労務費の取引と仕訳

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こんにちは、簿記合格請負人の平野です。この記事では労務費の取引と仕訳について解説します。

労務費

労務費勘定は労務費という費目を表す勘定です。直接労務費、間接労務費を問わず、どちらも労務費勘定です

労務費勘定は資産の勘定になります。労務費というのはお金を払って「人間の労働力」を買っていると考えます。これは「工員を働かせる権利」とも考えることができます。賃金や給料を支払っているので相応の労働をさせることができるのです。

ちなみに労務費勘定を使わず、賃金勘定や給料勘定を使う場合もあります。

商業簿記での賃金や給料を費用と考え、工業簿記での労務費を資産と考える理由

商業簿記で学習した賃金や給料などは費用でした。逆に工業簿記で学習した労務費は資産と考えます。このようになっていますが、実質としてはどちらも同じものだといえます。

同じものなのに商業簿記での賃金や給料が費用で工業簿記での労務費が資産だと考える理由について解説します。

商業簿記での賃金や給料

商業簿記では給料を支払ったときには次のような仕訳を切りました。

借方 金額 貸方 金額
給料(費用) ××× 現金など ×××

このときの給料は費用になります。しかし、実際に支払ったときに費用になるのかといえばこれはかなり微妙な問題です。

給料を支払ったときに「(借)給料(資産)×××/(貸)現金など×××」としておいて、給料をもらった従業員に実際に働いてもらって労働力を提供してもらったときに「(借)給料(費用)×××/(貸)給料(資産)×××」としてもいいとも考えられます。

給料を支払った時点ではまだ労働力を消費していないので費用ではなく資産ととらえ、実際に労働力を消費したときに資産を費用に振り替えています。このような考え方もありだといえます(便宜上給料を前払いしている前提でお伝えしています)。

実際に消耗品はこの考え方が採用されています。しかし、このような仕訳は明らかに手間が増えます。

しかも消耗品は消費したものが明確なので実際に消費したときに資産を費用に振り替えるという考え方もありですが、商品販売業における従業員の消費した労働力がどれだけなのかは簡単には分かりません。

そこで、実際に消費したかどうかではなく期間で考えるのです。給料は最初から費用として計上しておいて次期以降の分が費用に入っていたら、「前払給料」として資産に戻して次期に繰越すという方法をとっています。

消耗品の例で言う「簡便的方法(購入時に費用として計上)」の考え方だということになります。

工業簿記での労務費

工業簿記では賃金を支払ったときに次のような仕訳を切ります。

借方 金額 貸方 金額
労務費(資産) ××× 現金など ×××

このときの労務費は資産だと考えます。商業簿記での給料は費用なのになぜ工業簿記での労務費は資産と考えるのでしょうか。

工業簿記では「材料費・労務費・経費」→(製造間接費)→「仕掛品」→「製品」→「売上原価」というように振替えられていきます。

仕掛品・製品は資産、売上原価で費用となります。つまり、「材料費・労務費・経費」→(製造間接費)→「仕掛品(資産)」→「製品(資産)」→「売上原価(費用)」ということです。

製品が売上原価に振替えられるときに資産が費用になります。製品までは資産なのです。

労務費を費用として計上した場合、どこかで一度資産に戻さなければつじつまが合わなくなります。これでは余計に手間が増えてしまいます。

そこで労務費を資産として計上し、製品までは資産のまま振替えていき、売上原価に振替えるときに費用にする方が手間もかからず論理的にもつじつまが合うということにもなります。

そこで労務費は最初は資産として計上しておいて使用した労働分を製造間接費や仕掛品に振替えていくという方法をとっています。もちろん使用しなかった労働力についてはそのまま資産として残ります。

消耗品の例で言う「原則的方法」の考え方だということになります。

本質的には商業簿記における賃金や給料も工業簿記における労務費も変わりません。ただ、それぞれ手間がかからずつじつまが合う方法で処理するために、商業簿記での賃金や給料が費用で工業簿記での労務費が資産となっているのです。

労務費の取引と仕訳

賃金の支払い

「工場の工員の労務費450,000円を現金で支払った」場合について考えてみましょう。

現金で450,000円支払っているので『(貸)現金450,000』となります。

また、工場の工員の労務費を支払っているので勘定科目は給料ではなく労務費になります。工場の工員は製品の製造のために消費した労働力なので労務費ということです

営業マンの給料など、製品の製造のためではないことに消費した労働力は給料になります。というわけで『(借)労務費450,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
労務費 450,000 現金 450,000

労働力の消費

「労務費の内訳は直接労務費300,000円、間接労務費150,000円であった」場合の取引と仕訳について考えてみましょう。

労務費を消費しているので、労務費が減少しています。減少分は(300,000円+150,000円=)450,000円分です。よって、『(貸)労務費450,000』となります。

問題は借方です。直接労務費として300,000円分を消費しています。直接労務費ということは、どの製品に対していくら消費したのかを直接集計できるということです

この段階では製品が完成しているとは考えられません。よって、使用する勘定科目は「仕掛品」勘定になります。『(借)仕掛品300,000』となります。

また、間接労務費として15,000円分を消費しています。間接労務費ということは、どの製品に対していくら消費したのかを直接集計できないということになります

直接集計できないのに直接労働力と同じく仕掛品勘定を使うわけにはいきません。そこで「製造間接費」勘定を使います。『(借)製造間接費150,000』となります。

まとめると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品
製造間接費
300,000
150,000
労務費 450,000

ちなみに、この仕訳は労務費勘定を仕掛品勘定と製造間接費勘定に振替えたと見ることもできます。工業簿記はこのように「振替える」仕訳が非常に多いです。勘定科目を振替えるイメージをつかんでいきましょう。

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“労務費の取引と仕訳” への2件のフィードバック

  1. 匿名 より:

    すごく理解しやすかった

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