満期保有目的債券における償却原価法

商業簿記2級
満期保有目的債券における償却原価法ついて知りたい人
満期保有目的債券における償却原価法ついて知りたい人

満期保有目的債券って決算日には売買目的有価証券とは違う会計処理をするよね。確か償却原価法とか言った方法だよね。満期保有目的債券の償却原価法について知りたいな。

こういった疑問に答えます。

ちなみに、この記事を書いている私は日商簿記に合格するための通信講座を2012年から運営し、これまでに数百人の合格者を送り出させていただいています。もちろん私自身も簿記1級に合格しています。こういった私が解説していきます。

満期保有目的債券における償却原価法(割引発行)

満期保有目的債券における償却原価法(割引発行)(定額法)「例題」

当社(決算日は3月31日)は、×1年4月1日に満期まで保有する目的でA社社債を取得した。その内容は次のとおりである。

  1. 取得原価:960,000円
  2. 債券金額:1,000,000円
  3. 満期日:×5年3月31日
  4. クーポン利息年2%
  5. 利払日:毎年3月末日
  6. 取得原価と債券金額の差額は、すべて金利調整差額として認められる
  7. 償却原価法は定額法を採用している

この取引の取得時と決算時の仕訳について考えてみます。

満期保有目的債券における償却原価法(割引発行)(定額法)「考え方」

6.7.より償却原価法(定額法)で仕訳を切るということが分かります。また、1.2.より「債券金額>取得原価」であり、割引発行されていることが分かります。

この場合の利息と償却原価のスケジュールを表で表すと次のようになります。

年月日各期の利息配分額※3クーポン利息受取額※1金利調整差額償却額※2償却原価(帳簿価額)※4
×1年4月1日960,000
×2年3月31日30,00020,00010,000970,000
×3年3月31日30,00020,00010,000980,000
×4年3月31日30,00020,00010,000990,000
×5年3月31日30,00020,00010,0001,000,000
合計120,00080,00040,000

※1…債券金額×クーポン利息:クーポン利息は、取得原価ではなく、債券金額に対する利率で書かれます。そうしないと、いくらで発行するか(割引発行か平価発行か打歩発行か)で利息額が変わってしまうからです。

※2…(債券金額-取得原価)÷満期日までの月数×1年の月数:まず「債券金額-取得原価」と計算することで「満期まで保有している期間全体で受け取る金利調整差額」を求めます。それを満期日までの月数で割ることで1ヶ月あたりで受け取る金利調整差額を求め、12をかけることで1年分の金利調整差額を求めます。 なぜ年数で割らないのかというと、会計期間の途中で社債を取得した場合は通常月割りしますが、月割りの場合にも対応できるようにするためです。

※3…※1+※2(クーポン利息も金利調整差額も利息と考えるため):クーポン利息も金利調整差額も本質的には利息であると考えるため、各期の利息配分額と言われれば、これら2つの合計額となります。

※4…前期末の償却原価+金利調整差額償却額:償却原価は、前期末の償却原価に金利調整差額償却額を加えて求めます。この金額が貸借対照表価額になります。この金額が満期日には債券金額と同じになることを確認しておいてください。

×1年4月1日(満期保有目的での債券の取得)

現金960,000円を支払っているので、『(貸)現金960,000』となります。

また、満期保有目的で債券を取得した場合、勘定科目は「満期保有目的債券」を使います。売買目的有価証券と同じ、資産の勘定です。金額は、支払った対価960,000円を使います。よって、『(借)満期保有目的債券960,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
満期保有目的債券960,000現金960,000

×2年3月31日(決算1回目、利払日)

この日は利払日でもあるため、まずは利払いの仕訳を切ります。債券金額1,000,000円の2%が利息になります。よって利息金額は 1,000,000×2%=20,000円となります。債券の利息は有価証券利息勘定を使います。よって『(貸)有価証券利息20,000』となります。

また、この有価証券利息は期限到来済みの公社債の利札にあたります。公社債の利札は簿記における現金で学習したとおり、現金になります。よって『(借)現金20,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金20,000有価証券利息20,000

次は償却原価法の仕訳です。「債券金額-取得原価」は取得日から満期日までの金利調整差額を表します。この金利調整差額のうち、当期の分を計算します。

1,000,000 円-960,000円=40,000円が取得日から満期日までの金利調整差額です。取得日から満期日までは、×1年4月1日から×5年3月31日までなの で4年間(48ヶ月)あります。よって1ヶ月分の金利調整差額は40,000円÷48ヶ月=833.333…円となります。

当期の期首から保有しているので、当期の保有期間は12ヶ月になります。よって、833.333…円×12ヶ月=10,000円となります。これが当期の金利調整差額です。

この金利調整差額は有価証券利息と全く同じ性質のものなので、勘定科目も有価証券利息になります。金額は10,000円なので、『(貸)有価証券利息10,000』となります。

