- 簿記を勉強していると重要性の原則っていう原則が出てきたんだけど……
- 重要性の原則のどこを中心に勉強したらいいのか分からない
- 重要性の原則について教えて!
重要性の原則は非常に書き方が分かりにくいので、内容をうまく理解できない方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん重要性の原則についても熟知しています。
この記事では重要性の原則について具体例をあげながら分かりやすく解説します。
この記事を読めば、簿記1級や税理士試験の財務諸表論で重要性の原則に関する問題が出題されても自信を持って解答できるようになります。
結論を一言で言うと、重要性の原則とは重要でないものは簡単に処理しても構わないという原則です。重要性の原則は主に消耗品や経過勘定などについて適用されます。
重要性の原則の意義:重要でないものは簡単に処理しても構わない
次の原則が重要性の原則です。
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。
企業会計原則注解-Wikibooks
一言でまとめると、重要ではないものについては簡単に処理しても構わないということです。
「重要性の原則」を適用しても「正規の簿記の原則」に従ったものと認められる
企業会計原則の中に正規の簿記の原則という原則があります。
正規の簿記の原則とは「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」という原則です。
正規の簿記の原則には「すべての取引につき」とあります。文字通りすべての取引を完全に記録すれば企業の資産や負債は全て会計帳簿に記録されるはずです。
ということは、正規の簿記の原則を守っていれば簿外資産や簿外負債は発生することはないといえます。
しかし、重要性の原則を適用すると簿外資産や簿外負債は発生することになります。
消耗品を例に考えてみましょう。消耗品は購入時に「消耗品」という資産として計上する方法と購入時に「消耗品費」という費用として計上する方法があります。
消耗品を購入時に資産として計上していた場合、当期に使用した分だけ期末に消耗品費として費用に振り替えます。
また、消耗品を購入時に費用として計上していた場合、当期に使用しなかった分だけ期末に消耗品として資産に戻します。
この会計処理が適切なのは言うまでもありませんが、全ての消耗品に関して期末にこの会計処理を行うのはかなり煩雑です。また、企業の経済活動における消耗品の割合は非常に微々たるものです。
正確な処理を行うのは手間に対して割に合いません。こういった場合に重要性の原則が適用できます。重要性の原則を適用すると期末の会計処理を簡単にすることができます。
重要性の原則を適用すると、消耗品を購入時に資産として計上していた場合、期末に全ての消耗品を費用に振り替えるので、期末に残っている消耗品が会計帳簿から消えてしまいます。
また、消耗品を購入時に費用として計上していた場合、期末には何も処理を行いません。その結果、期末に残っている消耗品が会計帳簿から消えてしまいます。
消耗品の場合と同じように、重要ではない前払費用や未収収益などもわざわざ資産に戻さないこともできます。この会計処理を行った場合も簿外資産が発生します。
重要性の基準値(金額基準):税引前当期純利益の5%が一般的
どの程度の金額以下であれば重要性の原則を適用しても構わないのかについて厳格な基準はありません。
厳格な基準はありませんが、一般的な監査では「税引前当期純利益の5%」未満であれば重要性の原則を適用します。
例えば税引前当期純利益が1億円だった場合、(1億円×5%=)500万円未満であれば重要性の原則を適用できます。
ただし、「税引前当期純利益の5%」という基準値では「赤字の場合は重要性の原則が適用できない」などの問題があるため、基準値はあくまでも目安で実際には臨機応変に対応します。
重要性の原則の5つの具体例
企業会計原則注解の注1には重要性の原則の具体例が書かれています。
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
(1) 消耗品、消耗工具器具備品その他の貯蔵品等のうち、重要性の乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。
(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。
(3) 引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。
(4) たな卸資産の取得原価に含められる引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用のうち、重要性の乏しいものについては、取得原価に算入しないことができる。
(5) 分割返済の定めのある長期の債権又は債務のうち、期限が一年以内に到来するもので重要性の乏しいものについては、固定資産又は固定負債として表示することができる。
企業会計原則注解-Wikibooks
1から4までは正規の簿記の原則についての適用例で、5は明瞭性の原則についての適用例です。
重要性の原則が一般原則に含まれていない理由:適用しなくてもよいから
重要性の原則は一般原則と同じくらい重要で、事実上「重要性の原則」がなければ「正規の簿記の原則」も「明瞭性の原則」も実行不可能になってしまいます。
これほど重要なのに、なぜ重要性の原則は一般原則に含まれていないのでしょうか。
重要性の原則が一般原則に含まれていないのは「重要性の原則は例外的な取り扱いをあくまでも『認めた』もので、適用しなければ『ならない』ものではないから」です。
細かいことを言えば「原則」という言い方が適切ではないとも言えます。
このような理由から、重要性の原則は一般原則には含まれていないのです。
「重要性の原則」と「会計学の○×問題」の関係
簿記1級の会計学の問題に○×問題が出題されることがあります。会計学の○×問題は、ときどき非常に細かい知識が問われることがあり、手が出ないときもあります。
そのときは次のことを思い出してください。
「全て」「必ず」「絶対に」など、例外を認めないような表現があった場合、その文は誤りである確率が非常に高い
企業会計原則の中には重要性の原則があるので、「どんな場合でも絶対にやらなければならない」という会計処理は非常にわずかになっています。
「例外を認めないような表現があった場合、その文は×である確率が非常に高い」と言えます。このことを知っておくと、それだけで正解を選べることもあるので、ぜひ知っておいて下さい。
【まとめ】重要性の原則とは【基準値(金額基準)も解説】
重要性の原則とは重要でないものは簡単に処理しても構わないという原則です。重要性の原則を適用すると簿外資産や簿外負債は発生します。
「重要性の原則」を適用しても「正規の簿記の原則」に従ったものと認められます。
重要性の原則は主に消耗品や経過勘定などについて適用されます。
重要性の基準値(金額基準)は一般的には「税引前当期純利益の5%」とされています。
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