損益計算書に出てくる売上や利益の意味

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。報告式の損益計算書は売上高からスタートし、ここからいろいろな費用を引いていく形で作られます。また、その途中で様々な利益が計上されます。この記事では損益計算書に出てくる売上や利益の意味について解説します。

売上高

売上高とそもそも何を意味するものでしょうか。これは簡単そうに見えてなかなか難しい問題です。

売上高=販売単価×販売数量

この式で売上高は求まります。ということは売上高は「販売した商品の単価×数量」つまり「お客様から受け取った代金の合計」と言えます。

ここまでは色々な書籍やブログで見かける「売上高」の意味ですが、さらに考えを進めてみましょう。

この「お客様から受け取った代金の合計」というのはあくまでも企業からの視点で売上高をとらえています。売上高というのはお客様がいなければ絶対に発生しないものなので、お客様の視点から売上高をとらえなおしてみることも大切です。

そもそもお客様はなぜ企業の商品(製品)に対して代金を支払うのでしょうか。それは「お客様がその代金以上の価値がその商品にあると判断したから」以外ありえません。代金以上の価値がなければお客様は商品を買うことはないからです。

このように考えると、売上高とは「お客様が当社の商品に対して支払った金額」であり「お客様が当社の商品から得られると期待した価値」ということになります。

企業経営の本質を考えるために、売上高を次のように定義しておこうと思います。

  • お客様が当社の商品に対して支払った金額
  • お客様が当社の商品から得られると期待した価値

企業が忘れてはいけない売上高の意味

経営者としての意見ですが、次の2つは絶対に忘れてはならないと思っています。

  • 売上高が高いということは、それだけお客様から当社に対する期待が大きいということ
  • 売上高のアップを目指すということはそれだけ多くの期待に応えなければならないということ

これらのことを忘れなければ「売上高を営業力のみでゴリ押しして上げようとする」という間違いはおかさないと思っています。

売上原価

売上総利益は次の式で求めることができます。

売上総利益=売上高-売上原価

つまり、売上原価の意味を定義することで売上総利益は自然と定義されます。というわけで売上原価の意味を先に考えてみましょう。

売上原価とは、文字通り「売上に対する原価」です。これは商品販売業であれば「販売した商品の仕入原価」、製造業では「製品を製造するのにかかった原価」、サービス業では「そのサービスを行う人の人件費」となります。

つまり売上原価とは「お客様に提供する商品(製品)を製造するのに直接かかった費用」です(サービス業の場合はサービスを提供するのに直接かかった費用です。)。

売上総利益

売上高を「お客様が当社の商品に対して支払った金額」と定義し、売上原価を「お客様に提供する商品を仕入れるのに直接かかった費用」と考えると、売上総利益は「お客様に商品を提供することで得られた直接の利益」という意味になると考えられます。

また、売上高を「お客様が当社の商品から得られると期待した価値」と定義し、売上原価を「お客様の期待に応えるためにかかった費用」と考えると、売上総利益は「当社がお客様の期待に応えることによって得られた利益」という意味になると考えられます。

売上総利益とはこのような意味を持っています。

売上総利益率

売上総利益を売上高でわった値を売上総利益率と言います。これは言い換えると「『売上高』に対する『企業が生みだした付加価値』の割合」だと言えます。

売上総利益率のもう一つの意味

売上総利益率にはもう一つ意味があります。それは「どれだけの値下げに耐えられるのか」です(厳密には変動費と固定費を区別して分析しなければなりません。ここではおおまかに考えてください。)。

例えば、売上高が1,000,000円、売上原価が600,000円の場合、売上総利益は400,000円、売上総利益率は40%となります。この場合、売上高が600,000円以下になってしまうと、つまり40%以上値下げしてしまうと売上総利益が0になってしまいます。

