- 167回の日商簿記1級の試験を会場で受験してきたんだけど……
- どの問題を解くべきで、どの問題を捨問にすべきかわからない
- 合格するための過去問の解き方や復習のコツを教えてほしい!
日商簿記1級の本試験の問題で、どうやって合格点を取ったらいいのか分からずに悩んでいる人は多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。日商簿記1級に合格するためにどのように本試験問題に取り組んだらいいのかも分かっています。
この記事では日商簿記1級167回の本試験問題の解き方、どの設問を解くべきか、合格点を取るために普段の勉強にどう取り組むべきかを解説します。
この記事を読めば、簿記1級の本番で合格点を取るために必要な考え方、やるべきことが分かります。
結論を一言で言うと、日商簿記1級で合格点を取るためには、枝葉末節の論点に惑わされずに基本的な考え方をしっかりと身につけ、ミスを減らすことが大切です。
日商簿記1級(167回)の各科目の傾斜配点予想
傾斜配点は実際の採点結果をもとに配点を操作することで行われます。実際の配点は外部から知ることはできませんし、現時点では受験した人の得点状況も分かっておりません。
現時点では「問題の難易度」と「過去の受験生の実力」から正答率を予測しての結論だと考えてください。
商業簿記の傾斜配点
商業簿記の配点は次のようなものになると考えられます。
- 問1:12か所のうち3か所が2点、9か所が1点(どこが2点になるかはわかりません)
- 問2:1点
- 問3:9点(各1点)
問1の表示科目の解答欄が12か所、問2の解答欄が1か所、問3の解答欄が9か所で、合計22か所あります。25点満点なので、ほとんどの解答欄が1点、3か所だけ2点になると考えるのが自然です。
この問題の難易度は標準的で、1か所間違えることで大失点するような構造にもなっていません。「解答欄に配点が与えられない(0点の解答欄がある)」といった大きな傾斜配点はないと考えられます。
どの3か所の解答欄が2点になるのかは正直分かりませんが、問1のどこかだと思われます。
会計学の傾斜配点
会計学の配点は次のようなものになると考えられます。
- 第1問:5点(各1点)
- 第2問:5点(問1:2点、問2~問4:各1点)
- 第3問:15点(問1:各2点、問2:各1点)
第1問の解答欄が5か所、第2問の解答欄が4か所、第3問の問1が6か所、問2が3か所で、合計18か所あります。25点満点なので、7か所が2点になり、他が1点になると考えるのが自然です。
この問題の難易度は標準的で、1か所間違えることで大失点するような構造にもなっていません。「解答欄に配点が与えられない(0点の解答欄がある)」といった大きな傾斜配点はないと考えられます。
第1問の語句補充問題はかなり正答率が高いはずで、全体の難易度から考えて、ここに各2点の配点が与えられることはないと考えられます。第1問は各1点でしょう。
第2問は分配可能額の問題が2問、1株あたり当期純利益の問題が2問です。どちらもマイナー論点で、全く勉強していない人もかなり多いです。
ただ、問4以外の難易度はかなり低いので、「税理士受験生」や「会計士受験生」の問1から問3までの正答率はかなり高いと推測されます。
特に問1は計算もシンプルで、少しでも分配可能額を勉強していれば正解できます。おそらく問1には2点の配点がくると考えられます。問2~問4は各1点でしょう。
第3問は事業分離の問題で、問1は基本的な問題です。しかし、問2はかなり難易度が高い論点で、しかも問1がきちんとできていなければ正解するのが難しい構造になっています。
ただ、問2は確かに難しいのですが、日商簿記1級で過去に繰り返し出題された論点なので、しっかりと過去問対策をしていた人は得点できた可能性はあります。
「税理士受験生」は通常は日商簿記1級の過去問対策はしませんので、正解率は極めて低いでしょう。「会計士受験生」は重視する論点なので、過去問対策なしでもある程度は正解できると考えられます。
こういったことを踏まえると、問1の6か所が2点、問2の3か所が1点の配点になりそうです。
工業簿記の傾斜配点
