連結外し

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。連結財務諸表に関して行う粉飾決算の代表例に「連結外し」と言われるものがあります。この記事では連結外しについて解説します。

連結外し

連結外しとは「赤字を子会社に押し付け、その子会社を連結会計から外すことで連結財務諸表をよく見せること」です。大きくは次の2つのパターンがあります。

  • 黒字の子会社を連結財務諸表に含み、赤字の子会社は連結財務諸表から除外する
  • 新たに連結財務諸表に含まない子会社を設立し、赤字を移す

黒字の子会社を連結財務諸表に含み、赤字の子会社は連結財務諸表から除外する

例えば、次の2つの子会社があったとします。

  • A子会社:10億円の利益
  • B子会社:5億円の損失

通常通り決算を行えば、この2つの子会社の合計の利益は5億円の利益になります(複雑になるので内部利益は考慮しません。)。ですが、ここでB子会社を連結から外すことで子会社の合計の利益を10億円にすることができます。

B子会社を連結から外す方法としては、一部の株式だけを売却して過半数保有していない状態にする方法などが考えられます。

ちなみに、この方法はあからさますぎるので、連結財務諸表から除外することはできません(実質的支配基準により、B社は子会社とみなされます。)。この方法そのままでは監査にはまず通りません。

新たに連結財務諸表に含まない子会社を設立し、赤字を移す

例えば、次のような流れを考えてみてください。

  1. 連結損益計算書が赤字になりそうだから、黒字にしたい
  2. 社長が全額出資してA社を設立(当社が出資しているわけではないから当社の子会社にはならない)
  3. 当社の在庫を全てA社に売却
  4. 当社の売上が計上され、黒字にできる

ちなみに、この方法もあからさますぎるので、連結財務諸表から除外することはできません(当社に協力的な社長の出資なので当社の子会社とみなされます。)。この方法をそのまま使っても監査にはまず通りません。

しかし、これらの手法をもとに巧妙に仕組みを作ることで監査を通した例が2006年1月に企業・社長ともに有名な某企業「以下L企業」が行った粉飾決算です。手口は非常に複雑かつ巧妙でしたが、粉飾決算の本質は「連結外し」でした。この粉飾決算は次のような構図です。

連結外しの構図

  1. L企業の子会社が投資事業組合(ファンド)に出資(このファンドを仮にAファンドとします。)
  2. Aファンドが別のファンド(Bファンドとします)に出資
  3. BファンドがCファンドに出資

つまり、L企業の子会社がファンドに投資し、そのファンドが別のファンドに投資し…といった形でファンドが複雑につながっています。この状況でCファンドが利益(有価証券売却益)を獲得した場合、次のようになります。

  1. Cファンドが獲得した利益(有価証券売却益)は出資者であるBファンドに分配される
  2. Bファンドに分配された分配金はBファンドにとっては利益であるため、出資者であるAファンドに分配される
  3. Aファンドに分配された分配金は出資者である「L企業の子会社」に分配される
  4. 「L企業の子会社」は出資が本業なので、この分配金は本業での収益を意味する「売上」に計上される
  5. 「L企業の子会社」に計上された売上はL企業の連結財務諸表に売上として計上される

実はここまでは粉飾でも何でもありません。会計上も認められた取引です。投資業務を行っている「L企業の子会社」が投資ファンドに投資して、その結果分配金を売上とすることに何の問題もありません

ちなみにここで出資されているファンドは子会社ではありません(そもそもファンドは「会社」ではなく「組合」です。)。

ファンドに出資しても議決権は全く存 在せず、意思決定に参加できないからです。ただ資金を出資するだけで、たとえ過半数を出資していても子会社とはならないのです。ここにL企業が目をつけま した。

自己株式の売却

自己株式を売却して利益が出た場合、その利益は「自己株式売却益」という「純資産」の勘定で処理します。決して「収益」の勘定では処理しません。自己株式の売却は資本取引(出資の払戻し)だと考えられているからです。

また、子会社にとっての親会社の株式も連結財務諸表では「自己株式」にあたるので、「子会社が親会社の株式を売却して得た利益」も、「自己株式売却益」という「純資産」の勘定で処理します

