複式簿記の歴史

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  • 簿記を勉強していると会計処理の意味が分からない場合がよくあるんだけど……
  • 複式簿記の歴史と現在の会計処理の関係がうまく結びつかない
  • 複式簿記の歴史について教えて!

簿記で勉強する会計処理を理解するためには、簿記の歴史を知っておくことが近道です。簿記の歴史を知っておくことで会計処理の理由がつかみやすいからです。

しかし、簿記の歴史は解説されることが少ないことから理解できずに困っている方が非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん複式簿記の歴史についても熟知しています。

この記事では簿記2級に合格するために必要な複式簿記の歴史に関する知識を解説します。

この記事を読めば複式簿記の歴史をより深く理解できるので、会計処理の理解も深めることができるようになります。

結論を一言で言うと、複式簿記の歴史は「貸借対照表を重視→損益計算書を重視→貸借対照表を重視」と移り変わってきています。

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複式簿記の歴史

簿記の歴史は簿記の目的の歴史でもあります。簿記の目的は企業の財政状態を経営成績を報告することです。

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簿記の目的については「簿記の2つの目的とは」で詳しく解説しています。

簿記の目的は企業の財政状態を経営成績を報告することですが、「財政状態」と「経営成績」のどちらを重視するのかについては歴史的な流れがあります。

複式簿記の歴史(第一段階):貸借対照表重視

簿記の最も原始的な目的は「企業の財政状態を債権者(お金を貸してくれる人など)に報告すること」でした。

企業にお金を貸す人は、貸したお金がきちんと戻ってくることが一番の関心ごとです。

そこで、会計では「企業にどれくらいの価値がある資産があって(資産)」「資産のうちどれくらいの金額が他人への支払いに充てられるもので(負債)」「誰にも支払わなくてもいい金額がこれだけある(資本)」ということを報告することを重視していたのです。

例えば、お金を借りるときに「価値ある資産が1億円あって、負債が4,000万円あるから、資本は6,000万円です。だから借りたお金は資産を換金してその中から負債を返済した残りの6,000万円で返せるから安心して貸してください」といった形で説明するために会計が使われていたということです。

現在でも行われています。

「借りたお金を返すことができることを説明する」という目的で財務諸表を作る場合、最も大切な財務諸表は「貸借対照表」です。貸借対照表には資産と負債と資本が計上されているからです。

貸借対照表を重視する立場では損益計算書は資本の増減の理由を説明する書類、いわば「資本変動説明書」の意味を持ち、貸借対照表を補足するものという立ち位置の財務諸表になります。

会計が使われていた当初はこのような形だったのですが、歴史が変わり「出資」という経済活動が活発になってきました。

出資者は企業の利益に応じて配分(配当)を受けるので、元本が戻ってくるかが最大の関心ごとではなくなってきます。

そこで簿記の目的も第二段階へと移っていきます。

複式簿記の歴史(第二段階):損益計算書重視

出資者にとって最も関心があることは利益の大きさと利益の質です。

利益の質とは具体的には「一時的な利益なのか、それとも継続して獲得することが期待できる利益なのか」です。

出資者は企業の利益に応じて配分(配当)を受けるからです。

利益の計算が会計の目的になってくると、最も大切な財務諸表は「損益計算書」になります。損益計算書には収益と費用から計算される利益が計上されているからです。

損益計算書を重視する立場では貸借対照表は利益を計算するための書類、いわば「これまで費用や収益にならなかったものを計上する書類」の意味を持ち、損益計算書を補足するものという立ち位置の財務諸表ということになります。

例えば、建物の金額は「これまで減価償却費として費用にならなかったもの」を表しています。「これまで費用や収益にならなかったもの」というのはこういうことです。

「貸借対照表はこれまで費用や収益にならなかったものを計上する書類である」という立ち位置で貸借対照表を考える場合、貸借対照表に計上する資産は「価値あるもの」であるとは限りません。

貸借対照表に「企業にどれだけの価値ある資産があるのか」が重視されていないからです。

現在の会計では「のれん」や「繰延資産」など、明らかに「売却価値も使用価値もないもの」の計上が認められています

「売却価値も使用価値もないものが貸借対照表に計上されている」ということは利益計算を重視している、つまり会計の目的が第二段階に入っている何よりの証拠だと言えます。

また、建物や商品などの金額も原価を元に計上しています。減価償却も原価を元に行っています。

原価を元に会計処理を行う理由も「建物や商品の売却価値」ではなく利益の金額を重視しているからです。

建物の金額は「建物の価値」ではなく「これから減価償却費として費用になっていく金額」を意味しています。

このように歴史が「貸借対照表を企業の財産を表す書類として重視」→「損益計算書を企業の利益を表す書類として重視」と移り変わってきました。

それが2000年代になって第三段階に入ってきました。また貸借対照表を重視する流れに入ってきたのです。

複式簿記の歴史(第三段階):貸借対照表重視

近年、投資期間が以前に比べて短くなってきています。デイトレードは極端な例としても、投資から売却まで数ヶ月から1年程度というケースは決して珍しくありません。

「投資期間の短期化」が進むと、1年に1回の会計報告では遅すぎるということになってきました。

1年に1回の会計報告では遅すぎるという事情から、近年、四半期報告という形で3ヶ月に1回の会計報告が義務付けられました

ところで、わずか3ヶ月で企業の本業の利益が大きく変わるものなのでしょうか。

企業の業種にもよりますが、長期的な視点にたったビジネスを行っている企業の場合、3ヶ月程度では本業の利益(売上総利益)は大きくは変動しないものです。

では、3ヶ月程度の大きく変わるものは何かというと、保有している「株式」「社債」「不動産」「デリバティブ(先物、オプション、スワップなど)」など、いわゆる価格が変動する金融商品の金額です。

四半期報告ではあまり大きく変動しない利益ではなく、大きく変動する可能性がある金融商品の金額が重視されているのです。

このように、投資期間の短期化の結果、重視される情報が「利益(短期間ではあまり変動しない)」から「財産(短期間で大きく変動する金融商品など)」に変わってきました。

そこで、会計でも財産の価値の計算が重視されるようになってきました。

財産の価値の計算が重視されるという傾向が具体的に表れてきているのが次のような会計処理です。

  • 金融商品の時価評価:金融商品を取得原価ではなく時価で評価すること
  • 固定資産の減損処理:固定資産の価値が取得原価より低くなった場合、固定資産の金額を引き下げること

時価評価や減損処理は保有している資産の価値の変動を適正に表すことを目的としています。

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【まとめ】複式簿記の歴史

複式簿記の目的は次のように移り変わってきています。

  1. 貸借対照表を重視(企業の財産の価値を債権者が重視)
  2. 損益計算書を重視(企業の利益の量と質を投資者が重視)
  3. 貸借対照表を重視(企業の財産の価値を投資者が重視)

ただ、財産の価値を重視する傾向が出てきているとはいえ、まだ一部であり、やはり会計の主要な目的は利益の計算にあるといえます。現在は第三段階に移りつつある状態といったところでしょうか。

日商簿記でここまでの理解が問われることはありません。しかし、簿記をきちんと理解するためには「会計の目的の移り変わり」の理解は重要です。頭の片隅に入れておいてください。

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