製造原価要素の分類基準~原価計算基準~

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。簿記1級では原価計算基準についての理論問題が出題されることがあります。なので原価計算基準を読むことが望ましいのですが、この原価計算基準は非常に難解な文章となっています。

そこで、これからしばらくにわたって原価計算基準の解説を行っていこうと思います。今回は原価計算基準の第二章の八である「製造原価要素の分類基準」についてお伝えしていきます。

製造原価要素の分類基準

原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類する。

口語訳
原価要素は「製造原価要素(製造原価の内訳項目)」と「販売費および一般管理費の要素」に分類する。

解説
原価要素は「営業外費用」や「特別損失」に分類されることはありません。営業外費用や特別損失には原価性がないからです。

製造原価要素を分類する基準は次のようである。

原価の分類

(一)形態別分類

形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。

口語訳
形態別分類は財務会計における費用と結びついている分類、原価の発生の形態による分類である。形態別分類では原価を「材料費」「労務費」「経費」に分類する

解説
原価計算制度では、「財務会計から費用に関する情報をもらい、その情報をもとに原価計算を行って売上原価や製品の金額を計算し、その金額を財務会計で利用する」という仕組みになっています。

この「財務会計から費用に関する情報をもらう」ところで役立つのが「形態別分類」です。

材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

  1. 素材費(又は原料費)
  2. 買入部品費
  3. 燃料費
  4. 工場消耗品費
  5. 消耗工具器具備品費

口語訳
材料費とは、モノを消費することで発生する原価で、次のようなものが材料費となる。

  1. 素材費(原料費):簡単に言うと「材料」
  2. 買入部品費:簡単に言うと「部品」
  3. 燃料費:石油や石炭など
  4. 工場消耗品費:潤滑油や軍手など
  5. 消耗工具器具備品費:工具・器具・備品のうち耐用年数が1年未満のもの

解説
材料費にあたるものの説明と具体例が書かれています。

素材費や買入部品費が材料費にあたるのは理解しやすいですが、直接製品を構成しない燃料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費も材料費に含まれることに注意が必要です。「工場でモノを消費する」という条件を満たせば材料費になります。

労務費とは、労務用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

  1. 賃金(基本給のほか割増賃金を含む。)
  2. 給料
  3. 雑給
  4. 従業員賞与手当
  5. 退職給与引当金繰入額
  6. 福利費(健康保険料負担金等)

口語訳
労務費とは労働力を消費することで発生する原価で、次のようなものが労務費となる。

  1. 賃金:工員に対して支払われる給料
  2. 給料:工員以外の人に支払われる給料
  3. 雑給:パートタイマーやアルバイトに対する給料
  4. 従業員賞与手当:工場の従業員に対して支払われるボーナスや手当
  5. 退職給与引当金繰入額:工場の従業員に対して支払われる退職金に対する引当金
  6. 福利費:工場の従業員に対する福利費のうちの会社負担分

解説
労務費にあたるものの説明と具体例が書かれています。労務費を一言で言えば「工場の従業員に関して支払われる対価(人件費)」です。

経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。

口語訳
材料費、労務費以外の原価を経費に分類する。経費は「減価償却費」「棚卸減耗費」「福利施設負担額」「賃借料」「修繕料」「電力料」「旅費交通費」などに細分する。

解説
ここで示されている具体例のうち次のような疑問が出てくるのではないでしょうか。

  • 棚卸減耗費は材料費ではないのか
  • 福利施設負担額は労務費ではないのか

「棚卸減耗費がなぜ材料費ではなく経費なのか」ですが、結論から言うと「棚卸減耗費は物品の消費ではないから」です。「消費」とは通常「使ってなくなること」です。

棚卸減耗費は材料が「蒸発」や「盗難」によってなくなることですが、これは「勝手になくなっている」と言うのが自然で、通常は「使ってなくなる」とは言いません。

また、「福利施設負担額がなぜ労務費ではなく経費なのか」ですが、福利施設負担額は「人件費」というよりも「働きやすくするための費用」です。この「働きやすくするための費用」は労務費ではなく経費となります。

原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。

口語訳
原価要素の形態別分類は、財務会計における費用にもとづいた分類なので、原価計算は財務会計から形態別分類による資料を受け取って原価を計算する。

この意味でこの分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。

口語訳
形態別分類は原価に関する基礎的な分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。

(二)機能別分類

機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを機能別に分類する。

口語訳
機能別分類とは、原価を何のために使用したかによる分類である。

この分類基準によれば、たとえば、材料費は、主要材料費、および修繕材料費、試験研究材料費等の補助材料費、ならびに工場消耗品費等に、賃金は、作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等に、経費は、各部門の機能別経費に分類する。

