原価計算基準(前文)

Pocket

こんにちは、簿記合格請負人の平野です。簿記1級では原価計算基準についての理論問題が出題されることがあります。なので原価計算基準を読むことが望ましいのですが、この原価計算基準は非常に難解な文章となっています。

そこで、これからしばらくにわたって原価計算基準の解説を行っていこうと思います。まずは前文についてお伝えしていきます。

原価計算基準を読む前に

原価計算基準は昭和37年から改正されていません。なので非常に古い書き方になっています。それと同時に、原価計算基準を読むためには当時の時代背景を考慮する必要があります。

原価計算の最終改定は昭和37年なのですが、トヨタ生産方式の代表例である「カンバン方式」がトヨタの全工場で行われるようになったのが昭和37年です。

カンバン方式では無駄のない在庫管理ができるのですが、原価計算基準ができたのと同じ年ですので、原価計算基準が作られているときにはカンバン方式はありません。

また、初期のコンピュータが登場するのが1970年代(昭和50年前後)ですから、原価計算基準はコンピュータによる管理も想定されていません。

当然エクセルのような管理ソフトもありませんし、インターネットなどで遠くの工場の状況をリアルタイムで把握することも困難です。

つまり、原価計算基準が作られた当時は「ほとんど全ての状況を紙で計算、記録、管理し、連絡にもかなりの時間差がある」という環境なのです。

なので今の感覚で原価計算基準を読むと「何でこんな回りくどいことをしているのか」「なぜこんな不正確な計算をしているのか」といった感想を持ちやすいので注意が必要です。

原価計算基準を暗記してはならない

原価計算基準は非常に難解な文章なので、理解をあきらめて丸暗記しようとする方がいます。しかし、丸暗記する勉強は全く役に立たないのでやめておきましょう。

丸暗記はつらい上にすぐに忘れます。応用も利きません。原価計算基準に限らず、文を丸暗記するという勉強はしないのが一番です。

原価計算基準(前文)「原価計算基準の設定について」

「原価計算基準の設定について」書かれているのが原価計算基準の前文です。原価計算基準の最初の一文は次のとおりです。

わが国における原価計算は、従来、財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示するとともに、価格計算に対して資料を提供することを主たる任務として成立し、発展してきた。

口語訳
日本における原価計算は、財務諸表の作成のための真実の原価を正確に計算・表示するために発展してきた。また、価格計算のための資料を提供するためにも発展してきた。

解説
簡単に分かりやすくまとめると、原価計算は次の目的で発展してきたと書かれています。

  • 財務諸表を作成するための「真実の原価」の正確な計算・表示
  • 価格計算に対する資料の提供

「真実の原価」とは簡単に言うと「財務諸表に表示する原価」です。原価計算は財務諸表に正確な原価を表示するために発展してきたといえます(価格計算に対する資料についてはここでは触れません。後々触れていきます)。

しかしながら、近時、経営管理のため、とくに業務計画および原価管理に役立つための原価計算への要請は、著しく強まってきており、今日、原価計算に対して与えられる目的は、単一ではない。

口語訳
しかし、経営管理のため、とくに「業務計画」や「原価管理」に役立つための原価計算も必要とされてきている。なので原価計算の目的は「財務諸表に表示する原価を計算・表示すること」だけではない。

解説
「業務計画」というのは原価に関する情報を使って業務を計画することなので、予算管理や製品の売価の決定などのことです。

また、「原価管理」というのは原価を管理することなので簿記2級で学習した標準原価計算のことです(標準原価計算のみを意味しているわけではありません)。

すなわち、企業の原価計算制度は、真実の原価を確定して財務諸表の作成に役立つとともに、原価を分析し、これを経営管理者に提供し、もって業務計画および原価管理に役立つことが必要とされている。

口語訳
原価計算制度は財務諸表の作成のために「真実の原価」を計算するだけではない。原価を分析して経営者や管理者に役立つ情報を提供することで業務計画や原価管理に役立つことも必要とされている。

