取得原価主義から時価主義への流れと取得原価主義の例外

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  • 取得原価で記帳しない場合があるんだけど……
  • 取得原価主義と時価主義を使い分ける理由が分からない
  • 取得原価主義について教えて!

簿記を勉強していると取得原価主義という言葉が出てきますが、非常に抽象的な概念なので難しいと感じる人が非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん取得原価主義についても熟知しています。

この記事では取得原価主義の問題点や取得原価主義の例外について解説します。

この記事を読めば取得原価主義についてより深く理解できるので、簿記1級の勉強をスムーズに進めることができるようになります。

結論を言うと、取得原価主義は利益操作に使われやすいという欠点があるため、時価主義に徐々に移行しています。取得原価主義には例外があります。例外の代表例は低廉取得資産です。

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損益計算書を重視するために採用するのが取得原価主義

最近は投資期間が短期になることで貸借対照表が再び重視されるようになってきました。

しかし、貸借対照表が重視されるようになってきたのには「取得原価主義には大きな問題点があるから」という理由もあります。

損益計算書で行われる「利益の計算」を重視するためには、利益のもととなる「収益」や「費用」を適正に計算する必要があります。

そこで、固定資産を取得するのにかかった金額を固定資産の使用期間に配分する「減価償却」など、いわゆる「費用・収益の期間配分」が行われることになりました。

「費用・収益の期間配分」で使用されるのが「取得原価」です。

このように、利益を適正に計算する目的を達成するために発展してきたのが「取得原価主義」だと言えます。

逆に時価で評価する「時価主義」だと時価の変動が利益を大きく変動させてしまい、利益を適正に計算することができなくなってしまいます。

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取得原価主義は利益操作に非常に使いやすいという問題点がある

取得原価主義には「利益操作に非常に使いやすい」という大きな問題点があります。

資産を取得原価で計上すると、時価との差額が発生します。時価との差額は一般的に年月が長くなればなるほどどんどん大きくなるのが一般的です。

例えばバブル期に購入した資産などを取得原価で計上していたりすると大きな含み損(評価損)が発生していると思われます。

逆に1950年代といった非常に物価が安かった時代に取得した土地などを取得原価で計上していたりすると、大きな含み益(評価益)が発生しているでしょう。

「含み益」や「含み損」は取得原価主義では全く財務諸表に表れません。ずっと隠れている、いわば「潜在的な」損益です。

潜在的な損益は企業が資産を売却することで実現させることができます。

つまり企業の都合で、企業の好きなタイミングで利益や損失を実現させることができるということで、これが「利益操作」につながるのです。

例えば「今期は赤字だから含み益が大きい土地を売って黒字にする」「今期は想定以上に黒字だったから、バブル期に買ってしまった株式を売却する」といったことが簡単にできてしまうのです。

しかも、この取引は粉飾決算というわけではありません。売っていないのに売ったことにしたりすればもちろん問題ですが、現実に売却しているのであれば会計上は何の問題もありません

つまり取得原価主義を採用している以上、利益操作が可能になるのは当然なのです。

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取得原価主義から時価主義へ移行している

利益操作を排除するために、最近は取得原価主義から時価主義に移行しています。その他有価証券の時価評価などは時価主義への移行の代表例です。

ただ、営業活動で使っている「設備」や「工場」など、利益操作のために売却することはおおよそ考えられないようなものにまで時価主義を適用するのは不適切です。

そこで、「営業活動で使用している資産」については、今でも取得原価主義が採用されています

「固定資産の減損」や「棚卸資産の低価法の適用」などは利益操作の排除が目的というより、損失を早めに計上する「保守主義」という意味合いが強いです。

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取得原価主義の例外:低廉取得資産

資産を取得した場合には、支払った対価で資産を評価するのが通常です。例えば1,000,000円の現金を支払って土地を取得した場合の仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
土地1,000,000現金1,000,000

しかし、いつも支払った対価で資産を評価するわけではありません。支払った対価で資産を評価しない場合の代表例が低廉取得資産です。

例えば「1,000,000円の現金を支払って土地を取得した」という例文に「市場価格5,000,000円の土地を」「筆頭株主から」という条件がついた場合を考えてみましょう。

