日商簿記1級に独学で社会人が合格するために必要な条件と学習のポイント

  • 日商簿記1級を独学でとろうと思ってるんだけど……
  • 自分が日商簿記1級の独学に向いているのか分からない
  • 日商簿記1級に独学で合格する方法を教えて!

「日商簿記1級は独学でも合格できる」「日商簿記1級は独学では無理!」のように真逆の情報が流れていることもあり、簿記1級に独学で合格できるかどうか判断できなくて悩んでいる方は非常に多いです。

私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。私自身も日商簿記1級に独学で合格しています。この経験から、日商簿記1級に独学で合格するために必要な条件は熟知しています。

この記事では日商簿記1級に独学で合格するために必要な条件と勉強のポイントについて解説します。

この記事を読めば、あなたが日商簿記1級に独学で挑戦すべきなのか、挑戦すべきならどういった条件を満たして挑戦すべきなのかが分かります。

結論を言うと、次の4つを全ての条件を満たせば独学での合格は十分に可能です。

  • 日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を「独学で」つけること
  • 疑問点を遅くとも48時間以内に解決できる環境を作ることができること
  • 通学・通信・独学が全て同じ費用だったとしても独学を選択するつもりであること
  • 簿記の勉強を楽しいと思えること

また、独学で簿記1級に合格するためには次の3点を特に意識してください。

  • 自分に合ったテキストを使って勉強すること
  • 暗記に頼らず、きちんと内容を理解しながら勉強すること
  • 勉強計画をしっかりと立てて実行すること

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日商簿記1級という試験の難易度はかなり高い

日商簿記1級の独学での合格を目指すためには、最初に日商簿記1級がどの程度の難易度の試験なのかを把握しておくことが大切です。最初に、日商簿記1級という試験の難易度に関する客観的な数値を見ていきましょう。

日商簿記1級の学習内容:簿記2級全範囲の約2倍の広さ

日商簿記1級では、日商簿記2級の引き続き、簿記・会計が試験範囲となっています。

簿記2級ではなかった科目に「会計学」と「原価計算」がありますが、「会計学」は学習範囲は「商業簿記」とほとんど同じです。「商業簿記」が会計処理そのものを問われる傾向があるのに対し、「会計学」は会計処理の考え方や理由を問われる傾向があります。

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会計学の勉強方法については「簿記1級で新しく加わる会計学の効果的な勉強法」で詳しく解説しています。

「原価計算」は簿記2級で学習した「工業簿記」とはかなり性質が異なります。簿記2級で学習した「CVP分析」をより複雑にしたような内容です。

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原価計算の勉強方法については「簿記1級で新しく加わる原価計算の効果的な勉強法」で詳しく解説しています。

試験範囲の広さは、ざっくりと言って「日商簿記3級の試験範囲+日商簿記2級の試験範囲」の約2倍です。簿記2級で100点満点を取るために必要な学習範囲の約2倍と言い換えることもできます。

ここでいう試験範囲は、簿記1級で合格点を取るために必要な試験範囲です。簿記1級で満点を取るための試験範囲は広すぎて計算不能です。

日商簿記1級の合格基準:簿記2級にはなかった「科目ごとの合格最低点」がある

日商簿記1級も簿記2級までと同じように70点が合格ラインです。

ただし、簿記2級までと違って「科目ごとの合格最低点」があり、「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の4科目のうち1つでも10点未満の点数を取ってしまうと、たとえ全体では70点以上得点できていても不合格になってしまいます。

そのため、「苦手科目を作らない」という意識が簿記2級以上に重要になります。独学で日商簿記1級に挑戦する場合、苦手科目を自力でなくすことができなければなりません。

日商簿記1級の合格率:約10%

日商簿記1級の合格率は約10%です。簿記2級の合格率が統一試験で約10%から約30%、ネット試験で約30%から約40%であることを考えると、かなり低いです。
商工会議所 – 受験者データ

日商簿記1級受験生のほとんどが簿記2級に合格したうえで受験していることを考えると、かなり勉強した人のなかで10人に1人しか合格できない試験と言えます。

合格率だけ見れば税理士簿記論の方が20%と高いです。合格率だけを比較しても難易度は分からないのですが、それでも日商簿記1級は簡単ではないということだけは分かります。