売上総利益が0になるということは、仕入値より安い価格で売っている(原価割れでの販売)ということなので、ビジネスが事実上破綻しています。

この例からも分かるように、売上総利益率は「どれだけ値下げに耐えられるのか」「ビジネスとして成立する価格にどれだけ近いのか」を表しているといえます。

売上総利益率の目安

売上総利益率は業種によって違いがあります。売上総利益率というのは一言で言えば「その企業が生み出した価値の割合」なので、その価値が大きい業種ほど大きく、逆に小さい業種ほど小さくなります。

価値というのは量が少ないものほど高く、量が多いものほど低くなります(マツタケの価格が高いのは生産量が少ないからです。逆にシイタケの値段が安いのは生産量が多いからです。)。

なので、売上総利益率は「他に真似できないような商品を作っている企業」ほど生産量が少ないので高く、逆に「同業他社と似た製品を作っている企業」ほど生産量が多いので低くなります。

参考程度にいくつかの企業の売上総利益を上げておきます。

  • ソフトバンク(携帯電話):約53%(2014年)
  • トヨタ自動車(自動車の製造):約22%(2014年)

有名な企業をランダムであげましたが、トヨタ自動車が苦戦しています。やはり自動車は多くの会社が作っているので、多くの付加価値をあげられていないと考えられます。

ソフトバンクも携帯電話なので多くの付加価値をあげられていないと考えてしまいそうですが、高い売上総利益率をあげています。やはりスマート フォンにいち早く乗り出したことで独占的な利益を得ているのでしょうか。

詳しく調べていないのでなんとも言えませんが、高い売上総利益率を出せている以上、何か理由がありそうです。

この売上総利益率は「その企業のビジネスそのものの魅力」を意味していると言えます。個人的な意見ですが、私は売上総利益率は最低でも40%はないと魅力的なビジネスではないと考えています。

次回は営業利益について考えてみようと思います。

販売費及び一般管理費

営業利益は次の式で求めることができます。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

つまり、「販売費及び一般管理費」の意味を定義することで営業利益は自然と定義されます。というわけで「販売費及び一般管理費」の意味を先に考えてみましょう。

販売費及び一般管理費とは、文字通り、販売費と一般管理費です。具体的には次のようなものを意味します。

  • 販売費(販売のための費用):広告宣伝費・営業マンの人件費など
  • 一般管理費(事業を行っていくための費用):本社の建物の減価償却費、人事部・経理部の人件費、研究開発費など

つまり「販売費及び一般管理費」とは「販売のための費用と事業を行っていくための費用(売上原価は除く)」です。

営業利益

営業利益は売上高(お客様が当社の商品から得られると期待した価値)から売上原価と販売費及び一般管理費(企業が営業活動を行うためにかかった費用全体)を除いた金額です。営業利益は「企業が本業で稼いだ利益」を表します。

営業利益とはこのような意味を持っています。

売上高営業利益率

営業利益を売上高でわった値を売上高営業利益率と言います。これは言い換えると「『売上高』に対する『企業が本業で稼いだ利益』の割合」だと言えます。

売上高営業利益率の目安

売上高営業利益率というのは一言で言えば「その企業が稼ぎ出した利益の割合」です。

なので、簡単に言えば、この売上高営業利益率は「金儲けのうまさ」を表します(売上総利益率は企業が生み出す価値です。売上高営業利益率はこの「企業が生み出す価値」までも含んだ金儲けのうまさを表します。)。

参考程度にいくつかの企業の売上高営業利益率を上げておきます。

  • ソフトバンク(携帯電話):約16%(2014年)
  • トヨタ自動車(自動車の製造):約6%(2014年)

売上総利益のときと同じ企業をあげています。「ソフトバンク」「トヨタ自動車」ともに「販売費及び一般管理費」はかなりかかっているようです。そのため売上総利益がかなり削られています。

営業外収益・営業外費用

経常利益は次の式で求めることができます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

つまり、「営業外収益」と「営業外費用」の意味を定義することで経常利益は自然と定義されます。というわけで「営業外収益」と「営業外費用」の意味を先に考えてみましょう。

