- 工業簿記を勉強していると数学が出てくるんだけど数学できないんだよなぁ……
- 工業簿記で必要な数学にどういうものがあるのか分からない
- 工業簿記で最低限必要な数学の単元を教えて!
工業簿記では数学が必要になることがありますが、数学が苦手なまま工業簿記の勉強を始めてしまい、工業簿記を苦手にしてしまう人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん工業簿記で必要な数学についても熟知しています。
この記事では工業簿記で必要な数学について解説します。
この記事を読めば工業簿記で必要な数学がよく分かるので、数学の準備を万全にして工業簿記の勉強に入ることができます。
結論を言うと、簿記2級の工業簿記で必要な数学は「連立方程式」と「一次関数」です。どちらも中学生のときに勉強した内容なので、しっかりと復習しておけばすぐに思い出します。
工業簿記の前に復習すべき数学

簿記3級までは足し算、引き算、かけ算、わり算さえしっかりとしておけば特に問題はありません。しかし、簿記2級になると工業簿記が試験範囲に入ってきます。
工業簿記では連立方程式や1次関数が必要になります。
連立方程式:文字が2つ、式が2つある一次方程式
次のような式を連立方程式といいます。
63,200=a+100b
79,200=a+180b
連立方程式の立て方そのものは簿記2級で詳しく学習します。しかし連立方程式の解き方そのものは中学数学の範囲であるため、簿記2級では特に詳しくは学習しません。
工業簿記に入る前に連立方程式を解けるようにしておかなければ、連立方程式は立てられても答えが求められないことになってしまいます。
そうならないように、ここで連立方程式の解き方を確認しておきましょう。
63,200=a+100b … 1
79,200=a+180b … 2
まず連立方程式を解く前に次の4つの性質を理解しておくことが大切です。
- 同じものに同じものを足したら、その答えは同じになる
- 同じものから同じものを引いたら、その答えは同じになる
- 同じものに同じものをかけたら、その答えは同じになる
- 同じものを同じもので割ったら、その答えは同じになる
「同じもの」というのを「てんびんがつりあっているときの『左』と『右』」と考えると分かりやすいです。そのようにニュアンスを変えて、上の4つの性質を書き換えてみます。
- てんびんがつりあっている状態で、左右両方に同じものを入れてもつりあったまま
- てんびんがつりあっている状態で、左右両方から同じものを取り除いてもつりあったまま
- てんびんがつりあっている状態で、左右両方を何倍かしてもつりあったまま
- てんびんがつりあっている状態で、左右両方何分の1かしてもつりあったまま
まずはこのてんびんの感覚を徹底的に頭に入れることが必要です。つりあった状態を維持したまま式を変形してaとbを求めます。
では、式をもう一度書いて解いていきましょう。
63,200=a+100b … 1
79,200=a+180b … 2
1の式は「63,200」と「a+100b」が同じだという意味です。同様に2の式は「79,200」と「a+180b」が同じだという意味です。
「同じものから同じものを引いたら、その答えは同じになる」という性質から次の式が成り立ちます。
63,200-79,200=a+100b-(a+180b)
かっこを外します。
63,200-79,200=a+100b-a-180b
となります。
「63,200-79,200=a+100b-a-180b」を簡単にします。
-16,000=-80b
4の「同じものを同じもので割ったら、その答えは同じになる」という性質を利用して、左右両方を-80で割ります。
-16,000÷(-80)=-80b÷(-80)
計算します。
200=b
bが200と求まります。bが200だと分かったので、1の式である「63,200=a+100b」は「63,200=a+100×200」と同じになります。
あとはこの式を解きます。
63,200=a+100×200
63,200=a+20,000
「同じもから同じものを引いたら、その答えは同じになる」という性質を利用して、左右両方から20,000を引きます。
63,200-20,000=a+20,000-20,000
43,200=a
aが43,200と求まります。これでaとbの両方が求まりました。
簿記2級でよく使うこの連立方程式を思い出しておくことが大切です。
1次関数:y=ax+b
