当座借越の取引と仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では当座借越について解説します。

銀行が支払いをしてくれるのは当座預金残高の範囲内

事実上、小切手を振出せるのは当座預金の残高以内です。残高以上の小切手を振出して、その小切手が銀行に持ち込まれた場合、銀行はその小切手を現金と交換してくれません。

これを支払拒絶といい、その小切手は不渡小切手となります(不渡小切手については簿記2級で学習します)。不渡りを出すとその企業はどうなるのでしょうか。

不渡りは事実上の倒産

よく「A社が2度目の不渡りにより事実上の倒産…」などと言われたりします。2回不渡りを出すと、金融機関がその企業との取引を停止します。

つまり、小切手や手形は当然振出せなくなりますし、売掛金の回収、買掛金の決済もできなくなります。そのため、事実上の倒産と言われたりします。

しかし、実務的には1回でも事実上の倒産に近いと言えます。お得意先や仕入先などの取引相手が取引しなくなるからです。手形や小切手も次に不渡りになったときに回収できなくなるかもしれないため受け取ってくれない可能性が高いです。

「あなたの会社とは現金でしか取引しないよ」「いままでのたまってる売掛金(こちらから見たら買掛金)全額払ってくれよ」みたいな感じになります。

急激に資金繰りが厳しくなり、事実上の倒産と言ってもいいような状況になります。

当座預金残高の範囲以上は自動的に銀行から借り入れる当座借越契約

残高以上の小切手を振出してしまうのはその企業のミスであることが多いですが、必ずしもその企業のミスといえるとは限りません。

取引相手の振込みが遅れたことで当座預金残高が予定より少なくなることがあります。その瞬間に自社の小切手が銀行に持ち込まれた場合、残高以上の小切手の振出しになる場合があるのです。

これだけのことで事実上の倒産となってしまっては安心して営業活動ができません。そこで、企業はあらかじめ有価証券などを担保として差し入れ、銀行と当座借越契約を結びます。

当座借越契約を結ぶことで企業は残高を超えた分の小切手が持ち込まれたときには銀行から自動的に借り入れることができるようになります。当座預金残高が不足していても、借越限度額までは銀行から自動的に借り入れることができるのです。

当座借越の取引と仕訳

当座借越に関しては2勘定制と1勘定制があります。

当座借越(2勘定制)の取引と仕訳

当座預金残高以上の小切手の振り出し

「当座預金の残高が150,000円のときに買掛金支払いのために200,000円分小切手を振出した」場合の仕訳を考えてみましょう。

買掛金を200,000円分支払うので、買掛金(負債)が200,000円分減少します。そのため、『(借)買掛金200,000』となります。

問題は貸方です。当座預金残高が200,000円以上あれば、資産である当座預金を200,000円分減らすと考えて、『(貸)当座預金200,000』となります。

しかし、残高は150,000円しかありません。当座預金を200,000円減らすことができないのです。もし無理矢理にでも減らした場合、ここで帳簿を締め切ると貸方に残高が50,000円残ることになります。

当座預金は資産の勘定なのに負債のようになってしまいます。預金が負債では、明らかに違和感があります。

そこで、当座預金の残高と同額までは当座預金を減らし、残額は当座借越勘定で処理します。この当座借越勘定は、銀行から借り入れているということなので負債の勘定です。

この場合、当座預金残高は150,000円あるので、『(貸)当座預金150,000』『(貸)当座借越50,000』となります。残高不足である50,000円分は当座借越勘定(負債)の増加です。

よって仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
買掛金 200,000 当座預金
当座借越
150,000
50,000

当座借越の金額は差額で求めます。

当座預金口座に入金

上の例の続きを考えてみましょう。

「当座借越残高が貸方に50,000円分ある状態で当座預金口座に売掛金の回収として100,000円分の入金があった」場合の仕訳はどうなるでしょうか。

当座借越残高がなく、当座預金に残高がある場合であれば次の仕訳になります。

借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 売掛金 100,000

売掛金を回収することで現金を請求する権利がなくなり(資産の減少)、その分当座預金が手に入る(資産の増加)と考えられます。

しかし、当座借越に残高がある場合は、銀行はまず当座借越勘定になっている借入金(銀行から見たら貸付金)を回収します。そのため、仕訳も先に当座借越残高の解消からしなければなりません

『(貸)売掛金100,000』は同じです。売掛金を回収することで現金を請求する権利がなくなる(資産の減少)ことに変わりはありません。

問題は借方です。当座預金を100,000円分回収したのですが、そのうちの50,000円分は銀行が真っ先に当座借越残高に充当します。

そのため、当座借越残高50,000円分を解消するため、『(借)当座借越50,000』の仕訳をまず切ります。そして、残り50,000円が当座預金残高に振り込まれることになります。よって『(借)当座預金50,000』となります。

これらの仕訳をまとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
当座借越
当座預金
50,000
50,000
売掛金 100,000

