに教えていただかなければ私の中では一生わからないまま終わりそうな内容だったと感じました。

        この度は難しい内容を、わかりやすく教えていただけてとても嬉しく思います。
        ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

  2. みかん より:

    どうもスッキリしないので教えてください。

    裏書手形・割引手形がある場合の貸倒引当金の設定という記事を読みました。その記事からすると裏書手形・割引手形に対しても貸倒引当金が設定できるようですが、リョウさんの下のコメント文と照らし合わせると疑問が生まれます。

    「消滅した受取手形に対して貸倒引当金を設定するというのは評価勘定という勘定の性質から考えておかしいということになります」

    そもそも裏書手形、割引手形にも貸倒引当金が設定できるのなら保証債務自体不要な気もします。貸倒引当金が決算のときにしか設定しないという特徴(これも決算のときにしか行なわない処理と習っただけで、何故期中に行なえないのかはわかりません)もありますが、そもそも貸倒引当金は決算の時にだけしか設定できないこと自体にも疑問が残っています(当期に取得した債権の貸倒の費用を当期に計上するための処理だということはわかっていますが、債権取得直後に貸倒引当金を設定すれば簡単な気がします)。

    このように考えれば考えるほどわからなくなってきました。
    すみませんが教えてください。
    よろしくお願いします。

    • dokuboki より:

      「消滅した受取手形に対して貸倒引当金を設定するというのは評価勘定という勘定の性質から考えておかしいということになります」という私のコメントですが、実はこれは対照勘定法についてのみいえることです。評価勘定法の場合は裏書・割引しても受取手形勘定は減額しないので問題ないということになります。

      貸倒引当金の評価勘定としての性質についてきちんと筋を通すのであれば、

      「対照勘定法→裏書手形・割引手形に対して貸倒引当金を設定しない」
      「評価勘定法→裏書手形・割引手形に対しても貸倒引当金を設定する」

      とするのが正しいと言えるのですが、そもそも割引手形や裏書手形は会計理論上、貸倒引当金の対象に含まれます。しかし、「金融商品会計に関する実務指針136」では原則として保証債務で処理するということになっているのが現実です。

      >そもそも裏書手形、割引手形にも貸倒引当金が設定できるのなら保証債務自体不要な気もします。

      確かにその通りなのですが、「金融商品会計に関する実務指針136」では原則として保証債務で処理するということになっています。

      >債権取得直後に貸倒引当金を設定すれば簡単

      手形取引が多い企業の場合には非常に大変になってきます。また、貸倒引当金は貸倒れの可能性にしたがって、一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権に分類してそれぞれ設定します(簿記1級の範囲です)。これらの分類を債権取得直後に設定するのは大変です。そのため、決算時に貸倒引当金を設定します。

      裏書手形・割引手形に関する貸倒引当金についてはこのような感じです。ちなみに「金融商品会計に関する実務指針136」はつじつまを強引に合わせた感じがあります。少々変なところもあるので、あまり深入りしない方がいいと思います。

      • みかん より:

        お答えありがとうございます。

        リョウさんのおっしゃる通りあまり深入りしないほうがよさそうですね。

        以下のように理解しました(対照勘定法のみについて書きました)。

        「裏書手形・割引手形がある場合の貸倒引当金の設定(対照勘定法)」
        「1.裏書手形を含んで貸倒引当金を設定する場合」という記事は、
        「割引手形や裏書手形は会計理論上、貸倒引当金の対象に含まれます。」
        という事にもとづいて書かれている。

        「消滅した受取手形に対して貸倒引当金を設定するというのは評価勘定という勘定の性質から考えておかしいということになります」というコメントは
        貸倒引当金の評価勘定としての性質を考えると、
        「対照勘定法→裏書手形・割引手形に対して貸倒引当金を設定しない」
        「金融商品会計に関する実務指針136」では原則として保証債務で処理するということになっているのが現実です。
        という事にもとづいて書かれている。

        この度は丁寧に教えていただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

        • dokuboki より:

          そのような理解でOKです。ここのところは本当に釈然としないところです。みかんさんの疑問もよく分かります。ただ、あまりここのところで立ち止まってしまうと先に進めなくなってしまうので、こういうものなんだと割り切る方がいいと思います。

          煮え切らない説明ですみません。

  3. ぶどう より:

    保証債務の取り消しでどうして収益になるんだとずっと悩んでいて、この記事にたどり着きました。
    とてもわかりやすくてスッキリしました!
    ありがとうございます(^_^)

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