営業外収益

営業外収益とは「本業以外で得られる収益」です。具体的には「受取利息」「有価証券利息」など、「余剰資金を運用して得られた利益」を意味します。

営業外費用

営業外費用とは「本業のため以外の目的でかかった費用」です。具体的には「支払利息」「社債利息」など、「資金を調達するためのコスト」を意味します。

経常利益

経常利益は営業利益に「資金を調達するためのコスト」や「余剰資金を運用して得られた利益」を加減した金額です。経常利益は「企業の資金力も含めた実力」を表します

経常利益とはこのような意味を持っています。

売上高経常利益率

経常利益を売上高でわった値を売上高経常利益率と言います。これは言い換えると「『売上高』に対する『資金力も含めた企業が稼いだ利益』の割合」だと言えます。

売上高経常利益率の目安

売上高経常利益率というのは一言で言えば「資金力も含めた企業が稼ぎ出した利益の割合」です。なので、簡単に言えば、この売上高経常利益率は「金儲けのうまさと資金力を総合した企業の実力」を表します。

参考程度にいくつかの企業の売上高経常利益率を上げておきます。

  • ソフトバンク(携帯電話):約14%(2014年)
  • トヨタ自動車(自動車の製造):約7%(2014年)

売上総利益のときと同じ企業をあげています。ソフトバンクは売上高営業利益率より2%下がっていますが、トヨタ自動車は1%上がっています。ここから、資金力はトヨタ自動車の方があると考えられます。

特別利益・特別損失

税引前当期純利益は次の式で求めることができます。

  • 税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

つまり、「特別利益」と「特別損失」の意味を定義することで税引前当期純利益は自然と定義されます。というわけで「特別利益」と「特別損失」の意味を先に考えてみましょう。

特別利益

特別利益とは「本年度限りの臨時の収益」です。具体的には「固定資産売却益」「子会社株式売却益」などが特別利益にあたります。

特別損失

特別損失とは「本年度限りの臨時の費用」です。具体的には「固定資産売却損」「子会社株式売却損」などが特別損失にあたります。

税引前当期純利益

税引前当期純利益は経常利益に「特別利益」と「特別損失」を加減した金額です。税引前当期純利益は「今年度限りの特別な損益も含んだ企業の実力」を表します

税引前当期純利益とはこのような意味を持っています。

売上高税引前当期純利益率

税引前当期純利益を売上高で割った値を売上高税引前当期純利益率と言います。これは言い換えると「『売上高』に対する『今年度限りの特別な損益も含んだ企業が稼いだ利益』の割合」だと言えます。

売上高税引前当期純利益率の目安

売上高税引前当期純利益率というのは一言で言えば「今年度限りの特別な損益も含んだ企業が稼いだ利益」です。なので、簡単に言えば、この売上高税引前当期純利益率は「金儲けのうまさと資金力に今年度限りの特別な損益までも総合した企業の実力」を表します。

参考程度にいくつかの企業の売上高税引前当期純利益率を上げておきます。

  • ソフトバンク(携帯電話):約14%(2014年)
  • トヨタ自動車(自動車の製造):約10%(2014年)

売上総利益のときと同じ企業をあげています。どちらも特別損益が発生していないので、売上高経常利益率と全く同じになっています。

売上高税引前当期純利益率自体に大きな意味はありません。なぜなら、本当に知りたいのは将来の業績で、そのために現在の業績を分析しているからです。特別利益も特別損失も来期には発生しないので無視していいということになります。

ですが、売上高経常利益率と売上高税引前当期純利益率が大きく異なる場合、つまり、特別利益や特別損失が大量に発生している場合は注意が必要です。この場合チェックする点次の2つです。

  • 本当に今年度だけなのか
  • 特別利益や特別損失が来期以降に悪影響を及ぼすことはないのか

本当に今年度だけなのか

経常利益と比べて税引前当期純利益は投資家に重視されません。それは経営者も知っているので、利益はできるだけ損益計算書の上に、損失はできるだけ損益計算書の下に持ってこようとします。