次の式が1次関数の式です。
y=ax+b
「y=ax+b」がどのように使われるのかは簿記2級で詳しく学習しますが、「y=ax+b」そのものについては特に簿記2級では学習しません。
工業簿記に入る前に1次関数そのものを理解しておかなければ、1次関数の使い方を身につけることはできません。
そうならないように、ここで1次関数そのものを確認しておきましょう。
「yはxの関数である」とは「xが決まれば自動的にyが決まる」ということ
1次関数に入る前に、関数とは何かについて知っておく必要があります。「yはxの関数である」という言葉は「xが決まれば自動的にyが決まる」という意味になります。
例えば、1個100円の大根があったとします。xが購入量、yが全体の代金だったとします。この場合、x(購入量)が決まれば、y(全体の代金)も自動的に決まります。
「xが決まれば自動的にyが決まる」という意味が「yはxの関数である」という意味です。
1次:xを1回だけかける
関数については先ほどの通りですが、xとyの関係には色々なものがありえます。例えばyが面積、xが正方形の1辺の長さだった場合、yはxを2回かけたものになります。
yがxを2回かけることで求まる関数を2次関数といいます。
逆にxを1回しかかけない場合は1次関数です。先ほどの大根の例は1次関数です。
工業簿記における1次関数:xが設備装置の使用量、yが発生する費用
工業簿記ではxが操業度(設備装置の使用量)、yが発生する費用の形で出されます。
操業度や費用のイメージが工業簿記を学習する前の段階では難しいので、ここではxをエアコンの使用時間、yを電気代として考えてみましょう。
ちなみに、電気を使うものはエアコン以外にはないものとします。
この場合、エアコンの使用時間が決まれば自動的に電気代も決まります。ということは、yはxの関数であるといえます。しかし、エアコンの使用時間と電気代の関係は簡単には分かりません。
そこで、具体的に調べることになります。過去の経験から次の2つの情報が分かったとしましょう。
- エアコンを100時間つけたときに、電気代は20,000円だった
- エアコンを200時間つけたときに、電気代は30,000円だった
この情報が分かることで、x(エアコンの使用時間)とy(電気代)の関係を表す式が計算できます。
xが100のときにyが20,000だということが分かっているので、y=ax+bのxを100に、yを20,000に変えてもいいということです。「20,000=100a+b」となります。
同様にxが200のときにyが30,000だということが分かっているので、y=ax+bのxを200に、yを30,000に変えてもいいということです。「30,000=200a+b」となります。
20,000=100a+b
30,000=200a+b
この連立方程式を解くことで、a=100、b=10,000だと分かります。また、xとyの関係を表した式はy=100x+10,000だと分かります。
1次関数の式の意味:「aはxが1変化したときのyの変化量を表す」「bは固定費を表す」
「y=100x+10,000」の意味についても考えておきましょう。
まずは10,000の意味から考えてみましょう。10,000という数字はxが0のときのyです。つまり、エアコンを全く使っていないときの電気代を表します。
電気代というのは基本料金というものがあるので、全く使わなくても0にはなりません。
つまり、10,000という数字は全く使わなくても支払わなくてはいけない費用、工業簿記の言葉を使うと「固定費」を表します。y=ax+bのbは固定費を表すということです。
次は100の意味を考えてみましょう。
「y=100x+10,000」式の意味を考えると「xが1増えるごとにyが100増える」ということがわかります。つまり「エアコンを1時間使うごとに増える電気代」を表します。
y=ax+bのaはxが1変化したときのyの変化量を表すということです。
それぞれの数字の意味を1次関数と合わせて理解しておくことで簿記の理解も進みます。
【まとめ】工業簿記の前に復習すべき数学

工業簿記で必要な数学は「連立方程式」と「一次関数」です。
連立方程式は文字が2つ、式が2つある一次方程式です。
1次関数は「y=ax+b」です。工業簿記ではxが操業度(設備装置の使用量)、yが発生する費用の形で出されます。
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