- 決算整理仕訳のところで前払保険料の仕訳が出てきたんだけど……
- 前払保険料の仕訳を切る必要性が分からない
- 前払保険料の仕訳について教えて!
前払保険料(前払費用)の仕訳は簿記3級で高い確率で出題されますが、考え方が難しく、苦手にしている人が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん前払保険料(前払費用)の仕訳についても熟知しています。
この記事では簿記3級に合格するために必要な前払保険料(前払費用)の仕訳について解説します。
この記事を読めば前払費用の仕訳を難しいと感じることはなくなります。簿記3級の試験でも自信を持って解答できるようになります。
結論を言うと、前払費用の仕訳は「本来は次期の費用なのに当期に支払った分」を資産計上して次期に繰り延べるという目的で行います。
前払費用(前払保険料)とは:次期の費用(保険料)なのに当期に支払った分
費用の中には向こう一年分をまとめて支払うものがあります。身近な例は自動車の任意保険です。
支払保険料は、支払時に次のような仕訳を切っています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
支払保険料 | ××× | 現金など | ××× |
この仕訳によって当期の費用として計上されていますが、次期の分の費用が当期の費用の中に入っていたら正確な当期の費用が計算できません。
当期の費用を正確に計算するためには、「本来は次期の分なのに当期の費用に含まれている分」を費用から差し引き、次期に繰延べなければなりません。
次期の費用を次期に繰り延べる一連の手続きを費用の繰延べ(前払費用の計上)といいます。
向こう一年分とは:その日から一年分
前払保険料を勉強していると「向こう一年分」という表現が出てくることがあります。
向こう一年分とは「その日から一年分」ということです。
「平成×1年4月1日に向こう一年分支払った」という場合、「平成×1年4月1日に『平成×1年4月1日から平成×2年3月31日まで』の一年分を支払った」という意味になります。
前払保険料の仕訳:次期の保険料を次期に繰り延べる仕訳
この例題における前払費用(前払保険料)の仕訳を考えてみましょう。
8月1日に向こう一年分を支払っているので、来年の7月31日までの分を支払っています。決算日が12月31日なので、1月1日から7月31日までの7ヶ月分が前払分だといえます。
図で表すと次のようになります。
当期の費用である5か月分は仕訳の必要はありません。仕訳を切らなければならないのは次期分である7か月分です。
まずは、7か月分がいくらになるのか計算しましょう。
12ヶ月分が12,000円なので、1か月分は(一年分の支払保険料12,000円÷12ヶ月=)1,000円です。これが7ヶ月分なので(1か月分の支払保険料1,000円×7ヶ月=)7,000円となります。
この7,000円は当期の費用にはなりません。
また、保険料を支払った時点(8月1日)で次の仕訳を切っているはずです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
支払保険料 | 12,000 | 現金など | 12,000 |
費用の勘定科目である支払保険料12,000円のうち7,000円を減額しなければならないので『(貸)支払保険料7,000』となります。
次は借方です。借方は前払保険料という勘定科目を使って表します。『(借)前払保険料7,000』となります。
まとめると次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前払保険料 | 7,000 | 支払保険料 | 7,000 |
「費用を資産計上して次期に繰延べる」という考え方は非常に重要です。しっかりと理解しておくことが大切です。
【まとめ】前払保険料の仕訳と計算方法
前払費用の仕訳は「当期に支払った分のうち本来は次期の分である費用を次期に繰り延べる」という目的で行います。
「前払費用」は次期に支払うべき費用を前もって支払ったもので、次期のサービスを受け取る権利を意味するので資産の勘定科目です。
コメント
決算が1月ではなく4月から計算なのでは??
コメントありがとうございます。
確かに株式会社は3月決算が一般的ですが、3月決算でなければならないわけではありません(個人事業主は12月決算のみです)。他の決算月を選択することもできます。
12月決算は2番目に多い決算月ですし、そういった出題もあるので、この記事でも3月決算にこだわらずに作成しています。