つまり「毎期発生する費用でも何とかして特別損失にしたい」という動機が経営者にはあるのです。

なので、特別損失だから「今期だけ」と決め付けるのはやや危険です。本当に「今期だけ」なのかをチェックする必要があります。

チェックの方法は「過去の財務諸表の特別損失もチェックする」です。固定資産の売却は毎期行うようなことではないので通常は特別損失なのですが、毎期行う企業もあります。この場合、毎期特別損失に「固定資産売却損」が発生しています。

このように過去の財務諸表をチェックして、同じものが毎回特別損失に計上されていたら、その特別損失は営業外費用や販売費及び一般管理費に含めて分析する必要があります。

ちなみに特別利益に関しては、経営者に「毎期継続的に発生する利益」を特別利益に含める動機がないので、特に気にしなくても構いません。

特別利益や特別損失が来期以降に悪影響を及ぼすことはないのか

特別利益や特別損失は、それ自体が「今期だけ」だとしても、影響が「継続的に」発生することがあります。

例えば、「固定資産の売却によって多額の特別利益が 発生した」場合、もし「資金繰りが悪く資金調達のために売るべきではない資産を仕方なく売却した」という事情があったらどうでしょう。来期以降悪影響が出 るのは確実です。

このように、たとえ特別利益であっても将来に悪影響が出ることも考えられます。なので多額の特別利益や特別損失があった場合は状況を確認することが大切です。

法人税等

当期純利益は次の式で求めることができます。

  • 当期純利益=税引前当期純利益-法人税等

法人税等とは、国に対して納める税金です。つまり当期純利益とは「法人税等を払った後に残った利益」を意味します。これは当期純利益から見ると「投資家に分配できる利益」「投資家が実際に手に入れた利益」だと言えます

当期純利益とはこのような意味を持っています。

売上高当期純利益率

当期純利益を売上高で割った値を売上高当期純利益率と言います。これは言い換えると「『売上高』に対する法人税等を払った後に残った利益』の割合」だと言えます。

売上高当期純利益率の目安

売上高当期純利益率というのは一言で言えば「投資家が最終的に手に入れた利益の割合」です。

参考程度にいくつかの企業の売上高当期純利益率を上げておきます。

  • ソフトバンク(携帯電話):約9%(2014年)
  • トヨタ自動車(自動車の製造):約7%(2014年)

売上総利益のときと同じ企業をあげています。ここでのポイントは「きちんと税金を払っているか」です。

もちろん投資家としては税金は費用なので少ないに越したことはありません。ですが、税金が適切に支払われていないということは「税法では認められない利益が計上されている」疑いがあります

会計は保守主義という原則があり、収益は遅く、費用は早く計上する方向で利益を計算します。それに対して税法はできるだけ税金を多く回収しようとするので、収益(益金)は早く、費用(損金)は遅く計上する方向で利益(課税所得)を計算しようとします。

この結果、利益よりも課税所得が大きくなる傾向があり、結果税金は多めになるのが通常です。このような状況から考えて、税引前当期純利益の40%(実効税率)よりも少ない金額が法人税等として計上されている場合はかなり特殊な状況だと言えます。

だからこそ「税法では認められない利益が計上されている」疑いがかかってくるのです。

なので、もし法人税等が税引前当期純利益の40%よりも極端に少ない場合にはチェックが必要です。具体的には次のようなチェックを行います。

  • 前期以前の損失が繰り越されていて、その損失と利益が相殺されていることが確認できる
  • 国家政策上の優遇措置が取られていて税金が減らされていることが確認できる
  • その他、納得できる事情があることが確認できる

このように、「法人税等が税引前当期純利益の40%よりも極端に少ない正当な理由」が確認できた場合は一安心です。ですが、そのような正当な理由が確認できていない場合は投資は見送った方がいいかもしれません。

このような損益計算書の見方は簿記を勉強しただけでは難しいかもしれません。ですが、簿記が分かっていないと本当の意味で財務諸表の分析はできません。投資を行いたい人も簿記の勉強は大切だと感じています。

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