
簿記を勉強していると単式簿記と複式簿記っていう簿記があるって聞いたんだけど、どう違うのかな。単式簿記と複式簿記について知りたいな。
こういった疑問に答えます。
ちなみに、この記事を書いている私は日商簿記に合格するための通信講座を2012年から運営し、これまでに数百人の合格者を送り出させていただいています。もちろん私自身も簿記1級に合格しています。こういった私が解説していきます。
単式簿記と複式簿記

簿記を記帳の仕方で分類した場合、単式簿記と複式簿記に分けることができます。
単式簿記
単式簿記とは1つの勘定科目の増減のみに注目して帳簿を作成していく簿記をいいます。現金のみの増減に注目して作る帳簿で最も身近なのは「家計簿」です。家計簿は単式簿記の考え方で作られています。
また、現金出納帳や当座預金出納帳などの補助簿は基本的に単式簿記です。
複式簿記
複式簿記とは借方と貸方というように複数の勘定科目を同時に使って仕訳を切り、帳簿を作成していく簿記をいいます。日商簿記検定で勉強するほとんどの内容はこの複式簿記になります。
単式簿記と複式簿記の特徴

単式簿記と複式簿記の特徴をまとめると次のようになります。
簿記の種類 | 複式簿記 | 単式簿記 |
---|---|---|
記帳の難易度 | 専門的な技術が必要 | 誰にでもできる |
情報量 | 多い | 少ない |
不正のしやすさ | しにくい | しやすい |
記帳の難易度
複式簿記は専門的な技術が必要です。この専門的な技術が身についているのかを表すのが日商簿記をはじめとする簿記検定です。
世の中の人全員が複式簿記の技術を身につけているのであれば単式簿記は必要ないのかもしれません。しかし、現実には複式簿記の技術を身につけている人はほんの一握りです。
現金を管理する必要がある人は複式簿記を身につけている人よりはるかに多いのです。なので単式簿記が必要となります。
情報量
複式簿記の場合はたとえば現金の場合「現金がいくら増減したのか」と「現金がなぜ増減したのか」が仕訳を見ることで分かります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 300,000 | 売上 | 300,000 |
上の仕訳を複式簿記の技術がある人が見れば「売上が300,000発生したことで現金が300,000増えた」ことが分かります。このようになぜ現金が増えたのかまで分かるのが複式簿記です。
それに対して単式簿記では注目している勘定科目の増減しか分かりません。たとえば、現金の動きに注目している家計簿では「現金がいくら増減したのか」しか分かりません。
家計簿ではそれでは意味ないのでメモ書きで「○○を買った」などと書き込みますが、これは簿記の仕組みとは関係ないものです。
単式簿記は簡単に記帳できる反面、情報量は格段に少なくなります。
不正のしやすさ
単式簿記では不正は比較的簡単です。たとえば、売上を100,000円増やしたければ、単式簿記の売上帳に「売上100,000円」と書いておけばそれだけで帳簿と現実のつじつまは合います。
それに対して複式簿記では不正は困難です。上と同じように売上を100,000円増やした場合、売上が増加するので「(貸)売上100,000」としますが、借方がどうにもならないのです(複式簿記は借方と貸方は金額が同じでなければなりません)。
仮に売掛金の増加として「(借)売掛金100,000」としたとします。しかし売掛金は実際には増えていないので、売掛金のつじつまが合わなくなります。
現金を受け取ったとして「(借)現金100,000」としても現金が現実にないのでどうしようもありません。
このように、複式簿記の場合は借方と貸方のどちらも修正しなければならないので、帳簿と現実のつじつまを合わせることが難しいのです。不正の証拠が多く残ることになります。これは売上以外の勘定科目でも同様です。
複式簿記と単式簿記にはこのような違いがあります。基本的に規模や重要性が大きくなれば単式簿記ではなく複式簿記で記帳することになります。
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