その他有価証券の取引と仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事ではその他有価証券の取引と仕訳について解説します。

その他有価証券

その他有価証券とは、「売買目的有価証券」「満期保有目的債券」「子会社株式及び関連会社株式」以外の有価証券です。次のような株式がその他有価証券にあたります。

  • 持合株式
  • 長期保有を意図している株式や債券

持合株式

複数の企業がお互いに株式を保有しあっている株式を持合株式と言います(持合株式を発行し合っている状態を「株式持合」と言います。)。

このような形で発行された株式の保有割合が20%未満の場合に「その他有価証券」に分類されます(性質としては持合株式でも、保有割合が20%以上になると関連会社株式に分類されます。)。

持合株式は「親密な企業同士」や「企業と銀行(その企業のメインバンク)」で発行し合うことが多いです。

持合株式を発行する目的は主に次の2つです。

  • 経営を思い通りに行うため
  • 敵対的買収から自社を守るため

経営を思い通りに行うため

お互いがお互いの株式を持ち合い、株主総会ではお互いに反対意見を出さないことで、お互いが「物言わぬ大株主」となります。このような状態にしておくことで、経営陣は経営を思い通りに行うことが出来ます。

敵対的買収から自社を守るため

買収される側の企業の同意無しに行われる買収を「敵対的買収」といいます。持合株式を発行しておくことで株式が買い占められにくくなるので、敵対的買収をされにくくなります。

長期保有を意図している株式や債券

一度買ったらなかなか売らないという姿勢で株式や債券を購入した場合もその他有価証券となります(その他有価証券に分類するのは保有割合が20%未満の場合だけです。保有割合が20%以上になると関連会社株式に、50%以上になると子会社株式になります。)。

短期で売却する予定なら売買目的有価証券、長期で保有する予定ならその他有価証券です。

どのくらいの期間をもって長期とするかは企業に任されていますが、「数週間なら短期、1年以上なら長期、数ヶ月ならどちらでもよい」というあたりが一般的です。厳密なものではありません。

その他有価証券の評価差額の処理

その他有価証券は「子会社株式」や「関連会社株式」のように固定資産への投資と同じ目的で株式を購入しているわけではありません。なので取得原価で評価して、時価との差額を認識しないというわけにはいきません。時価で評価する必要があります。

時価で評価する有価証券と言えば売買目的有価証券です。しかし、その他有価証券は売買目的有価証券と同じように処理するわけではありません。その他有価証券の場合は時価と帳簿価額との差額を損益として計上しないのです。

その他有価証券は「長期保有の株式や債券」や「持合株式」などがあてはまるのですが、このような形で保有している有価証券は簡単には売りません。売るつもりで買っていないのです(結果的に売ることはありえます。)。

しかし、時価との差額を利益として計上してしまうと、その利益に対して法人税等がかかり、また、株主からの配当の要求も強くなります。

このような事態になると、本来は売るつもりではない有価証券を法人税や配当を支払うために売らなければならなくなってしまうことにつながります。

このような形で会計が経営に影響を与えるのは好ましくありません。そこで、その他有価証券は時価で評価しつつも時価と帳簿価額との差額は損益として認識しないという方法がとられることになります。

通常の損益は損益勘定に集計され、純資産に振り替えます(個人事業主なら資本金に、株式会社なら繰越利益剰余金に振り替えます。ちなみに、「純資産」は現時点では「資本」と同じものだと考えて構いません。)。

それに対してその他有価証券における時価と帳簿価額との差額は、この過程を飛ばして、いきなり純資産の部に入れます。これを「純資産直入」と言います(純資産に直に入れるからです。)。

「純資産直入」は「全部純資産直入法」と「部分純資産直入法」の2つがあります(部分純資産直入法は簿記1級の学習範囲なのですが、同時に勉強した方が効率がいいのでどちらも解説します)。

全部純資産直入法

全部純資産直入法では、評価益と評価損を相殺して、残った評価益または評価損を直接純資産の部に計上します(相殺した結果、評価益の方が大きければ純資産の部のプラス(貸方)に、評価損の方が大きければ純資産の部のマイナス(借方)になります。)。

部分純資産直入法

部分純資産直入法では、評価益については全部純資産直入法と同じように純資産の部に計上します。しかし評価損については当期の損失として計上します。

「時価との差額が利益として計上されてしまうと、本来は売るつもりではない有価証券を法人税や配当を支払うために売らなければならなくなってしまう」という理由を考えれば、損失に関しては損失として計上しても問題ないというわけです。

なお、「全部純資産直入法」であっても「部分純資産直入法」であっても、評価差額の処理は洗替方式によるので、常に原始取得原価と期末の時価を比較して評価差額を計上することになります