市場価格5,000,000円の土地を筆頭株主から買った場合も「1,000,000円の現金を支払って土地を取得した」という点は同じなので先ほどと同じように次の仕訳にすることも考えられます。

借方金額貸方金額
土地1,000,000現金1,000,000

しかし、この仕訳は本当に適切だと言えるでしょうか。現金は1,000,000円しか支払っていないので『(貸)現金1,000,000』は変えようがありません。

しかし、借方については『(借)土地5,000,000』とする考え方もありえます。

『(借)土地5,000,000』とする場合、貸方が4,000,000円不足します。

この4,000,000円は5,000,000円の土地を1,000,000円で手に入れることによる利益と考えて『(貸)土地受贈益4,000,000』とすることができそうです。

この場合、次の仕訳になります。

借方金額貸方金額
土地5,000,000現金
土地受贈益
1,000,000
4,000,000

この2つの仕訳のどちらが適切だといえるでしょうか。結論から言えば2つ目の仕訳が適切だと言えます。理由は次の2つです。

  • 筆頭株主というその会社に利害関係がある立場からの贈与だと考える方が適切だから(会計的理由)
  • 脱税に利用されるから(税法的理由)

筆頭株主というその会社に利害関係がある立場からの贈与だと考える方が適切だから

筆頭株主というのは会社の株主の中で最も多くの株主を持っている人です。

筆頭株主が市場価格より明らかに低い価格で資産を提供した場合、安くなっている分は贈与と考えるのが合理的です。

逆に『(借)土地1,000,000』とするということは、何らかの企業努力で市場価格よりも安く購入することに成功したということになりますが、筆頭株主からの資産の購入で企業努力だと考えるには無理があります。

脱税に利用されるから

1つ目の仕訳が認められてしまうと、事実上4,000,000円の利益が消えてしまいます。利益が減れば課税所得も減り、結果的に納税額も減ります。

もちろん取得原価が小さくなっているので売却するときには固定資産売却益が多く出ますが、それでもかなり税金を先送りすることができてしまいます。

税金を先送りできてしまっては課税の公平という税務の目的に反するので、税法上、土地の取得原価を1,000,000円とする処理は認められません。

このような理由から、2つ目の仕訳を切る必要があります。

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資産を取得したときに取得原価ではなく時価で計上するための2つの条件

市場価格より安く取得した場合、必ず2つ目の形で仕訳を切るのかと言えばそんなことはありません。このような仕訳を切る場合はおおむね次の2つの条件を満たした場合です。

  • 著しく安い価格で購入した場合
  • 贈与することが自然だと言える相手から安く購入した場合

著しく安い価格で購入した場合

市場価格より1円でも安く買えば2つ目の形で仕訳を切るのかといえば、そんなことはありません。

やはり「通常の取引と考えるには明らかに不自然」といえるくらい安い価格でなければ1の仕訳を切ります。

金額について明確な基準はありませんが、おおむね「半額以下」であれば不自然だといえます。

贈与することが自然だと言える相手から安く購入した場合

半額以下であれば必ず2つ目の仕訳を切るというわけではありません。もしそうならば「大バーゲン」や「売り尽くし」などの激安価格で購入した場合にもあてはまることになってしまいます。

2つ目の仕訳を切る場合は「贈与することが自然だと言える相手」から安く購入する必要があります。

通常の商取引では贈与はありません。先程の例の「大バーゲン」や「売り尽くし」もあくまでも売り手の都合で安く売っているだけです。

贈与することが自然だと言える相手とは例えば「大株主」「家族」「親会社」などがあてはまります。贈与することが自然だと言える相手から著しく安い価格で購入した場合は2つ目の仕訳を切ります。

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【まとめ】取得原価主義から時価主義への流れと取得原価主義の例外

取得原価主義は利益を適正に計算するのには適していますが、利益操作に使いやすいという問題点があります。そのため、取得原価主義から時価主義に移行する流れになっています。

現状は「営業活動で使用している資産」については取得原価主義が採用し、営業活動で使用していない資産は時価主義を採用しています。

資産を取得したときには取得原価で仕訳を切るのが通常ですが、低廉取得資産の場合は時価で仕訳を切ります。

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