工業簿記の配点は次のようなものになると考えられます。
- 問1:4点
- 問2:4点
- 問3:8点(各4点)
- 問4:4点
- 問5:5点(「月初有高」「当月受入または当月消費」「月末有高」「当月製造費用」「製品」の5に各1点)
問1が1か所、問2が1か所、問3が2か所、問4が1か所、問5が8か所で、合計13か所あります。問5の解答箇所が多いのですが、細かく分かれていることによるものなので、全ての解答欄に均等に2点ずつといった配点にはなりません。
また、問5が何を問われているのかよく分からない問題になっているので、そういった意味からも問5に大きな配点は与えられないはずです。
問題の難易度は非常に低いです。しかし、資料が多くて計算も大変なので無事に正解にたどりつける確率は難易度ほど高くありません。傾斜配点も大きくはかからないはずです。
おそらく、問1から問4まで各4点ずつ、問5の8か所のうち配点があるのは5か所という形になります。
問5の8か所のうち、「月初仕掛品」は問題文にそのまま書かれている金額であり、「月末仕掛品」は問4の解答そのままなので、ここに配点がくることはないでしょう。
また、「当月受入」と「当月消費」は問題文に不備があるため、どちらかにしか配点がない可能性が高いです。
まとめると、「月初有高」「当月受入または当月消費」「月末有高」「当月製造費用」「製品」の5か所に各1点ずつの可能性が高いと言えます。
原価計算の傾斜配点
原価計算の配点は次のようなものになると考えられます。
- 第1問:15点(1が3点、6が2点、他各1点)
- 第2問:10点(各2点)
第1問が12か所、第2問が問1に2か所、問2に2か所、問3に1か所で、合計17か所あります。
問題の難易度は標準的なのですが、この問題には雪崩ポイントが2か所あります。
雪崩ポイントは「直接標準原価計算で実際販売量を間違えたケース」と「複数製品のセールス・ミックスを丸ごと捨てたケース」です。
直接標準原価計算で実際販売量を間違えてしまった場合、第1問の3,5,7,8,11,12の6か所は確実に失点します。4,9,10は語句選択問題なので機転がきけば正解できる可能性もありますが、間違えてしまう可能性も高いです。
複数製品のセールス・ミックスを丸ごと捨てていた場合、第2問全て失点します。
2つの雪崩ポイントを両方とも間違えてしまった場合は仕方ないとしても、どちらか1つ間違えてしまっただけで即不合格になるような配点にしてしまうと、原価計算での10点未満の人数が増えすぎてしまいます。
そう考えると、第2問の5か所は各2点にしかなりませんし、第1問の3,4,5,7,8,9,10,11,12の9か所は各1点でしょう。
こういった問題の構造を考えると、通常の配点では10点未満の人がかなり出てしまいそうです。
10点未満の人を少しでも減らすため非常に解答しやすい「第1問の1(簿記2級レベル)に3点」「第1問の6(普通に考えて「値上げ」しか入らない)に2点」という形で傾斜配点がきそうです。
まとめると、配点は次のようになります。
- 第1問:1が3点、6が2点、他1点。合計15点
- 第2問:全て2点、合計10点
この配点であれば、複数製品のセールス・ミックスを丸ごと捨てた人でも第1問が完璧なら15点取れます。
直接標準原価計算で実際販売量を間違えてしまっても、複数製品のセールス・ミックスで4問取り、第1問の1を正解できれば即不合格は避けられます。
【超具体的】日商簿記1級167回本試験問題の解き方の流れ
ここでは本試験問題を実際にどのように解くべきか、私の答案作成をベースに超具体的に解説します。試験本番で苦戦している人はぜひ参考にしてください。
商業簿記・会計学
90分の使い方の概要は次のとおりです。
- 解答開始と同時に試験問題全体を眺め、分量と出題論点を確認し、大雑把な時間配分を決める(1分)
- 会計学の第1問を解く(2分)
- 会計学の第2問を解く(5分)
- 会計学の第3問を解く(14分)
- 商業簿記の問1と問2を解く(39分)
- 商業簿記の問3を解く(13分)
- 飛ばしていた会計学第3問の問2に挑戦(6分)
- 解答総チェック(10分)
