原価計算の一般的基準~原価計算基準~

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。簿記1級では原価計算基準についての理論問題が出題されることがあります。なので原価計算基準を読むことが望ましいのですが、この原価計算基準は非常に難解な文章となっています。

そこで、原価計算基準の解説を行っていきます。今回は原価計算基準の第一章の六である「原価計算の一般的基準」についてお伝えしていきます。

原価計算の一般的基準

原価計算制度においては、次の一般的基準にしたがって原価を計算する。

口語訳
原価計算制度においては次の一般的基準に注意しながら原価を計算する必要がある。

解説
ここでは「原価計算」ではなく「原価計算制度」について書かれています。なので原価計算制度でお伝えしたとおり、「財務諸表の作成」「原価管理」「予算統制(予算管理の一部)」について書かれています。

(一)財務諸表の作成に役立つために、

1.原価計算は原価を一定の給付にかかわらせて集計し、製品原価および期間原価を計算する。すなわち、原価計算は原則として

口語訳
原価計算は原価を製品やサービスに関わらせて集計し、製品原価や期間原価を計算する。なので、原価計算は原則として(詳細は次項)

解説
製品原価と期間原価については原価の諸概念ですでに説明されています。

(1)すべての製造原価要素を製品に集計し、損益計算書上の売上品の製造原価を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ、

口語訳
「全ての製造原価要素を製品に集計すること」「製造原価を売上高に対応させること」「仕掛品、半製品、製品などの製造原価を貸借対照表の棚卸資産として計上すること」を行わなければならない。

解説
「全ての製造原価要素を製品に集計する」とはつまり「全部原価計算を行うこと」だと言えます。つまり、直接原価計算は使ってはいけないということです。

(2)また、販売費および一般管理費を計算し、これを損益計算書上期間原価として当該期間の売上高に対応させる。

口語訳
「販売費および一般管理費」を計算し、期間原価として売上高と対応させる。

解説
「販売費および一般管理費」は期間原価だということです。期間原価については原価の諸概念ですでに説明されています。

2.原価の数値は、財務会計の原始記録、信頼しうる統計資料等によって、その信ぴょう性が確保されるものでなければならない。

口語訳
原価の数値は、財務会計での「根本的な記録(領収書や納品書など)」や「信頼しうる統計的な資料」によって、その数値が信頼できるものでなければならない。

解説
原価の計算に使われる数値は信頼できるものでなければならないということです。

このため原価計算は、原則として実際原価を計算する。

口語訳
原価計算は信頼できるものでなければならないため、原価計算には原則として実際原価を計算する。

解説
領収書や納品書などの記録(最も信頼できる記録)をもとに行う原価は実際原価です。なので、信頼性を確保するためには実際原価を計算するのが原則だと言えます。

この場合実際原価を計算することは、必ずしも原価を取得価格をもって計算することを意味しないで、予定価格等をもって計算することもできる。

口語訳
実際原価を計算する場合、「取得価格」を使わなければならないということではなく、「予定価格」などを使うこともできる。

解説
実際原価は「取得価格×実際消費量」で計算するのが原則だけれど、「予定価格×実際消費量」で計算したものであっても実際原価と言うことができるということです。

実際原価は実際消費量を使って計算することが必要で、価格は実際のものである必要はないと言えます。

また必要ある場合には、製品原価を標準原価をもって計算し、これを財務諸表に提供することもできる。

口語訳
必要があれば、標準原価を使って製品原価を計算して財務諸表に計上することもできる。

解説
「標準価格×標準消費量」で計算した標準原価を使って製品原価を計算して、それを財務諸表に計上することもできるということです。原則は実際原価だけど、必要であれば標準原価を使うこともできると言えます。

3.原価計算において、原価を予定価格等又は標準原価をもって計算する場合には、これと原価の実際発生額との差異は、これを財務会計上適正に処理しなければならない。

口語訳
原価計算をするときに、原価を予定価格や標準原価を使う場合は実際の原価の発生額と差異が発生する。この差異は財務会計上、適正に処理しなければならない。

解説
実際原価計算で予定価格を使えば、実際価格と予定価格の差が原因で差異が発生します。また、標準原価を使えば、単価においても数量においても差異が発生します。この差異は財務会計上、適正に処理しなければなりません。

ちなみに、原価差異をどのように処理するかについては原価計算基準の四七の「原価差異の会計処理」で詳しく書かれています。

4.原価計算は、財務会計機構と有機的に結合して行なわれるものとする。このために勘定組織には、原価に関する細分記録を統括する諸勘定を設ける。

口語訳
原価計算は、財務会計と有機的に結びつく必要がある。有機的に結びつくためには、原価に関する細かい記録をまとめる勘定を設定しなければならない。

解説
原価計算は財務会計と有機的に結びついている必要があります。そのためには商業簿記で行った「総勘定元帳」を同じものを準備し、様々な勘定について記録しなければなりません。

そうしなければ企業会計原則の正規の簿記の原則に違反し、財務諸表に表示することができなくなるからです。

(二)原価管理に役立つために、

5.原価計算は、経営における管理の権限と責任の委譲を前提とし、作業区分等に基づく部門を管理責任の区分とし、各部門における作業の原価を計算し、各管理区分における原価発生の責任を明らかにさせる。

口語訳
原価計算は、経営における管理の「権限」と「責任」を各管理者に任せることを前提としています。

管理を任された各管理者は作業区分などにもとづいた部門をそれぞれの責任で管理し、各部門のおける作業の原価を計算します。そして各管理区分における原価の発生の責任を明らかにします。

