原価計算の目的~原価計算基準~

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。簿記1級では原価計算基準についての理論問題が出題されることがあります。なので原価計算基準を読むことが望ましいのですが、この原価計算基準は非常に難解な文章となっています。

そこで、原価計算基準の解説を行っていきます。今回は原価計算基準の第一章の一である「原価計算の目的」についてお伝えしていきます。

原価計算の目的

原価計算基準の第一章の一である「原価計算の目的」では、文字通り「原価計算の目的」について書かれています。では早速、一文ずつ解説していきます。

原価計算には、各種の異なる目的が与えられるが、主たる目的は、次のとおりである。

口語訳
原価計算の主な目的は次のとおりである。

1.財務諸表作成目的

(一) 企業の出資者、債権者、経営者等のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。

口語訳
利害関係者のために損益計算書と貸借対照表を作成するための真実な原価を集計するのが原価計算の主な目的である。

解説
「企業の出資者、債権者、経営者等のために」というのは「財務諸表を利用する者(利害関係者)のため」ということです。

また、「過去の一定期間における損益」は損益計算書で表示する情報ですし、「期末における財政状態」は貸借対照表で表示する情報です。

この「財務諸表作成目的」は原価計算基準(前文)に書かれていた「財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示する」のことです。原価計算の目的はいくつかありますが、最重要なのはやはりこの「財務諸表作成目的」です

2.価格計算目的

(二) 価格計算に必要な原価資料を提供すること。

口語訳
価格計算に必要な原価に関する資料を提供すること。

解説
この「価格計算」という言葉は実は原価計算基準の前文にも出てきています。最初の一文の「価格計算に対して資料を提供すること」というところです。原価計算基準(前文)では解説は省略しましたが、この「価格計算」という言葉の本当の意味はかなり意外だと思います。

通常「価格計算」という言葉で思い浮かぶのは「原価に対して売価をいくらに設定するのか」というCVP分析などで出てくる「売価の設定」だと思います。

ですが、この文でいう「価格計算」というのは「売価の設定」という意味ではありません。もしそうなら後でお伝えする「(四)予算管理目的」や「(五)基本計画設定目的」などに含まれるはずだからです。

では、どういう意味かと言えば、「国が物資を原価に一定額を上乗せして買い上げるときに、その買上価格を決定するため」です。

通常は国が物や土地などを民間企業から買うときは市場価格をもとに買上価格を決定します。

ほとんどの場合はこの「市場価格をもとにした価格」で買い上げるのですが、主に防衛庁が買い上げる「戦車」「ミサイル」「戦闘機」などの武器については市場がありません(少なくとも日本には)。

こういったものを国が買い上げるときには製造原価にいくらかの利益を上乗せした価格で買い上げることになります。この場合の「製造原価」を計算するのに原価計算基準が役立つというわけです。

防衛庁が買い上げることは中央調達と言って、防衛庁がその情報を開示しています。

中央調達の概況

「価格計算」という言葉の意味は非常に誤解しやすいところなので、こういった形で理解しておくことが大切です。

3.原価管理目的

(三) 経営管理者の各階層に対して、原価管理に必要な原価資料を提供すること。

口語訳
経営者、工場長などの管理者に対して、原価管理に必要な資料を提供すること。

ここに原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。

口語訳
原価管理とは原価の標準を設定、指示して原価の実際の発生額を記録し、「実際の発生額」と「原価の標準」を比較し、その差異の原因を分析し、差異の原因に関する資料を経営管理者に報告し、原価の無駄を減らすための措置を講ずることである。

解説
この文では「原価管理」のことを次のように説明しています。

  1. 原価の標準を設定する。
  2. 原価の標準を指示する。
  3. 原価の実際の発生額を計算・記録する。
  4. 「原価の実際の発生額」を「原価の標準」と比較する。
  5. 「原価の実際の発生額」と「原価の標準」の差異の原因を分析する。
  6. 5に関する資料を経営者、工場長などの管理者に報告して原価の無駄を減らす。

ここで書かれている内容は標準原価計算そのものです。標準原価計算は「財務諸表作成目的」には不要ですが「原価管理目的」には必須のものなので原価計算に盛り込まれています

4.予算管理目的

(四) 予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。

口語訳
「予算の編成」と「予算統制」のために必要な原価に関する資料を提供すること。

解説
「予算の編成」とは「予算を設定すること」、「予算統制」とは「予算と実際を比較すること」です。つまりこの文は「予算を設定し、予算と実際を比較するために必要な原価資料を提供すること」と読むことができます。

ここに予算とは、予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を貨幣的に表示し、これを総合編成したものをいい、予算期間における企業の利益目標を指示し、各業務分野の諸活動を調整し、企業全般にわたる総合的管理の要具となるものである。

口語訳
予算とは、予算を設定する期間における業務の計画を金額で表したものであり、その期間の利益目標が計算されたものである。また、その利益目標達成のために業務の活動を調整し、企業全体を管理するための道具となるものでもある。

予算は、業務執行に関する総合的な期間計画であるが、予算編成の過程は、たとえば製品組合せの決定、部品を自製するか外注するかの決定等個々の選択的事項に関する意思決定を含むことは、いうまでもない。

口語訳
予算は業務執行に関する総合的なもので、毎期欠かさず設定されるものである。予算の設定の仮定に「最適セールスミックス」や「業務的意思決定」などを含むことは当然である。

解説
ここの部分は正直意味が分かりません(というか矛盾があります)。「予算は業務執行に関する総合的な期間計画である」と書いてある通り、予算は毎期欠かさず設定されます。

しかし、その予算の設定の過程に「製品の組合せの決定(最適セールスミックス)」や「部品を自製するか外注するかの決定(業務的意思決定)」などの意思決定が含まれると書いてあります。

つまりこの文は「最適セールスミックスや業務的意思決定が予算の設定の過程に含まれる」ということを言っていることになるのですが、通常予算に最適セールスミックスや業務的意思決定は含みません。この部分は適当に流しておけばいいかと思います。

5.基本計画設定目的

(五) 経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。

口語訳
経営の基本計画を設定するのに必要な原価に関する情報を提供すること。

解説
この「基本計画」の具体的な内容については次の文に書かれています。

ここに基本計画とは、経済の動態的変化に適応して、経営の給付目的たる製品、経営立地、生産設備等経営構造に関する基本的事項について、経営意思を決定し、経営構造を合理的に組成することをいい、随時的に行なわれる決定である。

口語訳
基本計画とは「経済的な環境の変化に対応するため、経営構造の根本的なことについて臨機応変に意思決定を行うこと」である。

解説
基本計画とはつまり簿記1級の原価計算で学習する「戦略的意思決定」を意味しています。原価計算は戦略的意思決定にも役立つということです。

これで原価計算基準の第一章の一である「原価計算の目的」は全て終了です。原文は非常に読みづらいのでできるだけ分かりやすく解説(現代語訳)しました。このような形で意味を理解しながら原文を何度も読み込むことで、徐々に原価計算基準を自分のものにしていってください。

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