- 簿記で勘定科目が出てくるけど、どういった基準で使い分けているんだろう……
- 有価証券利息と受取利息の違いが分からない
- 勘定科目の考え方について教えて!
簿記を勉強していると勘定科目が出てきます。勘定科目は問題によって微妙に違ったりしていて、どのように使い分けたらいいのか混乱してしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん勘定科目の使い分けについても、簿記を勉強している人がどこで難しいと感じるのかについても精通しています。
この記事で勘定科目の考え方、例えば有価証券利息と受取利息の使い分けなどについて解説します。
この記事を読めば勘定科目をどのように考えてどのように使い分けていけばいいのかが分かります。簿記検定で勘定科目に迷ったときでも自信を持って解答することができるようになります。
勘定科目の考え方【有価証券利息と配当金と受取利息の違いなど】
勘定科目は最初から無理に覚えようとする必要はありませんが、簿記の学習を進めていきながら自然と覚えてしまう必要はあります。
勘定科目を自然と覚えてしまうためには、勘定科目の考え方を理解しておくと近道です。
勘定科目の考え方として身につけておくと便利なものは次の4つです。
- 有価証券利息と受取利息と受取配当金を区別する意味
- 「受取」と「支払」がつく勘定科目とつかない勘定科目の違い
- 「有価証券への投資から得られる利益」を意味する勘定科目を合算する意味
- 支払利息と手形売却損と社債利息を区別する意味
有価証券利息と受取配当金と受取利息を区別する意味
受取利息とよく似た勘定科目に受取配当金と有価証券利息があります。
- 受取利息…貸付金や普通預金に対する利息
- 受取配当金…他社の株式を保有している場合に受け取る配当金
- 有価証券利息…国債や他社の社債を保有している場合に受け取る利息
これらは全て収益の勘定科目です。この中で、2の受取配当金は配当金であり、他の2つとは性質が異なるので区別すべき理由はあります。
ですが1の受取利息と3の有価証券利息はどうでしょうか。両方とも利息なので区別する意味はないとも考えられます。
しかし、実際に「受取利息」と「有価証券利息」を区別しない場合はほとんどありません。実務でも区別しますし、簿記検定でもほとんどの場合において区別しています。
有価証券利息は有価証券(社債など)から得られる収益、受取利息は貸付金などから得られる収益という違いがあるからです。
余談ですが、有価証券利息という勘定科目は少しだけ収益なのか費用なのかが分かりにくいという欠点があります。
収益なのか費用なのかが分かりにくいという欠点があるにも関わらず区別している理由は「受取配当金と有価証券利息の合計額を分析できるようにするため」です。
企業が他社の株式や社債を取得した場合、短期的な値上がりを期待して取得したのであれば株式であっても債券であっても「売買目的有価証券」という勘定科目を使います。
有価証券は取得する目的に応じて勘定科目を使い分けることに対して、株式から受け取った利益の分配は「受取配当金」に、債券から受け取った利益の分配は「有価証券利息」に集計されます。
つまり有価証券の分類は取得する目的別で区別され、受け取った利益の分配は株式か債券かで区別されているのです。
こういった状況なので、投資した有価証券からどれだけの利益が得られたのかを知るためには「売買目的有価証券などの勘定科目」と「受取配当金と有価証券利息の合計額」を比較しなければなりません。
有価証券利息と受取利息が区別されていなければこの比較ができません。
このように「勘定科目が区別される理由」を考えてみると勘定科目を自然と覚えやすくなります。
「受取」と「支払」がつく勘定科目とつかない勘定科目の違い
勘定科目には「受取」とつくものや「支払」とつくものがあります。
- 「受取」とつくものの例:受取手形、受取利息、受取手数料
- 「支払」とつくものの例:支払手形、支払利息、支払手数料
逆に「受取」や「支払」をつけないものには「営業費」や「給料」などがあります。「支払営業費」や「支払給料」といった勘定科目は通常使われません。
理由は「営業費や給料は企業が受け取ることはないから」です。「支払」や「受取」をつけるのは資産と負債の区別、収益と費用の区別をしっかりと行うためです。
手形は約束手形と為替手形という区別はありますが、支払うときに使う手形と受け取るときに使う手形は同じものです。