では早速、超具体的にお伝えします。
1.解答開始と同時に試験問題全体を眺め、分量と出題論点を確認し、大雑把な時間配分を決める(1分)
まず最初に商業簿記と会計学の全ての問題をざっと眺めます。読む必要はありません。把握すべきは「問題のおおまかな分量と予想解答時間」です。
過去問練習を十分にしておけば、分量と解答時間は想像がつくのですが、それでも今回だけ特別に異なる可能性はあります。
試験の性質上、商業簿記と会計学のどちらも最低10点取らなければいけませんので、時間配分のミスは致命傷になってしまいます。
最初に「問題のおおまかな分量と予想解答時間」を把握しておくことが大切です。
今回(167回)は商業簿記で「個別損益計算書」「連結貸借対照表(一部)」が出題されています。分量は普通からやや多めといったところです。
会計学では「語句補充」「分配可能額の計算」「1株あたり当期純利益」「事業分離」が出題されています。分量は通常通り、語句補充は短時間での解答が可能なので、時間も少なめで済みそうです。
ざっくりと「商業簿記:60分」「会計学30分」といった計画を立てます。問題文の熟読はまだしません。
ここまでを1分で行いました。
2.会計学の第1問を解く(2分)
会計学の第1問が語句補充問題なので、短時間での解答が可能です。最初に解いて勢いをつけようと考えました。よって会計学から解答していきます。
難易度は低めで、読みながら解答欄を埋めていける問題です。特に(5)は簿記2級レベルです。失点できません。
ここまでで3分です。
3.会計学の第2問を解く(5分)
そのまま会計学の第2問を解いていきます。
会計学第2問の問1を解く(1分)
問1で「のれん等調整額」が問われています。きちんと学習していれば数秒で解ける問題です。問題文から必要な金額である「のれん」と「繰延資産」を拾い読みして解答します。
会計学第2問の問2を解く(3分)
問2で分配可能額が問われています。分配可能額をきちんと学習していれば、手順に従って計算していくことで解くことができます。計算ミスに気をつけながら解答します。
会計学第2問の問3を解く(1分)
問3では「1株あたり当期純利益」が問われています。この問題は学習していなくても何とか解答可能です。
正解するためには次の3つに気づく必要があります。
- 当期純利益を株式数で割るということ:「1株あたり当期純利益」という言葉から容易に想像がつきます。
- 株式数は期首と期末の平均を使うということ:利益は年間を通して発生するので、株式数も年間の平均を使いたい。365日を平均するのは現実的ではないので、期首と期末の平均を使っている。このように考えることができれば大丈夫です。
- 自己株式は株式数から除外するということ:自己株式は資本の払い戻しなので、除外すると考えるのが自然です。
この3つに気づくことができれば解答できます。
会計学第2問の問4は解かない(0分)
設問文を読んで、すぐに捨てます。「1株あたり当期純利益」を勉強していなければ「潜在株式調整後」という言葉の意味も分かりませんし、たとえ学習していたとしても解答は容易ではありません。
私も解こうと思えば解けたかもしれませんが、解く必要はないと判断し、設問を読み終えてすぐに捨てました。
4.会計学の第3問を解く(14分)
ここまでで8分です。いいペースです。引き続き会計学の第3問を解いていきます。
問題全体の把握(3分)
第3問は事業分離の問題です。まず問1と問2の設問文を読み、何が問われているのか確認します。問1で個別財務諸表の各金額、問2で連結財務諸表の各金額を求めなければならないと確認できます。
個別財務諸表ができなければ連結財務諸表はできないので、問2は捨てることも想定しました。その上で、問題文全体を重要な用語や金額にしるしをつけながらあわてずに読んでいきます。
資料1を読み、資料2を眺めるのに3分かかりました。
資料3をもとにA事業分離の仕訳を切る(3分)
じっくりと問題文を読みながら解答していきます。問題自体は基本的なので、ミスに気をつけてあわてずに解答します。
資料4をもとにB事業分離の仕訳を切る(3分)
A事業分離と同様にじっくりと問題文を読みながら解答していきます。問題自体は基本的なので、ミスに気をつけてあわてずに解答します。