問題は借方です。この10,000円という金額は、債券の取得原価に加えます。

償却原価=取得原価+保有している期間に相当する金利調整差額です。そしてその償却原価を貸借対照表価額とするのです。

そう考えると、この10,000円という当期の金利調整差額を取得原価に加えることになることが納得できると思います。よって、『(借)満期保有目的債券10,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
満期保有目的債券10,000有価証券利息10,000

また、上記2つの仕訳をまとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
満期保有目的債券
20,000
10,000
有価証券利息
有価証券利息
20,000
10,000

これが×2年3月31日の仕訳となります。ちなみに、この2つの仕訳を切る前の残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

また、決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

満期保有目的債券の帳簿価額が金利調整差額の金額だけ増えていることを確認しておいてください。

×3年3月31日(決算2回目、利払日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じで、次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
満期保有目的債券
20,000
10,000
有価証券利息
有価証券利息
20,000
10,000

ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。

決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

×4年3月31日(決算3回目、利払日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じになります。

借方金額貸方金額
現金
満期保有目的債券
20,000
10,000
有価証券利息
有価証券利息
20,000
10,000

ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。

決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

このようになります。

ちなみに、この時点でこの満期保有目的債券は1年以内に満期を迎えるため勘定科目を振り替える必要がありますが、償却原価法の理解とは 関係が無いため、ここでは触れません(現時点ではこの一文の意味が分からなくても構いません。分からない方は、スルーしてください)。

×5年3月31日(決算4回目、利払日、満期日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」「×4年3月31日(決算3回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じになります。

借方金額貸方金額
現金
満期保有目的債券
20,000
10,000
有価証券利息
有価証券利息
20,000
10,000

ちなみに、この時点での残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

今回は満期日なので、社債を発行会社に買い戻してもらいます。満期保有目的債券の帳簿価額は、満期日には債券金額になります。そして、この満期保有目的債券を売る(返す)ことになるので、『(貸)満期保有目的債券1,000,000』となります。

ここでは、現金で受け取ったことにしておきましょう。というわけで、『(借)現金1,000,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金1,000,000満期保有目的債券1,000,000

また、これまでの仕訳をまとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
満期保有目的債券
現金
20,000
10,000
1,000,000
有価証券利息
有価証券利息
満期保有目的債券
20,000
10,000
1,000,000

次の2つを確認しておいてください。

  • 有価証券利息が社債の保有期間でおしなべられていること
  • 償却原価がその期の金利調整差額分ずつ債券金額に近付いていること

満期保有目的債券における償却原価法(打歩発行)

満期保有目的債券における償却原価法(打歩発行)(定額法)「例題」

当社(決算日は3月31日)は、×1年4月1日に満期まで保有する目的でA社社債を取得した。その内容は以下のとおりである。

  1. 取得原価:1,040,000円
  2. 債券金額:1,000,000円
  3. 満期日:×5年3月31日
  4. クーポン利息年4%
  5. 利払日:毎年3月末日
  6. 取得原価と債券金額の差額は、すべて金利調整差額として認められる
  7. 償却原価法は定額法を採用している

この取引の取得時と決算時の仕訳について考えてみます。

満期保有目的債券における償却原価法(打歩発行)(定額法)「考え方」

6.7.より償却原価法(定額法)で仕訳を切るということが分かります。また、1.2.より「債券金額<取得原価」であり、打歩発行されていることが分かります。この場合の利息と償却原価のスケジュールを表で表すと次のようになります。

年月日各期の利息配分額※3クーポン利息受取額※1金利調整差額償却額※2償却原価(帳簿価額)※4
×1年4月1日1,040,000
×2年3月31日30,00040,000-10,0001,030,000
×3年3月31日30,00040,000-10,0001,020,000
×4年3月31日30,00040,000-10,0001,010,000
×5年3月31日30,00040,000-10,0001,000,000
合計120,000160,000-40,000

※1…債券金額×クーポン利息:クーポン利息は、取得原価ではなく、債券金額に対する利率で書かれます。そうしないと、いくらで発行するか(割引発行か平価発行か打歩発行か)で利息額が変わってしまうからです。

※2…(債券金額-取得原価)÷満期日までの月数×12ヶ月:まず「債券金額-取得原価」と計算することで「満期まで保有している期間全体で受け取る金利調整差額」を求めます。それを満期日までの月数で割ることで1ヶ月あたりで受け取る金利調整差額を求め、12をかけることで1年分の金利調整差額を求めます。 なぜ年数で割らないのかというと、会計期間の途中で社債を取得した場合は通常月割りしますが、月割りの場合にも対応できるようにするためです。

※3…※1+※2(クーポン利息も金利調整差額も利息と考えるため):クーポン利息も金利調整差額も本質的には利息であると考えるため、各期の利息配分額と言われれば、これら2つの合計額となります。

