- 仕入諸掛が仕入に含まれている場合の仕入返品はどうしたらいいんだろう……
- 一部だけ返品された場合の仕入諸掛の処理が分からない
- 仕入返品の仕訳について教えて!
「仕入返品の仕訳は仕入の逆仕訳を切る」と簿記3級で勉強しますが、仕入に仕入諸掛が含まれている場合は簡単にはいかず、混乱してしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん仕入返品の仕訳についても熟知しています。
この記事では仕入諸掛が仕入に含まれている場合の仕入返品について解説します。
この記事を読めば取引の考え方と仕訳の理解が深まります。
結論を一言でいうと、実務上は簡便である「仕入諸掛を仕入勘定に含める方法」が採用されます。
仕入返品の2つの仕訳

商品1,000個を1個2,000円で掛で購入し、引取運賃180,000円(当社負担)を現金で支払った。
この例題の仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 2,180,000 | 買掛金 現金 | 2,000,000 180,000 |
この仕訳については「仕入諸掛とは【なぜ売上原価に含めるのか】」で詳しく解説しています。
この商品の仕入単価は(仕入原価2,180,000円÷仕入数量1,000個=)2,180円です。
では本題の返品です。
この商品の一部、100個を返品した。なお、返品に関する送料は無料である。
この例題の仕訳について考えてみます。考えられるのは次の2つの仕訳です。
- (借)買掛金 200,000/(貸)仕入 218,000
(借)支払運賃 18,000/ - (借)買掛金 200,000/(貸)仕入 200,000
1の仕訳:返品した商品に対する仕入諸掛を仕入原価に含めない方法
1の仕訳は返品した商品に対する引取運賃は仕入勘定に含めず、引取運賃として当期の費用としています。
1の仕訳を切った後、最初の仕訳は次のように修正されます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 支払運賃 | 1,962,000 18,000 | 買掛金 現金 | 1,800,000 180,000 |
仕入原価が1,962,000円になっています。1,962,000の意味は「当初の仕入原価2,180,000円×90%」です。
仕入単価は(仕入原価1,962,000円÷仕入数量900個=)2,180円のままで返品前と同じです。
支払運賃が仕入の量に完全に比例する場合は「返品した商品に対する仕入諸掛を仕入原価に含めない仕訳」が合理的です。
2の仕訳:返品した商品に対する仕入諸掛を仕入勘定に含める方法
2の仕訳は返品した商品に対する引取運賃は仕入勘定に含めることになります。結果的に支払運賃を残り900個に負担させることになります。
2の仕訳を切った後、最初の仕訳は次のように修正されます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 1,980,000 | 買掛金 現金 | 1,800,000 180,000 |
仕入原価が1,980,000円になっています。仕入単価は(仕入原価1,980,000円÷仕入数量900個=)2,200円に修正されます。
同じ支払運賃を少ない商品に負担させることになるので仕入単価が上がるというわけです。
商品の仕入数量に関わらず支払運賃が定額の場合は「返品した商品に対する仕入諸掛を仕入原価に含める方法」が合理的です。
実務的には「返品した商品に対する仕入諸掛を仕入勘定に含める方法(2の方法)」

支払運賃が仕入量に完全に比例するときは1の仕訳の方が合理的です。逆に支払運賃が完全に定額の場合は2の仕訳の方が合理的です。
しかし、実務上はどちらも極端な料金体系なのでまずありえません。ではどちらで処理すべきでしょうか。
「返品した分の引取運賃を残った商品に負担させるのは合理的ではない」と考えて1が適切という意見にも一理あります。
しかし、実務上は2の「返品した商品に対する仕入諸掛を仕入勘定に含める方法」ほとんどです。支払運賃を計算するのに手間がかかるからです。
ただし、2の「仕入諸掛を仕入勘定に含める方法」を採用した場合、商品有高帳でも単価の修正をしなければなりません。
【まとめ】仕入返品の2つの仕訳

商品を返品した場合、その商品に対して支払っていた仕入諸掛の処理について「仕入諸掛を仕入原価に含めない方法」と「仕入諸掛を仕入勘定に含める方法」の2つが考えられます。
実務上は簡便である「返品した商品に対する仕入諸掛を仕入勘定に含める方法」が採用されます。
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