しかし、資産となるときは「受取手形」、負債となるときは「支払手形」と区別しています。同様に利息も収益となるときは「受取利息」、費用となるときは「支払利息」と区別しています。
資産と負債に同じ勘定科目を使ってしまうと資産と負債が自然に相殺されてしまいます。同様に、収益と費用に同じ勘定科目を使ってしまうと収益と費用が自然に相殺消去されてしまいます。
総額主義の原則に反するので、資産と負債、収益と費用は区別しなければいけません。
「有価証券への投資から得られる利益」を意味する勘定科目を合算する意味
先ほどお伝えしたように、株式であれ債券であれ、有価証券への投資から得られる利益は総合的に考えることが投資の効率を考える上では重要です。
しかし「有価証券への投資から得られる利益を意味する勘定科目」は「受取配当金」と「有価証券利息」だけではありません。
有価証券への投資で得られる利益を全て書き出すと次のようになります。
- 株式への投資で得られる損益:受取配当金、有価証券評価損、有価証券評価益、有価証券売却損、有価証券売却益
- 債券への投資で得られる損益:有価証券利息、有価証券評価損、有価証券評価益、有価証券売却損、有価証券売却益
この合計額が有価証券への投資で得られる損益です。そう考えるとこれらの勘定科目を区別する必要はなさそうです。実際、区別しない場合もよくあります。
次のようなパターンが一般的です。簿記2級の試験でも次のパターンはよく出題されます。
- 「有価証券評価損」と「有価証券評価益」をまとめて「有価証券評価損益」とする
- 「有価証券売却損」と「有価証券売却益」をまとめて「有価証券売却損益」とする
また、学習が進んでいくと次のようなまとめ方もあります。
- 売買目的有価証券から発生する「有価証券評価損益」「有価証券売却損益」「受取配当金」「有価証券利息」をまとめて「有価証券運用損益」とする
ここまで勘定科目をまとめてしまうと「配当の受取」「有価証券利息の受取」「売買目的有価証券の売却損益」「売買目的有価証券の評価損益」が全て同じ勘定科目で表されることになります。
試験的には好ましくありませんが、勉強が進んで簿記1級に入る頃になると時々見かけるようになります。
このように勘定科目がまとめられるときは、分ける意味が少ない場合に多いです。勘定科目がまとめられているときにはなぜまとめられているのかを考えてみると勘定科目を覚えやすくなります。
支払利息と手形売却損と社債利息を区別する意味
「支払利息」とよく似た勘定科目に手形売却損と社債利息があります。
- 支払利息…借入金に対する利息
- 手形売却損…手形を支払期日前に割り引いたときに支払う利息分
- 社債利息…社債を発行している場合に支払う利息
これらは全て費用の勘定科目です。全て費用なので勘定科目を区別しないことも考えられます。
支払利息、手形売却損、社債利息のうち、3の社債利息は負債に計上されている社債と対応させることに意味があります。他の勘定科目と合わせてしまうわけにはいきません。
では1の支払利息と2の手形売却損はなぜ区別するのでしょうか。
手形売却損は利息とは異なるもののように見えますが、手形を期日前に割り引くことで割引日から支払期日までの利息の支払が手形売却損です。意味的には支払利息と同じだともいえそうです。
支払利息と手形売却損を区別する理由は「手形の割引は資産の売却だと考えるため」です。「手形の割引」は「有価証券の売却」などと同じ資産の譲渡にあたるということです。
実は手形の割引という取引については非常に難解な論点があり、手形の割引が「資金の借入」なのか「資産の売却」なのかは非常に微妙なのです。
会計基準では手形の割引は資産に売却にあたるため、「手形売却損」という「有価証券売却損」と似た勘定科目で処理することになっています。
このように勘定科目が区別されるのに、深い理由がある場合もあります。
【まとめ】勘定科目の考え方【有価証券利息と配当金と受取利息の違いなど】
有価証券利息と受取利息を区別する理由は、有価証券利息は債券から受け取る利息であるのに対し、受取利息は貸付金から受け取る利息だからです。
投資した有価証券からどれだけの収益が得られたのかを把握するためには有価証券利息と受取利息を区別しておく必要があります。
総額主義の原則に反しないために、資産と負債、収益と費用は区別しなければなりません。「受取」や「支払」などをつけないと区別できない場合は「受取」や「支払」とつけることで区別します。
特に区別する理由がない場合は勘定科目をまとめてしまうことも多いです。
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