問1の解答欄を記入する(1分)
ここまでの仕訳から求まった金額を解答欄に記入します。
問2に挑戦する(4分)
ここまでで18分が経過しています。会計学はあとこの問題だけなので、時間的には余裕があります。問2は難易度が高めの問題ですが、少しだけ挑戦しました。
4分考えたのですが、難しそうだったので、いったん飛ばしました。
ここまでで22分が経過しています。予定より早いですが、商業簿記に移ります。おそらく20点くらいは取れているだろうという手ごたえは感じています。
5.商業簿記の問1と問2を解く(39分)
問題全体の把握(3分)
次は商業簿記です。まずは設問分を読み、何を問われているのかを確認します。
問1で個別損益計算書、問2で(おそらく減損会計での)使用価値、問3で連結会計での金額の一部が問われていることが確認できます。
問2は問1を解いている途中で自然に求まりそうだということ、問3は問1が解けていなければ解けない問題が多そうだから、捨てる問題も多めにありそうだと想定して解き始めます。
問1と問2の各設問の解答(36分)
資料2を見ながら解きやすそうなものから解いていきます。私の場合、1から順番に読みながら「10秒以内に仕訳の道筋が頭に浮かぶ問題」かつ「計算がシンプルそうな問題」と思ったら解き、そうでなければ後回しにします。
結果、解答順は「2→4→6→9→10→5→7→8→1→3」となりました。
仕訳終了後、集計しながら問1の解答欄を埋めていきます。
この時点で試験開始から57分が経過していました。
6.商業簿記の問3を解く(13分)
次に問3を解いていきます。問3は基本的な問題で、簿記2級レベルと言ってもいいかもしれません。
ただ、問題は基本的なのですが、問3の解答欄は問1の解答の影響を受けるので、簡単に得点できるわけではありません。ていねいに解いていく必要があります。
問1の影響を受けている解答欄に関しては、該当する問1の処理が間違えていないか確認してから記入します。
確実に捨てるのは「利益剰余金」です。この解答欄は問1の処理が完璧でなければ正解できません。解く時間がもったいないです。
「その他の包括利益」は言葉の意味さえ知っておけば、計算は容易です。とはいえ、計算問題の対策をしていなかった場合、間違えてしまうかもしれませんが、間違えてしまっても合否に影響はありません。
問題自体は難しくないのですが、問1のミスが影響してきますので、全てミスなく解答するのは容易ではありません。計算ミスを普段から徹底して減らしておくことが大切です。
この時点で74分が経過しています。あと16分を残して解答を全て終えました。
7.飛ばしていた会計学第3問の問2に挑戦(6分)
時間に余裕があるので、いったん飛ばしていた会計学第3問の問2に挑戦しました。6分間考えたのですが解答できず、残り10分になった時点で完全に捨てることを決めました。
8.解答総チェック(10分)
残りの10分で解答の総チェックをします。途中で確認を入れながら解いていますし、ミスはまずないだろうとは思うのですが、念には念を入れて確認しました。
特に、1つのミスが複数の解答欄に影響するようなところは念入りに確認することが大切です。
これで時間終了です。
結果
私が推測した配点での結果は次のとおりです。
- 会計学:21点/25点
- 第1問:5点/5点
- 第2問:4点/5点(問4が捨問)
- 第3問:12点/15点(問2の3か所が捨問)
- 商業簿記:24点/25点
- 問1:15点/15点
- 問2:1点/1点
- 問3:8点/9点(問3の「利益剰余金」が捨問)
商業簿記と会計学の合計で45点となりました。9割得点できたので、おおむね満足のいく結果です。
【簿記革命1級】の受講生の方が準備万端で解いた場合、ミスがなければ次のようになります。
- 会計学:20点/25点
- 第1問:5点/5点
- 第2問:3点/5点(問3と問4が捨問)
- 第3問:12点/15点(問2の3か所が捨問)
- 商業簿記:21点/25点
- 問1:15点/15点
- 問2:1点/1点