したがって、原価計算制度は、各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが、いずれの計算目的にもともに役立つように形成され、一定の計算秩序として常時継続的に行なわれるものであることを要する。

口語訳
原価計算制度は、企業によって重視するものは異なるけれど「財務諸表作成のため」「業務計画のため」「原価管理のため」のどの目的にも役立つようになっていなければならない。また、原価計算制度はいつも継続して行われなければならない。

解説
「いつも継続して行われなければならない」のは原価計算制度に限った話ではなく、正規の簿記の原則でも求められています。

原価計算制度が財務諸表作成のために役立つものであるためには正規の簿記の原則を守っていなければならないので、いつも継続して行われなければならないのは当然だと言えます。

ここに原価計算に対して提起される諸目的を調整し、原価計算を制度化するため、実践規範としての原価計算基準が、設定される必要がある。

口語訳
「財務諸表作成のため」「業務計画のため」「原価管理のため」といった目的に役立つように、そして原価計算を制度化するために「実際の業務で守るべきルール」としての原価計算基準が必要とされている。

解説
やはり一定のルールがなければ財務諸表に表示する原価に信憑性がなくなってしまいます。また、ルールにのっとったものでなければ業務管理にも原価管理にも役立てるのは難しいです。

原価計算基準は、かかる実践規範として、わが国現在の企業における原価計算の慣行のうちから、一般に公正妥当と認められるところを要約して設定されたものである。

口語訳
原価計算基準は「慣例の中から一般に公正妥当と認められるものを要約して設定されたもの」である。

解説
「慣例の中から一般に公正妥当と認められるものを要約して設定されたもの」という性質は企業会計原則も同じです。

つまり「ルールが先にあって、そのルールを守らせよう」という姿勢ではなく「現在行われている慣行の中から公正妥当なものをルールとして設定しよう」という姿勢だということを意味しています。

しかしながら、この基準は、個々の企業の原価計算手続を画一に規定するものではなく、個々の企業が有効な原価計算手続を規定し実施するための基本的なわくを明らかにしたものである。

口語訳
原価計算基準は「この場合は○○としなければならない」という性質のものではなく「原価計算を行う場合は○○や○○といった方法がある」といった形でルールを提供するものである。

解説
この性質も実は企業会計原則と同じで、比較的柔軟なルールだと言えます。

したがって、企業が、その原価計算手続を規定するに当たっては、この基準が弾力性をもつものであることの理解のもとに、この基準にのっとり、業種、経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて、実情に即するように適用されるべきものである。

口語訳
企業が原価計算を行う場合は、原価計算基準は柔軟なルールだということを考慮して、原価計算基準を守りながらも、業種や規模などの応じて柔軟に適用すべきである。

解説
やはり原価計算制度は、企業の状況に応じて柔軟に適用するものだと言えます。

この基準は、企業会計原則の一環を成し、そのうちとくに原価に関して規定したものである。

口語訳
原価計算基準は企業会計原則の一部で、特に「原価」に関して定めたものである。

解説
原価計算においても企業会計原則に書かれているルール(例えば真実性の原則など)を守る必要があるということが言えます。

それゆえ、すべての企業によって尊重されるべきであるとともに、たな卸資産の評価、原価差額の処理など企業の原価計算に関係ある事項について、法令の制定、改廃等が行なわれる場合にも、この基準が充分にしん酌されることが要望される。

口語訳
原価計算基準は全ての企業が尊重するべきルールである。また、原価計算に関係がある法律などを作ったりなくしたりする場合には原価計算基準のことを考慮することが望まれる。

解説
原価計算基準自体は法令(法律や条例)ではないということが読み取れます。

これで原価計算基準の前文は全て終了です。原文は非常に読みづらいのでできるだけ分かりやすく解説(口語訳)しました。このような形で意味を理解しながら原文を何度も読み込むことで、徐々に原価計算基準を自分のものにしていってください。

このページを読まれた方にお勧めの記事はこちら

Pocket

タグ:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ページトップへ