パーシャル・プラン

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。標準原価計算の勘定記入の方法は、どの段階から標準原価で記帳されるのかによって「パーシャル・プラン」と「シングル・プラン」の2通りに分けられます。この記事ではそのうちのパーシャル・プランについて解説します。

パーシャル・プラン

仕掛品勘定の借方までは実際原価で記入し、仕掛品勘定の貸方から標準原価で記入する方法がパーシャル・プランです。パーシャル・プランの場合、原価差異は仕掛品勘定に表れることになります。

まずは月初仕掛品勘定と月末仕掛品勘定がない形で考えてみましょう。勘定連絡図は次のようになります。

パーシャル・プラン

この勘定連絡図では不利差異(借方差異)だと仮定しています。

では、これに月初仕掛品勘定と月末仕掛品勘定を加えて考えるとどのようになるでしょうか。問題はこれらの仕掛品勘定が標準原価なのか実際原価なのかです。次の勘定連絡図のように、月初仕掛品、月末仕掛品ともに標準原価となります。

パーシャル・プラン

完成品原価と月末仕掛品原価はどちらも標準原価です(ここを標準原価にしなければ標準原価計算を採用する意味がありません)。

問題は月初仕掛品ですが、これも標準原価となります。なぜなら、先月の月末仕掛品が今月の月初仕掛品になるからです。先月の月末仕掛品と今月の月初仕掛品の金額が変わることはありえません。

このように考えるとパーシャル・プランも理解しやすいと思います。

パーシャル・プランの仕訳

パーシャル・プランの仕訳は次のようになります。

材料の仕入

借方 金額 貸方 金額
材料(実際原価) ××× 現金など(実際原価) ×××

労務費の支払

借方 金額 貸方 金額
労務費(実際原価) ××× 現金など(実際原価) ×××

製造間接費の支払

借方 金額 貸方 金額
製造間接費(実際原価) ××× 現金など(実際原価) ×××

材料・労務費・製造間接費の仕掛品勘定への振替

借方 金額 貸方 金額
仕掛品(実際原価) ××× 材料(実際原価)
労務費(実際原価)
製造間接費(実際原価)
×××
×××
×××

製品の完成

借方 金額 貸方 金額
製品(標準原価) ××× 仕掛品(標準原価) ×××

差異の振替

ここまでの仕訳で、仕掛品の金額を見てみると、借方残高が実際原価、貸方残高が標準原価になっています。実際原価と標準原価の差額を差異として認識し、各勘定に振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
直接材料費差異
直接労務費差異
製造間接費差異
×××
×××
×××
仕掛品
仕掛品
仕掛品
×××
×××
×××

上の勘定連絡図としっかりと結びつけて理解しておくことが重要です。

パーシャル・プランの具体例

資料

1.標準原価カード(製品1単位あたりの標準原価)

標準消費数量 標準消費価格 標準原価
直接材料費 5kg @100円 500円
直接労務費 2時間 @500円 1,000円
製造間接費 2時間 @300円 600円

2.当月の生産実績

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,400個

  • 材料は始点投入とする。
  • カッコ内は加工進捗度を表す。

3.当月原価実績(実際原価)

実際消費価格 実際消費数量
直接材料費 @105円 13,000kg
直接労務費 @600円 5,200時間
  • 製造間接費…1,600,000円 (このうち間接労務費500,000円)

4.製造間接費予算および基準操業度(年間)

  • 変動費…7,200,000円
  • 固定費…14,400,000円
  • 基準操業度…72,000時間(直接作業時間を配賦基準とする)
  • 公式法変動予算(3分法:能率差異は変動費のみから計算する方法)を採用している

この資料をもとに直接材料費差異・直接労務費差異・製造間接費差異の差異分析を行ってみましょう。

考え方

差異分析の考え方は直接材料費差異直接労務費差異製造間接費差異と同じです。差異分析の解答は次のようになります。

  • 直接材料費差異:115,000円(不利差異)
  • 価格差異:65,000円(不利差異)
  • 数量差異:50,000円(不利差異)
  • 直接労務費差異:620,000(不利差異)
  • 賃率差異:520,000円(不利差異)
  • 作業時間差異:100,000円(不利差異)
  • 製造間接費差異:100,000円(不利差異)
  • 予算差異:120,000円(有利差異)
  • 変動費能率差異:20,000円(不利差異)
  • 操業度差異:200,000円(不利差異)