- 問3:5点/9点(問3の「利益剰余金」「その他の包括利益」が捨問、「のれん」「非支配株主持分」で失点)
【簿記革命1級】の受講生の方が準備万端で解いた場合、商業簿記と会計学の合計で41点取ることができています。8割以上得点できているので、工業簿記と原価計算で大きなミスをしない限り合格できる得点です。
実際には、ノーミスというわけには行きませんが、商業簿記と会計学あわせて6点までの失点なら合格圏内です。1か所のミスが複数の解答欄に影響するものもありますが、3か所程度のミスなら合格圏内に入ります。
工業簿記・原価計算
90分の使い方の概要は次のとおりです。
- 解答開始と同時に試験問題全体を眺め、分量と出題論点を確認し、大雑把な時間配分を決める(1分)
- 工業簿記を解く(28分)
- 原価計算の第2問を解く(26分)
- 原価計算の第1問を解く(20分)
- 解答総チェック(15分)
では早速、超具体的にお伝えします。
1.解答開始と同時に試験問題全体を眺め、分量と出題論点を確認し、大雑把な時間配分を決める(1分)
まず最初に工業簿記と原価計算の全ての問題をざっと眺めます。読まなくて構いません。把握すべきは「問題のおおまかな分量と予想解答時間」です。
過去問練習を十分にしておけば分量と解答時間は想像がつくのですが、それでも今回だけ特別に異なる可能性はあります。
試験の性質上、工業簿記と原価計算のどちらも最低10点取らなければいけませんので、時間配分のミスは致命傷になりかねません。
最初に「問題のおおまかな分量と解答時間」を把握しておくことが大切です。
今回(167回)は工業簿記で「工程別組別総合原価計算」が出題されています。資料が多くて複雑で、難易度はともかく作業量は非常に多くなりそうだと感じました。
原価計算では「直接標準原価計算」「複数製品のセールス・ミックス」が出題されています。「複数製品のセールス・ミックス」は問題文の分量の割に時間がかかるので、原価計算にもそれなりに時間がかかりそうだと考えました。
ざっくりと「工業簿記:45分」「原価計算:45分」といった計画を立てます。工業簿記を45分で完答できるとは思えませんが、45分たったら残りは解かずに原価計算に移ることを意識しました。
問題文の熟読はまだしません。
ここまでで1分です。
2.工業簿記を解く(28分)
計算条件を熟読し、解答の方針を立てる(1分)
工業簿記の方が解きやすそうだと判断したので工業簿記から解いていきます。重要な指示や数値にしるしをつけながら問題文を読んでいきます。
工程別総合原価計算の勘定連絡図を意識しながら読んでいきます。
問1を解く(4分)
問1の当月材料出庫高を計算します。材料の情報は「材料元帳」に月初有高と当月受入が、「出庫表一覧」に当月払出が集計されているので、問題文の指示を守りながら計算します。
私は材料のボックス図を4つ描いて解答しました。
問2を解く(3分)
間接作業賃金と手待賃金は「作業日報要約表」に集計されています。また、「計算条件」に実際平均消費賃率が書かれています。これらを使って計算します。
ここでは図は何も使っていません。電卓だけで求めました。
問3を解く(8分)
問3を解いていきます。補助材料費を逆算により求めると問題文にあるので、「製造間接費実際発生額(5月)」の表を使って解いていきます。
問2で求めた解答を使うので、ここで問2で求めた数値を一度計算しなおして正しいかどうか確認します。
問4を解く(5分)
月末仕掛品原価を計算します。問1で作った材料のボックス図から直接材料費を、作業日報要約表から直接労務費を、製造実績から製造間接費を集計して解答します。
問1で求めた解答を使うので、ここで問1で求めた数値を一度計算しなおして正しいかどうか確認します。
問5を解く(7分)
問4まで解いて、ここまで21分しかかかっていません。資料の複雑さの割にスムーズに解ける問題でした。
このままの勢いで問5を解こうと思ったのですが、問5の「統制勘定としての」の部分がよく分かりません。直接材料費だけではなく間接材料費も含んでいるということはなんとなく分かるのですが、具体的に何を統制しているのかが分かりません。