当座預金の金額は差額で求めます。

決算時の処理

この当座借越勘定が期末まで残っている場合は短期借入金勘定に振り替えます。当座借越勘定は、当座預金の残高がマイナスのときにだけ出てくる一時的な勘定です。

当座借越勘定を貸借対照表に表示するのはあまり格好よくありません。そこで、当座借越勘定を短期借入金勘定に振り替えるのです。

当座借越勘定に50,000円の残高がある場合、まず当座借越勘定を50,000円減らすので『(借)当座借越50,000』となります。そして、短期借入金が増えるので、『(貸)短期借入金50,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
当座借越 50,000 短期借入金 50,000

当座借越(1勘定制)

2勘定制は理論的に正しいため検定試験ではよく出題されます。しかし、実務的にはこれからご説明する1勘定制がほとんどだと思います。2勘定制はものすごく大変なのです。

当座借越の具体例(2勘定制) で出てきた次の仕訳を考えてみましょう。

借方 金額 貸方 金額
買掛金 200,000 当座預金
当座借越
150,000
50,000

この仕訳を切るためには、当座預金の帳簿残高を把握していなければなりません。把握していなければ当座預金の金額をいくらにするか決められないのです。差額で求める当座借越の金額も決まりません。

常に当座預金の帳簿残高を把握しておくのはかなり大変です。ものすごく小規模な企業で、小切手帳をたまにしか使わないというのであればそれほど大変ではないかも知れません。

しかし、毎日何十、何百と小切手を切るような企業が常に当座預金の帳簿残高を把握するのは大変です。

取引している銀行は一つとは限りません。小規模な企業で、全ての当座預金の出入りを一つの銀行で行っているような場合はそれほど大変ではありません。

しかし、複数の銀行と取引がある場合、その全ての銀行の残高を把握しなければいけません。付き合いのある銀行が多くなると、かなり大変になります。

簿記3級で対象となっている個人商店であれば2勘定制を採用している企業が多いかもしれませんが、企業全体を見渡せば、ほとんどが1勘定制を採用していると思います。

1勘定制は当座預金も当座借越も当座で表す

1勘定制は全ての勘定を「当座」という勘定で済ませます。理論的には2勘定制が正しいといえます。1勘定制は理論的には少々納得出来ない部分もありますが、実務上の簡便性を重視しています。

全てを『当座』という勘定で表すため、借方に残高があるときは当座預金と同じ意味で資産を表す勘定、貸方に残高があるときは当座借越と同じ意味で負債を表す勘定となります。少々特殊な勘定です。

当座預金という勘定が負債になると、預金が負債という違和感が強くなりすぎるため、当座という勘定になっています。しかし、問題の指示によっては当座預金勘定であっても1勘定制の場合もあるので注意が必要です。

当座借越(1勘定制)の取引と仕訳

当座預金残高以上の小切手の振り出し

では、当座借越の具体例(2勘定制)で使った例で仕訳を考えてみましょう。「当座預金の残高が150,000円のときに買掛金支払いのために200,000円分の小切手を振出した」場合の仕訳を考えてみます。

買掛金を200,000円分支払うので、買掛金(負債)が200,000円分減少します。『(借)買掛金200,000』です。

次は貸方です。1勘定制の場合は当座預金の残高がたとえ150,000円分しかなかったとしても当座勘定を200,000円分減らします。そのため、仕訳は『(貸)当座200,000』となります。

まとめると、次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
買掛金 200,000 当座 200,000

この時点で帳簿を締めると当座勘定の残高は貸方に50,000円となりますが、これはこれでこのままにします。貸方に残高があるということは、意味的には当座借越と同じで短期借入金(負債)となります。

当座預金口座に入金

上の例の続きを考えてみましょう。「当座残高が貸方に50,000円分ある状態で当座預金口座に売掛金の回収として100,000円分の入金があった」場合の仕訳はどうなるでしょうか。

売掛金を回収することで現金を請求する権利がなくなり(資産の減少)、その分当座預金が手に入る(資産の増加)と考えられます。売掛金の減少が『(貸)売掛金100,000』、当座預金の増加が『(借)当座100,000』です。

まとめると、次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
当座 100,000 売掛金 100,000

この仕訳を切ることで、自動的に当座勘定は借方残高になります。当座借越の残高を先に解消するといったことを考える必要はありません。

2勘定制と比べると極めて簡便です。

決算時の処理

この当座勘定が期末まで貸方に残っている場合は短期借入金勘定に振り替えます。この作業は1勘定制でも行わなければいけません。

当座勘定は、当座預金の残高がマイナスのときにだけ一時的に貸方に出てくる勘定です。当座勘定を貸借対照表に表示するのはあまり格好よくありません。そこで、当座勘定が貸方に残っている場合、短期借入金勘定に振り替えるのです。

当座勘定が貸方に50,000円の残高がある場合、まず当座勘定を50,000円減らすので『(借)当座50,000』となります。そして、短期借入金が増えるので、『(貸)短期借入金50,000』となります。

まとめると、次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
当座 50,000 短期借入金 50,000

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