ここではパーシャル・プランにおける仕訳と勘定記入について考えます。

パーシャル・プランにおける仕訳

仕掛品の製品への振替

標準原価計算では原価計算を早く行うため、実際に材料や労務費などをいくらで仕入れてどれだけ使ったのかを把握する前に標準原価で仕掛品勘定から製品勘定へ振り替えます。

製品1個あたりの標準原価が2,100円(直接材料費の標準原価500円+直接労務費の標準原価1,000円+製造間接費の標準原価600円)、完成品が 2,400個なので仕掛品勘定から製品勘定に振り替えられる金額は5,040,000円(2,100円×2,400個)となります。

よって、仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
製品 5,040,000 仕掛品 5,040,000

材料の仕入

  • 材料費の金額(1,365,000円)=直接材料費の実際消費価格(@105円)×実際消費数量(13,000kg)

実際原価での仕訳となります。

借方 金額 貸方 金額
材料 1,365,000 現金など 1,365,000

労務費の支払

  • 労務費の金額(3,620,000円)=直接労務費の実際消費価格(@600円)×実際消費数量(5,200時間)+間接労務費(500,000円)

実際原価での仕訳となります。

借方 金額 貸方 金額
労務費 3,620,000 現金など 3,620,000

間接労務費の製造間接費への振替

労務費勘定のうち、間接労務費の分は製造間接費勘定へ振り替えます。標準原価計算では直接材料費と直接労務費以外は製造間接費として計算するからです。

借方 金額 貸方 金額
製造間接費 500,000 労務費 500,000

製造間接費の支払

  • 製造間接費の金額(1,100,000円)=製造間接費の実際発生額(1,600,000円)-間接労務費(500,000円)

実際原価での仕訳となります。

借方 金額 貸方 金額
製造間接費 1,100,000 現金など 1,100,000

パーシャル・プラン

うっかり金額を1,600,000円としてしまうと、間接労務費が二重に仕訳されることになってしまうので注意が必要です。

ここまでの勘定連絡図を表すと右のようになります。

この勘定連絡図がイメージできれば製造間接費が1,100,000円になることも分かると思います。

次にこれらの原価を仕掛品勘定に振り替えます。パーシャル・プランでは実際原価で振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 6,085,000 材料
労務費
製造間接費
1,365,000
3,120,000
1,600,000

これで材料勘定・労務費勘定・製造間接費勘定が全て仕掛品勘定に振り替えられます。あとは差異に関する仕訳を行うだけです。

直接材料費差異の振替

パーシャル・プランでは仕掛品勘定から原価差異勘定へ振り替えることになります。また、直接材料費差異は価格差異と数量差異に分けられますが、仕訳ではそこまで細かく分けることはほとんどありません。直接材料費差異勘定で仕訳をすることになります。

借方 金額 貸方 金額
直接材料費差異 115,000 仕掛品 115,000

金額は差異分析の通りです。

直接労務費差異の振替

パーシャル・プランでは仕掛品勘定から原価差異勘定へ振り替えることになります。また、直接労務費差異は賃率差異と作業時間差異に分けられますが、仕訳ではそこまで細かく分けることはほとんどありません。直接労務費差異勘定で仕訳をすることになります。

借方 金額 貸方 金額
直接労務費差異 620,000 仕掛品 620,000

金額は差異分析の通りです。

製造間接費差異の振替

パーシャル・プランでは仕掛品勘定から原価差異勘定へ振り替えることになります。また、製造間接費差異は予算差異や操業度差異、能率差異などに分けられますが、仕訳ではそこまで細かく分けることはほとんどありません。製造間接費差異勘定で仕訳をすることになります。

借方 金額 貸方 金額
製造間接費差異 100,000 仕掛品 100,000

金額は差異分析の通りです。これらの仕訳をT字勘定で表すと次のようになります。

パーシャル・プランにおける各勘定

金額や勘定科目は総勘定元帳への転記なので特に問題ないと思います。仕掛品勘定における前月繰越と次月繰越の点だけ解説しておきます。

仕掛品勘定の前月繰越は当月の生産実績の資料に書いてあるところから材料が500個、加工費が200個です。パーシャル・プランであってもシングル・プランであっても前月繰越は標準原価で記入されています。

材料1個あたりの標準原価は500円、加工費1個あたりの標準原価は1,600円なので、仕掛品勘定の前月繰越の金額は570,000円(=500円×500個+1,600円×200個)となります。

