非原価項目~原価計算基準~

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。簿記1級では原価計算基準についての理論問題が出題されることがあります。なので原価計算基準を読むことが望ましいのですが、この原価計算基準は非常に難解な文章となっています。

そこで、原価計算基準の解説を行っていきます。今回は原価計算基準の第一章の五である「非原価項目」についてお伝えしていきます。

非原価項目

非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目をいい、おおむね次のような項目である。

口語訳
非原価項目とは、原価計算制度において原価に算入しない項目のことである。

(一)経営目的に関連しない価値の減少、たとえば
1.次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用

口語訳
経営の目的に関連しない価値の減少は原価には算入しない。たとえば次の資産に関する「減価償却費」「管理費」「租税」などは経営目的に関連しない費用なので原価には算入しない。

解説
経営の目的に関連しない費用は原価には含みません。具体的にどのようなものが経営の目的に関連しない費用に含まれないのか列挙されています。

(1)投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等

解説
「投資不動産」「有価証券」「貸付金」などは全て「資金の運用」です。資金の運用はあくまでも余った資金の運用なので経営目的ではありません(投資会社の場合はそうとは言い切れない面もありますが、原価計算基準が投資会社を想定しているということはありえません)。

なので、これらの資産に関する減価償却費や管理費や税金費用などは原価に含みません。

(2)未稼働の固定資産

解説
稼動していない固定資産は経営目的に全く役立っていません。なので稼動していない固定資産から発生する減価償却費や管理費などは原価には含みません。

(3)長期にわたり休止している設備

解説
(2)と同じです。長期にわたり休止している設備は経営目的に全く役立っていません。なので長期にわたり休止している設備から発生する減価償却費や管理費などは原価には含みません。

(4)その他経営目的に関連しない資産

解説
(1)~(3)以外のものであっても経営目的に関連しない資産から発生する費用は原価には含まないということです。

2.寄付金等であって経営目的に関連しない支出

解説
寄付金とは文字通り「寄付」のことです。寄付金なども経営目的に関連しない支出だと言えます。

3.支払利息、割引料、社債発行割引料償却、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保険料等の財務費用

解説
「支払利息」「割引料(手形売却損)」「社債発行割引料償却(社債利息)」「社債発行費償却」「株式発行費償却」「開業費償却」「支払保険料」などは資金を調達するためにかかった費用だと言えます。

資金を調達するためにかかった費用は経営目的に関連しないので原価とはなりません(営業外費用に分類されるものは原価にはなりません)。

(二) 異常な状態を原因とする価値の減少、たとえば

口語訳
異常な状態が原因で発生する価値の減少は原価には算入しない。

解説
異常な状態が原因で発生する費用(特別損失)は原価には算入しません

1.異常な仕損、減損、たな卸減耗等

解説
「異常な仕損(通常では起こりえない仕掛品の破損など)」「異常な減損、棚卸減耗(通常は起こりえない材料の蒸発、遺失など)」は異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

2.火災、震災、風水害、盗難、争議等の偶発的事故による損失

解説
「火災(火事などの災害)」「震災(地震災害)」「風水害(暴風による災害や洪水による災害)」「盗難」「争議(労働争議、ストライキやサボタージュのこと)」などは異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

3.予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費

解説
予想できなかった陳腐化などによって固定資産に著しい減価が発生した場合の臨時償却費は異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

ちなみに臨時償却とは「過去の減価償却費が不足していた場合、その減価償却費の不足分を特別損失として計上すること」です。現在は「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が優先されているので臨時償却は廃止されています。

4.延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金

解説
「延滞償金(延滞料のようなもの)」「違約金(契約違反などによる支払金)」「罰課金(法令違反などにより支払う罰金など)」「損害賠償金(他者に損害を与えたときに支払う賠償金)」は異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

このような支払が「正常」なら企業としてとんでもないことです。

5.偶発債務損失

解説
「現時点では確定した債務ではないけれどある条件を満たせば債務が発生するような債務」を偶発債務と言います。偶発債務の代表例は次の2つです。

  • 手形遡及義務:手形の裏書や割引を行った場合、手形の債務者が期日に手形金額を支払えない場合には、債務者に代わって手形代金の支払に応じる義務があります。この義務を手形遡及義務と言います。
  • 債務保証:他の企業の債務を保証した場合、債務者が債務を支払えなくなった場合は保証人が債務者に代わって債務を支払わなければなりません。この義務を債務保証と言います。

偶発債務はそもそも高い確率では発生しません。なので、偶発債務により発生した偶発債務損失は異常な状態が原因で発生した費用といえるので原価には算入しません。

6.訴訟費

解説
訴訟のためにかかる費用である訴訟費は異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

7.臨時多額の退職手当

解説
臨時的に多額の退職金の支払が発生することがありますが、こういった「臨時多額の退職手当」は異常な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

