手形の更改のちょっと難しい話

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では手形の更改のやや細かい論点について解説します。

手形の更改のちょっと難しい話

簿記2級に手形の更改という論点があります。まずは手形の更改の取引と仕訳をご覧ください。リンク先の通り、簿記学習上は次のように仕訳を切ります。

利息を新しい手形の額面に含める方法

借方 金額 貸方 金額
支払手形
支払利息
200,000
4,000
支払手形 204,000

利息分だけはその場で現金で支払う方法

借方 金額 貸方 金額
支払手形
支払利息
200,000
4,000
支払手形
現金
200,000
4,000

簿記学習上はこのとおりで何の問題もないのですが、次のように考えることもできそうです。

「手形の更改は、つまりは貸付(借入)ではないのか?」

もしそうなら、次のような仕訳になるはずです。

利息を新しい手形の額面に含める方法

借方 金額 貸方 金額
支払手形
支払利息
200,000
4,000
手形借入金 204,000

利息分だけはその場で現金で支払う方法

借方 金額 貸方 金額
支払手形
支払利息
200,000
4,000
手形借入金
現金
200,000
4,000

このような仕訳は考えられないのでしょうか。実は、現実にはこのように考えられなくもないのです。どちらが正解かということではなく、考え方を見ていきましょう。

考え方のスタートはやはり「支払手形と手形借入金を区別する理由」からでしょう。なぜなら、もし区別する理由がないのであれば、どちらでもいいということになって、それで話は終わりだからです。

支払手形と手形借入金を区別する理由

支払手形と手形借入金を区別する理由は「営業取引と営業取引以外の取引以外の取引を区別するため」です。

支払手形の金額と仕入の金額を比較することで、仕入代金のうちどれくらいの手形債務が残っているのかを判断するこができます。

もし仕入の金額に対して支払手形の金額の割合が大きければ、それは資金繰りが厳しくて待ってもらっているか、取引上の立場が強くて支払いを遅らせる力があるかです。

もし手形借入金 と支払手形が混ざって表示されれば、このような判断はできなくなります。

だから商品の代金の仕入で振り出した手形は支払手形、お金を借り入れたときに振り出した手形は手形借入金とするのです。

手形の更改の取引の本質

手形の更改は次の2つの意味を持ちます。

  1. 手形の支払期日の延長
  2. 資金の貸し借り

1の意味が強ければ「支払手形」、2の意味が強ければ「手形借入金」です。

支払期日というものは取引の当事者が決めるもので、それを修正するのであれば、やはり支払手形だといえます。

  • 過去の取引では支払期日は6ヶ月先が通常だった
  • 最初から支払期日が6ヶ月の約束手形を振り出した

このような状況の場合は確実に「支払手形」です。

それに対して次のような場合はどうでしょうか。

  • 過去の取引では支払期日は6ヶ月先が通常だった
  • 今回だけ3ヶ月後が支払期日の手形を一度振り出し、支払期日到来日に3ヶ月先まで支払期日を延長した

この取引は「最初から支払期日が6ヶ月の約束手形を振り出した」取引と本質的に同じものだと言えそうです。そのように考えると「後半の3ヶ月も支払手形となる」方が合理的だといえます。

このように考えれば「支払手形」を使う方が合理的です。

ですが、次の取引を考えてみましょう

  • 過去の取引では支払期日は3ヶ月先が通常だった
  • 今回もいつも通り3ヶ月後が支払期日の手形を一度振り出したが、今回だけ支払期日到来日に3ヶ月先まで支払期日を延長した

この取引を表面だけ見れば先ほどの取引と同じです。ですが明らかに資金を貸し付けている意味合いが強くなっています。この場合は「手形借入金」を使う方が合理的だと言えます。

大切なことは「取引の本質から仕訳を考えること」です。

もう一つの考え方

このままでは「状況によってどちらでもあり」という結論になっています。もちろん実務上はそういった考え方もありで、実際「手形借入金」で処理する例もあります。

ですが、簿記検定では確実に「支払手形」を使います。その理由を考えるためには次の視点が大切です。

「相手が取引相手でなくても貸すのか?」

商品販売業をしている企業はお金を貸すのが仕事ではありません。もちろん資金繰りに余裕があるときに優良な融資先を見つけて、リスクとリターンを考えて融資を決める場合はあるでしょう。

ですが、「前もってよく調べたわけでもない相手にお金を貸すのか」と言われればほぼ100%「No」です。特に手形代金が支払えないという状況なのだから、かなり資金繰りが苦しいことが分かります。もし知らない相手であれば貸さなくて当然です。

それを貸すということは、やはり「取引相手だから、これからの付き合いもある」「ここで貸さなければ他の取引先に冷たいと思われ、営業活動に悪影響が出る」といった理由からなのではないでしょうか。

そのように考えると、貸付の意味合いが強いとしても「営業活動の一部」と考えることもできます。なので「手形借入金」よりも「支払手形」とすることにも一理あるのです。

このような理由から簿記検定では「支払手形」を使うことが通常となっています。

まとめ

次のような考え方が手形の更改にはあります。

  • 手形の更改は「手形の支払期日の延長」の意味が強ければ支払手形、「資金の貸し借り」の意味が強ければ手形貸付金が合理的
  • 資金繰りが悪いと知りながら貸すのは「営業活動に一部」と考えることもできるので支払手形を使うのにも一理ある
  • 「資金の貸し借り」であっても支払手形を使うのが一理あるのであれば「手形の更改=営業取引」としても問題はない

試験には出ないので覚える必要はありません。取引の本質を考えるとはどういうことなのかをイメージしてもらえればそれだけで十分です。

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