しばらく考えたのですが結論が出ず、計算も大変そうだったので、直接材料費しか存在しない「月初有高」「月末有高」と、すぐに分かる「月初仕掛品(「計算条件」の5にそのまま書かれている)」「月末仕掛品(問4と同じ)」だけ記入して原価計算に移りました。
3.原価計算の第2問を解く(26分)
ここまでで28分経過しています。工業簿記では20点くらいは得点できていると感じていたので、かなり精神的に余裕がありました。
第1問が「直接標準原価計算」、第2問が「複数製品のセールス・ミックス」でしたが、私は「複数製品のセールス・ミックス」の方が得意なので、第2問から解くことにしました。
全体確認(1分)
まずは全体確認をします。重要な指示や数値にしるしをつけながら問題文を熟読します。
問1を解く(13分)
最適セールス・ミックスを求めます。オーソドックスな問題で、丁寧にグラフを描いて求めました。時間に余裕があるので、特にていねいに計算して解答しました。
問2を解く(8分)
問1から少しだけ条件が変わった問題です。問1のグラフを再利用するか迷いましたが、時間に余裕があるので、もう一つグラフを描いて解きました。
問3を解く(4分)
やや数学的なセンスが要求される問題です。直接的には【簿記革命1級】では取り扱っていませんが、数学が得意な方は解答可能な問題です。数学が苦手な人は捨問にしても全く問題ありません。
4.原価計算の第1問を解く(20分)
この時点で54分経過しています。時間的にはかなり余裕があります。
全体確認(2分)
まず全体を確認します。重要な指示や数値にしるしをつけながら問題文を熟読します。
問1を解く(2分)
問1は簿記2級レベルの問題です。絶対に失点できません。ていねいに解答します。
問2~問5を解く(10分)
この問題は実際販売量を自分で求めなければならない問題です。実際販売量を求めるのにやや時間がかかりましたが、何とか10分で解答できました。
問6を解く(1分)
問2に「販売価格差異」が入ることが分かっていれば、問6には値上げ以外入りません。数秒で解答できます。
問7・問8を解く(2分)
変動費変動予算差異を売上原価部分と販売費部分に分ける問題です。特に難しいところはなく解答できます。
問9から問12を解く(4分)
市場総需要量差異と市場占有率差異に分析する問題です。特に難しいところはなく解答できます。
5.解答総チェック(15分)
ここまでで75分経過しています。残り15分で最終確認をしていきます。セールスミックスの配点が大きいと予想して、特に重点的に確認します。
工業簿記の問5を解くことはせず、捨てています。
これで時間終了です。
結果
私が推測した配点での結果は次のとおりです。
- 工業簿記:22点/25点
- 問1:4点/4点
- 問2:4点/4点
- 問3:8点/8点
- 問4:4点/4点
- 問5:2点/5点(「当月受入or当月消費」「当月製造費用」「製品」が捨問)
- 原価計算:25点/25点
- 第1問:15点/15点
- 第2問:10点/10点
工業簿記と原価計算の合計で47点となりました。問題に不備があったことを考えると、ほぼ完ぺきな結果でした(運がよかったです)。
【簿記革命1級】の受講生の方が準備万端で解いた場合、ミスがなければ次のようになります。
工業簿記:22点/25点
問1:4点/4点
問2:4点/4点
問3:8点/8点
問4:4点/4点
問5:2点/5点(「当月受入or当月消費」「当月製造費用」「製品」が捨問)
原価計算:23点/25点
第1問:15点/15点
第2問:8点/10点(問3で失点)
【簿記革命1級】の受講生の方が準備万端で解いた場合、工業簿記と原価計算の合計で45点取ることができています。9割得点できているので、商業簿記と会計学で大きなミスをしない限り合格できる得点です。
実際には、ノーミスというわけには行きませんが、工業簿記と原価計算あわせて10点までの失点なら許されます。原価計算の第2問が全滅したり、第1問で実際販売量の計算を間違えていたりしなければ、合格圏内に十分入ります。
日商簿記1級に合格するために普段から心がけるべき勉強のスタンス
日商簿記1級で合格点を取るためには、次の3つを意識して勉強することが大切です。
- 大問が作られるような大きな論点を丸ごと捨てないこと