※4…前期末の償却原価+金利調整差額償却額:償却原価は、前期末の償却原価に金利調整差額償却額を加えて求めます。この金額が貸借対照表価額になります。この金額が満期日には債券金額と同じになることを確認しておいてください。

×1年4月1日(満期保有目的での債券の取得)

現金1,040,000円を支払っているので、『(貸)現金1,040,000』となります。

また、満期保有目的で債券を取得した場合、勘定科目は「満期保有目的債券」を使います。売買目的有価証券と同じ、資産の勘定です。金額は、支払った対価1,040,000円を使います。よって、『(借)満期保有目的債券1,040,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
満期保有目的債券1,040,000現金1,040,000

×2年3月31日(決算1回目、利払日)

この日は利払日でもあるため、まずは利払いの仕訳を切ります。債券金額1,000,000円の4%が利息になります。よって利息金額は 1,000,000×4%=40,000円となります。債券の利息は有価証券利息勘定を使います。よって『(貸)有価証券利息40,000』となります。

また、この有価証券利息は期限到来済みの公社債の利札にあたります。公社債の利札は簿記における現金で学習したとおり、現金になります。よって『(借)現金40,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金40,000有価証券利息40,000

次は償却原価法の仕訳です。「債券金額-取得原価」は取得日から満期日までの金利調整差額を表します。この金利調整差額のうち、当期の分を計算します。

1,000,000 円-1,040,000円=-40,000円が取得日から満期日までの金利調整差額です。取得日から満期日までは、×1年4月1日から×5年3月31日ま でなので4年間(48ヶ月)あります。よって1ヶ月分の金利調整差額は-40,000円÷48ヶ月=-833.333…円となります。

当期の期首から保有しているので、当期の保有期間は12ヶ月になります。よって、-833.333…円×12ヶ月=-10,000円となります。これが当期の金利調整差額です。

この金利調整差額は有価証券利息と全く同じ性質のものなので、勘定科目も有価証券利息になります。金額は-10,000円なので、『(借)有価証券利息10,000』となります。金額がマイナスなので借方になります。

問題は貸方です。この10,000円という金額は、債券の取得原価から減らします。償却原価=取得原価+保有している期間に相当する金利調整差額です。金利調整差額がマイナスの場合は引かなければなりません。そしてその償却原価を貸借対照表価額とするのです。

そう考えると、この10,000円という当期の金利調整差額を取得原価から引くことになることが納得できると思います。よって、『(貸)満期保有目的債券10,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
有価証券利息10,000満期保有目的債券10,000

また、上記2つの仕訳をまとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
有価証券利息
40,000
10,000
有価証券利息
満期保有目的債券
40,000
10,000

これが×2年3月31日の仕訳となります。ちなみに、この2つの仕訳を切る前の残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

また、決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

満期保有目的債券の帳簿価額が金利調整差額の金額だけ減っていることを確認しておいてください。

×3年3月31日(決算2回目、利払日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じで次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
有価証券利息
40,000
10,000
有価証券利息
満期保有目的債券
40,000
10,000

ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。

決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

×4年3月31日(決算3回目、利払日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じで次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
有価証券利息
40,000
10,000
有価証券利息
満期保有目的債券
40,000
10,000

ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。

決算整理後残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

ちなみに、この時点でこの満期保有目的債券は1年以内に満期を迎えるため勘定科目を振り替える必要がありますが、償却原価法の理解とは関係が無いため、ここでは触れません(現時点ではこの文の意味が分からなくても構いません。分からない方は、スルーしてください)。

×5年3月31日(決算4回目、利払日、満期日)

考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」「×4年3月31日(決算3回目、利払日)」と同じです。仕訳も全く同じで次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
有価証券利息
40,000
10,000
有価証券利息
満期保有目的債券
40,000
10,000

ちなみに、この時点での残高試算表は次のようになります。

満期保有目的債券

今回は満期日なので、社債を発行会社に買い戻してもらいます。満期保有目的債券の帳簿価額は、満期日には債券金額になります。そして、この満期保有目的債券を売る(返す)ことになるので、『(貸)満期保有目的債券1,000,000』となります。

ここでは、現金で受け取ったことにしておきましょう。というわけで、『(借)現金1,000,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金1,000,000満期保有目的債券1,000,000

また、これまでの仕訳をまとめると次のようになります。

借方金額貸方金額
現金
有価証券利息
現金
40,000
10,000
1,000,000
有価証券利息
満期保有目的債券
満期保有目的債券
40,000
10,000
1,000,000

次の2つを確認しておいてください。

  • 有価証券利息が社債の保有期間でおしなべられていること
  • 償却原価がその期の金利調整差額分ずつ債券金額に近付いていること

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