日商簿記1級の勉強時間:最短で537時間

日商簿記1級の勉強時間は、最短で537時間です。最短でというのは「簿記2級が完璧な人が勉強した場合」という意味です。

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日商簿記1級の合格に必要な勉強時間については「【日商簿記1級の勉強時間】社会人は2級から最短で537時間【1ヶ月や1週間では無理です】」で詳しく解説しています。

簿記2級に不完全な部分があればあるほど必要な勉強時間は異なります。また、当然ですが個人差がもあります。

あくまでも目安です。

日商簿記1級の難易度はかなり高い

結論として、日商簿記1級は難易度の高い試験です。試験範囲は広く、かなり勉強をした人の中でも10人に1人しか合格できません。

日商簿記1級に独学で挑戦する場合、このことを肝に銘じて軽く見ないように気を引き締めて挑戦することが大切です。

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日商簿記1級の難易度については「簿記1級の難易度と簿記1級の挑戦前に確認すべきポイント」で詳しく解説しています。

日商簿記1級に独学で合格するための4つの条件

日商簿記1級に独学で挑戦するのはかなり大変です。しかし、次の4つの条件を全て満たすことができれば日商簿記1級に独学で合格することは十分に可能です。

  • 日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を「独学で」つけること
  • 疑問点を遅くとも48時間以内に解決できる環境を作ることができること
  • 通学・通信・独学が全て同じ費用だったとしても独学を選択するつもりであること
  • 簿記の勉強を楽しいと思えること

一つずつ詳しく見ていきます。

日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を「独学で」つけること

日商簿記1級に独学で合格するためには、日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を「独学で」つける必要があります。

日商簿記2級と日商簿記1級では難易度に大きな差があります。

日商簿記2級日商簿記1級
分量(「簿記の教科書」のページ数)商簿560ページ、工簿384ページ商会1,304ページ(3冊合計)、工原950ページ(3冊合計)
合格率10%~30%約10%
合格基準70%以上「70%以上」かつ「4科目全て10%以上」
受験のチャンス年3回年2回

この表から分かるとおり、どの基準で比較しても日商簿記1級の方が難しいです。日商簿記1級の方が分量は多く、合格率は低く、合格基準は厳しく、受験のチャンスも少ないです。

「日商簿記2級の過去問を70分以内で90点得点できる実力を独学でつけることができなかった人」「日商簿記2級に独学以外の方法で合格した人」が日商簿記1級に独学で挑戦するのは無謀です。

独学で合格するためには「独学で合格するためのスキル(経験)」が必要になります。

「独学で合格するためのスキル(経験)」は日商簿記2級までの勉強で身につけておく必要があります。

日商簿記2級を独学で勉強していない人は「独学で合格するためのスキル」が身についていないので、日商簿記1級に独学で合格することは難しいです。

日商簿記1級に独学で合格するためには日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を独学でつける必要があります。

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簿記の勉強法については「簿記1級にラクラク受かる勉強法」で詳しく解説しています。

疑問点を遅くとも48時間以内に解決できる環境を準備すること

日商簿記1級に独学で合格するためには疑問点を遅くとも48時間以内に解決できる環境を準備することが必要です。

24時間以内に解決できれば理想的です。

疑問点は解決しなければ勉強が進みません。強引に進めようとすると暗記せざるをえなくなりますが、暗記での合格は難しいです。

疑問点が48時間以上解決できないと勉強がスケジュールどおりに進まなくなってしまいます。

日商簿記1級の勉強を独学でしていて、疑問点が全く出ないということはほとんどありません。日商簿記1級に独学で合格するためには疑問点を48時間以内に解決できる環境が必要です。