仕掛品勘定の次月繰越も同様です。

仕掛品勘定の次月繰越は当月の生産実績の資料に書いてあるところから材料が600個、加工費が300個です。パーシャル・プランであってもシングル・プランであっても前月繰越は標準原価で記入されています。

材料1個あたりの標準原価は500円、加工費1個あたりの標準原価は1,600円なので、仕掛品勘定の前月繰越の金額は780,000円(=500円×600個+1,600円×300個)となります。

工業簿記では仕訳やT字勘定が忘れられやすいです。時々で構わないので確認することが重要です。

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“パーシャル・プラン” への8件のフィードバック

  1. 金属屋 より:

    こんにちは、すみません分からない点が一つあります
    労務費の計算のところで出てくる間接労務費の500000が
    何処から来るものか今一つ掴めません
    宜しければご教授下さると助かります

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。

      すみません。「製造間接費1,600,000円」のあとに「(このうち間接労務費500,000円)」という記述がなければならないのですが、抜け落ちていました。すぐに修正させていただきます。

      ご指摘ありがとうございます。ご精読いただけて嬉しいです。

  2. 金属屋 より:

    早速の対応ありがとうございました
    引き続き勉強させて頂きます

    • dokuboki より:

      ご返事ありがとうございます。ご指摘助かりました。簿記の勉強応援しています。

  3. 村田 より:

    はじめまして。
    『パーシャツプランにおける仕訳』の中の『製造間接費の支払』欄の最後の仕訳ボックスですが、貸方の製造間接費は160,000となっていますが、 文脈からいくと110,000ではないのかと思いますが、どうして160,000なのか教えて頂けますでしょうか。

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。早速ご質問にお答えします。

      村田様がおっしゃっている1,100,000という金額は勘定連絡図の借方の空欄部分にあたります。「(借)製造間接費1,100,000/現金など1,100,000」という仕訳を総勘定元帳の製造間接費勘定に転記すると1,100,000円は借方に出てきます)。そして、借方の合計である1,600,000円が製造間接費勘定から仕掛品勘定に振り替えられるとイメージされると分かりやすいと思います。

  4. さとう より:

    すみません、ひとつ教えてください。記事の目的とは微妙にずれるかもしれません。
    「問題は月初仕掛品ですが、これも標準原価となります。なぜなら、先月の月末仕掛品が今月の月初仕掛品になるからです。先月の月末仕掛品と今月の月初仕掛品の金額が変わることはありえません。」とありますが、実務的な問題として
    原価差異を把握した後の会計処理では、最終的に売上原価に全額賦課させる場合と、売上原価と月末仕掛品それぞれに配布する場合とがありますが、後者の場合、翌月には月初仕掛品が標準原価ベースの金額とは乖離してしまうと思います。その場合、翌月の原価差異の計算はどういう風に始めればいいんでしょうか?帳簿上の月初仕掛品金額が標準原価ベースではないので、その分差額が残ると思うのですが・・・
    よろしくご教示ください。

    • dokuboki より:

      コメントありがとうございます。早速ご質問にお答えします。

      さとう様がおっしゃるように「原価差異を把握した後の会計処理では、最終的に売上原価に全額賦課させる場合と、売上原価と月末仕掛品それぞれに配賦する場合とがあります」が、この会計処理は「財務諸表に表示する金額を原価差異を考慮しない標準原価を原価として計上するのはまずい」という理由で行う会計処理です。なので、原則として原価計算期間ごとに行う会計処理ではなく、決算時に行う会計処理となります。

      もちろん、会計期間が次期となる場合(3月決算における3月から4月となる原価計算期間)は「翌月には月初仕掛品が標準原価ベースの金額とは乖離してしまう」という現象は起こりえます。しかし、この乖離が起こるのは「売上原価と月末仕掛品それぞれに配賦する場合」で、この会計処理を採用するのは「多額の原価差異が発生した場合」つまり「原価標準の設定そのものが誤っていた」と考えられるので原価標準の設定そのものをやり直すことになります(多額の差異が発生しなくても原価標準の設定そのものをやりなおすこともよくあります)。

      工業簿記は企業内部の会計なので裁量の範囲も大きく、これ以外の会計処理が絶対にないとは言えませんが、一般的にはこのような会計処理になると考えられるといいと思います。

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