口語訳
機能別分類では、材料費は「主要材料費(製品の材料のため)」「修繕材料費(修繕のため)」「試験研究材料費等の補助材料費(試験研究のため)」「工場消耗品費(製品の製造の補助のため)」などに分類される。

また、賃金は「作業種類別直接賃金(特定の製品を製造するため)」「間接作業賃金(製品の製造を補助するため)」「手待賃金(待ち時間のため)」などに分類される。

また、経費は各部門の機能別に分類する。

解説
機能別分類では「材料費」「労務費」「経費」といった表面的な分類だけでなく、どういった目的で何のために使われたかまで踏み込んで分類します。なので、機能別分類では「直接費」と「間接費」に分類することもできます。

(三)製品との関連における分類

製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。

口語訳
「製品との関連における分類」とは、製品に対してどのような形で発生している原価なのか、つまり「特定の製品に対して消費されたと直接的に認識される原価(直接費)」と「どの製品に対して消費されたのか直接認識できない原価(間接費」)」との分類である。

1.直接費は、これを直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分する。

口語訳
直接費は「直接材料費」「直接労務費」「直接経費」に分類し、さらに適当に細かく分類する

2.間接費は、これを間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分する。

口語訳
間接費は「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」に分類し、さらに適当に細かく分類する

必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。

口語訳
必要がある場合には「直接労務費と製造間接費をまとめて」または「直接材料費以外をまとめて」加工費とすることができる

解説
「必要がある場合」とは「細かく分類すると手間がかかりすぎる割に計算結果はほどんと変わらない場合」、つまり「割に合わない場合」ということです。そういう「割に合わない場合」にはしなくてもいいということで、つまりは「選択適用」ということです。

特に「加工費」は総合原価計算で使われる分類ですが、総合原価計算は個別原価計算と比べて明らかに大雑把な計算方法です。大雑把な計算方法を使うのであれば原価の分類も手間をかけずに大雑把に行った方がコスト・パフォーマンスが高いといえます。

(四)操業度との関連における分類

操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを固定費と変動費とに分類する。ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。

口語訳
「操業度との関連における分類」とは、操業度の増減、つまり生産設備の利用度との関係による分類である。

「操業度との関連における分類」では原価を「固定費(生産設備の利用度が変わっても金額が変わらない原価)」と「変動費(生産設備の利用度に比例して金額が増減する原価)」に分類する

ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを準固定費又は準変動費となづける。

口語訳
「ある範囲内の操業度の変化では金額は変わらないが、その範囲を超えると金額が急増し、またしばらくは金額が変わらない原価」、たとえば「監督者給料」のような原価を準固定費という。

また、「全く利用しなくても一定額が発生する一方、利用度が増加すれば比例的に金額も増加する原価」、たとえば「電力量」のような原価を準変動費という。

解説
監督者給料がなぜ準固定費なのかですが、監督者の給料はたいていは固定費(残業代がつかず、月給制)ですが、監督者1人で監督できる範囲はある程度に限られています。

なので工場の規模が拡大した場合、監督者を増やさなければならなくなり、その時点で原価が急増します。

準固定費又は準変動費は、固定費又は変動費とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分類する。

口語訳
準固定費は固定費とみなし、また、準変動費は変動費とみなして分類する。または固定費の部分と変動費の部分に分解して分類する。

(五)原価の管理可能性に基づく分類

原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかの分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを管理可能費と管理不能費とに分類する。

口語訳
「原価の管理可能性に基づく分類」とは、原価の発生が管理できるかどうかでの分類である。「原価の管理可能性に基づく分類」によって原価を「管理可能費」と「管理不能費」に分類する。

下級管理者層にとって管理不能費であるものも、上級管理者層にとっては管理可能費となることがある。

解説
例えば、「工場の賃借料」は工員にとっては管理不能(工員が工場の賃借料に意見することは通常はない)でも工場管理者にとっては管理可能(管理者が工場の立地や規模を決めることも多い)ということもあります。この一文はこういったことを言っています。

これで原価計算基準の第二章の八である「製造原価要素の分類基準」は全て終了です。原文は非常に読みづらいのでできるだけ分かりやすく解説(口語訳)しました。

このような形で意味を理解しながら原文を何度も読み込むことで、徐々に原価計算基準を自分のものにしていってください。

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