- 簿記を勉強していて、企業会計原則を読もうと思ったんだけど……
- 企業会計原則と会計公準の意味がよく分からない
- 企業会計原則についてわかりやすく教えて!
企業会計原則は難解な文章で書かれているので、意味が分からないと感じてしまう方が非常に多いです。
私は簿記通信講座を2012年から運営してきて数百名の合格者をこれまでに送り出させていただきました。もちろん企業会計原則についても熟知しています。
この記事では企業会計原則の一般原則と会計公準についてわかりやすく解説します。
この記事を読めば企業会計原則についてより深く理解できるので、普段勉強している会計処理についてもより理解できるようになります。
簿記1級の会計学や税理士の財務諸表論などで企業会計原則に関する問題が出題されても自信を持って解答できるようになります。
結論を一言で言うと、企業会計原則は、会計実務の中で慣習として発達してきた会計処理の方法で妥当だと思われるものをまとめたものです。簿記で勉強する会計処理は原則として企業会計原則を元に行われています。
会計公準:会計を行うための土台となる前提
会計を行うための土台となる前提のことを会計公準と言います。会計公準には「企業実体の公準」「継続企業の公準(会計期間の公準)」「貨幣的測定の公準(貨幣的評価の公準)」の3つがあります。
会計公準については「会計公準とは【3つの会計公準をわかりやすく】」で詳しく解説しています。
企業実体の公準:「出資者」と「企業」を明確に区分するという公準
「出資者」と「企業」を明確に区分するという公準を「企業実体の公準」と言います。
大規模な株式会社では特に問題にはなりませんが、「個人(家計)」と「事業」が分かれていない「個人事業主」のような場合であっても、「経営者の立場」で会計を行うというのが企業実体の公準です。
企業実体の公準については「企業実体の公準とは何かわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
継続企業の公準(会計期間の公準):企業は半永久的に活動を続けるという前提
企業は半永久的に活動を続けるという前提を継続企業の公準といいます。建物や備品などに減価償却を行うのも「半永久的に活動を続ける前提」があるからです。
企業が半永久的に活動を続けるという継続企業の公準から、必然的に会計期間が必要になります。というわけで、継続企業の公準と同じ意味で「会計期間の公準」という名前も使われます。
継続企業の公準(会計期間の公準)については「継続企業の公準(別名:会計期間の公準)の意味とは?」で詳しく解説しています。
貨幣的測定の公準(貨幣的評価の公準):経済活動の測定に金額を使うという公準
貨幣的測定の公準とは企業の経済活動を測定するのに「金額(日本においては「円」)」を使うという公準です。
貨幣的測定の公準(貨幣的評価の公準)については「貨幣的測定の公準(貨幣的評価の公準)とは」で詳しく解説しています。
企業会計原則(一般原則)
企業会計原則は、会計実務の中で慣習として発達してきた会計処理の方法で妥当だと思われるものをまとめたものです。
企業会計原則は法律ではありませんが、会社法431条1項で次のような規定があります。
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
会社法431条1項に書かれている「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」が企業会計原則や企業会計基準だと考えられています。
ということは企業会計原則を守らなければ会社法を守らなかったのと同じことになってしまいます。
このような考え方から、企業会計原則は事実上、法律と同じように法的強制力を持つと考えられます。
企業会計原則は次の3部で構成されています。
- 一般原則
- 損益計算書原則
- 貸借対照表原則
一般原則は、企業会計全体に関わる原則で、損益計算書原則は費用と収益に関する原則、貸借対照表原則は資産と負債と資本に関する原則です。
一般原則は7つで構成されています。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区別の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
- 重要性の原則
真実性の原則
次の原則が真実性の原則です。
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告をするものでなければならない。
真実性の原則が最も根本かつ重要な原則で、企業会計における最上位の原則だとされています。
真実性の原則は簡単に言うと「本当のことを報告すること」「嘘はつかないこと」を要求していると言えます。
真実性の原則については「真実性の原則の意義【相対的真実についても解説】」で詳しく解説しています。
正規の簿記の原則
次の原則が正規の簿記の原則です。
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
「正規の簿記」とは次の要件を満たす簿記だと考えられています。
- 網羅性:全ての取引を記録できる簿記
- 記録の検証可能性:記録を検証することができる簿記
- 秩序性:継続的で組織的な記録ができる簿記
- 誘導可能性:その記録から財務諸表を誘導的に作成することができる簿記(広義の「正規の簿記の原則」のみ)
正規の簿記の原則については「正規の簿記の原則とは【誘導法・検証可能性・秩序性が重要】」で詳しく解説しています。
資本取引・損益取引区別の原則
次の原則が資本取引・損益取引区分の原則です。
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金を混同してはならない。
資本を直接増加させる取引が資本取引、「収益の発生」や「費用の発生」が損益取引です。
資本取引・損益取引区別の原則については「資本取引・損益取引区分の原則(資本利益区別の原則)」で詳しく解説しています。
明瞭性の原則
次の原則が明瞭性の原則です。
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
財務諸表は誤解されないように作らなければならないということです。
明瞭性の原則については「明瞭性の原則とは何かわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
継続性の原則
次の原則が継続性の原則です。
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
継続性の原則には次の2つの目的があると考えられています。
- 財務諸表の期間比較をしやすくするため
- 会計操作を排除するため
継続性の原則については「【企業会計原則】継続性の原則の意義」で詳しく解説しています。
保守主義の原則
次の原則が保守主義の原則です。
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
保守主義の原則は「将来に備えて収益が控えめに、費用が多めに出るような会計処理を行うこと」を要請する原則です。
保守主義の原則については「保守主義の原則の意義を簡単に解説」で詳しく解説しています。
単一性の原則
次の原則が単一性の原則です。
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
単一性の原則は「目的のために真実をゆがめてはならない」という原則です。
単一性の原則については「単一性の原則(別名:実質一元・形式多元の原則)をわかりやすく」で詳しく解説しています。
重要性の原則
次の原則が重要性の原則です。
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。
重要性の原則を一言でまとめると、重要ではないものについては簡単に処理しても構わないということです。
重要性の原則については「重要性の原則とは【企業会計原則注解】」で詳しく解説しています。
最後の「重要性の原則」は正確には一般原則ではないのですが、一般原則に含めて説明されることが多いのでこの記事でも含めています。結果、8つになっています。