L企業が行った「問題の取引」

では、「自己株式の売却益は収益とはならない」という点を踏まえて、先ほどの「構図」に戻りましょう。L企業の取引で問題になった点は「CファンドがL企業 の株式を売却して得た利益を収益としていた点」です。

つまり、CファンドがL企業の株式を売却して利益を獲得し、その利益を「L企業の子会社の売上」とし ていたのです。

確かに次の2点から、この取引は認められるといえます。

  • 「Cファンド」は「L企業」の子会社ではない(議決権を持っていないから)
  • 「Cファンドが得た利益の分配金」は「L企業の子会社」の売上となる(ファンドに出資して分配金を受け取るのが本業だから)

ですが、「たとえ議決権を持っていなくてもL企業がCファンドを実質的に支配しているのであれば」、取引の実態はやはり「自己株式の売却」であることは明らかです。

心証としては、この取引は明らかに「L企業がCファンドを支配して」行っています(でなければこのような構図になる意味がありません。)。そこで、「実質的な支配」がどのようになっているのかを調べると次のようになっていました。

実質的な支配の状況

ファンドの支配状況は次のようになっていました。

Aファンドの支配状況

  • 「L企業」と「L企業の子会社」の2社がAファンドの100%を保有している
  • 「L企業の子会社」が業務執行組合員となっている

この時点でAファンドは実質的に支配されているといえます。では、Bファンドはどうでしょうか。

Bファンドの支配状況

  • AファンドがBファンドのほぼ100%を保有している
  • 業務執行組合員はL企業とは直接関係がない企業が務めている

議決権が存在せず、業務執行組合員が無関係である以上、支配しているとはいえません。また、Bファンドを連結の範囲に含まないのであればCファンドも当然に連結の範囲には含まないということになってきます。

ちなみに、BファンドがCファンドのほぼ100%を保有しています。

全体の出資と意思決定の関係

この「構図」全体について、まずは資金の動きについて見てみると次のようになります。

  • 「L企業」と「L企業の子会社」の2社がAファンドの100%を保有
  • AファンドがBファンドのほぼ100%を保有
  • BファンドがCファンドのほぼ100%を保有

これらの3点をまとめて考えると、結局は「L企業とその子会社がCファンドのほぼ100%を保有している」といえます。それに対して意思決定についてみてみると次のようになります。

  • 「L企業の子会社」がAファンドの業務執行組合員
  • 直接関係がない者がBファンドの業務執行組合員
  • 直接関係がない者がCファンドの業務執行組合員

つまり、Cファンドの業務を執行する者は全くの無関係者ということになります。

ここまでをまとめると、「CファンドにはL企業とその子会社がほぼ100%出資しているにも関わらず、全く関係がない人が業務を執行している」ということになります。

これは「所有と経営の分離」が非常に高いレベルで達成されているといえるのかも知れません。少なくとも建前としては確かにそうです。

ですが、一般的な常識で 考えて、「ほぼ100%出資してくれている人の意向を無視して業務を執行することなんかできるはずがない」といえるのではないでしょうか。もしそうなら、 CファンドはL企業に支配されているといえるのではないでしょうか。

しかし、これは会計学的な話ではなく、あくまでも個人的な心証なので、会計的に「実質的に支配している」といえる状況ではありません。

結果

このような状況を検察(東京地検特捜部)は調べ上げ、色々と事情聴取した結果、「CファンドはL企業の子会社である」と判断し、「資本取引を損益取引とみな して利益を水増しさせている」と決定付けました。

これがL企業の粉飾事件のあらすじです(本当はもっと複雑で、登場人物も多く、また、架空売上など別件の 粉飾も同時に行われています。あくまでもエッセンスのみ紹介していると思ってください。)。

この粉飾決算も非常に単純化して言ってしまえば「Cファンドを連結の範囲から外すことで利益を水増ししている」という「連結外し」が根本の部分で行われていると言えます。

簿記検定に合格するのにこのような取引を理解する必要はありませんが、簿記を勉強していくことでこのような「構図」が見えてくるようになります。

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