キャッシュ・フロー計算書の有用性

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。

キャッシュ・フロー計算書は簿記1級で出てくる財務諸表で「現金の増減」を表します。損益計算書のように「収益」と「費用」を表すわけでもなく、貸借対照表のように「資産」「負債」「純資産(資本)」を表すわけでもありません。

こういった事情もあり、簿記1級を学習しただけではイマイチ有効性が分からない方も多いです。そこで、この記事ではキャッシュ・フロー計算書の有用性について解説します。

キャッシュ・フロー計算書の最も重要な使い方

キャッシュ・フロー計算書を見るときに、まっさきに確認すべきことがあります。それは「『キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの小計の 金額』が『損益計算書の営業利益』より極端に少なくないか」を確認することです。

これらの金額が意味する内容は次のとおりです。

  • 営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額…営業活動によって増えた現金(マイナスの場合は減った現金)
  • 営業利益…営業活動によって獲得した利益(マイナスの場合は損失)

つまり、「『キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額』が『損益計算書の営業利益』より極端に少ない」ということは「計上している利益に対して、回収した現金が極端に少ない」ということを意味します。

このようなことになる理由としては次の2つが考えられます。

  • たまたま偶然
  • 粉飾決算が行われている

たまたま偶然

損益計算書に計上される「収益」と「費用」は「費用収益対応の原則」や「期間配分の原則」などによって、各会計期間に振り分けられています。

たとえ当期に現金で受け取っても、その収益が次期に計上すべきものであれば、収益とはしません。なので、「収益」や「費用」はならされている(ある程度平均されている) と言えます。

それに対して、「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」は現金の動きなので、現金が増えればプラス、減ればマイナスです。たとえ10年分の収益の前受けであっても、当期に受け取ったのであれば、当期の現金の増加として処理されます。

「営業利益」と「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」にはこのような違いがあるので、ズレるのがある意味当然です。なので、偶然ズレが大きくなっているということも考えられます。

粉飾決算が行われている

「収益」や「費用」は適用する会計処理の方法が変われば変わります。また、貸倒引当金の設定など、将来の見積りをもとに会計処理を行う場合、見積りが変われば変わります。つまり、「営業利益」というのは比較的自由に計上することができてしまいます。

それに対して「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」は「営業活動による現金の増減」なので、一切の操作ができません。実際に増減した現金と一致 しないはずがないからです。

どのような会計処理を行っていても、どのような見積りを行っていても手許にある現金の金額には一切影響しないと言えます。

なので粉飾決算を行った場合、「営業利益を偽って多く計上したけれど、営業活動によるキャッシュ・フローはごまかせない」といった状況になります

「偶然」か「粉飾決算」かの判断

「『キャッ シュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額』が『損益計算書の営業利益』より極端に少ない」という状況だったときに、「偶然」な のか「粉飾決算」なのかは非常に重要です。

「偶然」なのか「粉飾決算」なのかを判断できなければ投資判断もできません。そこで、私が行っている分析の手順をお伝えします。

「『キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額』が『損益計算書の営業利益』より極端に少ない」場合の分析方法

まずは、最低過去3年分の「営業利益」と「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」を比較します。

キャッシュ・フローというものは基本的に安定しないので、1年だけ「営業利益」より「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」が少なかったり、「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」が赤字だったりすることはよくあります。

それほど心配する必要はありません。偶然だと考えていいと思います。

ですが、継続的に「営業利益」が「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」よりも常に大きい場合は偶然とは判断できません。そこで、「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」を詳しく分析して原因を探ることになります。

「営業利益」が「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」よりも大きくなるということは、「現金で回収できていない営業利益が多い」ということです。このようになる原因は様々なのですが、代表例は次の2つです。

  • 売上債権の増減額が極端なマイナス
  • 棚卸資産の増減額が極端なマイナス

これらは「粉飾決算」や「粉飾決算とは言えないまでも意図的に利益を増やしている」といった状況にあると考えられます。なぜそういえるのかお伝えします。

売上債権の増減額が極端なマイナス

売上債権の増減額がマイナスになっているということは、売掛金などの売上債権が回収できていないということが考えられます。もし貸借対照表の売上債権(特に売掛金)の残高が毎年売上高の伸び以上に増えている場合、粉飾決算を行っている可能性が極めて高いです。

つまり、「架空売上の計上」を行っているのです。実際には売れていないのに「(借)売掛金×××/(貸)売上×××」という仕訳を切り、循環取引などで商品を発送することで、このような状況(回収できない売掛金が積み上がっていく状況)になります。

このような企業には投資すべきではありません。

棚卸資産の増減額が極端なマイナス

棚卸資産の増減額がマイナスということは、棚卸資産が増えているということを意味します。もちろん、棚卸資産、つまり在庫はある程度は必要で、売上の伸びに比例して棚卸資産が増加するのは別に構いません。むしろ順調です。

しかし、売上高の増加ペース以上に、極端に棚卸資産が増加している場合は要注意です。多すぎる棚卸資産にいいことは一つもありません。

なのに極端に増えているということは、「商品が売れなくなっている」「(製造業の場合)大量に作ることで製品1個あたりの製造原価(固定費)を減らし、利益を多くしている」といったことが考えられます。

これはどちらも「粉飾決算」ではありません。ですが、企業にとっていい状況ではありません。よほどの好材料がない限り投資は見送るべきだと思います。

2つの代表例以外で「継続的に『営業利益』が『営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額』よりも常に大きい場合

「営業利益」が「営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」よりも大きくなるということは、「現金で回収できていない営業利益が多い」ということです。

これは理由はどうあれ、いい傾向ではありません。なので、2つの代表例以外の理由であっても、マイナス材料だと考えるべきです。

「キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの小計の金額」が「損益計算書の営業利益」より極端に少なくない場合、私はこのようにしてキャッシュ・フロー計算書を分析します。

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