解説
原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定するのが原価管理の目的だということです。

6.原価計算は、原価要素を、機能別に、また直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費の区分に基づいて分類し、計算する。

口語訳
原価計算は、原価要素を「機能別」に、また「直接費と間接費」「固定費と変動費」「管理可能費と管理不能費」の区分にもとづいて分類し、計算する。

解説
様々な原価の分類についての記述です。次のように分類、計算するということです。

  • 機能別分類:その原価が経営上のどのような機能のために発生したかによる分類
  • 製品との関連における分類:特定の製品の製造に直接消費された「直接費」と多数の製品に共通して消費された「間接費」に分類
  • 操業度との関連における分類:操業度と原価が比例する「変動費」と操業度が変わっても減価が一定額である「固定費」に分類
  • 管理可能性にもとづく分類:管理者によって管理できる原価である「管理可能費」と管理者によって管理できない原価である「管理不能費」に分類

原価の分類

7.原価計算は、原価の標準の設定、指示から原価の報告に至るまでのすべての計算過程を通じて、原価の物量を測定表示することに重点をおく。

口語訳
原価計算は、「原価の標準の設定」「原価の標準の指示」「原価の報告」までの全ての計算過程において、原価の数量を測定・表示することを重視する。

解説
「原価の標準の設定」は「標準的な消費量の設定」が重要で、「原価の標準の指示」も「どれだけの数量の消費を目的にするか」が重要だし、「原価の報告」も「実際にどれだけの数量を消費したか」が重要だということです。

原価管理の目的は「原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定すること」ですが、これも主に数量についてだと言えます。つまり大事なのは「数量差異を把握すること」であり、逆に言えば、「価格差異は特に重要ではない」ともいえます

8.原価の標準は、原価発生の責任を明らかにし、原価能率を判定する尺度として、これを設定する。

口語訳
「原価の標準」は、原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定するためのものさしとして設定する

解説
原価の標準は原価管理がしやすいように設定する、つまり「原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定すること」に役立つように設定します。

原価の標準は、過去の実際原価をもってすることができるが、理想的には、標準原価として設定する。

口語訳
原価の標準は「過去の実際原価」でもよいが、標準原価が理想的である。

解説
原価の標準は過去の実際原価、つまり「過去に発生した実際の原価」をもってすることができるとなっています。

本来であれば原価標準は標準原価、つまり「消費量は科学的、統計的な調査で予定し、価格は予定価格または正常価格で計算した原価」を使うことが理想的だけれど「過去の実際原価」でもいいということです。

これはつまり、科学的、統計的な調査が技術的に難しい場合であっても原価の標準を設定できるように配慮した記述だと言えます。

原価計算基準が設定されたのは昭和37年で、今のようにコンピューターが普及している環境ではありません。「科学的、統計的な調査」のハードルは今とは比較にならないほど高かったため、このように書かれているといえます。

9.原価計算は、原価の実績を、標準と対照比較しうるように計算記録する。

口語訳
原価計算は、「原価の実績(実際原価)」を「標準原価」と比較できるように計算し、記録する。

解説
原価管理の目的は「原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定すること」です。原価能率を測定するためには実際原価と標準原価を比較することは不可欠です。

10.原価の標準と実績との差異は、これを分析し、報告する。

口語訳
原価の標準と実績との差異を分析し、報告する。

解説
原価管理の目的は「原価の発生の責任を明らかにして原価能率を測定すること」です。当然、実際原価と標準原価の差異を分析し、報告しなければなりません。

11.原価計算は、原価管理の必要性に応じて、重点的、経済的に、かつ、迅速にこれを行なう。

口語訳
原価計算は、原価管理をのどのように必要としているのかに応じて、手間や資金のかけ方を調整して行います。また、原価計算のスピードとのバランスも考えながら行います。

解説
原価管理がどのようなレベルで必要としているのかは企業によって異なります。企業の規模によっても異なりますし、また、現時点でどれくらい原価の能率が低いのかによっても異なります。

企業の規模が大きければ大きいほど原価管理にかけた手間や資金に対して節約できる原価が大きいですし、また、現時点で原価の能率が低ければ低いほど原価管理による原価の節約額も大きくなります。

そういったことを考慮しながら原価計算をどれだけ重視するのか決めていいと言うことです。

また、一般的に原価計算を正確に行おうとすればするほど時間がかかりますが、原価の計算が遅すぎては原価管理に役立てることができません、なので、原価計算のスピードも考慮することが必要だと言えます。

(三)予算とくに費用予算の編成ならびに予算統制に役立つために、

12.原価計算は、予算期間において期待されうる条件に基づく予定原価又は標準原価を計算し、予算とくに、費用予算の編成に資料を提供するとともに、予算と対照比較しうるように原価の実績を計算し、もって予算統制に資料を提供する。

口語訳
原価計算は、予算期間において予想される環境にもとづいた予定原価や標準原価を計算することで、予算(特に費用に関する予算)を作成するときに役立つ資料を提供する。

また、予算と比較できるように実際の原価を計算することで「予算と実際の比較」に役立つ資料を提供する。

解説
予算を設定するときには予算期間における「製造原価」「売価」「販売数量」などを決める必要があります。そのときの特に「製造原価」を決めるときに役立つ資料を提供できるということです。

また、そうやって設定した予算と実際の結果を比較して差異を分析することにも役立つことになります。

これで原価計算基準の第一章の六である「原価計算の一般的基準」は全て終了です。原文は非常に読みづらいのでできるだけ分かりやすく解説(口語訳)しました。このような形で意味を理解しながら原文を何度も読み込むことで、徐々に原価計算基準を自分のものにしていってください。

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