8.固定資産売却損および除却損

解説
固定資産を売却したときには固定資産売却損が、固定資産を除却したときには固定資産除却損が発生します。

固定資産の売却や除却という取引はそもそも臨時的に行うもので、正常な状態で行うものではありません。なので、固定資産売却損や固定資産除却損は異常な状態が原因で発生した費用といえるので原価には算入しません。

9.異常な貸倒損失

解説
異常な貸倒損失は、言葉通り「異常」な状態が原因で発生した費用なので原価には算入しません。

(三)税法上とくに認められている損失算入項目、たとえば

解説
原価に算入されるためにはまず費用として認められる必要があります。原価は価値の減少が必要なので、価値の減少を意味する「費用性」は不可欠だからです。なので、費用ではないものが原価となることはありません。

しかし、会計的には費用としては認められてないけれど税法的には費用(損金)として特に認められることがあります。

そういった項目は税法上は費用となるため原価として認められる可能性が出てきますが、それでも原価には算入しません。

1.価格変動準備金繰入額

解説
価格変動準備金とは租税特別措置法(特例的な税法上の取り扱いを定めた法)により認められた準備金で、価格が変動することで損失が発生する可能性が高い株式や債券などについて、将来の損失に備えて積み立てる準備金です。

この価格変動準備金に繰り入れる金額が「価格変動準備金繰入額」となります。

価格変動準備金繰入額は準備金の積立にあたるので、通常は費用とはなりません(資本準備金を積み立てても費用が発生しないのと同じです)。

費用ではないので通常は損金(税法上の費用)にも算入されないのですが、特例で損金の算入が認められる場合があります。そういった場合にも原価には算入しません。

2.租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額をこえる額

解説
通常の償却範囲額を超える償却は会計のルール上できません。なので当然に費用とはなりません。

しかし、租税特別措置法(特例的な税法上の取り扱いを定めた法)により通常では認められない額の償却が認められ、その金額を損金(税法上の費用)として計上できる場合があります(特別償却といいます)。

しかし、こういった金額も原価には算入しません。

ちなみに特別償却により通常の減価償却費を超える減価償却費の計上が認められた場合、その減価償却費は「減価償却費(費用)」ではなく「特別償却準備金(純資産)」として計上します。

この特別償却準備金は費用ではありませんが税法上の費用(損金)になります。

(四)その他の利益剰余金に課する項目、たとえば

解説
その他の利益剰余金とは「利益準備金以外の利益剰余金」です。この「その他の利益剰余金」を取り崩すことで発生する金額は原価とはなりません。

1.法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税

解説
「法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税」つまり「法人税等」は会計上は費用にあたりますが、最後に残った利益(税引前当期純利益)から国に支払われるという性質があります。

ある意味「その他の利益剰余金」からの支払いだといえるもので、原価には算入されません。

2.配当金

解説
配当金は「その他の利益剰余金」を取り崩して支払われるものです(現在はその他資本剰余金からの配当も行われますが、原価計算が制定された当時はその他資本剰余金からの配当は認められていませんでした)。なので原価には算入されません。

3.役員賞与金

解説
役員賞与金は現在は「役員賞与引当金」を計上し、株主総会の承認を得てから支払われますが、原価計算が制定された当時は配当金と同じで「その他の利益剰余金」を取り崩すことで行われていました。なので原価には算入されないこととされていました。

現在は役員賞与金の繰り入れは費用として計上されるので、当時とは状況は変わっています。

その役員が「工場長」など製品の製造に直接関わる人であった場合は「製造原価」に「営業統括役員」など営業に関する役員であれば「販売費」に、そうでない役員であれば「一般管理費」となるため、現在は原価となりえます。

4.任意積立金繰入額

解説
任意積立金は「その他の利益剰余金」を取り崩すことで積み立てます。なので原価には算入されません。

5.建設利息償却

解説
以前、一定の条件を満たせば将来の利益を見越して配当することが認められていました。この配当の前払いによって計上された資産(前払費用のようなもの)を「建設利息」と言います。

建設利息償却は会計的には「配当金の支払い」にあたるので「2配当金」と同じく原価には算入されません。

ちなみに建設利息は現在は廃止されています。

これで原価計算基準の第一章の五である「非原価項目」は全て終了です。原文は非常に読みづらいのでできるだけ分かりやすく解説(口語訳)しました。

原価の本質と深い関係があるので、合わせて理解することをお勧めします。原文を何度も読み込むことで、徐々に原価計算基準を自分のものにしていってください。

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