家族に簿記や会計の専門家がいる状態が理想です。

通学・通信・独学が全て同じ費用だったとしても独学を選択するつもりであること

私の経験から確実に言えることが一つあります。「費用が安く済むことを理由に独学を選んで、日商簿記1級に一発合格した人に会ったことがない」ということです。

独学で日商簿記1級に一発合格した人は「自分には独学が合っているから」という理由で独学を選んでいます。

仮に通学・通信・独学が同じ費用だったとしても独学を選ぶのか考えてみてください。

通学・通信・独学が同じ費用だったとしても独学を選ぶならあなたは独学に向いています。

通学・通信・独学が同じ費用なら独学を選ばないのに独学で挑戦しようとしているのであれば、合格できないとは言いませんが、不合格が続く覚悟が必要です。

簿記の勉強を楽しいと思えること

日商簿記1級に独学で合格するためには簿記の勉強を楽しいと思える必要があります。

日商簿記1級は内容が多いため、勉強時間も多く必要になります。

日商簿記2級をほぼ完璧に身につけた人が日商簿記1級の合格までにかかる時間は約537時間です。勉強期間は平日2時間勉強する場合で約1年です。

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日商簿記1級の合格に必要な勉強時間やスケジュールの立て方については「【日商簿記1級の勉強時間】社会人は2級から最短で537時間【1ヶ月や1週間では無理です】」で詳しく解説しています。

独学の場合、基本的に全て1人で勉強します。誰からも勉強するように指示されることもありません。

誰からも指示がない状況で平日2時間の勉強を1年も続けるためには簿記の勉強を楽しいと思えている必要があります。

楽しめないことを平日2時間、1年間続けることができる「鉄の意志」を持っている人は簿記を面白いと感じなくてもいいかもしれません。

ただ、「日商簿記1級に合格すること」よりも「楽しめないことを平日2時間、1年間続けること」の方が難しいです。

日商簿記1級に独学で社会人が合格するための3つのポイント

独学で簿記1級に合格するためには次の3点を特に意識してください。

  • 自分に合ったテキストを使って勉強すること
  • 暗記に頼らず、きちんと内容を理解しながら勉強すること
  • 勉強計画をしっかりと立てて実行すること

では一つずつ詳しく見ていきます。

「きちんと復習すること」「ミスを減らすこと」など、独学でなくても重要なことはここでは省略しています。

自分に合ったテキストを使って勉強すること

日商簿記1級の独学用の教材に分かりやすいものはありません。しかし、その中から少しでも自分に合ったテキストや問題集を選んで勉強する必要があります。

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日商簿記1級のテキストの選び方については「日商簿記1級の独学用テキストおすすめ5選」で問題集の選び方については「日商簿記1級おすすめ問題集5選」で詳しく解説しています。

暗記に頼らず、きちんと内容を理解しながら勉強すること

「暗記に頼らず、きちんと内容を理解しながら勉強すること」は独学でなくても重要です。しかし、独学用の市販の教材に分かりやすいものはないので、つい暗記しようとしてしまいます。

そのため、ここであえて強調しています。たとえ分かりにくくても、何とか調べたり質問したりしてきちんと理解しながら勉強を進めてください。暗記で簿記1級に合格するのはほとんど不可能です。

勉強計画をしっかりと立てて実行すること

独学で勉強する場合、学習スケジュールも自分で立てる必要があります。

試験日から逆算して、きちんと試験日に間に合うように計画を立て、きちんと試験範囲の学習を終えてから試験に臨めるようにすることが大切です。

日商簿記1級は1科目でも10点未満なら不合格になってしまうので、試験範囲の学習を終えずに合格することはほとんど不可能です。

【まとめ】日商簿記1級に独学で合格するために必要な4つの条件

日商簿記1級に独学で挑戦するのはかなり大変です。しかし、次の4つの条件を全て満たすことができれば日商簿記1級に独学で合格することは十分に可能です。

  • 日商簿記2級の過去問を70分で90点得点できる実力を「独学で」つけること
  • 疑問点を遅くとも48時間以内に解決できる環境を作ることができること
  • 通学・通信・独学が全て同じ費用だったとしても独学を選択するつもりであること
  • 簿記の勉強を楽しいと思えること

独学で簿記1級に合格するためには次の3点を特に意識してください。

  • 自分に合ったテキストを使って勉強すること
  • 暗記に頼らず、きちんと内容を理解しながら勉強すること
  • 勉強計画をしっかりと立てて実行すること

この記事の内容をふまえて簿記1級に挑戦することで、合格の可能性は確実に高まります。簿記の勉強、応援しています。

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