ちなみに決算整理仕訳で時価評価した場合、次期以降はその時価を帳簿価額として処理する方法を「切放方式」と言います。

それに対して決算整理仕訳において時価評価したとしても翌期首に決算整理仕訳の反対仕訳を切ることで帳簿価額を取得原価に戻して処理する方法を「洗替方式」と言います。

その他有価証券の処理(全部純資産直入法)の具体例

その他有価証券の購入

その他有価証券8,000,000円を現金で購入した(全部純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

現金8,000,000円で購入したので『(貸)現金8,000,000』、その他有価証券を購入したので『(借)その他有価証券8,000,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 8,000,000 現金 8,000,000

決算

決算となった。なお、その他有価証券の時価は9,000,000円であった(全部純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券は時価評価するので、帳簿価額を時価に修正します。帳簿価額は8,000,000円、時価は9,000,000円なので、帳簿価額を1,000,000円加算します。よって『(借)その他有価証券1,000,000』となります。

次は貸方です。その他有価証券の評価差額は損益ではなく純資産に直接計上します。よって純資産の部の勘定である「その他有価証券評価差額金」という勘定科目を使います。よって『(貸)その他有価証券評価差額金1,000,000』となります。

この場合は利益が出ているので、全部純資産直入法であっても部分純資産直入法であっても同じ仕訳になります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 1,000,000 その他有価証券評価差額金 1,000,000

翌期首

翌期首となった(全部純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券は洗替方式なので翌期首には決算整理仕訳の逆仕訳を切ってその他有価証券の帳簿価額を取得原価に戻します。よって『(借)その他有価証券評価差額金1,000,000』『(貸)その他有価証券1,000,000』になります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 1,000,000 その他有価証券 1,000,000

その他有価証券の売却

その他有価証券を8,500,000円で売却し、代金は現金で受け取った(全部純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券を売却したので、帳簿価額を減額します。帳簿価額は洗替方式によって取得原価である8,000,000円になっています。これを減額するので『(貸)その他有価証券8,000,000』となります。

また、代金8,500,000円は現金で受け取っているので『(借)現金8,500,000』となります。

貸借差額500,000円はその他有価証券を売却したことにより発生した利益です。よって『(貸)その他有価証券売却益500,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
現金 8,500,000 その他有価証券
その他有価証券売却益
8,000,000
500,000

その他有価証券の処理(部分純資産直入法)の具体例

その他有価証券の購入

債券2,900,000円(額面:3,000,000円)を現金で購入した。なお、この債券はその他有価証券として分類した(部分純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

現金2,900,000円で購入したので『(貸)現金2,900,000』、その他有価証券を購入したので『(借)その他有価証券2,900,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 2,900,000 現金 2,900,000

決算

決算となった。償却原価法の適用による決算日の金利調整差額は80,000円、その他有価証券の時価は2,950,000円であった(部分純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券であっても、満期保有目的債券と同じように債券については償却原価法を適用します(たとえ満期保有目的ではなくても長期的に保有する予定であることに変わりはないと考えているいうことです)。

金利調整差額は80,000円なので、これだけの金利を取得原価に加えます。よって『(借)その他有価証券80,000』となります。また、この80,000円は金利の調整なので有価証券利息として処理します。よって『(貸)有価証券利息80,000』となります。

これでその他有価証券の取得原価が決算日にあるべき原価(償却原価)に修正されました。

次にこの償却原価と時価を比較して評価差額を認識します。償却原価は2,980,000円、時価は2,950,000円なので評価損が30,000円出ています。なので、その他有価証券を30,000円減額します。よって『(貸)その他有価証券30,000』となります。

また、部分純資産直入法では評価損は費用として認識します。なので、純資産の部の勘定科目である「その他有価証券評価差額金」ではなく費用の勘定科目である「その他有価証券評価損」を使います。よって『(借)その他有価証券評価損30,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券
その他有価証券評価損
80,000
30,000
有価証券利息
その他有価証券
80,000
30,000

翌期首

翌期首となった(部分純資産直入法)。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券は洗替方式なので翌期首には決算整理仕訳の逆仕訳を切ってその他有価証券の帳簿価額を取得原価に戻します(償却原価法については逆仕訳は切りません。)。よって『(借)その他有価証券30,000』『(貸)その他有価証券評価損30,000』になります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 30,000 その他有価証券評価損 30,000

その他有価証券の売却

期首にその他有価証券を2,990,000円で売却し、代金は現金で受け取った。この場合の仕訳を考えてみましょう。

その他有価証券を売却したので、帳簿価額を減額します(期首での売却なので、償却原価法を適用する必要はありません。)。帳簿価額は洗替方式によって償却原価である2,980,000円になっています。これを減額するので『(貸)その他有価証券2,980,000』となります。

また、代金2,990,000円は現金で受け取っているので『(借)現金2,990,000』となります。

貸借差額10,000円はその他有価証券を売却したことにより発生した利益です。よって『(貸)その他有価証券売却益10,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
現金 2,990,000 その他有価証券
その他有価証券売却益
2,980,000
10,000

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