- 普段から計算ミスを徹底的に減らしておくこと
- 基本的な論点をきちんと理解して身につけておくこと
大問が作られるような大きな論点を丸ごと捨てないこと
167回の試験では、「複数製品のセールス・ミックス」を丸ごと捨てていた人にとっては厳しい試験になりました。逆に「1株当たり当期純利益」や「分配可能額」を丸ごと捨てて合格は十分に可能でした。
違いは「どれだけ大きな問題が作られるのか」にあります。
「複数製品のセールス・ミックス」はそれだけで大問を作ることができる論点です。10点以上の配点がある問題になることも普通にあります。
逆に「1株当たり当期純利益」や「分配可能額」で大問を1つ作るのはほぼ不可能です。出題するにしても小問を2~3題出題するくらいです。配点も大きくても5点、通常は2~3点です。
枝葉末節の論点を捨てるのはありですし、【簿記革命1級】でも「1株当たり当期純利益」は取り扱っていません。
しかし、大問が作られる可能性がある論点を丸ごと捨てるのはまずいです。捨てた論点が4科目のうち1科目でも出題されると、それだけで不合格になってしまいます。
大問が作られるような大きな論点を丸ごと捨てないことが大切です。
普段から計算ミスを徹底的に減らしておくこと
これまで見てきた通り、日商簿記1級であっても重要な論点をきちんと理解して身につけていれば合格はもちろん、80点以上の得点も十分可能です。
しかし、計算ミスをしてしまうと、特に他の解答欄に影響するところで計算ミスをしてしまうと、一気に点数を落とします。
実力があるにも関わらず、不合格になってしまう原因の多くは、こういった「連鎖的な失点」にあるのです。連鎖的な失点さえしなければ、基本事項を完璧に身につけておくだけで70点は余裕で届きます。
連鎖的な失点をしないため、「普段の勉強からミスを徹底的に減らしておくこと」「試験中もあわてて解くのではなく、じっくりと基本問題を解き、難問はすぐに捨てること」が大切です。
基本的な論点をきちんと理解して身につけておくこと
これまで何度もお伝えしてきましたが、本当に重要なのでもう一度お伝えします。
「基本的な論点をきちんと理解して身につけておくこと」「考え方を理解しておくこと」が大切です。
暗記の勉強では少し変えられただけで解けなくなってしまいます。167回の試験であれば、「原価計算の実際販売量の計算」「工業簿記の複雑な資料」などで対応できなくなってしまいます。
これらに対応できなければ不合格になってしまい可能性が高い。暗記の勉強では合格は難しいのです。
基本的な論点をきちんと理解し、ミスを減らしておけば日商簿記1級であっても合格できます。
こういった意識で勉強されてください。
コメント
こんにちは。167回簿記1級を受けましたが会計学で記入ミスがなければ語句問題4つ、事業分離個別は完答です。商15から16工業23か25原23でした。会計学で一株、分配、連結ができなかったのでケアレスミス、配点次第で足切りがあり得るのでめちゃくちゃ不安です。また、私の地域は8月2日に合格発表です。
167回簿記1級を受験してきた者です。
会計学は記入ミスがなければ語句4問、事業分離個別完答、他は❌でした。一株、分配、事業分離連結に2点配点がいってしまいかつ記入ミスがあると足切りがあり得てしまうという状況です。
他の3科目は
商15から16
工23or25
原23という出来でした。
私の地域は8月2日が合格発表です。ものすごく不安です。
コメントありがとうございます。試験お疲れさまでした。返信遅くなってしまい申し訳ありません。
会計学以外は安心ですね。特に工業簿記と原価計算は素晴らしいです。しっかりと正しい努力をされていると感じました。
こーたさんは合格に十分な実力があります。そのこーたさんが解けなかった問題は、他の受験生も難しいです。語句問題4つと事業分離個別がしっかりとできていれば10点には確実に届きます。記入ミスがあれば足切りの可能性は確かにありますが、工業簿記と原価計算で23点取れる人が会計学でたくさん記入ミスをしてしまうことはまずありません。
気持ちを楽に持って合格発表を待たれてください。ゆっくりと心と体を休めてください。